「人間にとってのニーズの進化」の進化のライン(参考情報)

「人間にとってのニーズの進化」の進化のラインの参考情報として、

(1)ニーズの社会的意味・内容、
(2)技術システムの主なニーズ、
(3)ライフサイクルの各段階でシステムに進化を促す力

、の3つがあります。

「(1)ニーズの社会的意味・内容」の進化のラインでは、
①あるニーズに関して最小限の充足度が、たとえば、完全な充足へと変化。→
②ニーズを充足させることに関連する不便や否定的感覚の低減あるいは排除
(たとえば、食事の準備をしなくてもよくなる。これは、次の順に進展します:
a.明らかな問題、あるいは大きな問題の排除-不可欠なこと、
b.目立たない問題や不便さの発見と排除、
c.潜在的危険の排除)。→
③ニーズを充足させることに関連する肯定的な感覚の程度の向上
(これには、次の2つの形態があります:
a.何らかの特定のニーズの開発を通じて。たとえば、食べ物の旨さを求める、
b.様々なニーズを結びつけることを通じて。たとえば、おいしい食事に美しい食器、更にすばらしいサービスを受けながら、良き友人達と一緒に食事する)
、のように進みます。

技術システムは人間のために働くわけですが、他方では人間が手間をかけて技術システムのニーズを充足させている側面もあります。

実際、人間は人工システムで満たされた居住環境と共生しバランスをとりながら生きているわけです。人間が身の回りの保全をおろそかにすれば、居住環境は劣化してゆきます(例:手入れされていない家は傷んでしまいます)。

居住環境の保全という機能は真っ先に自動化、機械化、専門的サービスへの移行の対象とされる分野です。このようにして、環境の保全がおこなわれることによって人々にとっての理想性の水準が向上し、居住環境からより良い便益を受け取ることができるようになります。

「(2)技術システムの主なニーズ」の進化のラインでは、
①システムの存在の確保(防護)
(a.外的要因からの防護、b.破損、機能不良からの防護、c.誤用からの防護)。→
② システムの安全の確保
(a.誤作動からの安全、b.不適切な使用からの安全、c.破損と誤動作からの安全)。→
③システム生産のための資源
(a.空間、時間、物質、エネルギー、情報などの資源、b.生産のための用具・装置、c.生産に関る人)。→
④システムとして存在するための資源
(a.空間、時間、物質、エネルギー、情報などの資源、b.整備(保守))。→
⑤システムとして持続可能にするための資源
、のように進みます。

「(3)ライフサイクルの各段階でシステムに進化を促す力」の進化のラインでは、
①段階 0
(a.個人的利害-特定の人びとの熱意、好奇心、創造的意欲、野心、資金など、b.上位システムあるいはより高次の様々なシステムがそれ自身発展するために特定の機能が実現されることを求める要請)。→
②段階 1
(a.個人的利害-一般的に成功を求める願望、b.集団の利害-既存の人間集団の安定と成長、c.金銭的利害-投資に対する利潤のニーズ、大きくて競争の少ない市場の魅力、d.社会的関心-新しい、未発見のニーズの充足、e.上位システムの要請)。→
③段階 2
(a.個人的利害-出世への願望、b.集団の利害-集団の成長・拡大、c.金銭的利害-安定した高い利益の確保、大きく未飽和な市場と、投資への見返りの早期回収への期待、d.社会的関心-絶えず増加する社会的ニーズの充足、e.上位システムの要請)。→
④段階 3
(a.個人的利害-出世への願望、b.集団の利害-官僚的組織の成長と拡大、c.金銭的利害-安定的で十分な利潤、d.社会的関心-社会の継続的ニーズの充足)。→
⑤段階 4
(a.個人的利害-来るべき難関を生き延びたいという希望、b.集団の利害-官僚的組織の自己保存、c.金銭的利害-損失の管理と補填、d.社会的関心-突然の市場崩壊と連鎖反応による不況の回避)。→
⑥段階 5
(a.個人的利害-寿命のきたシステムから何らかの限定的利潤を生み出して退職後の生活を守ろうという願望、b.新たな活用分野を発見し、異なる市場セクターで段階2の状態に戻ろうとする試み)
、のように進みます。

「市場における製品進化の様相」の進化のライン

「市場における製品進化の様相」の進化のラインには、(1)製品が充足するニーズの拡大、(2)ニーズを充足するシステム(仕組み/製品)の進化、(3)ニーズを充足する機能の進化、(4)ニーズを充足する製品の進化、(5)市場に流通する製品の多様性の増加、などが考えらえます。

 

「(1)製品が充足するニーズの拡大」の進化のラインでは、①欠かすことの出来ない重要なニーズの充足(・最低限度の充足、・大多数の人々にとって十分といえる程度の充足、・過度の充足)→②付随的あるいは追加的なニーズの充足→③不必要または有害な(きまぐれによる、あるいは、倒錯的などの)ニーズの充足、→④新しい、以前には存在しなかったニーズの創出と充足、→⑤様々なニーズを充足する多様な可能性と方法相互間での矛盾の発生とその解消、→⑥ニーズの創出と充足過程の制御(調整)、のように進みます。

 

「(2)ニーズを充足するシステム(仕組み/製品)の進化」の進化のラインでは、①新しい、または、大きく変化したニーズの創出(発見)。→②新しいニーズを充足する機能の発明。→③機能を実現する手段の発明とニーズを充足するシステムの発明。→④ニーズをより良く充足することを目的とする機能の発展。→⑤追加的なニーズの出現。→⑥追加的ニーズを充足する追加的機能の導入。→⑦システムに伴う不都合あるいは有害な機能の排除あるいは補償(埋め合わせ)。→⑧システムが充足する複数のニーズの間の優先度の変化とそれに対応するシステムの変化。→⑨既存の機能を実現する目的を持った抜本的に新しいシステムの創出。→⑩既存のニーズを充足する目的を持った新しい機能の創出、のように進みます。

 

「(3)ニーズを充足する機能の進化」の進化のラインでは、①特定のニーズを充足する機能とシステムの発明。→②当該のニーズをより良く充足することを目的とする主要な機能の進化と補助的機能の発展。→③追加的ニーズを充足するための付随的機能の導入。→④単一のシステムによる複数の主要な機能の一括的充足。→⑤当該のニーズを充足する革新的なシステムの創出。→⑥当該のニーズを充足する新しい機能の創出。→⑦当該ニーズとそれを充足する方法の進化、のように進みます。

 

