問題とその解決方法の種類

ビジネスやマーケティングの世界では、問題とはある時点での現状と理想とのギャップのことであるとされています。
理想は望ましい状態であり、現状は望ましくない状態のことと考えれば、問題解決とは望ましくない状態を望ましい状態に変えることになります。
望ましい状態を目標といいます。一般に理想とは、考え得るもっとも完全な状態のことをいいますが、実際の問題解決の場面で考える理想とは達成すべき状態のことをいいますので、目標は達成できたか否かが客観的に判断できる内容でなければなりません。
そのため、目標という場合には定量的な目標値を決めることが普通です。たとえば、「今年度の目標は売上高を前年度より25%増加させることである。」というような表現になります。
目標を達成するための問題解決には、マイナスの状態の現状を正常な状態に変えることと、正常な状態の現状をよりよい状態に変えること、の2種類が考えらえます。
前者は、不具合がすでに顕在化している問題に対して、問題の原因を明確にして、その原因を取り除くことで問題解決を図る方法が考えらえます。これは現状回復型または原因追究型というものです。
後者は、今よりもっとよくすることができる改善の余地のある問題に対して、必要とされる新たな機能を実現する手段を開発したり、本来のあるべき姿としての理想状態を追求することで問題解決を図る方法が考えられます。これは機能開発型または理想追求型というものです。
現状回復型または原因追究型の問題の場合には、望ましくない結果(問題点)の分析から取り組みます。つまり、最初に原因追及を行います。
不具合はいろいろな原因の連鎖の結果として生じていますので、まず、個々の原因を裏付けるデータを収集しなければなりません。そのため、複雑な問題の場合には、問題の発生メカニズムを見つけるのには相当の時間が必要になります。
I-TRIZでは、複雑な問題の発生メカニズムを効率的に発見する方法として不具合分析(FA:Failure Analysis)という手法を使用します。
不具合については誰もが公表したがらないという事情があり、不具合に関する情報が少ないことが不具合に関する問題のメカニズムを発見しにくくしている理由といえます。不具合分析(FA)では、「どうして不具合が起きたのか?」と考える代わりに「どうしたら不具合が起こせるか?」と考えます。つまり、「不具合の問題」を具体的な手段に関する情報が豊富な「発明の問題」に切り替えることで、不具合の発生メカニズムを発見しやすくしようとします。
機能開発型または理想追求型の問題の場合には、目的とする機能を実現するために必要な条件を明らかにして、その条件を満足する手段を考えることで今までにない新しいシステムを構築することになります。
この新しいシステムを構築する問題の場合には、実現可能なあるべき姿(目的とする機能)を定義することから取り組みます。つまり、最初に目的展開を行います。
目的展開は上位の目的から下位の目的までの階層関係を明らかにし、現状の一歩先にある上位の目的をターゲットとするために行います。最上位の目的はビジョンに近い表現になり、最下位の目的は日常茶飯事の当り前の表現になりますので、ターゲットとする目的は丁度中間に位置する目的の表現が選択されます。
実は、第3の問題があります。未だ不具合が顕在化していないが放置しておくことで将来不具合が発生するおそれがある問題に対して、不具合が発生することを防止する問題解決が考えられます。これは問題予防型というものです。
I-TRIZでは、潜在的な不具合を効率的に発見する方法として不具合予測(FP:Failure Prediction)という手法を使用します。
不具合予測(FP)では、不具合分析(FA)と同様に「不具合の問題」を具体的な手段に関する情報が豊富な「発明の問題」に切り替えることで、不具合を予測しやすくしようとします。
具体的には、対象システムの中の弱いゾーンや危険なゾーンを特定し、それぞれのゾーンに関して、そのゾーンの「弱さ」の原因となっている有益機能/動作、そのゾーンを危険なものとしている有害機能を、不具合の「焦点」(通常複数)として選択します。
すべての「焦点」について、関連付けることのできるすべての不具合を予測し、それらを取り除いてしまえば、このシステムは「実際上」安全と見なすことができます。その結果、これによってシステムに影響を及ぼす可能性を持った潜在的な不具合を取り除いたことになります。

