「消費財の進化」の「製品の進化」のトレンド

製品の歴史の中で長い期間、使いやすさについて配慮がなされることはほとんどありませんでした。博物館に展示されている古代の衣服、家具や住居の生活環境を見ればこれは明らかです。生活を少しでも便利にしようとする発明(たとえば、やわらかい家具)が現れたのはルネサンス時代のことで、こうした狙いを持って様々な製品が大量生産されるようになったのは産業革命以降、19世紀に始まることでしかありません。

 

消費財の利便性を向上させるアプローチは以下の通りです。
(1)製品が人の身体、生理、美的感覚によりよく対応するようにする
(2)製品を使用することに伴う有害な作用(負荷、外傷、汚れや廃棄物の蓄積など)を減少させる
(3)容易に使用できるようにする(特に据付けたり、練習をしたり、などの準備をしなくても使える)

 

「製品の進化」の進化のトレンドには、(1)消費財の「スマート化」(賢い製品化)、(2)安全要求の高まり、(2)環境規制、(3)機能の拡張、(4)多様性の増加、(5)集積化の進展、(6)人間の負担軽減、(7)有益な機能を持った包装、が考えられます。

 

消費財の「スマート化」の進化のトレンドとしては、過去15年間の消費財の進化にみられる主な傾向の1つは製品が「賢く」なってゆく、ということです。

 

だれもが情報技術は大きな可能性を持っていると考え、様々な出版物によって、たとえば、コンピュータ化された家庭や「賢い」機械などが紹介されるため、電子技術はどんな分野でも奇跡(時には非現実的な)を起すことができるという期待が高まりました。その結果今日では、こうした期待に応えることのできる企業でないと成功することが難しくなりました。

 

ほとんどの消費財で「賢い」製品とは使用者の特定のニーズ、状態などに合わせることができることを意味します。たとえば、
(1)消費者からの情報を様々な形態で受け取ることができる。
(例)
① 指示(プログラム、命令など)
② 声、動作、ボタンを押すなどによって行われる選択
③ 鼓動や体温などについてのセンサーからの情報
(2)得られた情報を処理して必要な対応を行なう
(3)得られた情報を活用する、あるいは、他の装置に伝達する

 

人の生活環境が進化してゆくなかで重要な傾向の1つは個人の健康状態をモニターし、状態の悪化を早期に発見できるようになってゆくことです。このトレンドを反映して、健康状態に関する情報をモニターして必要な連絡先に送る機能をもった消費財が既に多数出現しています。

 

このトレンドを可能にしたのは、以下のような技術です。
(1)特殊な機能を果たすことのできる「賢い」素材
(2)各種のマイクロ・デバイス(センサー、マイクロチップなど)
(3)LANやインターネットを通じて行なわれる、製品・システム間の自動通信

 

この傾向が進むと、一般的に製品は複雑になり、コストは高くなってゆきます。消費者の側もそれに対応してゆきますが、時に過剰な期待を持つことがあります。

 

「安全要求の高まり」の進化のトレンドについては、安全そのものの定義があいまいなまま、安全への要求が次第に高まっている傾向があります。

 

戦争、飢餓、感染症など死に繋がる危険の可能性が低くなった一方で、人々は製品によって身体や心が侵されるなどの、より軽度な危険に強い関心を持つようになっています。加えて、以前よりはるかに精密な検査が可能になった結果、従来は気づかなかった危険が認識されるようになりました。

 

最近は、特定の食品および食品メーカーをターゲットとする攻撃が激化しています。タバコメーカーに対する消費者の訴訟が成功したため、同様の動きが他の分野に拡がり、訴訟の数と様々な製品に起因する負傷、障害、およびその他の不都合に対する保障の裁定が増加し、結果として保険料が高騰することになっています。情報公開が進んで顧客が大量の情報を入手・交換することができるようになり、製品の使用と有害あるいは不都合な効果との間の関係が明らかになったことによって更に強まっています。

 

タバコおよび食品の次には様々な消費財が訴訟の対象となることは明らかと思われます。各種洗剤、家具、衣料品、電子製品、住宅用建材などほとんどの製品が何らかの条件では潜在的に危険性を秘めているといえます。

 

これによって、相互に関連する以下の2つの事態が予測されます。
(1)生産者および販売業者を相手取った訴訟の増加
(2)新種の製品の導入に対する政府の規制。製品が持つ潜在的な危険を分析して製品を禁止すべきか否かを判断するFDA(米国食品医薬品局)のような組織が新設されることも含まれます。

 

現状では、消費財メーカーの姿勢は一般的に受身で、製品のテスト方法を改良(しかし、適切なテスト法がないので潜在する深刻な危険を全て明らかにすることは実際は不可能です)する、製品を市場に導入した後に顧客から苦情や要望がでてから対処する、といったことにとどまっています。将来は、アイディエーション・インターナショナル社のFP(不具合予測)に類する手法と、製品開発のプロセスで潜在的な危険を明らかにし排除する方法とを有効に使う能力が企業の成功を左右することになります。

 

「環境規制」の進化のトレンドについては、環境および健康に対する要求が厳しくなる結果として以下の事態が予想されます。
(1)人工の素材に対する疑念が高まり、イメージが悪化する
(2)先進国では様々な生産施設に対する批判が高まり、規制が導入され、コスト高につながる
(3)廃棄物や人工素材の使用量が少ない、環境負荷の低い生産形態への移行

 

「機能の拡張」の進化のトレンドは、どのような消費財でも機能の数を増やし質を改良することによって製品価値を高めることができる、ということです。そのために、以下のアプローチが考えられます。
(1)関連製品の機能の取込。当該の製品と同じ環境で使われる、あるいは、ライフサイクルの様々な段階で当該の製品と一緒に使われる他の製品やシステムが持っている機能を取り込みます。
(2)自動化あるいは「賢い」技術を使うことによって、従来人間が担っていた機能を吸収する。
(3)既存の製品の機能を幾つかに分けて、部分的動作や部分的機能を導入する。場合によっては専門に特化した(特定の機能だけを行う)製品が生まれることがあります。

 

「多様性の増加」の進化のトレンドは、製品の多様性の増加は顧客の要求や好み(「えり好み」)が強まり、ファッションの変化が早くなり、情報交換の量やスピードが増加することに対応して生じます。結果として以下の現象が生じます。
(1)個別製品の量が減少
(2)特定の製品に対する需要の(しばしば予測不能な)急激な増加と減少
(3)高価格贅沢品から低価格品まで、価格と性能の幅広い品揃えを狙った製品ラインの拡大。一般的に、顧客が高価格を許容する傾向が強くなります。
(4)顧客が製品生産者の他の側面を意識するようになる。たとえば、環境対策、地域あるいは国内における雇用の確保に対する姿勢など。
(5)新製品の開発から市場導入に至る期間の短縮
(6)機動的な生産技術の開発

 

マス・カスタマイゼーションの考えを採用することによって製品の多様性を増すことができます。このためには、生産の最終段階、あるいは、更には顧客の望む場所で、簡単に改造できるようなベース製品を生産する技術を開発することが必要です。

 

「集積化の進展」の進化のトレンドは、製品が進化するにつれて、その製品を同じ上位システムに属する他の要素と組み合わせて1つの統合システムを生み出す、ある意味で「ファミリー」が形成される傾向がある、ということです。

 

こうした統合は機能レベル、あるいは、これよりも限られたレベル(スタイルあるいは色彩など)で生じる場合があります。

 

「人間の負担軽減」の進化のトレンドは、生活に不可欠なニーズや家庭用設備のメンテナンスなどに必要な作業が少なくなってゆく強い傾向がある、ということです。

 

これは「プラグ・アンド・プレイ」(据付けたり、練習したり、他の準備をしなくても使える)ようにしたいという希望の結果です。この過程は以下の順序で進みます。
(1)部分的あるいは全面的に自動化された「賢い」システム
(2)ユーザーと意思疎通できるシステム
(3)複雑な消費財に対するオンラインサポート

 