「(4)ニーズを充足する製品の進化」の進化のラインでは、①個人の注文に応えて作る「御用達品」(たとえば、特注品のピストル)。→②ごく少数の特別な人たちのために手作りされる限定品(たとえば、豪華な装飾の 付いたピストル)。→③一定の数に限って購買力のある比較的多数の裕福な人たちのために手作りされる 「御用達品」の代用品(たとえば、超高級な狩猟用品)。→④「御用達品」やその代用品より品質が劣り、必要な機能を得るだけの目的で大量に 作られる量産品(たとえば、初期の量産マスケット銃)。→⑤量産技術の改良によって、しばしば、同時代の「御用達品」よりも優れた性能をもつ ようになった量産品(たとえば、現代の軍用銃)。→⑥製品やサービスの多様化。様々な市場の要求に対応する多様なバリエーションの出現(たとえば、様々なタイプの狩猟用の銃)。→⑦次の可能性をもった順応性のある製品(a.個々の顧客のニーズを充足することのできる大量生産方法の採用(たとえば、個人住宅の建設技術)、b.特定の顧客の注文に合わせて半製品をあつらえる(たとえば、店頭での衣料品の仮縫い、c.顧客が製品を使用する過程で、製品がその顧客のニーズに対応して変化する(たとえば、パソコンのユーザー設定)。)、のように進みます。

 

「(5)市場に流通する製品の多様性の増加」の進化のラインでは、①1つずつ作られる製品。→②量産される規格品。→③規格に従って複数のバリエーション作られる量産品。→④基本仕様と、それに対する多数の追加や変更の選択肢が設定され、好みやニーズに合わせて購買時に選択したり購買後に変更したりすることが可能な量産品(通常、次のような選択が可能:a.安全性、補足的情報、使い易さ、保管しやすさなどに関連する追加機能、b.装飾、c.楽しさ、快適さ、豪華さ、社会的地位の指標などに関連する追加機能、d.システムの新しい使い方)。→⑤順応性のある(変化する、調整可能な)機能を持った量産品(a.注文時、または、購買時に変えることができる(例:デル・コンピュータ)、b.使用開始時に調整可能(例:自動車の座席)、c.使用中に調整可能(例:ラジオの音量)、d.使用中に個人に合わせる(例:漢字変換辞書))、のように進みます。

「システムが対象とする市場の進化」の進化のライン

「システムが対象とする市場の進化」の進化のラインには、(1)市場の進化のライン、(2)システムと市場ニーズの進化の相互関係のライン、(3)需要の進化のライン、(4)市場の成長の過程における顧客指向の進化のライン、(5)市場への適応の進展とあらゆる市場ニッチ占有のライン、(6)独立した製品の市場参入のライン、(7)補助的製品の市場参入のライン、(8)市場における新しいイシュー出現のライン、(9)システムの用途の拡大(消費財からの展開)、(10)システムの用途の拡大(軍需からの展開)、などが考えらえます。

 

「(1)市場の進化のライン」の進化のラインでは、①多くの場合たまたまそうなった当初の市場。→②関連する周辺の市場に参入しようとする試み。→③当該システム固有の市場の発見と形成。→④積極的な市場拡大(a.他のシステムの市場への侵入、b.当該システム固有の市場の分割と独立した市場区分の形成、c.市場の金額的規模の拡大)。→⑤市場の安定。当該市場の成長速度が社会そのものの成長速度と等しくなる。→⑥市場のハイブリッド化。ハイブリッド化した市場の内部に新しい市場区分の形成、のように進みます。

 

「(2)システムと市場ニーズの進化の相互関係のライン」の進化のラインでは、①市場ニーズに先行するシステムの進化(需要の不在)。→②システムと市場との並行的進化(需要形成の開始)。→③システムの進化の市場ニーズへの遅れ(需要の竜巻現象)。→④システムと市場との並行的進化(需要の成熟化)。→⑤市場ニーズの調整(需要の操作)(a.顧客への働きかけ、b.システムの変更、c.システム供給(流通)方法の変更)、のように進みます。

 

「(3)需要の進化のライン」の進化のラインでは、①需要の欠如(システムに対する情報の不在)。→②一部人々(未来志向者)からの熱狂的需要。→③需要と供給の一致、年数パーセントの安定した市場成長。→④市場の飛躍的成長。新しい顧客層を惹きつける魅力を持った製品バリエーションの出現がきっかけとなる。→⑤安定した市場成長の間の小さな変動。→⑥主要な需要の減少。→⑦一部の人々(過去志向者)からの継続的需要。→⑧システムの市場からの退出、のように進みます。

 

「(4)市場の成長の過程における顧客指向の進化のライン」の進化のラインでは、①先進的な「新しいもの好き」な顧客への指向。→②システムが最大の価値を提供できる必然的な顧客への指向。→③当該システムに固有の様々な特殊顧客層への指向(たとえば、a.専門家、b.富裕層、c.身体の不自由な人達、d.国籍、文化、民族、性別などのマイノリティー)。→④一般大衆、あるいは、最大需要層への指向。→⑤すべての顧客を各種の特定セグメンテーションに区分し、それぞれに対応した特別仕様の製品を生産供給する。→⑥保守的な「変化嫌い」な顧客、および、システムを置き換える新しいシステムの活用が進まない分野への指向、のように進みます。

 

「(5)市場への適応の進展とあらゆる市場ニッチ占有のライン」の進化のラインでは、①当初の汎用的システム。→②個別の市場セクターに対応して特化した一連のシステム群(当初のシステムの各種バリエーション)。→③主要な市場セクターをすべてカバーする特化したシステム群(システムのバリエーションの網羅的増大)。→④バリエーションの減少とシステムの二次的汎用化。→⑤当該システムと別の市場セクターで使われていた他のシステムとのハイブリッド化、のように進みます。

 

「(6)独立した製品の市場参入のライン」の進化のラインでは、①特殊な製品による「副次的」市場への参入。→②主要な市場セクターへの参入。→③製品「固有の」市場の形成、のように進みます。

 

「(7)補助的製品の市場参入のライン」の進化のラインでは、①「主導的システム」の市場への出現。→②「主導的システム」に重要な補助的機能(複数の場合あり)を提供するシステムの創出。→③補助的システムの「主導的システム」への合体と両者の一体的進化。→④何らかの市場セクターにおける、補助的システムの主要システムへの転換、のように進みます。

 

ある技術システムを発展させるために必要な資源の1つは、そのシステムに対するニーズです。ある種のニーズは何らかの新しいシステムが登場したときに生まれます。

 

つまり、そうした新しいシステムが呼び覚ますまでは、そのニーズは社会に存在しません。また、一旦生まれたニーズは飽和点で安定して存在し続けますが、ニーズを呼び覚ましたシステムが他のシステムによって置き換えられるときに、ニーズも消えてしまいます。

 

こうした事情を明らかにするには、市場におけるニーズの推移についてのデータを分析する必要があります。

 

顧客の側は、誰かがそのようなニーズが潜在していることに気づかせてくれるまで、システムが改良されることを求めません。たとえば、レクサスが登場するまでは乗用車の騒音はアメリカの自動車産業では大きな争点とはなっていませんでした。

 

