I-TRIZを活用されている方々から、アイディエーション社の発明的問題解決(IPS:Inventive Problem Solving)で使用される「オペレータ」というツールは、表現が抽象的でわかりにくいというご指摘をいただきます。
一般には、オペレータというと、機械を操作・運転する人という意味があります(「大辞林」第三版、三省堂発行)が、そもそも、問題解決で「オペレータ」とは何か?
実は、このネーミングには、それなりの意味があります。
発明的問題解決(IPS)で使用される「オペレータ」とは、アルトシューラが作り上げた膨大な体系からなる古典的TRIZの知識べースを、一般の研究者、技術者にも使用しやすいようにアイディエーション社が作り直したものです。
発明的問題解決(IPS)を使ってアイデアを出す際に、その考え方のヒントを与えてくれるものが「オぺレータ」です。
アイディエーション社では、アイデアとは「資源を変更すること」であると考えます。
TRIZでは、資源とは問題解決に使用できるすべてのモノ、コトをいい、具体的には問題を抱えているシステム(装置やプロセスなど)の中にあるモノ、コトやシステムの周辺にあるモノ、コト(環境を含む)をいいます。
それらの資源をどのように変更することによって問題解決を図るのか?という質問に対する答えがアイデアということです。
資源を変更すること、つまり「資源を操作する」方法をたくさん集めたものが「オペレータ」というものです。
アルトシューラは、世界の約20万件の特許のうち、発明的といえる水準にある約4万件を対象に詳細な分析を行った結果、全く同一の基本的問題(矛盾)が様々な技術分野で何度も繰り返し取り上げられ、そして解決されてきたことが明らかになりました。
このように繰り返して使われる解決策の原理(発明原理、分離の原則、発明標準解、進化の法則など)に、アイディエーション社がその後200万件以上の特許の分析を行った結果を加えて、約500種類の体系に整理したものが発明的問題解決(IPS)で使用される「オペレータ」です。
あらゆる技術分野の解決策の原理を約500種類にまとめてしまったわけですので、その表現が抽象的なのは当然です。
たとえば、「有害機能を排除、軽減、防止する」オペレータの一つの「システムを有害な影響から隔離」というオペレータには、「分離物質の使用」、「液体の導入」、「透過による選択分離」、「破壊しやすい中間層の使用」、「有害作用の原因を使用」、「一定期間の“保護”」の6種類のより具体的なオペレータがあります。
ここで、「分離物質の使用」というオペレータを見てみると、「分離物質を導入することによって、障害からシステムまたはプロセスを分離することを検討してください。」という説明がなされています。
つまり、ここには資源を変更する方法が記載されているので、問題を抱えているシステムの中やその周辺にある具体的なモノ、コトを「分離物質を導入することによって、障害から分離する」ことを考えて(想像して)みます。
その結果、よいアイデアが生まれれば問題が解決します。アイデアがでなければ、推奨されている他の5つの「オペレータ」を順に参考にしていきます。
実は、自分が取り組む問題の状況がはっきりわかっているならば(何をすればいいのかがわかっているならば)、「オペレータ」を使用する必要はありません。「革新ガイド」というツールを使って、すでに蓄積されているたくさんの発明情報に直接アクセスすればいいのです。
たとえば、「あるものを移動すればいい」、「あるものを加熱すればいい」がその具体的な方法がわからないという場合には、「革新ガイド」の「資源を生成・変更する」という項目の中の「対象物の移動」を選択すると、「重力、圧力、押しのけ浮力、強磁性の液体、電磁力、熱膨張、爆発、磁気ひずみ、圧電効果」を使った移動方法が参照できます。また、「対象物の加熱」を選択すると、「発熱反応、燃焼、対象物に電流を流す、対象物に電気誘導 、予熱ある伝達剤の使用、対象物の空力抵抗の使用、気体の圧縮、放射を対象物表面に集中」を使った加熱方法が参照できます。