「有益な機能を持った包装」の進化のトレンドは、製品が進化する過程で、様々な有用な目的に製品の包装が利用されるようになる、ということです。

「消費財の進化」の「市場の進化」のトレンド

消費財市場の進化の主な特徴は以下の通りです。
(1)現代は新商品を市場に導入することを難しくしていた一般的な障害は以前に比べてはるかに小さくなっています。結果として、全く予想しない新しい競争相手がどこかから(外国から、他の産業分野から)登場して、あっという間に市場の一部を獲得してしまう可能性があるといえます。
(2)競争の激しい飽和した市場では、なにか望まれるものがあって、それを実現することが可能な場合、必ず誰か供給者があらわれて市場のその部分を獲得することになります。
(3)ごく小さな市場参入の可能性も、強力な市場攻撃の手がかりとして利用される可能性があります。これを考えると、どんな小さくとも競合他社に利用される可能性は残すべきでないといえます。
(4)もっとも危険な競争相手は、市場に参入するためには利益はごく小さくとも (あるいは、全くなくとも)かまわないと思っている相手です。
(5)ある用途で使われる製品の間に主な性能の差が無い場合、どの製品が購入されるかを決めるのは製品の2次的な特性です。
(6)最も危険な事態は、誰かあるプレーヤーが包括的な知的財産を開発して、何らかの市場セクターで合法的独占体制を作ってしまうことです。

 

「市場の進化」の進化のトレンドには、(1)事業の総合化、(2)市場の拡大、(3)消費財購入形態の変化、(4)競合の激化と内容の変質、(5)株式市場における状況の変化、(6)顧客・ユーザーの個別化、(7)商品選択基準の変化、(8)ファッションの進化、(9)プロフェッショナル・サービスの事業化、が考えられます。

 

「事業の総合化」の進化のトレンドでは、事業の発展状況の分析によって定期的に交替する2つのトレンドが発見されました。1つは、専門化の進展です。専門化によって事業の効率が向上します。もう1つは多角化です。多角化は異なる製品間の調和を改善します。

 

しかし、更に一般的なトレンドは、ビジネスと生活環境とが益々一体になってゆくことです。これによって消費者の生活と製品のあり方とがお互いに切って切り離せないものとなり、日々の生活環境はますます便利になってゆきます(たとえば、コンビニの登場で多様な必需品を全て一箇所で買える)。

 

大衆の生活上の必要を満たすことを対象とする事業は、このような総合化の方向に進んでいるように見えます。たとえば、様々な企業が様々な家庭用設備・機器(上水、下水、芝生の手入れ、冷蔵庫、エアコン、炊事用レンジ、清掃、など)を別々に供給するのではなく、1つの会社が全ての家庭用サービスを取り扱うといった具合です。

 

この観点で考えると、たとえば、靴に関連した企業が次のような関連ビジネスを総合的に一体化する方向で成長してゆくことが考えられます。
(1)衣料品、(2)衣料品の手入れ(洗濯、乾燥、クリーニング、保管、修理、交換など)、(3)医療、(4)娯楽系商品・サービス

 

「市場の拡大」の進化のトレンドは、生活水準と消費水準とが継続して向上するため、ほとんどの消費財で市場の拡大は人口の増加よりも速いテンポで進むという強い傾向が存在する、ということです。

 

「消費財購入形態の変化」の進化のトレンドとしては、インターネット、Eコマース技術の進化によって、商品のマーケティング、購入、配送方法が急激に変化しようとしていることが挙げられます。この変化は、20世紀初頭のアメリカにおいてカタログ販売によって生じた変化と比較することができます。カタログ販売が導入された結果、従来は都市周辺の人々しか購入できなかった商品を、人口の少ない地域に住む人々も同じように購入することができるようになりました。

 

今日では、インターネット経由の購入が配送コストの削減の新しい手段になっています。消費者の要求もこれに伴って変化し、購入・配送が便利な商品を使おうとする指向が強くなってゆきます。従来の購入形態、流通形態に頼る商品は大いに魅力を失い、マーケットシェアにも影響すると考えられます。

 

情報技術が更に進化し新しい技術が導入されることによって、以下のことが生じます。
(1)コンピュータの進化によってEコマースの魅力を格段に増加させる新たな可能性が生まれます。今日でも、商品を3D画像で見ること、商品の特徴を調べること、他のユーザーのコメントを参考にすることなどができます。更に、インターネットを通じて「試着」し、その商品を自分が身に着けるとどう見えるか、持っているアクセサリーや自分のパートナーの服装にマッチするか、などを確認することも可能です。
(2)低コストですばやく配達可能な国際配送システム(フェデックス、UPSなど)の出現。
(3)上記の変化は更に大半の商品が小売店舗など中間のステップを経ずに、生産者から消費者に直接配送されるところまで進むと考えられます。その結果として、更に次の事態が生まれます。
(4)大幅なコスト(商品コスト、配送コスト、共)削減を特徴とする新たな流通システムの展開
(5)製造業者の既存販路への依存度の低下、自社商品のマーケティングに対する影響力の強化
(6)配送時間の短縮、配送の利便性の向上

 

この結果、あらゆる消費財関連産業において、商品のユーザーへの直接配送にともなう構造的変化が生じる可能性があります。この変化は、更に以下の変化につながります。
(1)市場における業者の地位、ビジネス形態、宣伝方法など
(2)新商品、新技術、新たな包装システムの開発

「消費財の進化」の「生活の進化」のトレンド

進化のラインには、システムの基本的な要素である「機能」「プロセス」「物質」「エネルギー=場」「構造」がそれぞれ進化してゆく過程で働いているライン(これを「一般的な進化のライン」という)と、特定の分野に限定された進化のライン(これを「特定的な進化のライン」という)とがあります。

 

米国のアイディエーション・インターナショナル社が制作したDirected Evolutionソフトウェアでは、「特定的な進化のライン」には、(1)消費財の進化、(2)システムの歴史における市場の変化、(3)計測システムの進化、(4)情報資源の利用、(5)道具の進化、(6)道具に対する被処理物のマッチング、(7)製造プロセスの簡素化、(8)運搬と処理のリズムのマッチング、が記載されています。

 

実は、Directed Evolutionソフトウェアの「特定的な進化のライン」に記載されている「消費財の進化」には、例外的に進化のラインの上位概念である進化のトレンドが記載されています(進化のトレンドとは、システムが進化してゆく過程で見受けられる短期的・長期的のあらゆる傾向を一般的に指します。また、歴史の中で一度だけ、あるいは、稀に観察される傾向も含まれます)。

 

「消費財の進化」の主要なトレンドには、(1)生活の進化、(2)市場の進化、(3)製品の進化、の3つの分類があります。

 

「生活の進化」の進化のトレンドには、(1)環境の馴化、(2)新次元での資源活用、(3)技術の進化、(4)構造的危機、が考えられます。

 

「環境の馴化」の進化のトレンドは、環境の変化に関するものです。たとえば、住居、建物、道路、通信システムなどの社会的インフラストラクチャー や、消費財や、植物、花、ペットなどの自然の産物では、環境に含まれる様々な危険、好ましくない要素、不快な要素が排除され、減少してゆく。便利なもの、あるいは、好ましいものが人間を取り巻く環境に取り入れられてゆく。

 

「新次元での資源の活用」の進化のトレンドは、あらゆる技術システムは物質、エネルギー(場)、情報、空間、など何らかの資源を使うことによって機能を発揮し、また、進化してゆく、ということです。

 

技術システムの進化は目に見え、手に入れやすく、そのまま使える資源を利用するところから始まります。こうした当たり前の資源がすっかり使われてしまうと、見つけにくく、手に入れにくい資源が使われるようになります。同時に、既存の資源をそのまま使うことから、人間の知識、知恵、工夫によって発見され生み出された派生的な、変化させられた、気の利いた資源を使うことへの移行も進みます。

 

今日では、物質の物理・化学的特性、物理的な場の特性や効果、特殊な幾何学的形状、新しい視点などがしばしば問題解決に必要な資源の役割を果たしています。

 

「技術の進化」の進化のトレンドは、ものづくりの技術に関連する進化の要点は、以下の3点である、ということです。
(1) 設計の考え方の進歩
① 技術者間の競争
② 情報技術の進化
(人間の直感に依存した高度な技能の誰でも利用できる知識への転換)
③ コンピュータの活用(CAD、CAM、Pro engineerなど)
④ 開発・設計技法の進化(DFMA、コンカレント・エンジニアリング、FMEAなど)
⑤ 極めて効果的な問題解決技術(TRIZ)
⑥ 戦略的な技術革新技術(DE)
(2) 生産管理分野での進歩
① メーカー間の競争の激化
② コンピュータを利用した生産管理システム
③ 業務管理技術の改良(TQM、VE、など)
(3) 生産技術の進歩
① 柔軟性
② コストの低い正確さ
③ 局所的(臨時的)対応の可能性
④ 必要な特性を持った素材の合成と使用
⑤ 効果的な安全対策、環境対策の可能性

