6月 20 2017

新製品開発とイノベーションの変遷

今までにない機能を実現する新しい技術が発明され、その新しい技術を使った新製品が市場に投入される(急進的イノベーション)と、最初に新しいものが好きな人がその新製品を使い始めます(Sカーブの導入期)。

 

上市されたばかりの新製品は最低限の基本機能しか組み込まれていませんが、今までできなかったことができるので、新しいものが好きな人はそれでも満足しています。

 

無事市場投入ができた後は、より多くの消費者に使用してもらうために、基本機能の性能向上や使い勝手の向上を目的とした補助機能を付加した次期製品を投入します。さらに、基本機能の性能には直接関係のない快適性などを提供する付属機能を付加した製品を投入することで更なる市場拡大を狙います(Sカーブの成長期)。

 

そして、広告や口コミでその新製品を知った一般の多くの消費者がその新製品を受け入るようになると、新製品の普及とともに私たちの生活が変化していきます。多くの一般消費者が使用するようになることで、売上が急上昇することになりますが、反面多くの企業がその市場に参入してきて企業間の技術競争が激しくなっていきます(Sカーブの成長期)。

 

新製品開発が成功した場合には、以上のような製品のライフサイクル(Sカーブ)をたどります。

 

ところで、技術主導型の新製品開発はその成功率が低いため、技術開発型の企業であっても、現在ではマーケティング主導の製品企画から始めることが多いといえます。

 

マーケティング主導の製品企画では、まず、多額の金をかけて市場調査を行い「顧客の声(VOC)」を集めます。集められた顧客の声は、統計分析を行い、その中から顧客の欲している機能を選んで優先順位をつけます。次に、顧客の欲している機能の重要度に合わせて品質機能展開(QFD)を使って、顧客の要求機能を製品の技術仕様に落とし込むことで、新製品の構想設計を行うといった開発手法が採用されています。

 

このような科学的方法を使うことで、どの会社も現在の顧客ニーズに基づいた確度の高い製品が企画できることになります。その結果、そこそこの売上が見込める新製品が完成します。

 

しかしながら、科学的方法を採用した結果、どの会社も同じような仕様の製品を完成することになるため、市場ではすぐにコモディティ化が起きてしまい、早々一般の製品と同様に価格競争に巻き込まれることになり、売上が伸びない状況に陥ることになり兼ねません(Sカーブの成熟期)。

 

そのような中、他社製品との差別化を図るために次々と新しい機能を追加するといった技術競争をしている(漸進的イノベーション)と、そのうち思わぬ新規参入企業が基本機能だけを組み込んだ低価格製品を市場に投入してきて(破壊的イノベーション)、自社の「性能が良くて使い勝手が良い高機能」の製品がほとんど売れなくなるという状況が生じます(Sカーブの衰退期)。

 

日本の家電業界の多くの新製品開発が、このような漸進的イノベーションと破壊的イノベーションによる現象に手を焼いているのではないでしょうか。

 

マーケティング主導の製品企画が盛んなときは、「顧客は製品を買うのではない。製品の機能を買うのである。」といわれていました。そのため、顧客が要求する機能を実現するための製品を開発しました。そもそも技術開発とは今欲しいと思っている機能をコストパフォーマンス良く実現するのが使命であるから、それ以上のことは責任範囲外のこととなる。

 

実は、顧客が今欲しいと思っている機能を実現することを目的とした開発自体が誤っていたのではないか、と考えられないだろうか。今は欲しいとは思っていないが将来必ず欲しいと思うようになる顧客の意味的価値(未来価値:暗黙知)を実現する新製品を開発すべきだったのでないだろうか。

 

アップルのiPod、iPhone、iPadは、顧客が感動するような外観と操作性を提供することで、他を寄せ付けない地位を確保しました。スティーブ・ジョブスは顧客の求める意味的価値をズバリ捉えた新製品開発をしていた(デザイン・ドリブン・イノベーション)としかいいようがありません。

 

顧客が求める価値が多様化している現在では、「人々は、実利的な理由だけではなく、深い感情的な理由や、心理的・社会文化的な理由からモノを買う。つまり、人々は製品を買うのではなく、その意味を買っている」という。デザイン・ドリブン・イノベーションを提唱するベルガンティの言葉です。

 

顧客の求める意味的価値は、顧客自身が気づいていないので「顧客の声」を聞くだけでは把握できません。そのため、VOCとQFDを駆使して完成した新製品は顧客の求める意味的価値とは無関係のものになっている恐れがあります。

 

技術者も一消費者であるわけですから、顧客が求める意味的価値にたどり着ける可能性はあるはずです。技術者自信が将来の顧客になりきれば、顧客が求める意味的価値を共感できるのではないでしょうか。「何が幸せか」を顧客の身になって考えることでしか、人の将来の新しい生活習慣や振る舞いを感じることができないのではないでしょうか。

 

未来の顧客は、「どんな暮らしを理想の暮らしとして掲げるか」、その「暮らしはいかにあるべきか」という理想のイメージの違いや、その理想に近づくためにどのような経路をたどろうとしているか。その違い、それがまさに各社会の文化や顧客のライフスタイルの違いなのです。新製品で新しい市場をつくるという行為は、否応なしに、新しい文化を開発するということになります。

