問題解決をする場合に、相反する特性のどちらを選ぶかで迷うことがある。
高品質または低コスト、廉価版または特注品、イニシャルコストまたはライフサイクルコスト、柔らかいまたは硬い、大きいまたは小さい、順応または斬新、など。
TRIZでは、これらの相反する特性の両方とも選択することを目指す。
高品質および低コスト、廉価版および特注品、イニシャルコストおよびライフサイクルコスト、柔らかいおよび硬い、大きいおよび小さい、順応および斬新、といった具合に。
ところで、これらの相反する特性は、たとえば、価値観、グレード、トータルコスト、柔軟性、大きさ、トレンド、といった両社に共通する一つの特性についての対立矛盾(その特性に反対方向の値が求められる状況:たとえば、「グレードは高くて低い」など)とみなすことができれば、どちらも成立させる道が開ける。
両者に共通する一つの特性の対立矛盾の要求(たとえば、「グレードは高い」と「グレードは低い」という相反する要求)が、同じ場所、同じ時間、同じ対象(人)、同じ環境、同じ条件、といったすべてを満足しなければならないものでないことに気づけばよい。
一つの特性についての相反する要求が、異なる場所、異なる時間、異なる対象(人)、異なる環境、異なる条件、のいずれかで得られればよいということであれば、結果として、当初相反する特性と考えていた二つの特性の両方を実現することが可能になる。
要するに、私たちが問題をどう捉えるかが重要であって、問題の多くはその捉え方を変えることで解決できるのである。
その典型例は、問題を解決する最初の段階で考えなければならない「制約条件」であろう。
私たちは一般に、制約条件がない方が自由な発想ができると考え、制約条件があるから問題が解けないと思っている。
実は、制約条件はあった方がよい場合と制約条件がない方がよい場合とがある。
自由に考えなさいといわれたら、360°どの方向へ向かって考えていけばよいか迷うのでないだろうか。
たとえば、新規事業の開発の場合を考えてみよう。3年以内に自社が今まで取り組んだことのない新しい事業を見つけるように命じられたとしよう。会社からは何をやってもよいといわれる。このような場合、あなたならどうするか。
新規事業といってもわが社にとっての新規事業を開発するのであるから、現在の強みであるコア技術やブランドを活かすことのできる領域を模索すべきである、と考えるかもしれない。
これは、すでに自ら制約条件を設けたことになる。
私たちは問題を解決しなければならない場面では、無意識のうちに考えるべき方向や領域に制限を加えることで、考えを進めやすくしているのである。
ただし、その結果、うまい新規事業が見つからなかったとしたらどうするか。
その場合には、当初課した制約条件を見直すことになる。自社の強みにこだわらず、自由な発想を目指す。今度は制約条件を外して考えることになる。
次に、当初の制約条件を取り除くことで新しい問題が生じるならば、当初の問題(この場合は新規事業を開発すること)を解決するよりも、新しい問題に取り組む方がよいかどうかを判断することになろう。
自社の弱みを補う技術を持っている会社があるとしよう。その場合にその会社が欲しがっている、または欲しがるであろう技術を開発することを考えてみたらどうだろう。その際に、自社のコア技術が活かせる道が見つかればなおよい。
二者択一ではなく両方とも実現する。ただし、それは時と場合を考えて使い分けることである。