好きな仕事でピンチになろう

未だ誰も解いたことのないような技術的問題(技術的な難問)に直面した場合、ほとんどの人は決まった方法論もなしに、考えついた色々な解決策(思いつき)を行き当たりばったり並べ立てます。それは、その人の知識経験に基づいた試行錯誤法とでもいうべきものです。
試行錯誤法とは、こうしたらどうかというアイデアが思いついたらそれを試行し、失敗し、また別のアイデアを試行するといった試行と失敗の繰り返しのたくさん経験した結果、ようやくうまくいきそうなアイデアに辿りつくといった具合です。いつうまくいきそうなアイデアに辿りつくかはわかりません。いつまでたってもよいアイデアに辿りつかないこともあります。
創造技法といえば、ブレーンストーミング、オズボーンのチェックリスト法、シネクティクス、等価変換理論、NM法とTRIZがあげられるでしょう。
技術的な難問を解く場合には、その分野の専門知識を有する人以外は、試行錯誤法の支援ツールであるブレーンストーミングやオズボーンのチェックリスト法を使っても歯が立ちません。
技術的な難問に立ち向かうには、シネクティクス、等価変換理論、NM法やTRIZを使います。これらは、ブレーンストーミングやオズボーンのチェックリスト法とは違い、類比思考を採用しています。
類比思考とは、よくわからない事象を自分がよく知っている事象にたとえて考える方法です。積極的に異分野の知識を使う方法といってもよいでしょう。しかし、技術的な難問に直面したときに、最初から類比思考を採用することはありません。
最初は、自分の知識経験に基づいて、問題の状況の因果関係を辿った論理思考を徹底的に行います。その結果、どうしてもアイデアが浮かばないといった後で、初めて類比思考に取り組みます。
なぜならば、論理思考で解ければその方が速いからです。また、その方が実現可能性が高いアイデアが得られるからです。
これに対して、類比思考を使って浮かんだアイデアは、現実から飛躍した実現可能性が低いものがほとんどです。そのため、具体性も乏しい場合が多いといえます。通常は、そのアイデアを具体化するためのアイデアが別に必要になります。
ではなぜ類比思考を採用するかといえば、他に方法がないからです。
あれこれと自分の知る限りの知識と経験に基づいた論理思考をしてもよいアイデアが浮かばなかったというのであれば、もうそれ以上考えようがない状態にまで追い詰められているわけです。
それでも考えなければならい場合、人間は自動的にイメージ思考をすることになります。これは直観への入口です。因果関係という論理的な言葉の世界から感覚的なイメージの世界へと、思考の場面が切り替わるわけです。脳が過去の記憶の中から問題解決に役立ちそうな似たもののイメージを自動的に探しに行きます。
とことん追い込まれた経験のある方にはわっていただけることでしょう。そのような経験のない方には、そういうものなのだと思っていただくしかありません。
そのような状態で問題解決のヒントが得られることがあるわけですが、これをピンチのときの知恵といいます。
自分の好きなことに夢中になっているときにも、次から次へとイメージがわいてくる経験をしたことがあるでしょう。そのようなときも、どんどん色々なアイデアが浮かんでいたのではないでしょうか。「好きこそものの上手なり」のことわざどおり、夢中の知恵といえるものが出たのです。
以上のように、知恵を出すにはピンチか好きかのいずれかの状態が必要になります。過去の知恵者といわれる人々は、好きな仕事でピンチになっていたわけです。
ここで、アイデアと知恵の違いは何かといえば、アイデアは出すものであって、知恵は出るものということです。知恵が出れば、意図的にアイデアが出せるわけです。
皆さんも好きな仕事でピンチになってみてください。必ずや、問題は解けることでしょう。

因果関係と因果縁報

読書したりセミナーを受講したりして知識を獲得する個人の問題から、いろいろと考えをめぐらして未来を創造するといった企業や社会の問題のように、小さな問題から大きな問題まで。また、ものづくりといった産業上の問題から、マーケティングといったビジネス・経営上の問題、政治・経済といった社会的な問題まで、いろいろな分野に関係する問題があります。
それらすべての問題が1つの法則で成り立っているといったら驚かれるでしょうか。
それは、因果関係の法則または因果の法則といわれるものです。
因果関係とは、2つ以上のものの間に原因と結果の関係があることをいいます(「デジタル大辞泉」、小学館発行)。「因果」とは直接的な(短時間の)原因と結果の関係を表します。これに対して、間接的な(長時間の)縁と報いの関係を「縁報」といいます。つまり、因とは直接的原因のことをいい、縁とは間接的原因ことをいう。問題によっては因果関係だけではなく、縁報関係についても考慮に入れることが必要になります。
「因果縁報」とは仏教用語です。そもそも日本には古くから問題解決学として仏教がありました。ここでいう仏教とは宗教としての意味ではなく、お釈迦様の思考方法に限った意味です。つまり、お釈迦様は人の悩みを救うにはどうしたらよいいか、を考えたといわれています。
人が持つ悩みとは、自分が直面している「問題」が解けないことと考えることができます。なぜうまくいかないかと、その原因を追求して、どうしたらいいかとあれこれ考えた末、その結論を出せないで悩むことになります。
日常的な悩み事から未来を創造する問題まで、すべての問題が「因果縁報」で説明できるとすれば、これを逆手に取ることでそれらの問題解決ができるのではないでしょうか。
「因果縁報」の分析が十分行われた場合には、自然と根本的な問題の所在が明確となるので、後はその根本的な問題に集中した取り組みを開始すればいいでしょう。具体的には、因果関係を図式化したダイヤグラム(以下、因果関係ダイヤグラムという。)を見て、どこをどのようにすれば、他のどこがどのように変化するかを予測しながら解決案を考えます。
さらに、変化後の「因果関係ダイヤグラム」を作成して、次に起こり得る二次的問題を事前に予測し、その二次的問題の防止策も考えます。また、変化後の「因果関係ダイヤグラム」を作成すると、そのシステムの変化後の進化レベル(発展の段階)を確認できますので、その時点での進化の潜在ポテンシャルが読めることになります。そこで、その先の進化レベルを目指すようにすれば、そのシステムをより理想的な状態に近づけることができます。