システムのアウトプットとしての機能の「進化のライン」

どんなシステムについても、進化のラインのレベルまで掘り下げて考えることによって、そのシステムが今後どのように発展してゆくのか、一層具体的なアイデアを得ることが可能になります。

 

システムの基本的要素を踏まえてシステムの進化の過程を追跡する考え方は、アルトシューラが1970年代に開発した物質-場分析に基づくものです。

 

その後、米国のアイディエーション・インターナショナル社のボリス・ズローチンとアラ.ズスマンとは技術進化の予測を行う目的でこれを更に発展させました。

 

ところで、進化のラインには、システムの基本的な要素である「機能」「プロセス」「物質」「エネルギー=場」「構造」がそれぞれ進化してゆく過程で働いているライン(これを「一般的な進化のライン」という)と、特定の分野に限定された進化のライン(これを「特定的な進化のライン」という)とがあります。

 

一般的な進化のラインとしてのシステムのアウトプットとしての機能の進化のラインは、(1)有用機能の進化、(2)有害機能の進化、(3)過大な有益作用の進化、(4)システムの機能の発達、(5)システムの機能資源への投資、が考えられます。

 

このうち、(1)有用機能の進化のライン、(2)有害機能の進化のライン、(3)過大な有益作用の進化のラインについては、標準解の体系に基づいています。

 

あらゆる人工的システムは何らかの機能を得るために作られます。通常、機能はなんらかの対象に特定の作用をもたらすことを意味します。その作用は、なんらかの別の要素によって実現されます。

 

この状況を三角形の図式モデル(これを「三角モデル」という)で表現することができます。三角形の(底辺の)2つの頂点は作用を受ける要素と作用を与える要素とを意味します。この要素を物質-場分析で用いる用語として「物質」と呼んでいます。

 

三角形の三つ目の頂点はそこで働いている作用(「場」と呼びます)を意味することとします。「物質」は、たとえば、なんらかの物や道具ということになります。一方「場」は何らかのかたちのエネルギー作用です。

 

一般的に、しかるべき機能をはたしているシステムは、2つの「物質」と1つの「場」からなる完全な物質-場の三角形を作っています。

 

そこで、システムのアウトプットとしての機能の進化のラインのうちの「有用機能の進化のライン」では、①システムの不完全な物質-場モデルを完全な物質-場モデルに変換する→②システムの不完全な物質-場モデルを良好な物質-場に変換する(作用を強化する第2の場を追加する、または作用を強化する第2の場と第3の物質を追加する)→③システムの制御不能な物質-場モデルを制御可能な物質-場モデルへ変換する(システムを制御する第2の場を追加する、またはシステムを制御する第2の場と第3の物質を追加する)→④既存の場を変形した変形既存場を利用する→⑤場を変形する補助的な物質-場モデルを導入する、といったラインに従います。

 

「有害機能の進化のライン」では、有害な相互作用がある物質-場モデルを有害な相互作用のない物質-場モデルに変換するために以下のラインに従います。
①有害な相互作用を防止・排除する第2の場を追加する→②第2の場を追加する補助的な物質-場モデルを導入する→③有害な相互作用を防止・排除する物質を追加する→④変形した物質(既存資源)を追加する→⑤物質を変形する補助的な物質-場モデルを導入する→⑥相殺作用を導入する
ただし、有害な相互作用を防止・排除は、システムの有益機能に悪影響を与えないようにして行います。

 

「過大な有益作用の進化のライン」では、過大な有益作用(有害作用を含む)がある物質-場モデルを適度な有益作用のある物質-場モデルに変換するために以下のラインに従います。
①作用の過大部分を防止・排除する第2の場を追加する→②第2の場を追加する補助的な物質場モデルを導入する→③作用の過大部分を防止・排除する物質を追加する→④変形した物質(既存物質)を追加する→⑤物質を変形する補助的な物質-場モデルを導入する→⑥作用の過大部分を相殺する作用を導入する

 

「システムの機能の発達の進化のライン」では、①ある基本有益機能を行うシステムの開発→②改良された基本有益機能を持つシステム→③基本有益機能に寄与する補助機能の開発→④快適、運送・保管の利便、審美性など、追加的特徴を提供する補助機能の追加→⑤システムの弱点・欠点を補う補助機能の追加→⑥安全保障のための補助機能の追加、というラインに従います。
「システムの機能の発達の進化のライン」の例としては、①遠隔通信の可能性の提供→②通信音質の改善→③自動接続、会議通話などの導入→④ワンタッチダイヤル、リダイヤル、コードレス、上品なデザインなどの導入→⑤迷惑なボイスメールや迷惑な発信者の排除→⑥盗聴からの保護、が挙げられます。

 

「システムの機能資源への投資の進化のライン」では、①ある基本有益機能を持つシステムの既存市場→②システムが資源として働く追加機能の発見→③1以上の既発見の追加機能を実行する新製品の開発→④各新製品の市場領域の形成というラインに従います。
「システムの機能資源への投資の進化のライン」の例としては、①遠隔の通信→②誰かが人、財産を侵害した場合の警察への通報→③電話回線を用いる警報システム→④いろいろな警報システムの市場、が挙げられます。