TRIZの歴史とI-TRIZの手法との関係

日本の企業で最もよく使用されている古典的TRIZのツールは「40の発明原理」です。「40の発明原理」はアルトシューラの1973年に発表された論文「技術的矛盾除去の模範的方法」に記載されています。同時に「40の発明原理」を使用するための補助ツール(一般に矛盾表と呼ばれています。)も「技術的矛盾除去方法の適用表」として発表されています。
ARIZ-71(TRIZを使用する際の手順書の1971年度版)では、分析作業の過程で操作空間とその空間に求められる互いに矛盾する2つの要請(物理的矛盾の原型)が特定されました。また、1975年に技術的矛盾の背後にあるより一般的な物理的矛盾の概念が導入され、
発明的問題解決のすべての操作は、「物理的矛盾」を定式化し、それを解消することであるとしました。ARIZ-77では、物質場分析の5つの標準が開発され、発明標準解の概念が導入されました。(以上、「V.M.ペトロフ『TRIZ発展小史』、「TRIZ塾」ホームページを参照のこと)。
1985年には、アルトシューラが第一線で活躍していた公式バージョンとしては最新(最後)のARIZ-85Cが発表されました。ARIZ-85Cでは、「技術システムの進化の法則」の構造に対応して5つのクラスに組織化された「76の発明標準解」が含まれています。
アルトシューラは、物理的矛盾の発見に先立ち、「(技術的矛盾を解決するための)発明原理から優れた解決策が得られるのは、発明原理を一つだけ独立して使うのではなく、ある原理とその逆向きの原理とのペアで適用するときである。」ことに気づき、「物理的矛盾の特定とその克服とは単なる問題解決の方法ではない。これは、技術システムの進化において客観的に不可欠なステップである。」、「物理的矛盾はそれを克服する方法(技術システムを変化させる操作(オペレーション)と有機的に結びついている。」との考えに至ったということです(「物理的矛盾とその解法」、黒澤慎輔、第7回TRIZシンポジウム)。
以上のように、ARIZは技術的矛盾から物理的矛盾への移行、物理的矛盾の克服(分離の原則)、物質場分析と発明標準解、技術システムの進化の法則を統一的に取り扱うことで発展してきました。そして、ARIZは標準的な解法、つまり発明標準解の適用によって歯が立たない問題の解決に使用するという位置づけが明らかにされました。
少なくとも、古典的TRIZの最終版であるARIZ-85Cは、非標準的な問題状況の背景にある物理的矛盾を明らかにして、その矛盾を克服する方法を発見するための手順だといえます。
I-TRIZでは、問題状況が明確な標準的問題の場合には、「問題状況の把握」の段階で直接「標準問題のオペレータ」が使用できるようになっており、煩わしい他のツールを一切使うことなしに問題解決が図れるようになっています。
技術的矛盾や物理的矛盾といった矛盾の定義をする必要はありません。どのような問題なのかという問題の種類がわかれば、その問題を解くためのヒントが得られます。
ちなみに、I-TRIZでは標準問題として、(1)生産性を改善する、(2)利便性を改善する、(3)信頼性の向上、(4)機械的強度を改善する、(5)製造精度を改善する、(6)コストを低減する、(7)単純化、(8)重量を軽減する、(9)エネルギー消費を低減させる、(10)浪費時間を減少させる、(11)機能効率を向上させる、(12)変形、ずれ、衝撃、振動、破壊を抑制する、(13)騒音を低減させる、(14)摩耗を低減させる、(15)汚染を軽減する、(16)過熱を回避する、(17)環境との相互作用を減少させる、といった項目をあげています。
「標準問題のオペレータ」では歯が立たないような複雑な問題の場合には、I-TRIZの思考プロセスに従い、(1)システムアプローチによって利用できる資源を把握し、(2)プロブレム・フォーミュレーションによって資源の因果関係を明らかにして、(3)システムの矛盾を明らかにしたうえで、「矛盾解決オペレータ」、「有害機能の排除オペレータ」、「有益機能の改良オペレータ」を使用して、対象システムを確実に進化させる解決策を求めることを考えることになります。

