問題解決には、新しい知識が必要になることが多いといえます。 知らないことを理解するには、自分が知っていることになぞらえて理解するしかありません。 I-TRIZでは、問題解決をする際に利用できる知識を、その都度オペレータによって推奨されるヒントから吸収して、その知識のエッセンスを問題に適用するわけです。
I-TRIZを学んでいる方々から一番多い質問は、「どうしたらオペレータから推奨されるヒントを自分の問題解決に利用できるようになるのでしょうか。」というものです。 この質問に対する答えは、「類比思考に慣れることです。」といえます。
オペレータから推奨されるヒントは、そのほとんどが問題とは異なる分野の知識ですので、その知識を直接使うわけにはいきません。 異なる分野の知識の本質的な内容が、問題の分野ではどういう意味を持つのかを類推しなければなりません。
類比思考(類推思考)の訓練には中山正和氏が創案されたNM法が最適です。NM法を使うことで類比思考に慣れることをおすすめします。 NM法では、具体的には問題の種類によって、またはその取り組みの段階の違いによって、NM法A型、NM法S型、NM法T型、NM法H型といった複数の手法を使い分けるようになっています。
物の発明を考える場合には、構造といった問題を取り扱うため、ヒントやアイデアを空間的に組み合わせていく、収束思考のためのNM法A(Area)型を使用します。 方法の発明を考える場合には、手順や工程といった問題を取り扱うため、ヒントやアイデアを時間的に組み合わせていく、収束思考のためのNM法S(Serial)型を使用します。
NM法A型、NM法S型を使う上で、素材であるヒントやアイデアをたくさん集めることが難しいことがあります。そのような場合には、固定観念にとらわれない柔軟な思考ができるように、発散思考の十分な訓練を行っておくことが有効です。
発散思考の訓練のために高橋浩氏が提案された発散思考(展開思考)を主とするNM法T(Takahashi)型があります。 物の発明の場合には問題がはっきりしているので、論理的に考えれば問題の本質が何かがつかみやすいといえます。そのため、問題の本質をキーワードとして問題解決のためのヒントをたくさん集めることができます。
使えそうなヒントが手に入れたら一気に解決策まで仕上げてしまう方が効率的です。そこで、NM法A型に発散思考(展開思考)のNM法T型を組み合わせたNM法H(Hardware)型が生み出されました。 次回は、類比思考の訓練のためのNM法T型の具体的な手順を説明します。