戦略的に技術システムを将来世代へ発展させるための系統的なプロセスである、DE(Directed Evolution:方向づけられた進化)は、弁証法との整合性を持ちつつも、従来の技術予測とは一線を画したものであって、未来の新製品開発や新規事業の企画のための意思決定の方法論です。
今回は従来の技術予測方法である未来学とDEとの関連性について見ていきたいと思います。
未来学は、歴史上の状況を踏まえて未来での物事がどう変わっていくかを詳細に調査・推論する学問分野であり、1940年代中盤にドイツ人教授Ossip K. Flechtheiによって提唱されました。
その後、1960年代に学際的な性格なものに発展し、現在ではアメリカ合衆国等で学生が長期的なものの見方ができるような概念・ツール・プロセスを学習させるために使用されています(Wikipediaより)。
未来学では、以下の6つを前提としています(「未来を変えるちょっとしたヒント」、小野良太著、株式会社講談社発行)。
1.時は、絶えず一方向に流れており、逆戻りしたり堂々巡りはしない。
2.未来には、過去や現在に起こったことのないことが必ず起こる。
3.人は、今から先のイメージを持ってはじめて行動できる。
4.様々な知識の中で、未来に関する知識がもっとも重要である。
5.未来は、すでに決まっているわけではなく開かれている。
6.個人や集団の行動によって未来は創られる。
これらの前提の中で、興味深いのは4番目の「未来に関する知識がもっとも重要である」という点です。これは、未来を考察するには、過去や現在の知識だけではなく、未来の状況や状態に関するより広範な「未来の知識」が必要になってくるという意味です。
そこで、未来学では、「未来の知識」として示すために、未来の社会やその状況は過去や現在との「類似の部分」とまったく「新しい部分」とから構成されると考え、その「類似の部分」については多くの学問分野に存在する知識を演繹的に活用して明らかにしようとします。
一方、未来の「新しい部分」を考察するには、人間が持っている、未来の事柄を思い描く力である想像力を使うということです。
つまり、未来学では、過去や現在の類推で考えられる部分には既存の知識を演繹的に応用し、まったく未知の部分には想像力を働かせて、総合的に未来の知識を創造することになります。
既知の知識を演繹的に応用し、未知の部分には想像力を働かせるという点では、DEも同じです。
DEでは、まず、生活、社会、市場等のトレンドから製品やサービスの大きな方向性を見出そうとします。
その上で、究極の理想解(あるべき姿)を描き、進化のパターンやTRIZの問題解決手法を使って、未来の製品やサービスのコンセプトを創造するといった方法を採用しています。
その過程では、当然に未来学の6つの前提のすべてを考慮することになりますが、DEでは具体的な製品やサービスのコンセプトを創造することを目的としているため、発明的な思考を取り入れた手法となっています。