 

デザイン・ドリブン・イノベーションは、顧客中心のいわゆる「マーケット・プル」の範疇に入るものではありません。顧客が求める意味を洞察し、それを独自の技術で実現することで文化を開発する、「意味×技術」のハイブリッド・イノベーションです。

 

日本の自動車業界は家電業界とは違い、比較的堅調な業績を上げているといえるのではないでしょうか。それは、トヨタ、ホンダ、マツダなどでは、「製品毎の開発責任者」が製品の企画から設計までをコントロールする「チーフ・エンジニア」制度を採用しており、その責任者を中心としたチーム全体の洞察力と技術開発力が功を奏しているのではないでしょうか。

 

日本の家電業界が苦戦している中で、売れる家電を出し続けているダイソンには、「消費者調査に頼らない」「広告宣伝費より技術開発に投資」「安売りはしない」という3原則があるといいます。

 

私たちはスティーブ・ジョブスやジェームズ・ダイソンのような天才技術者にはなれませんが、彼らのように「顧客の求める意味的価値」を洞察し、それを自社独自の技術(芸術的センス)で実現するといったデザイン・ドリブン・イノベーション型の「製品企画開発」に取り組む技術者にはなれるでしょう。

5月 29 2017

Ideation TRIZをものにする創造的思考の基礎

Ideation TRIZの弊社の体験セミナーなどに参加して初めてIdeation TRIZを学んだ方の中には、オペレータというヒント集を使用した「類比思考」が難しいという意見を持たれていることが、アンケートの結果からわかっています。

 

古典的TRIZの発明原理、分離の原則、発明標準解、進化の法則、工学的効果集などの複数の解決テクニックを統合した「オペレータ」というヒント集の体系を作り上げることで、初心者でもTRIZの強力な問題解決力を使いこなせるようにしたのがIdeation TRIZです。

 

しかし、使い易いはずのIdeation TRIZにも壁があったということです。

 

私たちは、過去の知識経験に加えて、特許公報や技術論文などで公開されている新しい技術知識を使って、論理的思考により問題解決を行うといった一般的な方法(帰納法、演繹法)を採用しています。このような一般的な方法でほとんどの問題が効率的に解決することになりますが、中にはこのような方法では歯が立たない問題もあります。

 

徹底的に論理的思考を行ったにもかかわらず目的とする解が得られないなら、残る方法はイメージ思考(仮説設定法)によるしかありません。創造技法の分野では、積極的にイメージ思考を使うことを「類比思考」といいます。

 

Ideation TRIZに限らず、創造的な問題解決が必要な場面では、自分の問題と本質が共通な異分野の見本(アナロジー)を参考にして、イメージ思考で解決策を手に入れることが必要になります。

 

知らないものは、知っているものに見立てて理解するしかありません。それには豊かな想像力が必要とされます。

 

創造的思考が苦手な方を、頭が固い、固定観念にとらわれている、などといいます。

 

TRIZでは、慣れ親しんだ方向の考察を熱心に行いながら、他の技術分野の観点からの検討をないがしろにする傾向を「心理的惰性」と呼びます。心理的惰性は矛盾を含んでいる発明的問題に取り組む時間を大きく浪費させ、作業に深刻な悪影響を与えます。

 

解決策が自分の専門分野の中にある場合には必要な試行の数は比較的少ないかもしれません。しかし、そうでない場合には試行錯誤を通じて解決策にたどり着くのは容易ではありません。

 

類比思考で一番難しいのは、役立つ見本をどこからどのようにして見つけてくるかということです。

 

コンピュータの助けを借りないのであれば、見本は、自分の得意分野、趣味の世界などの自分がよく知っている分野から探します。また、日常的な出来事から探します。それは、その見本に詳しいから自分の問題解決に役立てられるという前提に立っています。

 

その他には、見本は、自然界から探します。自然界にはうそがないからです。

 

コンピュータを使うのであれば、インターネット検索(異分野の特許情報を含む)で分野を特定せずに、問題解決の目的に関する「~する」といった動詞形のキーワードや、「速い」「ゆっくり」といった形容詞、副詞などの価値観に関するキーワードで、共通の目的や価値観を持った見本を探します。

 

見本が見つかったら、見本の構造とその本質を参考にすることで、課題を抱えたシステムの目的や価値観を、どんな構造やメカニズム、やり方で実現するか考えます。

 

Ideation TRIZのオペレータを使えば、あらゆる技術分野の具体的な見本および見本から抽出した問題の類型ごとの解決ヒントが約500件用意されていますので、その都度見本を探しに行かなくてもいいことになります。

 

Ideation TRIZのオペレータは発想のヒントを一般的な表現で提供しますので、オペレータを使用するためには次のような手順で類比思考を行います。

 

ステップ1:

オペレータが推奨する考え方を読みます。オペレータに付随する解説を参考にして、オペレータの狙いを理解できたか確認します。次に、(1)オペレータの考え方、(2)対象としている状況(システム)、の二つを同時に頭の中に描きます。