「(8)市場における新しいイシュー出現のライン」の進化のラインでは、①従来充足させられていなかったニーズを満たす新しいシステムの創出。→②新しいニーズを既存技術の範囲で充足するシステムの創出。→③既存のニーズを新しい手段で充足するシステムの創出。→④既存のニーズを既存の手段で充足する方法の改良、のように進みます。

 

「(9)システムの用途の拡大(消費財からの展開)」の進化のラインでは、①消費財としての製品。→②機械産業での利用(a.機械や装置の小さな部品、b.機械や装置の大きな部品)。→③建設業、農業での利用、のように進みます。

 

「(10)システムの用途の拡大(軍需からの展開)」の進化のラインでは、①軍需産業、宇宙開発での使用。→②機械産業での利用(a.機械や装置の小さな部品、b.機械や装置の大きな部品)。→③建設業、農業での利用。→④消費財での利用、のように進みます。

「要素間の対応と非対応」の進化のライン

システムが進化する過程では性能を向上させ、あるいは、不都合な現象を回避する目的でシステムの諸要素、諸特性相互を対応させるおよび/または対応しないようにさせるということが何度も繰り返されます。

 

このプロセスは、様々な要素が選択され組み合わされて新しいシステムが社会に登場する最初の段階から始まります。各要素はシステムが機能するために必要最低限以上の性能を持っているだけでなく、相互の間に適合性がなくてはなりません。

 

システム全体の性能にとって要素間の相互適合性は極めて重要です。組み合わせる要素を選択する観点からすれば要素単独で最高の性能を持っているものがシステムにとって常に最善とはいえません。

 

システムの構造、素材、機能(作用・動作)、特性の観点での対応/非対応の関係が存在します。

 

システムの進化の当初の段階では、それまで一緒に使われたことのない下位システム(装置・部品・素材など)が組み合わされてシステムとなることがあります。次に、下位システム相互の間の適合性を改善するために様々な調整が行われます。

 

システムに新しい特性を与えたり、困った作用を避けるためにシステムの諸要素が相互に対応しないようになっている場合はよくあります。

 

多くのシステムは(常に)変化する条件の中で稼動します。その場合、条件の変化に即応できるようにシステム自身が状態を変化させるようにすることがあります。

 

「要素間の対応と非対応」の進化のラインでは、①相互に対応していない要素間に対応関係が生じる。→②意図的な非対応のあるシステムとする。→③動的な対応/非対応を採用する、のように進みます。

 

「要素間の対応と非対応」の進化のラインの例には、①初めて自動車が作られたときには、馬車の車体にエンジンやその他の諸要素が取り付けられました。その後、こうして登場した新しい用途にあわせて個々の要素が改良されてゆきました。→②方向を変えたあとすぐに前輪が車体のまっすぐ前を向くようにするため、自動車の2つの前輪は完全に平行ではないように取り付けられています。→③飛行速度に対応させて主翼の形状を変化させる飛行機があります、などが挙げられます。

「柔軟性と制御性の増加」の進化のライン

技術システムは進化するにつれて柔軟性が増して使いやすく(制御性が高く)なってゆきます。

 

言い換えれば、システムは様々な矛盾する状況や環境の要請によりよく対応することができるようになってゆきます。

 

柔軟性と制御性が増すことによって条件が変化してもシステムは高い理想性を維持することができるようになります。

 

航空機の主翼、自動車の座席、ベッドその他多くのものが変化させることができ、柔軟性を持ちその結果として使い心地の良いものになりました。

 

この傾向は極めて強い傾向です。現在硬直したシステム、動かないしシステムはほとんどなんでも、将来は柔軟で動いて制御可能なものになると言い切ることができます。

 

「柔軟性と制御性の増加」の進化のラインでは、①柔軟性のないシステム。→②メカニカルなレベルで変化するシステム(たとえば、蝶番付き構造、折れ曲がる構造、柔軟性のある素材、など)。→③ミクロレベルで変化するシステム(たとえば、相転移、化学的転移、など)。→④様々なエネルギー場を使って制御可能なシステム(たとえば、メカニカル、熱、化学、電気、磁気、電磁波、など)、のように進みます。

システムの理想性を高める進化のライン-(3)有用性と不都合な要因との相互関係の好転

今回は「理想性の向上」という進化のパターンに関連した進化のラインとして、「(3)有用性と不都合な要因との相互関係の好転」のラインについて説明します。

 

「(3)有用性と不都合な要因との相互関係の好転」の進化のラインには、(1)機能を残してシステムを消し去る、(2)技術システムの特性の改良、(3)セルフサービス・システム、(4)システムの最適化、などがあります。

 

「(1)機能を残してシステムを消し去る」の進化のラインでは、①特定の機能を実現する専用の要素。→②(要素の代わりに)エネルギー場を使った機能の実現。→③システムの資源を活用した機能の実現(たとえば、a.システムの他の要素を使う、b.システムの中に既にあるエネルギー場を使う、c.システムの使われていない空間を使う)。→④上位システムおよび周囲の環境の資源を活用した機能の実現(たとえば、a.環境内に既存の資源、b.無料あるいはコストの安い資源、c.当該システムと何らかの関係のある他のシステム)。→⑤機能の排除(当該の機能を使わないで目的を達成する)、のように進みます。

 

「(2)技術システムの特性の改良」の進化のラインでは、①機能の増加(重量、体積、面積、長さ、消費エネルギーなどとの比率での機能数の増加)。→②機能を実現することに要する時間の短縮。複数の機能を並行して実現する方式への移行。→③柔軟性を持ったシステムへの移行。→④システムの機能が実現される空間について理想性を実現する。→⑤システムによる自己復元、自己修理、自己同調、自動制御、自動学習、など。→⑥新たな原理に基づいて機能を実現するシステムへの移行、のように進みます。

 

「(3)セルフサービス・システム」の進化のラインでは、①すべて人が操作するシステム。→②システムの稼働中のセルフサービス(a.移動・搬送、b.準備機能、終了機能、c.モニター機能、d.作業制御機能)。→③メンテナンス関連のセルフサービス(a.作業状態から休止状態への移行、b.自己診断機能、c.可動へ向けた調整機能、d.損傷に対する防御・保護機能、e.洗浄・清浄化機能、f.修理機能)のように進みます。

 

「(4)システムの最適化」の進化のラインでは、①たまたまそのように設計されたシステム。→②システムの個々の要素の部分的最適化。→②システム全体の観点からの最適化。→③他のシステムとの関係を踏まえた最適化、のように進みます。

システムの理想性を高める進化のライン-(2)システムに含まれる不都合な要因の減少

今回は「理想性の向上」という進化のパターンに関連した進化のラインとして、「(2)システムに含まれる不都合な要因の減少」のラインについて説明します。

 