類似システムの知識を活用する

I-TRIZの基本ソフトウェアであるIWB(Innvation WorkBench)には、TRIZの基本である異分野の知識を活用して問題解決をする簡単な方法が示されています。
ここでは、IWBに掲載されている事例に沿ってその手順を説明します。
例によって、ソフトウェアからの質問に答える形で進めていきます。
事例:永久凍土地帯での建物は多数の杭を打った上に建てなければなりません。杭が必要な深さまで打ち込まれたことを確認する作業は測量装置を使って人力で行います。冬には気温が-50℃まで下がるので、測量は大変な作業になります。このような、極寒の地で多数の杭の測量をする効率的に行う方法はありませんでしょうか。
(1)類似の問題を抱えた他のシステムの見つけてください。
丸太を無蓋車に積んで輸送するにあたって丸太の体積を計算するために太さを測定しなければなりません。この作業は手間のかかる作業なので、丸太の輸送が遅れます。
(2)その問題は解決されましたか?そうだとすれば、どのようにですか?
貨車に積んだ丸太の写真を撮影します。丸太のサイズは後で写真上の太さに基づいて計算することができます。
(3)その解決策をあなたの問題に適用できますか?それが不可能だとしたら、なぜですか?
この方法を応用して、杭の打ち込み深さを測定する問題を解決するアイデアが得られました。地上に出ている杭の頭の写真をいくつかのアングルで撮り、次に、写真に写った杭の頭の長さを測ります。
(4)あなたの問題にその解決策を適用するためには、付随する二次的な問題を解決しなければならないとすれば、その問題はどんな問題ですか?
事例の類似システムとして選択した「丸太の太さを測定する方法」では、二次的問題がないためここでの検討は必要ありません。
もし、二次的問題がある場合には、以下のような二次的な問題に取り組む手順に従います。
二次的問題を解決するには、(1)標準問題のオペレータの中に該当する項目があれば、そのオペレータを適用します。(2)標準オペレータに該当するものがなければ、二次的問題用のテンプレートに沿って二次的な問題を定式化して、そこで提示されるオペレータを検討します。(3)また、当初の因果関係ダイヤグラムに二次的問題を書き加えて、新たに書き加えたボックスを選択して、ソフトウェアからブロックに関連する解決指針を得て、提示されるオペレータを参考にしてその指針に沿った実現策を検討します。

オペレータを使って社内にI-TRIZを普及させる方法を考える(7)