 

「構造的危機」の進化のトレンドは、社会が発展する過程では様々なトレンドが出現し、それらが相互に影響を与え、それが人間の考え方や心理を変化させ、その変化は始めごく些細なものとして登場するため、通常の市場調査などで発見することはできません。しかし、この些細な変化が正のフィードバック(連鎖反応)のきっかけとなり、短期間の内にある産業の製品の設計、組成、生産、販売、マーケティング、サービスなどを大きく変化(これを「構造的危機」という。)することがある、ということです。

 

こうした「構造的危機」を予測し、予めそれに備えることができれば、大いに有利なことは言うまでもありません。逆に、この危機に注目せず何の準備もないままに事態に直面することになれば、一切を失うおそれがあります。現在、大量生産を特徴とする多くの産業分野が「構造的危機」の始まる瀬戸際に立たされているといえます。

 

その原因となっているのは、(1)消費者のニーズと期待の変化、(2)技術の変化、(3)巨大な投資資金の存在、(4)様々な新興市場とビジネスチャンス、新興競合相手の出現、などです。

 

「構造的危機」の兆候は市場の不安定化にあらわれます。近年は、新規市場参入への障害が減少し、様々な産業において企業の業容や生産量が簡単に大きく変化するという新しいビジネス環境となっています。言葉を変えれば、様々な産業分野において、コンピュータや他のハイテク産業と同じように、あっというまに予期しない新顔が登場し、株価が急変し、新たな提携関係が生まれるというような状況が生じる可能性があります。

 

「構造的危機」が発生する典型的な兆候は以下のとおりです。
(1)ある分野の主な企業の収益の(例外のない)悪化
(2)競合の激化と販売・宣伝経費の増加
(3)業界再編の増加(企業・事業の吸収/合併、シェアの急変など)
(4)規模の小さい企業による技術・設備更新に関する積極的な働きかけ
(5)顧客の不満の兆候
(6)コスト削減、簡素化、信頼性向上、新機能の追加などを可能にする最先端の電気、電気、情報、コンピュータ技術など、新設計、新技術に関するニュース

システム構造の「進化のライン」

システム構造の進化のラインは、(1)資源の利用、(2)既存コンセプト内でのシステム進化、(3)マルチレベルへの移行、(4)自由度の増加、(5)機能の増加、(6)安定性の変化、(7)制御性の増加、(8)マッチングとミスマッチングの順序、(9)システム内のマッチングの種類の変化、(10)システム内のミスマッチングの種類の変化、(11)リズムのマッチング、(12)リズムのミスマッチング、(13)バイ・システム(複合システム)の開発、(14)ポリ・システム(多重システム)の開発、(15)簡素化の順序、(16)網目状構造への移行、が考えられます。

 

「資源の利用」の進化のラインでは、①すぐに入手できる資源を利用する→②派生された潜在的な資源を利用する→③新しい資源を利用する、といったラインに従います。

 

資源の種類には、物質資源、エネルギー資源、空間資源、時間資源、情報資源、機能資源があります。資源の出所には、構成要素、廃棄物、環境、近隣システム、関連システムがあります。資源の利用の目的には、主要機能の改良、二次的・補助的機能の改良、機能の数量を増やす、販売アピールを上げる、新機能を生む、望ましくない機能・効果を排除する、といったものがあります。

 

「既存コンセプト内でのシステム進化」の進化のラインでは、①新機能の発明と、その機能を実行するための一般的原理(通常、複数通り)の発明→②単独システムの進化→③複数システムの進化、といったラインに従います。

 

「②単独システムの進化」の進化のラインでは、a.現在の技術レベルで実現可能な原理の選択→b.新システムの性能を試すための最初のプロトタイプの製作→c.最適な設計や技術プロセスの開発、実用的な部品の選択、実用システムの開発→d.システム・パラメータの定量的な改善→e.進化途上でのボトルネックや矛盾点の解明と解決→f.未解決のボトルネックの蓄積とシステムが立脚する概念的原理をさらに改良する手段の使い尽くし→g.新原理に基づく新システムの導入(発明)、といったラインに従います。

 

「③複数システムの進化」の進化のラインでは、a.新機能を実行するための異なる原理にそれぞれ基づく複数システムの並行開発→b.1つのシステムが勝者となりさらに進化する→c.勝者システムにおける未解決のボトルネックの蓄積と同システムが立脚する概念的原理をさらに改良する手段の使い尽くし→d.勝者以外の1つまたは複数のシステムと複合化することで牽引型バイ・システムを構築し、既存のシステムに取って代わる、といったラインに従います。

 

「マルチレベルへの移行」の進化のラインでは、①マクロレベル(たとえば、ある形状の要素(歯車、レバー、ブッシング、ドリル穴、溝、鋳造物の開口、空洞共振器、など)からなるシステム、など)→②単純な幾何学的形状の要素からなるポリ・システム(たとえば、平板、糸、繊維、玉;ロープ、ケーブル、鋼板を積層した磁心、ハニカム構造体、大きい気泡の泡状体、など)→③小さい要素からなるポリ・システム(たとえば、粉体、エマルジョン、エアロゾル懸濁液、毛細管・多孔質体、薄膜、細かい気泡の泡状体、など)→④ナノレベルの現象の利用に基づくシステム(たとえば、高度に研磨した鋼板同士の接合、など)→⑤物質構造(超分子レベル)に関連した現象の利用に基づくシステム(たとえば、アモルファス体と結晶体、固体と液体、結晶構造の再構築と相転移、物質構造の空隙(たとえば、結晶構造の転移(欠陥)、半導体内の空孔、など)、磁化、など)→⑥分子現象の利用に基づくシステム(たとえば、物質の化学変換;分解と合成、重合、触媒、ゼオライト、など)→⑦原子現象に基づくシステム(たとえば、イオン化と再結合、素粒子(電子など)の利用、など)→⑧物質に代えて場の作用に基づくシステム(たとえば、熱、光、電磁界、など)、といったラインに従います。

 

「自由度の増加」の進化のラインでは、①非動的なシステム→②機械的に可動なシステム(ヒンジ、可動機構、柔軟材料、などの利用)→③ミクロ・レベルで変化できるシステム(溶解、凝固、化学変化、などの利用)→④場が変化できるシステム(機械的、熱的、化学的、電気的、磁気的、電磁気的エネルギー、などの利用)、といったラインに従います。

 

「機能の増加」の進化のラインでは、①1つの手段を持つシステム→②別個の複数手段を持つシステム(a.手段の変換は必要があるときに手動で行う→b.手段の変換はプログラムに基づいて行う)→③変化可能な手段を持つシステム、といったラインに従います。

 

「機能の増加」の進化のラインの例には、①鋸刃、ねじ回し→②a.種々の刃を持つ鋸、種々の先端を持つねじ回し→②b.自動ツール交換;コンピュータ制御のカム操作→③調節可能なトーチを備えたプラズマ切断機、などが挙げられます。

 

「安定化の変化」の進化のラインでは、①安定性に無関心なシステム→②1つの安定状態を持つシステム→③複数の安定状態を持つシステム→④動的な安定性を持つシステム→⑤人工的な安定性(フィードバック、フィードフォワード)→⑥不安定なシステム、といったラインに従います。

 

「安定化の変化」の進化のラインの例には、①床上のボール→②テーブル→③照明器具のスイッチ→④自転車→⑤F-15(試作機)は、機敏な操縦性を出すために、意図的に不安定に作られ、自動操縦システムが操縦者の操作を継続的に補償した。→⑥ニトログリセリン、などが挙げられます。

 

「制御性の増加」の進化のラインでは、①無制御のシステム→②力が制御可能なシステム(プログラムに基づいて制御)→③半自動制御→④自己制御システム(制御されていないが、環境に応じて必要方向へ自ら調整する)、といったラインに従います。

 

「制御性の増加」の進化のラインの例には、①電線(電流を制御していない)→②電気スイッチ→③回路遮断器→④永久ヒューズ、などが挙げられます。

 