「(2)システムに含まれる不都合な要因の減少」の進化のラインには、(1)不都合な要因とそれを減少させる方法、(2)望ましくない機能とその作用に対する姿勢の進化、(3)有害な作用の予測の進化、(4)有害な作用に対する反作用の進化、(5)有害な作用に対する防御の進化、(6)有害な作用を受けるシステムの進化、(7)有害な作用を引き起こすシステムの進化、(8)システムのコストの進化、(9)有害な作用を取り除く手段の進化、(10)有害機能の有益機能への転換、などがあります。

 

システムの有益機能が進化するプロセスは常に予測の難しい変化を伴います。進化に伴って、不都合な要因が蓄積し、有害な機能やそれがもたらす有害な作用が発生してくるのです。

 

「(1)不都合な要因とそれを減少させる方法」の進化のラインという観点では、多くのシステムで観測される不都合な要因と、それに対処する方法には次のようなものがあります。

 

「一般的な不都合」→「その不都合を減少させる方法」の順に説明すると、次のようなことがいえます。①(特に)システムの進化の初期段階で通常の市場分析が不可能な時期における顧客のニーズ、希望、好みについての不完全な理解、あるいは、誤解。→人々や市場のニーズに関連する進化のパターンを活用する。類比思考を活用する。②a.システムに固有の重要な問題が未解決となっていることに関連して、システムを使用することに不便や危険が伴い、システム自体が往々にして複雑過ぎる。→アイディエーション社の先行的不具合対処(AFD)プロセスに含まれる不具合予測(FP)あるいは不具合分析(FA)を活用して、問題を未然に予測し、あるいは発生した問題の原因を分析する。b.システムやその機能、下位システムなどの改良や開発に関連する判断の誤り。→問題を迅速に解決するためにTRIZの創造的手法を活用する。③(とりわけ、生産規模の拡大、システムの規模の拡大、使用時間の延長などに関連する)有害な作用に関する知識不足。→不具合予測(FP)を活用し、変化に伴う効果を予測して未然に対処する。

 

「(2)望ましくない機能とその作用に対する姿勢の進化」の進化のラインでは、多くの場合、有害な作用を1つの攻撃だと理解することができます。たとえば、「ある部品に対する腐食の攻撃」「市場における競合相手の攻撃」「事故の際の誰かの車による自分の車への攻撃」「事業利益に対する税務当局の攻撃」などのように捉えることができます。攻撃への対処の仕方は様々ありますから、予測される被害に対応して十分な対処方法を選択することが大切です。たとえば、税務当局が存在しないようにしてしまうまでの対応は不必要です。対処の仕方には次のような考え方があります。①有害な作用を見落とす、あるいは、有害な作用について知らない(たとえば、100年以前にはタバコを吸うことの有害な作用は知られていませんでした)。→②有害な作用を避けられないものとして我慢する(たとえば、自動車の歴史の中で、長い期間騒音が問題視されることはありませんでした)。→③有害な作用が持つ攻撃のエネルギーを吸収する装置や作用を使った受身の防衛。→④攻撃のエネルギーをそらしたり、エネルギー源に向けて反射させる半ば能動的な防衛。→⑤攻撃の源泉に向けて、こちらからもエネルギー使って反応する積極的な防衛。→⑥こちらが被害を被らないうちに、有害な可能性をもつ源泉に対して攻撃を仕掛ける、予防的攻撃による積極的防衛。

 

「(3)有害な作用の予測の進化」の進化のラインでは、①既知の有害作用に対する防御のみ。→②予測の難しい有害作用から贅沢(余裕、安全係数、予備の出力、など)な防御策を講じ、結果としてコスト、重量などが増える。→③類推、数学的計算、モデルの研究、などに基づいた、有害な作用の簡単な予測。情報の蓄積と分析に基づくFMEA、HAZOPなどの手法の活用。→④診断システムを用いた有害作用の早期検出。→⑤不具合予測(FP)などの専門的手法に基づいた複雑な有害作用(システム効果、多経路(マルチパス)効果、遅延的有害作用、など)の予測、のように進みます。

 

「(4)有害な作用に対する反作用の進化」の進化のラインでは、①有害作用の原因を取り除く。→②有害作用の有害さを許容可能な水準まで下げる。→③有害作用が発生する頻度および発生する可能性を下げる。→④有害性を持つ作用を、他の有害性が低く許容水準内に収まる作用に置き換える。→⑤有害作用およびその結果が、何かによって埋め合わせされることを条件として、その作用を我慢する。→⑥有害作用そのものに対して直接対抗手段を講じて、作用を弱めたり、その影響を遅らせる(たとえば、負のフィードバック作用を使って作用を弱くする)。→⑦特定の有害作用がユーザーに与える効果を減少させる(たとえば、有害な結果が目立たないようにする(マスキング効果)。→⑧有害な作用を受け入れやすくするために有益な作用を追加する(たとえば、苦い薬を糖衣錠にする)。→⑨有害作用を無害な作用に変化させる。→⑩有害作用を有益に利用する方法を発見する、のように進みます。

 

「(5)有害な作用に対する防御の進化」の進化のラインでは、①システムのコストアップにつながる作用によって有害作用から防御する(a.システムの構造や操作・保守作業の複雑化を伴う対策、b.より優れた素材や装置の導入、c.より高価な生産方法の採用、製造精度の向上、システムに有害作用を減少させる、予防する、打ち消す、などの機能をもつ下位システムや要素を組み込む)。→②有害作用と関係している有益作用を変化させることによる有害作用からの防御(a.有害作用に関係している有益作用を減少させたり、悪化させることで対処する、b.有益なプロセスの実行スケジュールや特性値を変化させることによって有害作用を減少させる、c.有益なプロセスの制御性を高めることによって有害作用を排除する)。→③システムの転換による有害作用からの防御(a.有害作用やそれに関係のある作動ステップを他のシステム、下位システム、あるいは上位システムに移す、b.システムを有害作用を活用できるようにする他のシステムと一体化させる、c.システムを同じ機能を他の方法で実現し、元のシステムと異なる有害作用をもつ他のシステムとハイブリッド化して、お互いの有害作用を相殺し合うようにする)、のように進みます。

 

「(6)有害な作用を受けるシステムの進化」の進化のラインでは、①システムを有害な作用・動作から隔離する。→②有害な作用・動作の向かう方向を変える。→③有害な作用の危険性を減らす目的でシステムの耐性を高める(ワクチン効果)。→④有害作用の影響を受ける、あるいは、有害作用に対する感受性が高いシステムの要素を取り除く。→⑤有害作用の影響を受ける、あるいは、有害作用に対する感受性が高いシステムの要素に対して特に防御策を講じる。→⑥システムに次のような追加の装置、物質、エネルギー場、などを導入する(a.有害作用を受動的に抑圧あるいは吸収し、他方、システムの有益機能に悪影響を与えない(あるいは良い影響を与える)、b.有害作用に能動的に反作用を行う)。→⑦システムの環境あるいはシステムの要素を変更する。→⑧有害作用の影響を受けるシステムの要素を並行的、あるいは、定期的に修復する。→⑨システムと類似の機能を持ち、問題となっている有害作用の影響が生じない別のシステムに交換する、のように進みます。