「どうしたらTRIZを社内の研究者、技術者に普及できるだろうか」という問題をI-TRIZで簡単に解いてみる試みの7回目(最終回)です。
ここまでI-TRIZを使って簡単に問題解決をする方法として、「標準問題」のオペレータだけを使う方法を事例に沿って紹介してきましたが、前回までで多くのアイデアが提案されています。
まだまだ、たくさんの提案ができるものと考えますが、この辺でとりあえずの区切りをつける意味で、(1)~(6)回までの分をまとめてみました。
「標準問題」のオペレータには「(1)生産性を改善する、(2)利便性を改善する、(3)信頼性の向上、(4)機械的強度を改善する、(5)製造精度を改善する、(6)コストを低減する、(7)単純化、(8)重量を軽減する、(9)エネルギー消費を低減させる、(10)浪費時間を減少させる、(11)
機能効率を向上させる、(12)変形、ずれ、衝撃、振動、破壊を抑制する、(13)騒音を低減させる、(14)摩耗を低減させる、(15)汚染を軽減する、(16)過熱を回避する、(17)環境との相互作用を減少させる」といった17項目のオペレータがあります。 前6回までのシリーズでは、「社内にI-TRIZを普及させる方法」をテーマとして、「標準問題」のオペレータの中の最初の「(1)生産性を改善する、(2)利便性を改善する」という2項目だけを使用して検討した結果を紹介しました。
この2つのオペレータを検討しただけで、「社内にI-TRIZを普及させる方法」について以下の8つの具体的な方策案が提案されました。
(1)本を読んだり、論文を読んだり、セミナーに参加したりして、自分たちでI-TRIZ
を人に教えられるまでに学習を積むも大切ですが、それと並行して、I-TRIZの専門家の助けを借りて、研究者、技術者自身が抱えている難問を自分たちの力で解いてしまうといった体験をすることが有効です。
(2)I-TRIZの全思考プロセスを習得する前に、I-TRIZの標準的なモジュールである、①システムアプローチ(多観点分析)、②プロブレム・フォーミュレーション(因果関係ダイヤグラムの作成)、③利用可能な資源の把握、④問題発生のメカニズム分析(不具合分析)、⑤オペレータ・システム、⑥アイディエーション・ブレーンストーミング、⑦二次的問題の解決(実装性の向上)、⑧実行時の不具合予測と予防、⑨進化のパターン/ラインの適用、のうちから取り組む問題に応じて有効と思われるもののみを選択的に使用することも有効です。
(3)I-TRIZが自分たちの仕事に役立つか否かを評価する段階では、実際のテーマで1~2週間に1回程度の頻度でI-TRIZの思考プロセスに沿った基本作業を行いながら、その合間に基本作業で得たアイデアの評価(実現可能性、新規性の確認などの補助作業)を自分たちで行い、基本作業にフイードバックしていくことでプロジェクトの成功つなげることが大切です。
(4)I-TRIZが自分たちの仕事に役立つか否かを評価する場合に、「同じテーマのプロジェクトを同時に複数のチームで行うことで、属人的な要素の影響度合いを確認する。」ことや、「同じコンサルプログラムで複数の異なる技術分野のテーマのプロジェクトを同時に行うことで、適用分野によってどのような成果の違いが出るかを確認する。」ことを試みるとよい。
(5)I-TRIZの基本ソフトウェアであるIWB(Innovation WorkBench)を使用する前に、まずは、簡易版のシステムアプローチと簡易版のオペレータを組み込んだIBS(Ideation Brainstorming)というソフトウェアと、因果関係ダイヤグラムを作成することで取り組むべき課題を発見するためのプロブレム・フォーミュレータ(Problem Formulator)というソフトウェアを使用して、技術者個人の通常の技術開発業務を効率的に処理することを経験するとよい。
(6)従来の古典的TRIZの欠点を改良すべく、あらゆる問題を一貫した手順で解決することのできる新しい体系的な思考プロセスとして再構築したI-TRIZを採用すれば、初めての人でも抵抗なく取り組むことができ、具体的な成果を上げることができる。
(7)I-TRIZについての解説が必要な場合には、「自社の実際の技術テーマについて実施した成功事例を添えて、I-TRIZが初心者にも取り組みやすく、確実に成果が上がるものである。」ことを説明するとよい。
(8)I-TRIZの思考プロセスをそのまま使うことではなく、目的は問題を解決することにあるわけですから、問題の種類に応じておよび/または使う人の都合に合わせて使用するモジュールを選択的に使用することを考えるとよい。
今回は「標準問題」のオペレータの有用性を知っていただく意味で「社内にI-TRIZを普及させる方法」を題材にしましたが、今後機会を見てこのテーマについては改めて説明をしたいと思っております。

オペレータを使って社内にI-TRIZを普及させる方法を考える(6)