「マッチングとミスマッチングの順序」の進化のラインでは、①有益結果を生む要素、作用間で最低のマッチングしかしていないシステム(最初のラジオ受信機や自動車は相互整合性に欠ける部品から構成されていた)→②有益結果を生む要素、作用間で満足のいくマッチングをしているシステム(最先端の自動車)→③有益結果を生む要素、作用間でのマッチングをシストしているシステム(駆動車軸のディファレンシャル)→④動的なマッチングとミスマッチングをしたシステム(様々な乗員に対して自動車シートの状態を自動的に調整する)、といったラインに従います。

 

「マッチングとミスマッチングの順序」の進化のラインでは、①有害結果を生む要素、作用間で最低のミスマッチングしかしていないシステム(最初の自動車は屋根がなかった)→②有害結果を生む要素、作用間で満足のいくミスマッチングをしているシステム(最先端の自動車は騒音、天候、事故から人を守る)→③有害結果を生む要素、作用間でのミスマッチングをシストしているシステム(乗員が満足するように、種々のシステム(カーエアコン、電話など)に意図的に疑似ノイズを加える)→④動的なマッチングとミスマッチングをしたシステム(様々な乗員に対して自動車シートの状態を自動的に調整する)、といったラインに従います。

 

「システム内のマッチングの種類の変化」の進化のラインでは、①最小限のマッチングしかしていないシステム→②強引なマッチングを行うシステム→③バッファ(緩和的)マッチングを行うシステム→④自己マッチングを行うシステム、といったラインに従います。

 

「システム内のマッチングの種類の変化」の進化のラインの例には、①部品ごとに製造速度の異なる製造機械を用いる生産方法→②最も速度の遅い工程(ボトルネック工程)に合うように全体の製造速度を落とす→③製造工程の中にバッファ在庫を持つ→④頻度、速度、温度などの自動制御、などが挙げられます。

 

「システム内のミスマッチングの種類の変化」の進化のラインでは、①最小限のミスマッチングしかしていないシステム→②強引なミスマッチングを行うシステム→③バッファ(緩和的)ミスマッチングを行うシステム→④自己ミスマッチングを行うシステム、といったラインに従います。

 

「システム内のミスマッチングの種類の変化」の進化のラインの例には、①部品ごとに製造速度の異なる製造機械を用いる生産方法→②ダム:水の流れを止める→③ダム:水の流れを調整する→④ダム:需要に応じて水の流れを制御する(フィードバック)、などが挙げられます。

 

「リズムのマッチング」の進化のラインでは、①異なるサブシステムのリズムがまちまち→②異なるサブシステムのリズムが同一→③固有振動数の利用、といったラインに従います。

 

「リズムのマッチング」の進化のラインの例には、①炭鉱で石炭層を脆くするために振動させる際、当初は、リズムが不揃いな水圧で石炭層の複数個所を振動させていた→②石炭層の複数個所をリズムの同期した水圧で振動させるようになった→③石炭層の固有振動数で脈動する水圧を用いるようになった、などが挙げられます。

 

「リズムのミスマッチング」の進化のラインでは、①リズムのミスマッチングがいい加減→②固有振動数を避けることによるリズムのミスマッチング、といったラインに従います。

 

「リズムのミスマッチング」の進化のラインの例には、①航空機の翼の設計が適切でないと、翼がその共鳴振動数でバタバタと振動する→②翼端にカウンターウェイトを付けて、翼の振動数が翼の共鳴振動数と一致しないようにする、などが挙げられます。

 

「バイ・システムの開発」の進化のラインでは、①モノ・システム(単システム)→②同種バイ・システム→③シストした特徴バイ・システム、といったラインに従います。

 

「バイ・システムの開発」の進化のラインの例には、①単銃身銃→②二連散弾銃、③口径の異なる上下二連ライフル銃、などが挙げられます。

 

「両立バイ・システムの開発」の進化のラインでは、①システム、①´①システムと両立可能なシステム→②両立バイ・システム→②a.二元バイ・システム、②b.共生バイ・システム、②c.相補バイ・システム、といったラインに従います。

 

「両立バイ・システムの開発」の進化のラインの例には、→②a.2液性エポキシ樹脂、②b.一方のシステムからの排熱で他方のシステムを加熱する、②c.2本の抵抗線を並列に巻いて抵抗値の温度補償をした巻線抵抗器:温度が変化すると一方の抵抗線は抵抗値が増加し、他方の抵抗線は抵抗値が低下する、などが挙げられます。

 

「競合バイ・システム」の進化のラインでは、①相反する機能(長所と短所など)を持つシステム、①´①のシステムと競合するシステム→②競合し合うシステムからなるバイ・システム→②a.牽引バイ・システム→②b.同種相補バイ・システム、といったラインに従います。

 

「競合バイ・システム」の進化のラインの例には、②a.新しいシステムを旧いシステムが牽引(援助、下支え)する:たとえば、ジェット推進器を搭載したプロペラ機→②b.同じ目的を達成する競合システムを組み合わせてより優れた結果を得る(短所を打ち消すなど):たとえば、反射式と屈折式の望遠鏡を組み合わせた反射屈折式望遠鏡(マクストフ式など)、などが挙げられます。

 

「選択バイ・システム」の進化のラインでは、①システム、①´①の反対システム→②選択バイ・システム、といったラインに従います。

 

「選択バイ・システム」の進化のラインの例には、②エアコン:加熱と冷却の組み合わせ、などが挙げられます。

 

「ポリ・システムの開発」の進化のラインでは、①上位システムに含まれる複数のシステム→②a.2つのシステムが上位システムに統合される(複合システム:たとえば、2つの船体を結合した双胴船)→②b.3つ以上のシステムが上位システムに統合される(多重システム:たとえば、AM/FMラジオ、CD,MD,CVDを結合したコンポ・システム)、といったラインに従います。

 

「ポリ・システムの開発」の進化のラインでは、①同種ポリ・システム→②シフトした特性を持つシステム同士のポリ・システム→③バイ・システムからなるポリ・システム→④動的ポリ・システム(多重化によって柔軟、適応、変化、制御の能力を高めたシステム)、といったラインに従います。

 

「ポリ・システムの開発」の進化のラインの例には、①1台のクレーンで持ち上げられない非常に重いものを、複数台のクレーンを同時に使って持ち上げる→②径と幅と形の異なる複数のフライス工具を組み合わせて、複雑な形状を加工する→③懐中電灯に用いられる3本の電池のセット(各電池は陰極と陽極のバイ・システム)→④自転車のチェーン、などが挙げられます。

 

「簡素化の順序」の進化のラインでは、①機能の簡素化、および/または補助機能の数の減少→②資源利用の強化(a.既存要素を資源で置き換える、b.サブシステムを追加の用途に使う)→③主要素が補助機能も行う→④システムの一体性のレベルを高める→⑤基本的サブシステムを拡張する(部品を統合する)→⑥エネルギーまたは物質の変換の数を減らす→⑦直接的なエネルギーまたは物質の変換を利用(マイクロレベル)→⑧「スマート物質」の利用:今までとは違う現象の利用、といったラインに従います。

 

「簡素化の順序」の進化のラインの例には、①昔の自動車はいくつものグリース・フィッティングからグリースを注入する必要があったが、今日の自動車はその必要性がない→②a.車の排気ガスで空気袋を膨らませて車を持ちあげる→②b.切削加工中に旋盤の切削工具の温度を測るために、その工具を熱電対として利用する→③車のエンジンからの熱を使って車内を暖める→④スイスのアーミーナイフは、いくつものツールを一体化している→⑤トランジスタた他の電子部品を組み合わせて分解不能に一体化された集積回路を作る→⑥航空機:内燃機関(熱エネルギーをピストンへ、クランクシャフトへ、プロペラへ、飛行用の力へ)対ジェットエンジン(熱エネルギーを飛行用の圧力へ)→⑦太陽エネルギーを直接的に電気エネルギーに変換する対太陽エネルギーで水を加熱して水蒸気で発電する→⑧追うsと回路を閉じるタッチセンサなどにおいて、多数の素子からなる複雑なスイッチング・システムに代えて、金属粉で満たした弾性高分子材料を用いる、などが挙げられます。

 

