作図法それ自体が思考のスタイルを決める

複数の構成要素を特徴的な性質毎にグルーピングして、グルーピングされた個々のグループにその性質の名称をつけることがよく行われます。 この場合、個々の構成要素が下位概念を表し、グループの名称が上位概念を表すことになりますが、この関係は何段階か存在し、概念の階層構造を表現することができます。
概念の階層関係は、数学の集合を表す概念図のように、個別の概念のグループ毎に別々の枠取り線で囲うことで表せます。 構成要素同士を矢印のない線でつなぐことで、構成要素同士の階層関係を表すこともできます。
構成要素同士を矢印のない線でつないだものを構成系統図といい、機械などの組立品と部品との関係を表す場合に使用されます。構成要素を機能に変更すると、上位概念の機能と下位概念の機能との関係を表す機能系統図が完成します。
階層は一段階とは限らず、何段階かの階層が存在することが一般的ですが、接続線は直接的な階層関係だけを表し、離れた階層上の構成要素同士を線でつなぐことはありません。以上のような、作図法はものごとを分類整理するときに行われる方法であって、特定の構成要素をより大きな構成要素の一部として位置づけることで説明しようとする思考法に関係します。
それは、単純で静的な関係を表す場合に使用されます。構成要素がある事象を表す場合には、特定の事象の原因となる要因を明らかにするために、特定の要因から特定の事象に向かう矢印のついた線でつなぐことがあります。
この作図法は、事象同士の因果関係を明らかにする場合に使用されます。 特定の事象に対してその直接の要因が複数ある場合に、複数の要因を列挙してそれらの因果関係を網羅的に検討しようとする思考法に関係します。
特定の事象とその直接の要因との関係だけを検討対象にする場合は、単純な静的な関係として捉えることもできます。しかしながら、実際の事象は直接的な因果関係の連鎖として生じるため、間接的な因果関係(縁報関係)にも思いを巡らさなければなりません。
因果関係を表す作図法によれば、矢印のある接続線を辿ることで、離れた事象同士の関係も知ることができますので、複雑な動的な関係を分析する場合にむいています。

因果関係ダイヤグラム

アイディエーション・インターナショナル社が開発したIdeation TRIZ(以下、I-TRIZという。)では、イノベーション・ワークベンチ(IWB:Innovation WorkBench)およびプロブレム・フォーミュレータ(PF:Problem Formulator)というソフトウェアを使用して「原因結果ダイヤグラム」を作成することで、問題の状況を明らかにします。
I-TRIZで使用する「原因結果ダイヤグラム」は、問題状況を原因と結果の関係で結ばれた機能連鎖型ダイヤグラムで図式化します。 「原因結果ダイヤグラム」を使うと、システムの機能要素と、問題を発生させているメカニズムが図式モデルで理解することができます。
以下、アイディエーション・インターナショナル社の「原因結果ダイヤグラム」の作成方法について説明します。 まず、問題となっているシステムに関連する有益機能と有害機能を明らかにします。ここでいう機能とは、本来の機能だけではなく、働き、作用、プロセス、操作、状態を含みます。
システムに関連するすべての機能を、有益機能(緑色のボックス:四角の中に機能の内容を記入したボックス)と有害機能(赤色のボックス:角丸の四角の中に機能の内容を記入したボックス)とに分類します。
次に、有益機能のボックス(緑色)と有害機能のボックス(赤色)の1つひとつについて、次のように自問して答えを考えてください。
(1)その機能は他の機能を引き起こす/強化するか?
(2)その機能は他の機能を排除する/妨害するか?
(3)その機能は他の機能によって引き起される/強化されるか?
(4)その機能は他の機能によって排除される/妨害されるか?
そして、その答えに応じて新たな有害機能のボックスまたは有益機能のボックスを追加して問題状況の図式モデルを完成させていきます。 ボックスは2種類使用します。 緑色の四隅に四角い角があるボックスには、有益な機能、作用、状態を記載します。構成要素、条件、特性などを記載することもできます。
赤色の四隅に丸みがあるボックスには、有害な機能、作用、状態を記載します。 ボックスとボックスとを繋ぐ片矢印は2種類使用します。 一般的な片矢印は、「引き起こす、強化する」ことを表します。
矢印の根本側のボックスが原因を表し、矢印の先端側のボックスが結果を表します。 矢印の棒状部に直角方向の短い棒を付したものは、「妨害する、阻止する」ことを表します。 一般的な対立矛盾とは、ある有益機能が1つの有益機能を引き起こすと同時に1つの有害機能を引き起こしている場合であって、一つの有益機能のボックスから、別の一つの有益機能のボックスと、一つの有害機能のボックスとに矢印が接続された図が描かれます。