「どうしたらTRIZを社内の研究者、技術者に普及できるだろうか」という問題をI-TRIZで簡単に解いてみる試みの6回目です。
I-TRIZの基本ソフトウェアであるIWBの最初の「問題の情報把握」の工程には、「状況の要約」という欄から見ることのできる「標準問題」の項目をクリックすると、以下のような17項目のリストが表示されます。
「(1)生産性を改善する、(2)利便性を改善する、(3)信頼性の向上、(4)機械的強度を改善する、(5)製造精度を改善する、(6)コストを低減する、(7)単純化、(8)重量を軽減する、(9)エネルギー消費を低減させる、(10)浪費時間を減少させる、(11)
機能効率を向上させる、(12)変形、ずれ、衝撃、振動、破壊を抑制する、(13)騒音を低減させる、(14)摩耗を低減させる、(15)汚染を軽減する、(16)過熱を回避する、(17)環境との相互作用を減少させる」
今回は2番目の「利便性を改善する」をクリックします。すると、「システムをより使い易くする方法を見つけるには、以下のオペレータに沿って考えてください。」という推奨文に続けて、「(1)有取り外し可能(モジュール化)、(2)セルフサービス、(3)模型・コピー、(4)使い捨て、(5)視覚特性を変える、(6)透過性を変える、(7)媒介物質、(8) 膨張する構造、(9)特性の最適化、(10)道具を人に合わせる」という項目の記載と、その下に「輸送を容易にする方法」のオペレータとして「(1)重い部分と軽い部分に分割、(2)重量物の移動、(3)特性の最適化、(4)膨張する構造、(5)重量の補整1、(6)重量の補整2、(7)他の力による補整、(8)ある物を活かす」が記載されています。さらに、その下に「関連項目」として「(1)物質の一時的使用」という項目の記載が表示されています。
10番目に記載されている「道具を人に合わせる」をクリックすると、「使用者の能力や好みを考慮に入れて、その動作や道具を使用者に合わせることを検討してください。」という解説と、「道具を人に合わせる」に関連した「(1)卵に日付印を押す、(2)磁気による血管の測定」という過去の具体的事例を参照することができます。
I-TRIZの標準的なモジュールには、(1)システムアプローチ(多観点分析)、(2)プロブレム・フォーミュレーション(因果関係ダイヤグラムの作成)、(3)利用可能な資源の把握、(4)問題発生のメカニズム分析(不具合分析)、(5)オペレータ・システム、(6)アイディエーション・ブレーンストーミング、(7)二次的問題の解決(実装性の向上)、(8)実行時の不具合予測と予防、(9)進化のパターン/ラインの適用、といったものがあります。
これらの標準的なモジュールはあらゆる問題を想定して作られたものであるため、問題によっては、I-TRIZを使用する研究者、技術者のスキルに合わせて、標準的なモジュールの一部のみを使用して問題解決に取り組むことがあってもいいわけです。
システムアプローチを使って問題状況の分析をしっかりやることで、問題解決の糸口がつかめれば容易に問題解決できてしまう場合もあります。
因果関係ダイヤグラムを作成して問題のメカニズムを明らかにすることで、排除すべき根本原因が見つかれば容易に問題解決できてしまう場合もあります。
また、通常は因果関係ダイヤグラムを作成したのちに得られる問題解決の指針(課題)の種類に応じて使用できる(1)有害機能の排除、軽減、防止のオペレータ、(2)有益機能を得る他の方法を探すオペレータ、(3)矛盾の解決のオペレータを使用して解決策を考えますが、最初から問題に合ったオペレータを直接使用してもよいことがあります。
問題の種類に応じた解決ヒントを集めた「標準問題のオペレータ」、システムの理想性を高めるために使用する「進化のパターン/ラインのオペレータ」、技術革新に役立つ科学的・技術的知識を、資源を変更する仕方の種類または技術分野別に整理した「革新ガイドのオペレータ」は、課題が明確になっている場合にはそれに応じたオペレータを直接使用します。
たとえば、今回使用している「標準問題のオペレータ」では、「(1)生産性を改善する、(2)利便性を改善する、(3)信頼性の向上、(4)機械的強度を改善する、(5)製造精度を改善する、(6)コストを低減する、(7)単純化、(8)重量を軽減する、(9)エネルギー消費を低減させる、(10)浪費時間を減少させる、(11)機能効率を向上させる、(12)変形、ずれ、衝撃、振動、破壊を抑制する、(13)騒音を低減させる、(14)摩耗を低減させる、(15)汚染を軽減する、(16)過熱を回避する、(17)環境との相互作用を減少させる」といった標準的な問題ごとに個別のオペレータが用意されています。
そこで、自分の問題が摩耗を減らしたいという問題であれば、ズバリ「(14)摩耗を低減させる」というオペレータにアクセスし、「(1)有害作用の原因の使用、(2)予測される摩耗に合わせた形状、(3)有害作用の局所的な緩和、(4)分離物質の使用、(5)反対の作用による中和、(6)有害作用の発生防止、(7) 有害作用との組合せ、(8)並列処理による復元、(9)欠点を隠す」といった具体的なオペレータの提案文に従ってアイデア発想をすることができます。
I-TRIZの思考プロセスに組み込まれている標準的なモジュールを順番通りにすべて使う必要はありません。
「道具を人に合わせる」というオペレータによれば、目的はI-TRIZの思考プロセスをそのまま使うことではなく問題を解決することにあるわけですから、問題の種類に応じておよび/または使う人の都合に合わせて使用するモジュールを選択的に使用することを考えるとよい、との提案ができます。