「網目状構造への移行」の進化のラインでは、①サブシステムの数の増加(a.異なる独立システムの統合、b.システムの分割)→②階層レベルの増大(a.サブシステム間の主従関係の成立、b.階層レベルの数の増加)→③階層構造から網構造への変化(a.異なるレベルのサブシステム間のリンク形成、b.異なるレベルの多様なフィードバック形成、c.リンクのダイナミゼーション)、といったラインに従います。

 

「網目状構造への移行」の進化のラインの例には、①a.コンピュータのキーボード、モニタ、マウス→①b.BIOSメモリ、ハードドライブメモリ、RAM→②a.メモリ領域をディレクトリとサブディレクトリ等に分割、②b.コンピュータを用いた制御システムはたくさんのサブシステムからなる→③a.すべての種類のコンピュータ・メモリは相互にデータを授受できる(スワップ・ファイル)、③b.スクリーン・セーバやパワー・セーバは、コンピュータの不使用時に制御権を握る→③c.ソフトウェアは相互関係(リンク)を動的に変更できる、などが挙げられます。

システムが利用するエネルギーの「進化のライン」

システムが利用するエネルギーの進化のラインは、(1)エネルギー場の利用の主傾向、(2)エネルギー場の構造、(3)進化に伴うエネルギー場の利用の順序、(4)機械的エネルギー場との組み合わせ、(5)熱的エネルギー場との組み合わせ、(6)化学的エネルギー場との組み合わせ、(7)電気的エネルギー場との組み合わせ、(8)磁気的エネルギー場との組み合わせ、(9)電磁的エネルギー場との組み合わせ、が考えられます。

 

「エネルギー場の利用の主傾向」の進化のラインでは、①単極性のシステム→②単極性のエネルギー場の利用から、逆方向(逆極性)の場同士の組み合わせの利用への移行→③時間または空間において周期的に変化する場の利用への移行、④固有振動数の利用への移行、⑤インパルス性の場や勾配を持つ場(時間または空間において不均一な場の利用への移行)、⑥異なる方向の単調場の作用、異なる周波数の振動場の作用、インパルス性の場の作用などの組み合わせへの移行(それらの場の組み合わせの結果として、あるシステム効果を生み出す)、といったラインに従います。

 

「エネルギー場の利用の主傾向」の進化のラインの例には、①破壊のために一定の圧力を加える→②圧力を増加させてから一気に落とす→③周期的に圧力をかける、または超音波圧をかける→④共鳴振動を使って破壊する→⑤強い衝撃を使って破壊する→⑥一定圧と衝撃とを組み合わせる、などが挙げられます。

 

「エネルギー場の構造」の進化のラインでは、①エネルギーの働き方に空間的に何らかの構造を持たせることを考える(勾配を持った場、非対称の場、同じ形が反復する場、一箇所あるいはいくつかの場所に集中的に働く場、など)→②エネルギーの働き方に時間の観点で見た構造を持たせることを考える(漸増する場、漸減する場、変調する場、交互に逆転する場、など)→③空間・時間双方に関係する構造を持たせることを考える(定常波、移動する波、移動する光束、周期的にゆれる光束、など)→④システムあるいは使われている素材の固有振動数とエネルギー場の空間的あるいは時間的構造とを同調させる、といったラインに従います。

 

「進化に伴うエネルギー場の利用の順序」の進化のラインでは、①機械的作用→②熱的作用→③化学的作用→④電気的作用→⑤磁気的作用→⑥電磁気的作用といったラインに従います。

 

「① 機械的作用」では、物体の運動;重力;慣性;遠心力;圧力変化;内部応力;摩擦;表面張力、粘着など;流体力;気体力;爆発;衝撃;振動;揺動;音響(可聴下音、超音波、極超音波);などが挙げられます。

 

「② 熱的作用」では、加熱、冷却、熱(赤外)線、熱流、温度の安定化、温度勾配の利用、熱応力、温度ヒステリシス、温度境界層、熱ショック、熱サイクル、などが挙げられます。

 

「③ 化学的作用」では、分子の合成と分解;結晶、阻害物質の利用;高活性物質の利用、オゾン、フッ素、など;不活性物質の利用;重合、重縮合;生物化学の利用;匂い、味、などが挙げられます。

 

「④ 電気的作用」では、静電気、電荷による効果(帯電、各種放電など);電流、電流による物質への効果(電気分解、電気泳動など)、などが挙げられます。

 

「⑤ 磁気的作用」では、磁化、消磁、誘導、電流の生成、磁気力、電磁力、物質特性への効果、などが挙げられます。

 

「⑥ 電磁気作用」では、可視光、赤外線、紫外線の放射;電磁波、電波;各種の放射線、放射能、などが挙げられます。

 

「機械的エネルギー場との組み合わせ」の進化のラインでは、①機械的エネルギー場+熱的エネルギー場(機械的動作(摩擦、ランク効果、気体の圧縮と膨張、など)で加熱および冷却、など)→②機械的エネルギー場+化学的エネルギー場(機械的作用(たとえば、摩擦)の下での化学反応、など)→③機械的エネルギー場+電気的エネルギー場(機械的作用(摩擦による帯電など)による電界の生成、など)→④機械的エネルギー場+磁気的エネルギー場(機械的作用の下での磁気特性の変化(たとえば、衝撃による消磁)、など)、といったラインに従います。

 

「熱的エネルギー場との組み合わせ」の進化のラインでは、①熱的エネルギー場+機械的エネルギー場(熱機械効果(加熱や冷却による物体の機械的特性の変化、形状記憶、熱膨張、など)→②熱的エネルギー場+化学的エネルギー場(温度を変えることによる化学的プロセスの制御、など)→③熱的エネルギー場+電気的エネルギー場(温度を変えることによる電界の生成や制御、電子素子の熱結合、など)→④熱的エネルギー場+磁気的エネルギー場(温度を変えることによる磁界の制御、など)、といったラインに従います。

 

「化学的エネルギー場との組み合わせ」の進化のラインでは、①化学的エネルギー場+機械的エネルギー場(化学的作用による機械的エネルギー場(爆発、など)の生成、など)→②化学的エネルギー場+熱的エネルギー場(化学的な発熱反応、吸熱反応、など)→③化学的エネルギー場+電気的エネルギー場(化学的作用による発電(たとえば、電池内の反応)、など)→④化学的エネルギー場+磁気的エネルギー場(化学的作用による磁気特性の変化、など)、といったラインに従います。

 

「電気的エネルギー場との組み合わせ」の進化のラインでは、①電気的エネルギー場+機械的エネルギー場(電荷や電流の機械的作用、など)→②電気的エネルギー場+熱的エネルギー場(電荷や電流による加熱や冷却、など)→③電気的エネルギー場+化学的エネルギー場(電流の化学的作用(イオン化、電気分解、など)、など)→④電気的エネルギー場+磁気的エネルギー場(電流による磁界、電界と磁界の相互作用、電磁界、など)、といったラインに従います。

 

「磁界的エネルギー場との組み合わせ」の進化のラインでは、①磁界的エネルギー場+機械的エネルギー場(磁気的作用の下で生じる機械的現象)→②磁界的エネルギー場+熱的エネルギー場(磁気的作用の変化の下での温度の変化、など)→③磁界的エネルギー場+化学的エネルギー場(磁界による化学反応の制御、など)→④磁界的エネルギー場+電気的エネルギー場(交番磁界による電流の生成、磁界中の電荷軌道の変化、渦電流、など)、といったラインに従います。

 

「電磁的エネルギー場との組み合わせ」の進化のラインでは、①電磁的エネルギー場+機械的エネルギー場(光圧、放射線の照射や放射性崩壊による物質のサイズや密度の変化、など)→②電磁的エネルギー場+熱的エネルギー場(放射による加熱や冷却、渦電流(マイクロ波)による加熱、など)→③電磁的エネルギー場+化学的エネルギー場(放射による化学的変化の開始、活性化、不活化、など)、といったラインに従います。

システムが利用する物質の「進化のライン」

システムが利用する物質の進化のラインは、(1)新しい物質(資源)の追加、(2)環境の有効利用、(3)異なる物理的状態の物質の利用、(4)異なるレベルの物体構造の資源の利用、(5)物質のマッチング、(6)物質マッチングのシスト、(7)物質のミスマッチング、が考えられます。

 