 

「(7)有害な作用を引き起こすシステムの進化」の進化のラインでは、①システムを隔離して、有害作用の影響範囲を限定し、影響が広がったり、特定の方向に伝わったりして有害性が表面化しないようにする。→②有害作用を安全に排出しあるいは取り除く目的で、有害作用のための経路をつくる。→③有害作用を引き起こすシステムの要素の排除。→④有害作用を抑圧あるいは吸収し、他方、システムの有益機能に悪影響を与えない(あるいは良い影響を与える)追加の装置、物質、エネルギー場、などをシステムに導入する。→⑤システムあるいはシステムの作動プロセスを下位システム、あるいは、下位ステップに分割して、有害作用を引き起こしている下位システム、あるいは、下位ステップに対策を講じる(たとえば、a.当該の下位システム、下位ステップの隔離、b.有害作用に対する反対作用の導入)。→⑥有害作用の発生に関係しているシステムの外部環境や内部環境を変化させる。→⑦システムと類似の機能を持ち、問題となっている有害作用を引き起こさない別のシステムに交換する、のように進みます。

 

「(8)システムのコストの進化」の進化のラインでは、①システムの簡素化。高価あるいは過剰な装置や下位システムが排除される。→②システムを生産する技術の簡素化。人の労働や補助的作業などが排除される。→③大量生産方式への移行。→④製造拠点の労働コストの安い国・地域への移動。→⑤輸送、保管、組立、保守、修理、使用に関わる管理費の削減。→⑥機能を限定した、耐久性が高く、省エネで、他のコスト関連性能の優れた専用システムの開発。→⑦高コストに対する代償機能(a.高コストを高機能によって補う汎用システムの開発、b.高コストを高級感や独自の特性で補う豪華システムの開発)のように進みます。

 

「(9)有害な作用を取り除く手段の進化」の進化のラインでは、①有益機能を引き下げることによる有害作用を排除する。→②ある不都合を他の不都合に置き換える。→③有害作用を何らかの方法で補填する。→④有害な流れとの対応関係を回避する。→⑤有害作用への反対作用を導入する。→⑥有害作用を有益に活用する、のように進みます。

 

「(10)有害機能の有益機能への転換」の進化のラインでは、①有害機能との格闘。→②ある有害機能やその作用を部分的に許容する(a.有害作用の発生可能性を許容可能な水準に引き下げる、b.有害作用の有害さを許容可能な水準に引き下げる、c.有害機能とその作用を完全にあるいは部分的に相殺する、d.有害作用を有益作用と組み合わせて許容できるようにする(糖衣錠の効果))。→③一部の有害機能や作用の結果を有益な目的に活用する。→④一部の有害機能や作用を有益な目的に活用する。→⑤従来有害機能を考えられていた機能を基本有益機能にしたシステムの創出、のように進みます。

システムの理想性を高める進化のライン-(1)システムの有用性の増加

システムは理想性の向上する方向へ向けて進化します。システムの理想性は、そのシステムが持つあらゆる有用な特性の合計を、そのシステムに含まれるすべての有害な(あるいは、望ましくない)要因の合計で割った比率で表されます。

 

システムの理想性=有用な特性(有益機能)の合計/有害な要因(有害機能)の合計

 

したがって、あらゆる人工システムの進化の度合を次の3つの観点から評価することができます。
(1)システムの有用性の増加
(2)システムに含まれる不都合な要因の減少
(3)有用性と不都合な要因との相互関係の好転

 

理想性の向上へ向けた進化のパターンは次の重要な帰結を示唆しています。
・すべての問題(中には、問題の立て方そのものが間違っていることもある)を解決することは不可能だが、あらゆるシステムはさらに進化させることが可能である。
・システムの進化の過程は1つだけではない。システムはそのシステムにとって可能な様々な経緯をたどって理想性を高めてゆく。
・違う道筋をたどって進化してゆくシステム同士の間で、競争が生じることがある。

 

今回は「理想性の向上」という進化のパターンに関連した進化のラインとして、「(1)システムの有用性の増加」のラインについて説明します。

 

あらゆる人工システムは何らか一群の「有益機能」を実現する目的で作られます。これらの有益機能は、何らかの目的を達成することを狙って求められているといえます。有益機能には次の種類があります。
・基本(有益)機能:システムが作られた目的としての機能です。
・補助(有益)機能:基本機能を実現することを可能にする機能です。
・付属(有益)機能:システムを作った人々が基本機能に追加して目指した機能です。

 

システムが進化する過程で、機能の数を増やし、機能の質を向上させ、自分の機能と他のシステムが持つ機能と対応させるようにすることを通じて、有益機能を発展させて理想性を向上させてゆきます。

 

システムの価値を高めてゆく具体的なアプローチ(進化のライン)には、(1)システムの有用性の増加、(2)有益機能の追加、(3)補助機能の追加、(4)付属機能の追加、(5)機能の改良、(6)ユーザーの期待と満足度の変化、(7)システムの基本有益機能の発展、(8)専門化と汎用化、(9)システムの機能の進化、(10)システムの基本有益機能の発展、(11)機能の分散(分担)、(12)機能の細分化、(13)快適機能の進化、(14)豪華機能の進化、などがあります。

 

「(1)システムの有用性の増加」の進化のラインでは、①a.基本有益機能群の内容を変化させる、b.システムの主要機能を改良し、使いやすさを増す補助機能の追加する、c.ユーザーにとってシステムの有用性を増す付属機能の追加する、などの手段で有益機能の数を増やす。→②既存の有益機能の性能を改良する。→③特定の目的にあわせて様々な有益機能を持つ専門化したシステムを創出する。→④最も効果的で使いやすい有益機能群を持ち、かつ、機能間の干渉を排除してシステムの最適化を図る調整をする(たとえば、電話がかかってきた相手によって優先度を判断したり(寝ているユーザーを起こす、他の電話に割り込ませる、など)、相手のメッセージを残すか否か判断したり、相手によっては回線を切断するなどの機能を持った電話機)。→⑤特定の機能を持ったシステムを外部環境や、周辺の他のシステムに対応させる(たとえば、テレビやコーヒーメーカーのリモコン、自宅や自家用車の警備システムの一部、インターネット端末、ナビゲーションシステムなどとして使うことのできる携帯電話)、のように進みます。

 

