I-TRIZの基本ソフトであるIWB(Innovation WorkBench)には、異なる技術分野の先人の知恵をデータベース化したIPS(Inventive Problem Solving)用のオペレータ・システムが組み込まれています。
IPS用のオペレータ・システムは、
(1)汎用オペレータ(どのような状況にも適用できる汎用性の高い方法)、
(2)一般オペレータ(機能を改良して、望ましくない作用を排除するための方法)、
(3)専用オペレータ(製品やプロセスの特定の特性を改良するための方法)、
(4)補助オペレータ(主要な方法を更に改善し、実現性の高い物とするための方法)、
(5)進化のパターン/ライン(I–TRIZの進化のラインに基づいて製品やプロセスを改良するための方法)
から構成されています。
ところで、IWBではオペレータを使う前に問題を分析する段階があり、プロブレム・フォーミュレータ(PF:Problem Formulator)を使って、有益機能(望ましい機能)と有害機能(望ましくない機能)との因果関係の連鎖で表現した因果関係ダイヤグラムを作成します。
そして、問題を解決する段階では、因果関係ダイヤグラム上に記載されている有益機能または有害機能のうち、問題を発生している原因と思われる特定の機能に着目して、その機能またはその機能に関係している他の機能に何らかの変更を加えることになります(場合によっては、機能は変更せずに、問題のある機能が連鎖しているリンク(因果関係を表す関係線)を排除するアイデアが問題解決に有効なこともあります)。
IWBでは、因果関係ダイヤグラムを作成する問題解決に関連する有益機能または有害機能が記載されているボックス(枠線で囲まれた領域)をクリックすると、問題解決のための指針(課題)が文字で表示されます。
指針をクリックすると、その課題を実現するためのアイデアを考えるためのオペレータ(解決ヒント)が自動的に提示されます。
提示されるオペレータは、選択したボックスの種類によって3種類に分類されます。
(1)有害機能(赤色)のボックスを選択すると「有害機能を排除、軽減、防止する」オペレータが、
(2)有益機能(緑色)のボックスを選択すると「有益機能を改良する」オペレータが、
(3)矛盾(黄色)のボックスを選択すると「矛盾の解決」オペレータを見ることになります。
提示されたオペレータを順に読んでいき、その考え方を問題のシステムに当てはめてみることを繰り返して、ブレーンストーミングによる発散思考を行うことで、たくさんのアイデアを得ることができます。
オペレータはいろいろな技術分野で適用できるように、そのタイトルや解説が抽象的なものになっています。また、補足として具体的な過去の事例の説明がありますが、そこで得られる事例は、ほとんどが自分の問題とは直接関係のない技術分野のものです。
そのため、初めての人はオペレータを使ったブレーンストーミングに戸惑いを感じます。自分の問題を解くのに、わざわざ異なる技術分野の知識を使わなければならないからです。
これを類比思考といいますが、他人が思いつかないようなアイデアを発想するためには必要なテクニックといえます。
そもそも、TRIZを使う理由は、自分の技術分野の特許や論文を調べても問題を解決するアイデアが得られなかったからでしょう。ということは、自分の技術分野以外の知識を使うしかありません。
I-TRIZでは、異なる技術分野の先人の知恵を有効活用できるように、統一されたタイトル(約500)のもとに体系化されたオペレータ・システムを使うことで、手ごわい問題を効率的に解決できるようにしています。
是非、類比思考に挑戦してみてください。類比思考によるアイデア発想のコツは、オペレータの知識を自分の問題に沿って読み替えることです。
以下の例を参考にしてください。
【問題】
建造物の外面に貼り付けられた貼紙は、剥がすのが困難です。何かよい方法はないでしょうか?
【オペレータ】
「事前の逆の作用」のオペレータ
解説:望ましくない作用を実行しなければならない場合や、望ましくない作用を回避できない場合は、逆の作用を事前に実行してみてください。
(読み替え)
建造物の外面に貼紙を貼り付けられるおそれがある場合は、事前に、貼り紙を貼り付けることができないようにするか、すぐに剥がせるようにしておいてください。
【解決策】
貼紙が貼付される可能性のある壁面に、無機または有機ベースのワックスにシリコンとアルコール水溶液を入れたものを塗布します。
壁面の外観は変わりませんが、貼紙は簡単に貼り付けることができません。
貼り付けることができたとしても、貼紙は簡単に剥がすことができます。