「新しい物質(資源)の追加」の進化のラインでは、①すぐに利用できる物質資源を利用する→②派生させた物質資源を利用する→③何らかの重要機能を行うことができる物質を利用する、といったラインに従います。

 

「① すぐに利用できる物質資源を利用する」では、システムやその周辺の物を構成している、あらゆる種類の物質資源が利用できます。たとえば、a.廃棄物、b.原料/原産物(未完成品)、c.システム要素(部品、部材)、d.安価な物質(水、空気、土砂、雪など)、e.物質の流れ(移動)、f.物質の特性、などが挙げられます。

 

「② 派生させた物質を利用する」では、利用可能な物質資源を変換して(変化させて)から利用します。たとえば、a.廃棄物の変換、b.原料/原産物(未完成品)の変換、c.他の物質への変換、d.水の変換、などが挙げられます。

 

「③ 何らかの重要機能を行うことができる物質を利用する」では、a.検出(さまざまな場の指標や源)を可能にする物質(応力ゲージとなる変換子、色剤、塗料;バイメタル、液晶、熱電対;化学指示薬;発光物質、感光物質;強く特異な匂い、味、色変化特性をもつ物質;強磁性材;放射性物質、など)、b.エネルギー放出、吸収、蓄積、変換できる物質(弾性材、爆発材、テルミット(発熱材)、熱蓄積材、放射性物質、など)、c.破壊、除去が容易な物質(蒸発、燃焼、分解、溶解する物質;解離、イオン化する物質、など)、d.場の影響や相変化により寸法、体積、形状が変わる物質(バイメタル;融解や凝固により寸法が大きく変わる物質(水と氷、ビスマスなど);圧電材、磁歪材;形状記憶材、など)、などが挙げられます。

 

「環境の有効利用」の進化のラインでは、環境をより経済的に、より安全に利用するアプローチは、①資源を今までより効果的に使用することによって消費を減らす→②廃棄物の減少、の2つがあるとしています。

 

「① 資源を今までより効果的に使用することによって消費を減らす」では、たとえば、効率のよいエンジンによって燃料消費を削減する、原鉱から金属を得る際のロスを減らす、合金化によってスチールの防食性を高めることで鋼材の消費を少なくする、などが挙げられます。

 

「② 廃棄物の減少」では、たとえば、廃棄物の出ない製造技術、廃棄物の有効利用、閉じた生産循環(廃棄物の再利用によって、追加資源の投入や、廃棄物の発生のない生産循環)、などが挙げられます。

 

「異なる物理状態の物質の利用」の進化のラインでは、①固体(硬い、弾性、ゲル)→②液体→③気体→④固体、液体、気体の混合、といったラインに従います。

 

④固体、液体、気体の混合では、a.固体+液体の混合(液体を満たした多孔質材料、濡れた(湿った)固体材料、液体中に浮いた固体物、コロイド液)、b.固体+気体(気体を満たした多孔質材料、気体中に浮いた固体物、埃、煙)、c.液体+気体(気体を満たした液体、気体中に浮いた液体、湿った気体、泡、霧、液体蒸気と気体の混合物)、などが挙げられます。

 

「異なるレベルの物体構造の資源の利用」の進化のラインでは、①マクロ・レベル→②単純な幾何学的形状の要素からなるポリ・システム→③小さな要素からなるポリ・システム→④ナノレベルの現象の利用に基づくシステム→⑤物質構造(超分子レベル)に関連した現象の利用に基づくシステム→⑥分子現象の利用に基づくシステム→⑦原子現象に基づくシステム→⑧物質に代えて場の作用の利用に基づくシステム、といったラインに従います。

 

「異なるレベルの物体構造の資源の利用」の進化のラインの例としては、①特別な部品を組み立ててなる大きい歯車→②プレス成型板を積層してなる歯車→③粉体の金属(焼結金属)からなる歯車→④歯車の潤滑剤のナノ粒子→⑤圧電材料による歯車→⑥歯車の化学的修復(自動車オイル中の銅合金ナノ粒子)→⑦例なし→⑧非接触磁気歯車、などが挙げられます。

 

「物質のマッチング」の進化のラインでは、①部品の材料をマッチさせる(その部品全体で特性を等しくする:材料の純度を上げる→材料内の異質(不均質)をなくす→内部応力をなくす)→②異なる部品間で材料をマッチさせる(異なる機能を果たす複数部品に同じ材料を使う→同じまたは類似の特性を持つ異なる材料を使う→異なる材料が接触する箇所における接触現象をなくす)→③自己マッチング(機械的な自己マッチング→化学的な自己マッチング)、といったラインに従います。

 

「物質のマッチング」の進化のラインの例としては、①純鉄は腐食しない→タービンブレードにチタン単結晶合金を使う→硬化鋼の応力解放→②純銅を純銅で包装して汚染を防ぐ→熱膨張係数の等しい複数材料で真空管を作る→電気化学ポテンシャルの等しい材料を使うことで接触部品間の腐食を防ぐ→③摩耗による自己マッチング→アルミニウムの自己保護酸化膜、などが挙げられます。

 

「物質マッチングのシフト」の進化のラインでは、①部品の材料マッチングのシフト(その部品内で異なる特性の材料を用いる:直接合金→材料内での異質(内部構造)を生み出す→材料内で内部応力を生み出す)→②異なる部品間で材料マッチングのシスト(追加機能を得るために材料特性の違いを利用する→異なる材料が接触する箇所における接触現象を利用する→マッチングのシフトを生む特別の特性を持つ境界層を作る)→③自己マッチング、といったラインに従います。

 

「物質マッチングのシフト」の進化のラインの例としては、①ステンレス鋼(異材料間の特別の作用が腐食を防ぐ)→表面硬化材料;カーボンファイバー複合材料、など→コンクリート中のプリストレス鉄筋→②バイメタル材料→電気防食(犠牲材料)→高品質光学システムにおいてレンズの光学特性を高めるために反射防止コーティングを施す→③靴底や鉄道車両の機械的摩耗、などが挙げられます。

 

「物質のミスマッチング」の進化のラインでは、①部品の材料のミスマッチング→②異なる部品間で材料のミスマッチング(部品間のインターフェースの特性を変える→有害または不必要なエネルギーの流れを反射、方向転換、吸収、などする境界層を設ける、といったラインに従います。

 

「物質のミスマッチング」の進化のラインの例としては、①特定の波長の光は通さない光ファイバー→②異なる特性を提供する多層の材料を用いる(たとえば、宇宙服用の反射、断熱、耐圧性を持った複合材料)→鋼のクロムメッキなどの保護層、などが挙げられます。

システム内の作用の「進化のライン」

条件に応じて特定の場所や特定の時間に作用の強度を増加、減少、または安定化させるなど、作用のいかなる操作も、何らかの制御になります。

 

システム内の作用の進化のラインは、(1)作用の制御可能レベルの向上、(2)作用の種類の変化、(3)流れを使った作用の制御、(4)時間資源の利用、(5)作用の空間の制御、(6)環境への関与、(7)媒質を変えることによる作用の制御、が考えられます。

 

「作用の制御可能レベルの向上」では、①制御システム(物)の導入→②制御場の導入→③制御場の下のでの制御物の導入→④フィードバックまたはフィードフォワードを用いた制御→⑤一作用に代えて、複数作用のチェーンを導入し、その内少なくとも一作用を制御する→⑥巧みに制御された逆作用の利用→⑦主たる作用を、別の作用の制御に利用、といったラインに従います。

 

「作用の制御可能レベルの向上」の進化のラインの例としては、①水流を制御するためにバルブを使う→②水流を制御するために水圧を変える→③場により制御されるバルブ(ソレノイド、モータ制御など)→④定圧を維持するフィードバック制御を行うバルブ→⑤深絞りスタンピング(プレス)において、複数のステージの各々で寸法を精密制御することは難しいので、主に最終ステージで規定寸法に精密に合わせる→⑥正確に計量しがたい物を容器に正確な量だけ入れるために、まず過剰に物を入れ、次に余剰分を取り去る→⑦オリジナルの無線信号を増幅の制御に利用する、などが挙げられます。

 

「作用の種類の変化」の進化のラインでは、①異なるレベルのエネルギー密度を持つ作用を利用する←→②異なるレベルの物質構造上で進行する作用を利用する、といったラインに従います。

 