「(2)有益機能の追加」の進化のラインでは、システムへの新しい有益機能の追加は次のように行われます。①従来知られていない新機能の発明(たとえば、薬を入れておくケースが付いていて、ユーザーがいつ服用したか記録をとってくれる携帯電話)。→②機能の細分化と下位機能の分離。次に、下位機能の基本機能への格上げと、その基本機能を持った新規独立システムの創出(たとえば、誰が呼んでいるか記録をとってくれるポケベル)。→③他の何かが持っている機能のシステムへの移転(取り込み):a.システムのそばにあるもの(たとえば、時計、鏡、口紅入れなどが付いている携帯電話)、b.他の分野の類似性のあるもの(たとえば、テレビ、パソコン、などの他のコミュニケーション装置の機能を持った携帯電話)、c.特殊な条件で使われる、ただし、類似の下位システムを含むもの(たとえば、 護身用電気ショック銃機能を持った携帯電話(アンテナ、バッテリー、アンプ、などを共有する)、d.他のシステムが持っている機能(たとえば、一定の条件で、基地局を通さずに他の電話機に直接連絡を取ることのできる携帯電話)。→④従来人がしている機能のシステムへの移転(取り込み)(たとえば、人が歩く運動や自動車の振動などを利用して自動的に充電する携帯電話。これによって、人が充電の心配をする必要がなくなる)。→⑤システムの従来の機能と逆の機能の追加(たとえば、他の携帯電話が繋がらなくする機能を持った携帯電話。これを使うと、たとえば劇場で誰かの携帯電話のベルがなってしまうことを防ぐことができる)。→⑥特権的指標、快適さ、豪華さなどの機能の追加。→⑦何らかの有害な特性の有益機能への転換。→⑧特定のユーザー向けに特殊な機能を持ったシステムの創出(たとえば、子供用携帯電話、聴力や視力が弱い人用の携帯電話、など)、のように進みます。

 

「(3)補助機能の追加」の進化のラインでは、システムが改良される過程で次のような補助機能が追加されてゆきます。①位置決め、接続、など(たとえば、フレーム、基盤、ワイヤーハーネス、ケーブルコネクタなど)。→②輸送、倉庫、保管、など(たとえば、自動車のトランクルーム、ウインドグラスの収納スペース、パーキング・ブレーキ、ドアロック、など)。→③ユーザーに合わせる機能(たとえば、運転席のシートの調整、ステアリングコラムの調整機構、など)。→④操作を助ける機能(たとえば、パワステ、パワーブレーキ、など)。→⑤システムの制御をしやすくする、計測、情報処理機能(たとえば、燃料計、次回燃料補給までに走行可能な距離の表示装置、など)。→⑥重要な事象についての警告機能(たとえば、着氷による滑り警告、シートベルト未着用警告、反ドア警告、など)。→⑦システムが有効に稼働するようにする準備機能(たとえば、大型トラックの燃料予熱装置、など)。→⑧有害な作用を排除するための修正機能(たとえば、排気ガスの一酸化炭素を炭酸ガスに変える触媒装置、PMを除去するアフターバーナ等の排気浄化装置、など)。→⑨有害な作用の発生を回避する保護・救済機能(たとえば、自動車のシートベルト、バンパー、飛行機のパラシュート、など)、のように進みます。

 

「(4)付属機能の追加」の進化のラインでは、システムが改良されてゆく過程で、次のような付属機能が追加されます。①ユーザーの学習と訓練(たとえば、マニュアル、インストラクション、パソコンのヘルプ機能、など)。→②同時に複数の有益機能を行う可能性(たとえば、運転中に安全に通話ができる自動車電話、など)。→③快適さを増す機構(たとえば、自動車の座席の暖房・冷房、エアコン、など)。→④豪華さ、特権的指標、富かさを示す指標、など(たとえば、ダイアモンド付きの時計、など)。→⑤基本機能を実行しながら娯楽や、楽しむことを可能にする機能(たとえば、カーラジオ、カーステレオ、など)。

 

「(5)機能の改良」の進化のラインでは、システムの機能の質は何らかの特性値あるいは性能によって判定されます。こうした特性値・性能はシステムが進化してゆく過程で比較的急速に変化してゆきます。機能の質を表す一般的な指標には以下があります。①ユーザー満足の改善。システムの機能に満足している人の数、あるいは、彼らの満足の度合いの増加。→②資源活用効率指数の向上(この指数は使われた資源の中でどれだけが実際にシステムの機能となったかを示すといえます。この指標を更に具体的に示すと、たとえば、a.人の時間、労働の活用効率指数:システムの有益機能によって現実の便益を得るためにユーザーがどの程の時間、努力、精神的エネルギーを使う必要があるかを左右する指数です。(ここには、そのシステムがどうすれば働くのか、どのボタンを押せば良いのか、などを理解するための時間・労力も含まれます)。b.エネルギー活用の効率指数:システムが使うエネルギーのうちどれだけの部分が 有効に使われているのかを示します。c.材料の活用効率指数。d.空間の活用効率(たとえば、農地、生産スペース、オフィス、家庭、その他の空間)。e.時間の活用効率(たとえば、システムが機能を発揮している時間と、システムの全生産サイクルとの比率)。→③システムを使う代償の比重の低減(システムの有益機能とそれを得るための代償として受け入れなくてはならない有害なあるいは望ましくない作用・影響との間の比率)。

 

「(6)ユーザーの期待と満足度の変化」の進化のラインでは、システムが進化する過程ではユーザーの側も変化してゆきます。市場の5%位の新しい物好きで何でも試してみる人たちから始まり、やがて、保守的で新しい物は大多数に受け入れられてから買う人々へ移ってゆきます。実際は、進化のどのステップにもこの2つの傾向の間の拮抗関係が観察されます。満足感の向上という視点でいえば、①システムが流行の対象となり、多くの人々に受け入れられる(正のフィードバックの発生)。→②更に洗練された改良型システムの登場(新しいデザインと品質の向上)。→③製品ラインやサービスの多様化。→④システムの操作の容易化(ユーザーに対応して変化する製品の開発)、のように進みます。満足感の減少(期待の増大)という視点でいえば、①大衆の好みの変化(システムは流行遅れになる)。→②システムへの慣れ(ワクワク感の喪失)。→③システム全てに共通する機能や、誰でもが習慣的に行う使い方が無くなってゆく(この傾向は、進歩して使いやすくなった改良品が登場しても進んでゆく)。→④近似あるいは類似機能を持ち、より洗練された新システムの登場(これによって、ユーザー側に新しい期待が出現する)、のように進みます。

 

「(7)システムの基本有益機能の発展」の進化のラインでは、①ある基本有益機能を持ったシステムの創出。→②システムが散発的に他の用途に使われる(システムを使ったり試したりする過程で新しい使い方が発見される)。→③当初と異なる他の基本有益機能を目的とするシステムの変形の創出、のように進みます。

 

