DE(戦略的世代進化)の学び方

I-TRIZには、IPS(Inventive Problem Solving:発明的問題解決)、AFD(Anticipatory Failure Determination:先行的不具合対処)、CIP(Control of Intellectual Property:知的財産制御)、DE(Directed Evolution:戦略的世代進化)の4つの手法がありますが、その中で最も問い合わせが多いのは、DEです。
市場が成熟し多様化している今のような時代にあって、これからどのような商品・サービスを提供すればいいかがわからないからではないでしょうか。 工学的な問題の場合には、実現すべき目的が与えられて、そのための適切な手段を決定することが求められますが、関係者が目的について合意していることが前提になっています。
しかしながら、DEが取り扱う問題では、そもそも実現すべき目的を決定することが求められるため、従来の工学的問題解決の手法は使えません。 DEは次世代の商品・サービスの企画をする場合に有効な手法ですが、その手法は水泳や自転車に乗る練習をするように体で覚えるものであって、その人のスキルです。
DEは実施者のすべてに同じ結果を保証するものではありません。学校の問題と違って、正解などありません。同様に、DEのアプローチそのものについても唯一の正しいアプローチというものは存在しません。
学校教育においては、正解を導くことができるようになればその方法は習得できたことになりますが、DEの場合には、ここまで到達すればマスターできているというような地点は存在しません。
「できる」と「できない」の二つの状態が存在するのではなく、よりうまく使えるかより下手かという連続的な状態が存在するのみです。 「DEを習得したい」という相談を多く受けますが、その答えは「DEを適用するような問題解決(企画)をたくさん経験することです」というものになります。
具体的な目標としては、第1段階(初心者)として、「必要に応じて指導者の支援を受けながら、とにかくDEの適用ができる」状態を目指す。第2段階(上級者)としては、「他のメンバーを指導しながらDEを使ってプロジェクトをリードできる」状態を目指す、ということになるでしょう。
ある程度複雑な新しいスキルというものは、実際に手足を動かして参加したり、人がやるのを見たり、レッスンを受けたり、自分でいろいろ試したり、上級者の支援を仰いだり、本を読んでみたりというように、総合的に学ぶものです。
まったくの初心者が教科書や解説書を読んで独習することは、非常に困難であると思います。逆に、セミナーやワークショップで実際にDEの実施に参加した経験があれば、教科書や解説書に書いてあることも理解しやすいでしょう。
アイディエーション・ジャパンでは、皆様からの問い合わせに応えるべく、今年から新たにDEのセミナーやワークショップを開催する計画を立てています。 DEのセミナー、ワークショップの詳細については、日程が決定次第、このホームページ上でお知らせいたしますので、もうしばらくお待ちください。

I-TRIZの基本的な取り組み方

I-TRIZの基本的な取り組み方
I-TRIZ(Ideation-TRIZ)の基本ツールには、(1)複雑な問題を複数の観点から問題状況を体系的に分析するためのシステムアプローチ(多観点分析)、(2)システムあるいはその周囲に存在する何らかの特性で、システムを改良するために利用できるもの(これを資源という。)を確認するための資源把握、(3)システムに関連して有益な機能、または、有害な機能を生じさせているメカニズムを、一般化した伝達しやすい文章の形に変換することで、複雑な問題をいくつかの単純な問題に切り分けて取り組めるようにするためのプロブレムフォーミュレータ(問題状況の図式モデル化)、(4)問題の種類に応じた的確な発想のヒントを提供するオペレータシステム(発明のパターン集)、の4つがある。
これら4つのツールに共通する考え方は、世の中のモノやコトを捉える際に、独立した個々の事象に目を奪われずに、各要素間の相互依存性、相互関連性に着目し、全体像とその動きをとらえようとするシステム思考にある。一言でいえば、問題の対象をシステムとして捉えるということであるが、これに関連して使用される用語の意味を理解することが大切である。
一般にモノやコトを理解する場合には、「属性」、「性質」、「分類」、「機能」という観点で観察することが行われているが、以下、それらの意味を確認する。
「それが何からできているのか」という疑問に答えたものが、「属性」といわれるものである。わかるためには分けるということで、「構成要素」に分解することになる。それら構成要素の集合が対象となるモノ、コトということになる。
たとえば、「本」は、属性である「カバー」および「表紙」および「扉」および「ページ」および「奥付」から成り立っているという表現ができる。
「それはどんな様子なのか」という疑問に答えたものが「性質」といわれる。「性質」は一つの要素ということはなく、いくつかの「性質」によってモノ、コトが成り立っている。
たとえば、「本」は、性質である「縦の長さ」および「横の長さ」および「厚さ」および「表 紙の色」および・・・から成り立っているという表現ができる。
「それと似たようなものがあるか」という疑問に答えたものが「分類」である。ある概念の適用される範囲を「外延」というが、「分類」とはその「外延」を決めることと同じことになる。
たとえば、「本」とは、分類である「単行本」または「雑誌」または「政府刊行物」または 「百科事典」または「文庫本」または・・・にわけることができるという表現ができる。
「それでどんなことができるのか」という疑問に答えたものが「機能」である。ある概念に含まれるすべての基準や条件を「内包」というが、「機能」とは概念の意味要素であるすべての「内包」を決めることである。
たとえば、「本」とは、「文字や図画などを書き」かつ「印刷され」かつ「一冊に綴じ」かつ「知識を記録した」ものという表現ができる。
I-TRIZでは、以上のようなシステム思考(そこで使用される用語の理解を含む)を基本として、古典的TRIZの基本的な思想である(1)構成要素やその相互関係を捉える人の認識の特性を加味した考え方(たとえば、「小さな賢人」、「理想解」など)、および(2)認識内容に意味づけを与える個人や社会の価値の基準の変化のあり方を加味した考え方(たとえば、「理想性」、「技術システムの進化の法則」など)を活用して、複雑な問題を効率的に解決しようとしている。