「作用の種類の変化」の進化のラインの例としては、①機械、ガス、プラズマ切断←→②機械、化学、電気研磨、などが挙げられます。

 

「流れを使った作用の制御」の進化のラインでは、ある作用またはそれに接続された他の作用で利用されているエネルギーまたは物質の流れを操作することで、その作用を制御できる可能性を検討してください。

 

「流れを使った作用の制御」の進化のラインでは、①システムに入る流れ(入力)を操作する←→②システムから出る流れ(出力)を操作する←→③作用が行われる媒質を操作する←→①システムに入る流れ(入力)を操作する、といったラインに従います。

 

「流れを使った作用の制御」の進化のラインの例としては、①電圧を使って電動モータの速度を変える←→②電動モータの速度を変えることで電動モータの負荷を変える←→③機械加工時に冷却液を使う←→①電圧を使って電動モータの速度を変える、などが挙げられます。

 

「時間資源の利用」の進化のラインでは、①作用前の時間を利用(事前の予備的操作→部分的な事前の予備的操作→事前の予備的配置)→②作用中の時間を利用(休止を使って利用→無駄時間をなくす→並行動作→グループ処理→交互動作)→③作用後の時間を利用(決定的、完結的な動作→熟成(治癒))、といったラインに従います。

 

「時間資源の利用」の進化のラインの例としては、①作用前の時間を利用(ペットボトルのキャップを開け易くするミシン目→硝子を切るとき、傷を入れた後にガラスを割る→収穫時にミックスされるよう、複数種類の穀物をミックスして一緒に畑に植える)→②作用の時間を利用(溶接時にストロボをたいて溶接個所の写真を撮る→鍬を引いて畑を耕すとき、常に土を同じ方向へ掘り起こす必要がある。右向きと左向きの刃を使うことで、往路でも復路でも同じ方向へ掘り起こすことで、復路でも有効利用する→エッチング対象の複数部品を、同時処理でエッチングし脱脂する→硝子板を削る時、複数板の硝子板を束ねることで割れを防止する→厚板を溶接する時、より深くまで届く複数の電極を順番に使う)→③作用後の時間を利用(原油の輸送と処理を同時に行う→バナナを緑のうちに収穫し、市場へ輸送中に熟させる)、などが挙げられます。

 

「作用の空間の制御」の進化のラインでは、①点作用(単点作用(1つの点での作用)→多点作用(複数の点での作用)→移動可能な作用(作用点が特定経路を移動する))→②線作用(単線作用(1つの線に沿った作用)→多線作用(複数の線に沿った作用)→複雑線作用(多角形や螺旋などの複雑な線に沿った作用)→移動可能な作用(作用線が特定経路を移動する))→③面(表面、境界面)作用(単面作用(1つの面上での作用)→多面作用(複数の面上での作用)→複雑面作用(双曲面、楕円面、メビウスの帯などの複雑な面での作用)→移動可能な作用(作用面が特定経路を移動する))→④立体作用(単立体作用(1つの立体内での作用)→多立体作用(複数の立体内での作用)→複雑立体作用(多孔、間隙、共鳴構造など複雑な形状を持つ立体内での作用)→移動可能な作用(作用立体が特定経路を移動する))、といったラインに従います。

 

作用の変遷は循環的(捉え方に応じて変わる。たとえば、点も立体といえる。)です。①点作用→②線作用→③面作用→④立体作用→①点作用→・・・。

 

「作用の空間の制御」の進化のラインの例としては、①点作用(電灯→外科手術用の多重→TVスクリーン面上での走査点)→②線作用(単線フィラメント(白熱灯)→多線フィラメント(白熱灯)→螺旋フィラメント(白熱灯)→娯楽(ショウなど)用のレーザビーム演出(白煙中の光線など))→③面(蛍光灯(一層コートによる発光)→高輝度蛍光灯(多層コート)→集光形蛍光灯(放物面コート)→ミラーボール(壁、天井、床上で動く光点))→④立体作用(水銀灯(ガス体積が発光する)→多色発光レーザにおける複数種の結晶→ニオブ化学(液体)レーザ→移動可能で自在に形状が変わる液体を使った化学レーザ)、などが挙げられます。

 

「環境への関与」の進化のラインでは、①環境からシステムを保護→②システムからの環境の保護→③環境の自動的な使用→④環境を積極的に活用、といったラインに従います。

 

「環境への関与」の進化のラインの例としては、①アルゴン雰囲気中での溶接→②自動車用触媒コンバータ→③船は海水を浮きまたは錘として受動的に使う→④内燃機関は空気を使う、などが挙げられます。
「媒質の変更による作用の制御」の進化のラインでは、①当該作用・システムに特化していない媒質(a.媒質・環境から作用を保護する(自然的媒質(空気、水、大地など)→生命活動的媒質(たとえば、畜産場で出る化学的に非常に活性な廃棄物)から→技術的媒質(排ガス、産業廃棄物など)から)→b. 作用、作用による消費、作用の結果から媒質・環境を保護する(空気→水→大地→宇宙)→c.媒質を利用する(媒質物質をそのまま、システムに取り込まずに利用する→媒質物質を変化させ、システムに取り込まずに利用する→媒質物質をそのまま、システムに取り込んで利用する→媒質物質を変化させ、システムに取り込んで利用する(システム、媒質を保護する境界層として利用→システムの構成要素として利用)→拡張的なシステム資源として媒質を使う→媒質場をそのまま使う→媒質場を変化させて使う(エネルギー種類を変更、エネルギー流を集中させるなど)→追加の有用資源の供給源として媒質を使う→②当該作用・システムに特化した媒質(a.保護用の媒質(環境の影響から保護→システムで作られる有害要素から保護)→b.作用を強化する媒質)、といったラインに従います。

 

「媒質の変更による作用の制御」の進化のラインの例としては、①当該作用・システムに特化していない媒質(a.媒質・環境から作用を保護する(自然的、生命活動的、技術的媒質のいずれについても:保護用の塗料、エナメル、コーティング、酸化膜など)→b. 作用、作用による消費、作用の結果から媒質・環境を保護する(触媒式排ガス浄化装置→排水浄化フィルタ→樹木、草原、森林)→c.媒質を利用する(飛行機は空気を利用する、船は水を利用する→水冷却塔は空気を利用するが、そのとき空気を少しだけ変化させる→船はバラストとして海水をそのまま取り込んで利用する→媒質物質を変化させ、システムに取り込んで利用する(海水の氷の層で船体外面を腐食から保護する→熱気球は外気を熱して部品として取り込む)→燃焼使用済みの空気を拡張用途(加熱、増速など)に利用する→材料の自重送り→太陽電池は光エネルギーを電気エネルギーを変化させて利用する→空気を窒素、酸素、水素などの供給源として利用する、などが挙げられます。

システムのアウトプットとしての機能の「進化のライン」

どんなシステムについても、進化のラインのレベルまで掘り下げて考えることによって、そのシステムが今後どのように発展してゆくのか、一層具体的なアイデアを得ることが可能になります。

 

システムの基本的要素を踏まえてシステムの進化の過程を追跡する考え方は、アルトシューラが1970年代に開発した物質-場分析に基づくものです。

 

その後、米国のアイディエーション・インターナショナル社のボリス・ズローチンとアラ.ズスマンとは技術進化の予測を行う目的でこれを更に発展させました。

 

ところで、進化のラインには、システムの基本的な要素である「機能」「プロセス」「物質」「エネルギー=場」「構造」がそれぞれ進化してゆく過程で働いているライン(これを「一般的な進化のライン」という)と、特定の分野に限定された進化のライン(これを「特定的な進化のライン」という)とがあります。

 

一般的な進化のラインとしてのシステムのアウトプットとしての機能の進化のラインは、(1)有用機能の進化、(2)有害機能の進化、(3)過大な有益作用の進化、(4)システムの機能の発達、(5)システムの機能資源への投資、が考えられます。

 

このうち、(1)有用機能の進化のライン、(2)有害機能の進化のライン、(3)過大な有益作用の進化のラインについては、標準解の体系に基づいています。

 

あらゆる人工的システムは何らかの機能を得るために作られます。通常、機能はなんらかの対象に特定の作用をもたらすことを意味します。その作用は、なんらかの別の要素によって実現されます。

 