「(8)専門化と汎用化」の進化のラインでは、専門化によってシステムの機能の幅が狭まりますが、その代わりに、その幅の範囲での性能が向上し、使いやすくなります。他方、汎用化は幅広い用途を可能にします。「専門化と汎用化」という進化のラインは、ユーザーのニーズに対応して、逆の方向に向けてそれぞれ理想性が向上することを示唆しています。専用化という視点でいえば、①ある基本有益機能を持ったシステムの創出。→②システムが様々な用途で特殊な使い方をされる。→③一群の専門化したシステム・バリエーションの創出。→④関連する他の専用システムの機能を取り込んだシステムの創出、と進みます。汎用化という視点でいえば、①それぞれが特定の機能を持った一群の専用システムの並存。→②関連する他の専用システムの機能を取り込んだシステムの創出。→③部分的汎用化。専門化したバリエーションの間で共通する機能について 一部互換性が発生。→④汎用システムの創出(多くの場合、当初のシステムと異なる新しい物理的原理に基づくシステム)、のように進みます。

 

「(9)システムの機能の進化」の進化のラインでは、①純粋にシステムの基本有益機能のみ実現する。→②基本有益機能の実現を促進する、システムの維持、使用上の快適さ便利さを向上する、制御、診断を可能にする、保護する、といった目的を持った補助機能の出現。→②システム(の作用)に関連する有害機能等への対処(対策する機能の追加)。→③ 付属的(二次的)有益機能の出現。→④システムに存在する機能の資源の発見と活用。→⑤快適機能や豪華機能の出現、のように進みます。

 

「(10)システムの基本有益機能の発展」の進化のラインでは、①基本有益機能のみ(ある基本有益機能を目的とするシステムの創出)。→②基本有益機能の逆の機能の追加(例:自動車のブレーキ)。→③基本有益機能と逆の機能との間に動的なバランス(変化する相互関係)の導入(例:電車のモーターを逆転させるリターダ・ブレーキ)。→④基本有益機能と逆の機能とのバランス関係の制御(例:ハイブリッド・カー)、のように進みます。

 

「(11)機能の分散(分担)」の進化のラインでは、①1つしか機能をもたないシステム。→②複数の異なる機能をもつシステム。→③様々な機能をシステムの様々な部分に配分(それぞれの部分がそれぞれの機能を分担する)。→④様々な機能を複数の独立したシステムに分散。あるいは、システムが持つ機能のいくつかを他のシステムに移転、のように進みます。

 

「(12)機能の細分化」の進化のラインでは、①ある基本有益機能を目的としたシステムの創出。→②ほとんどの補助機能を人が実行する。→③使いやすさや性能を向上させる補助機能の自然発生的な増加。→④補助機能の実現をサポートする一連の下位機能(装置、など)の出現。→⑤補助機能を実現する組み込み形式の下位システムを持った当初のシステムの新世代が出現。→⑥ほとんどの補助機能を必要としない当初のシステムの新世代の出現、のように進みます。

 

「(13)快適機能の進化」の進化のラインでは、ものの視点でいえば、①システムに内在する不便さの排除。→② 新たな快適さの追加(a.様々な条件でシステムを使うことに関連するもの、b.システムを使う準備や使用後の後始末を簡単にすることに関連するもの、c.補助機能の実現に関連するもの、d.移動、輸送に関連するもの)。→③豪華機能の導入、のように進みます。ユーザーにとっての視点でいえば、①すべてのユーザーにとっての便利さの提供。→②特定のタイプのユーザーに対応させた特別な便利さの提供。→③特定のユーザー(個人など)に対応させた特別な便利さの提供、のように進みます。

 

「(14)豪華機能の進化」の進化のラインでは、①ある基本有益機能を持ったシステムの登場。→②当該システムに豪華機能を導入(a.特定の働きを持った豪華機能。b.特定の働きを持たない豪華機能、c.働きを持った豪華機能の量産システムの標準的補助機能への転換)。→③働きを持たない豪華機能の排除、のように進みます。

トヨタの「主査制度(チーフエンジニア制度)」

トヨタが儲かっている最大の理由は、運転資金を最小化する「トヨタ生産方式」ではなく、製品開発部門が売れる商品を市場に投入できる「リーン製品開発方式」にあるといわれています。

 

「リーン製品開発方式」には、構想段階で多くの代替案を並行検討し、徐々に絞り込み、最終的には1つの案に集約する「セットベース開発」、社内の知恵を伝承する「A3報告書」、担当する車種に関してのすべての事柄に責任をもつ「主査制度(チーフエンジニア制度)」、の3本柱があるといいます。

 

このうち前ニ者は、技術的な内容であり、「リーン製品開発方式」(アレン・ウォード・デュワード・ソベック著、稲垣公夫訳、日刊工業新聞社発行)や「トヨタ式A3プロセスで製品開発」(稲垣公夫・成沢俊子共著、日刊工業新聞社発行)に詳しい説明が記載されていますので、自分の部署の活動に取り入れることを検討することが比較的容易かと思います。

 

これに対して「主査制度」は人や組織の問題なので、すぐに採用できるようなものではありません。部外者がトヨタの「主査制度」を知るうえで好適な資料としては「ドキュメント トヨタの製品開発」(安達瑛二著、(株)白桃書房発行)ではないでしょうか。

 

タイトルに「ドキュメント」という修飾語がついているとおり、著者自身が実際に関わったマークⅡ(第三代、MX30,第四代、GX60)、チェイサー(初代、MX40,第二代、GX60)、クレスタ(初代、GX50)、コロナ(第七代、RT140,第八代、RT150)の製品開発の実体験にもとづいて実際の製品開発と設計についての内容が具体的に詳しく記載されています。

 

序章では、一人の製品企画室主査に担当車種に関する全守備範囲を委ね、全決定権と全責任の所在とを一元化する独自の製品開発体制である「トヨタ主査制度」について説明されています。

 

そこでは、主査(1990年代から「チーフエンジニア」と名称が変更されている)が、担当車種に関する企画(商品計画、製品企画、販売企画、利益計画など)、開発(工業意匠、設計、試作、評価など)、生産・販売(設備投資、生産管理、販売促進)の全般を主導し、その結果について、すべての責任を負う人であることが明記されています。

 

本文では開発車種に関して必要となる他部門との打ち合わせ内容が詳しく記載されており、実際に製品開発を経験したことのある者にとっては、自分の経験と重ね合わせることでその場面のイメージがリアルに伝わってくるため、主査の疑似体験をすることができます。

 

主査は、顧客ニーズ、市場競合性、市場品質問題、技術動向、社内外開発能力など、さまざまな制約条件を満たした上で、売れる製品を開発することが目標ということです。

 

主査の担当分野が技術分野にとどまらないことから、「トヨタ主査制度」がプロジェクト・マネージメントやプロダクト・マネージメントとも違う独自の職制であることがわかります。さらに、「担当車種に関しては、主査が社長であり、社長は主査の助っ人である」という豊田英二社長の言葉が意味するように、その職責の大きさからして、天才級の人材でないと務まらないでしょう。

 

主査制度は、1953年、当時トヨタ自動車株式会社の常務であった豊田英二氏らが中心となって始めたとされています。また、初代主査は、初代クラウンを担当した中村健也氏(後のトヨタ自動車技監)であり、制度の発案者は長谷川龍雄氏(後のトヨタ専務取締役)ということです(「タレントの時代」、酒井崇男著、講談社現代新書)。

 

初代パブリカと初代カローラの主査を務めた長谷川龍雄氏は、東大工学部航空学科を卒業した後戦前から終戦まで立川飛行機で戦闘機の主任設計者を務めていたといいます。

 

重要なことは、主査制度の中で活躍する人材がどういった能力を持った人物かを見極めることであって、単にその制度だけを真似たところでうまく機能しないのは明らかです。

 

ソニーを創業した盛田昭夫・井深大氏、ホンダを創業した本田宗一郎氏、トヨタを創業した豊田喜一郎氏、アップルのスティーブ・ジョブズ、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ、ツイッターのジャック・ドーシーなど、優れた創業者は、製品開発の中心にいました。なぜなら、創業したばかりの企業の成功は、新製品開発の結果次第だからです。

 

トヨタの主査制度は、モノづくり企業において、創業者のような経営感覚を持った売れるものが作れる製品開発責任者を実現するための制度ではないでしょうか。

特定的な進化のライン

米国のアイディエーション・インターナショナル社が制作したDirected Evolutionソフトウェアでは、「特定的な進化のライン」には、(1)消費財の進化、(2)システムの歴史における市場の変化、(3)計測システムの進化、(4)情報資源の利用、(5)道具の進化、(6)道具に対する被処理物のマッチング、(7)製造プロセスの簡素化、(8)運搬と処理のリズムのマッチング、が記載されています。

 

「システムの歴史における市場の変化」の進化のラインでは、①ほぼ偶然的な市場の始まり→②いくつかの異なる市場の発生(ほぼ最初といえる市場)→②´当システムの特別な才能と有望な適用分野の露呈→③当システムに最適な市場の形成、または→④いくつかのニッチ市場への積極的な展開(④a.他の市場への浸透、④b.市場の特別なセクターへの分裂)→⑤市場展開の安定化(市場が自然に拡大していく)、といったラインに従います。

 

「計測システムの進化」の進化のラインでは、①良好な認識可能な場を持つ物質の導入(磁石、着色剤、発光剤、強い臭気剤、など)→②既存の場を変更する、既存の場を別の場へ変換する、または別の場を生成することができる特別な物質の導入(歪ゲージ変換器、バイメタル、感熱塗料、液晶、熱電対、発光材剤、感光剤、色変化物質、など)、といったラインに従います。

 

「情報資源の利用」では、システムが進化する際に使用されるシステムに関する付加的な情報資源のとして以下のような種類が挙げられています。
(1)現在の情報資源
① 物質の特性
② 物質の可変的な特性
③ 消散するエネルギー場(振動、音、光、熱、電磁放射など)
④ システムからの物質又はエネルギー場の流れ
⑤ システムに吸収される物質又はエネルギー場の流れ
⑥ システムを通過する物質又はエネルギー場の流れ
⑦ 当システムが他のシステムに与える変化
⑧ 他のシステムからの影響
(2)過去の情報資源
① システムの過去の進化や変化の情報
② ある出来事(市場変化、新技術、新規制など)に対するシステムの反応の情報
③ 当システム又はシステムのクラスと関係のある既知の進化のパターンやトレンド
(3)一般的な情報資源
① 一般的な科学知識
② 当システム、サブシステム、スーパーシステム、機能、用途などと関連のある特
許及び科学的な出版物
③ 物理、化学、幾何学、生物学などの分野の効果
(4)他システムの情報資源
① 他システム(類似システム、反対機能のシステム、当システムと相互作用するシ
ステムなど)の機能 及び/又は進化の情報
② 当システムの機能及び/又は進化を明らかにする物理的、論理的、数学的などの
モデル

 

「道具の進化」の進化のラインでは、①1つの特定機能を果たすための道具を作る→②道具を改良して、機能を果たす性能を高める→③道具が、その主要機能を改良する補助機能を持ち始める→④道具の新機能が発明される→⑤道具の汎用化:その機能バリエーションの拡大→⑤´道具の専門化:その機能範囲の絞り込みと性能の質と効果の向上、といったラインに従います。

 

「道具の進化」の進化のラインの例には、①ドリルビット→②超硬チップを持つドリルビット→③バリ取りカラーを持つドリルビット→④冷却液が流れる孔を持つドリルビット→⑤いろいろな径の穴が明けられる径可変ドリル→⑤´ガンドリル加工(深穴加工)用のドリル、などが挙げられます。

 

「道具に対する被処理物のマッチング」の進化のラインでは、①既存の道具によく適応した物質(被処理物)を使う(①a.処理性能を決めるパラメータ(硬さ、温度、化学組成など)について、被処理物と道具の間のマッチングを変更する、①b.エネルギー場で制御できる物質を使う、①c.臨界状態、相移転などが起きやすい物質を使う)→②道具を事前に調整して、道具によく順応した状態にする→③トリガー的効果、エネルギーの蓄積と開放などの非線形特性を持つ「スマート物質」を使う、といったラインに従います。

 

「道具に対する被処理物のマッチング」の進化のラインの例には、①a.鋼の種類を様々な機械切削加工にマッチさせる、すなわち、様々な回転切削加工にビスマス快削鋼を用いる、①b.機械加工時の部品保持のための電磁チャック、①c.感光材料:オーテスナイトからマルテンサイトへの遷移中に金属が通常より大きく展延可能になる超可塑状態がある→②ゴムやウレタンを加工前に凍らせる(金属やプラスチックをプレス前に加熱する)→③形状記憶合金、爆発物、キャパシター、ゴムなど、などが挙げられます。

 

「製造プロセスの簡素化」の進化のラインでは、①補助的作業の除去(準備、修正など)→②主要作業の数量の削減→③並行作業の利用、といったラインに従います。

 

「製造プロセスの簡素化」の進化のラインの例には、①かんばん方式で在庫を減らす→②切削、穴あけなどを別個に行う代わりに、プレス加工を行う→③セル生産方式の作業員が一人で数台の機械を並行して動かす、などが挙げられます。

 

「運搬と処理のリズムのマッチング」の進化のラインでは、①運搬と処理動作が適合してない→②速度のマッチングにより、運搬と処理動作が適合している→③速度をマッチングさせることで、運搬と処理動作が適合している、といったラインに従います。

 

「運搬と処理のリズムのマッチング」の進化のラインの例には、①部品がコンテナで処理機械へ運び込まれる(バッチ搬送)→②部品の流れ制御の下で処理機械へ運び込まれる→③処理作業が部品の動きに連動する、などが挙げられます。