この状況を三角形の図式モデル(これを「三角モデル」という)で表現することができます。三角形の(底辺の)2つの頂点は作用を受ける要素と作用を与える要素とを意味します。この要素を物質-場分析で用いる用語として「物質」と呼んでいます。

 

三角形の三つ目の頂点はそこで働いている作用(「場」と呼びます)を意味することとします。「物質」は、たとえば、なんらかの物や道具ということになります。一方「場」は何らかのかたちのエネルギー作用です。

 

一般的に、しかるべき機能をはたしているシステムは、2つの「物質」と1つの「場」からなる完全な物質-場の三角形を作っています。

 

そこで、システムのアウトプットとしての機能の進化のラインのうちの「有用機能の進化のライン」では、①システムの不完全な物質-場モデルを完全な物質-場モデルに変換する→②システムの不完全な物質-場モデルを良好な物質-場に変換する(作用を強化する第2の場を追加する、または作用を強化する第2の場と第3の物質を追加する)→③システムの制御不能な物質-場モデルを制御可能な物質-場モデルへ変換する(システムを制御する第2の場を追加する、またはシステムを制御する第2の場と第3の物質を追加する)→④既存の場を変形した変形既存場を利用する→⑤場を変形する補助的な物質-場モデルを導入する、といったラインに従います。

 

「有害機能の進化のライン」では、有害な相互作用がある物質-場モデルを有害な相互作用のない物質-場モデルに変換するために以下のラインに従います。
①有害な相互作用を防止・排除する第2の場を追加する→②第2の場を追加する補助的な物質-場モデルを導入する→③有害な相互作用を防止・排除する物質を追加する→④変形した物質(既存資源)を追加する→⑤物質を変形する補助的な物質-場モデルを導入する→⑥相殺作用を導入する
ただし、有害な相互作用を防止・排除は、システムの有益機能に悪影響を与えないようにして行います。

 

「過大な有益作用の進化のライン」では、過大な有益作用(有害作用を含む)がある物質-場モデルを適度な有益作用のある物質-場モデルに変換するために以下のラインに従います。
①作用の過大部分を防止・排除する第2の場を追加する→②第2の場を追加する補助的な物質場モデルを導入する→③作用の過大部分を防止・排除する物質を追加する→④変形した物質(既存物質)を追加する→⑤物質を変形する補助的な物質-場モデルを導入する→⑥作用の過大部分を相殺する作用を導入する

 

「システムの機能の発達の進化のライン」では、①ある基本有益機能を行うシステムの開発→②改良された基本有益機能を持つシステム→③基本有益機能に寄与する補助機能の開発→④快適、運送・保管の利便、審美性など、追加的特徴を提供する補助機能の追加→⑤システムの弱点・欠点を補う補助機能の追加→⑥安全保障のための補助機能の追加、というラインに従います。
「システムの機能の発達の進化のライン」の例としては、①遠隔通信の可能性の提供→②通信音質の改善→③自動接続、会議通話などの導入→④ワンタッチダイヤル、リダイヤル、コードレス、上品なデザインなどの導入→⑤迷惑なボイスメールや迷惑な発信者の排除→⑥盗聴からの保護、が挙げられます。

 

「システムの機能資源への投資の進化のライン」では、①ある基本有益機能を持つシステムの既存市場→②システムが資源として働く追加機能の発見→③1以上の既発見の追加機能を実行する新製品の開発→④各新製品の市場領域の形成というラインに従います。
「システムの機能資源への投資の進化のライン」の例としては、①遠隔の通信→②誰かが人、財産を侵害した場合の警察への通報→③電話回線を用いる警報システム→④いろいろな警報システムの市場、が挙げられます。

Ideationプロセスの「結果の評価」

IdeationTRIZ(I-TRIZ)は、アルトシューラの開発した古典的TRIZと違って、より実践的であって、解決コンセプトの実現可能性、信頼性、優位性を高める工夫がなされています。

 

解決コンセプトの実現可能性を高めるためにIdeationプロセスでは、中核問題についてのアイデアを出した後で、問題の様々な側面にそれぞれ対処する複数のアイデアを組み合わせることによって、状況を大きく改善する解決コンセプトとしてまとめあげる作業を行います。

 

アイデアを組み合わせる理由は、個々のアイデアには長所もあれば短所もあり、一方、優れた解決コンセプトは長所はあるが短所はないというものでなくてはならないからです。

 

アイデアを組み合わせるには、(1)同一の機能をねらったアイデアを組み合わせる、(2) 既存のシステムを組み合わせることで解決コンセプトのアイデアを得る、(3)解決コンセプトができたらそれを単純化することを試みる、といった方法を採用します。

 

問題解決作業の目標は、実行可能な解決コンセプトを1つ、場合によっては複数まとめあげることです。

 

解決コンセプトを評価するときには、アイデアに欠点や潜在的な問題が予測されるからといってその案を捨ててしまえば、残る案は1つもなくなってしまいます。案を捨てるのではなく、案に付随する顕在的・潜在的な欠点そのものを二次的な問題ととらえるようにします。その後、二次的な問題を解決する方法を考え出します。これにより、実現可能性を高めることができます。

 

解決コンセプトに関連して二次的な問題があることに気づいてもその案を放棄しません。二次的な問題はもう1つの問題があるというだけのことです。しかも、二次的な問題の解決は、多くの場合、当初の問題を解決するよりも容易です。

 

二次的な問題に取り組む時には、まずIdeationTRIZが定めた「標準問題」のなかに該当するものがないか検討してください。

 

対象としている問題を「標準問題」の1つとみなすことができれば、IdeationTRIZの知識ベースを直接適用することが可能です。

 

下記の「標準問題」リストから課題のありかたに類似性のある項目を選択し、適合性のあるリンクをたどっていくと、対応する解決ヒント集(オペレータ)に到達します。

 

(1)生産性を改善する、(2)利便性を改善する、(3)信頼性の向上、(4)機械的強度を改善する、(5)製造精度を改善する、(6)コストを低減する、(7)単純化、(8)重量を軽減する、(9)エネルギー消費を低減させる、(10)浪費時間を減少させる、(11)機能効率を向上させる、(12)変形、ずれ、衝撃、振動、破壊を抑制する、(13)騒音を低減させる、(14)摩耗を低減させる、(15)汚染を軽減する、(16)過熱を回避する、(17)環境との相互作用を減少させる

 

また、二次的な問題は、(1)どのようにして特性、機能、適応性を改善するかといった「有益機能を改善する」問題、(2)どのようにして有害な特性を排除、低減、防止するかといった「有害機能の排除、低減、防止」に関する問題、(3)ある有益機能は有益な結果を供給しなくてはならない、同時に有害機能を引起してはならない。どのようにシステムを変化させることで、望む有益な結果を実現し、有害な結果はなくなるか軽減されるようにするかといった「矛盾解決」問題、のいずれに該当するかを判定し、それぞれの問題のパターンに対応する解決ヒント集(オペレータ)を参照して、問題解決を図ります。

 

もうひとつの方法は、二次的な問題についてプロブレム・フォーミュレータを使って因果関係モデルを作成することです。

 

当初に作った問題状況の因果関係モデルに検討中の解決コンセプトを実行した場合の状況と、それに付随する二次的な問題を書き加えてください。

 

因果関係モデルで、新たに描き加えたボックス(有益機能または有害機能)を選択して、追加したブロック(新たに描き加えたボックスの集まり)に関連する新しい解決指針を得て、その課題を実現する解決ヒント集(オペレータ)を参照して、二次的な問題の解決を図ります。

 

当初の問題を完全に解決する完璧な解決コンセプトでも、実行に移すと予期せぬ不具合がおこることがあります。既存のシステムを改善する新しい方策を導入した際に起こるかもしれない潜在的不具合を事前に予測するために、Ideationプロセスでは、逆転の発想をします。

 

つまり、「気がつかないようなどんな不具合がおこるだろうか」と考える代わりに、問題を逆転させて不具合を故意に引き起こす、あるいは、可能な不具合を「発明する」ことを試みます。その後、逆転の発想により発見した不具合を予防する方法を考えます。これにより、解決コンセプトの信頼性を高めることができます。

 

さらに、対象システムが進化のライン上でどの段階にあるか特定することで、今後どのように変化していくか予測することができます。そして、解決コンセプトが進化のパターンに合致していれば、それが従来の方法より理想性の高いものであることが確認でき、その優位性が保証されたことになります。