 

ステップ2:

頭の中でオペレータの推奨する考え方をシステムに適用してイメージしてみます。オペレータの考え方でシステムを強制的に変化させるとどのようになるか、結びつけてみます。イメージがわかない場合は、別の推奨内容を試み、次々と検討していきます。

 

ステップ3:

アイデアが浮かんだら必ず記録を残します。バカバカしいと思うようなアイデアや、無理かもしれないアイデアも記録します。こうした記録が後で役に立つのです。

 

ステップ4:

オペレータを読んでもアイデアが浮かばないときには、オペレータで推奨している内容をそのまま記載します。

 

たとえば、「並列処理」というオペレータでは、「同時に並行して実行できる複数の処理に、プロセスを分割することを検討してください。」という推奨文(解説文)が記載されていますので、アイデアとして「~(利用できる資源)を同時に並行して実行できる複数の処理に、プロセスを分割する」と未完成な状態のまま記録します。

 

そして、アイデアを見直す「方策案のまとめ」の段階で再検討し、この未完成なアイデアの「~」の部分に利用できる資源の具体的な名称を記入してアイデアを完成させます。

5月 08 2017

イノベーションの種類と「意味のイノベーション」の実現

オーストリア出身の経済学者であるヨーゼフ・シュンペーターは、1911年に「経済発展の理論」という書籍の中で、イノベーションを、経済活動の中で生産手段や資源、労働力などをそれまでとは異なる仕方で新結合することと定義しました(ウィキペディア)。

そして、イノベーションの種類として、次の5つを挙げています。

  1. 消費者の間でまだ知られていない財、あるいは新しい品質の財の生産
  2. 新しい生産方法の導入
  3. 新しい販路・市場の開拓
  4. 原料あるいは半製品の新しい供給源の獲得
  5. 新しい組織の実現

 

現代では、イギリスのイノベーション研究者であるパビットが「イノベーションとは、機会を新しいアイデアへと転換し、さらにそれらが広く用いられるようにするプロセスである。」と定義しているように、多くの学者の議論により、①アイデアが新しいだけではなく、②それが広く社会に受け入れられる、という2つの条件が揃って初めてイノベーションと呼び得る、というのが定説になっています(「日本のイノベーションのジレンマ」、玉田俊平太著、(株)翔泳社発行)。

 

従来の我が国の経済発展は、いわゆる「カイゼン」を中心とするプロセス・イノベーションや、トランジスタラジオやヘッドフォンステレオの小型軽量化によるプロダクト・イノベーションの、先進国をキャッチアップし、より強い競争力を得るといった従来製品・サービスの改良による「持続的イノベーション」を中心に遂げられてきたと考えられます(「イノベーション創出に向けた現状と課題」、総務省、平成25年版白書)。

 

持続的イノベーションには、徐々に性能を向上させる「漸進的イノベーション」と、一気に性能を向上させてライバル企業を突き放す「急進的(画期的)イノベーション」があります。両者は、技術進歩の方向が、既存顧客が重視する性能の向上であるという点で共通しています。

 

多くの人がイノベーションという言葉を聞いて思い浮かべるのは、この持続的イノベーションでしょう。しかし、イノベーションとは「新しいものを創り出すこと」であり、必ずしも製品の性能の向上を意味しているわけではありません。

 

「新しいものを創り出すこと」と「広く社会に受け入れられる」の2つの条件を満足するものとして、既存の主要顧客には性能が低すぎて魅力的に映らないが、新しい顧客やそれほど要求が厳しくない顧客にアピールする、シンプルで使い勝手が良く、安上がりな製品やサービスをもたらすイノベーションもあります。これを、従来製品・サービスの価値を破壊するという意味で「破壊的イノベーション」といいます。

 

「破壊的イノベーション」には、これまで製品やサービスをまったく使っていなかった顧客にアピールする「新市場型破壊」と、既存の主要性能が過剰なまでに進歩したために一般消費者が求める水準を超えてしまっている状況で、一部のローエンド顧客にアピールする「ローエンド型破壊」があります。

 

「新市場型破壊」の破壊的イノベーションとしては、パーソナルコンピュータの原型であるAppleⅡの当初の用途は「プログラミングやゲーム」であったものが、ビジカルクという表計算用のアプリケーションソフトが製品化された後は、家庭やビジネスで使用できる金銭勘定のための「実用品」へと変貌を遂げた例が挙げられます。

 

「ローエンド型破壊」の破壊的のベーションとしては、保温温度を何段階にも選べて、日本茶や紅茶の種類に応じて最適な温度でお茶が煎れられる機能、電動式ポンプで簡単にお湯を注ぐ機能はもちろん、その他の多くの機能を有する「湯沸かしポット」が一般家庭で使用されているときに、沸かしたお湯を保温することはできないが少ない量のお湯を短時間で沸かせる「電気ケトル」が、少人数での経済的な使用を実現した例が挙げられます。

 

何が変わるかでイノベーションを分類すると、

①企業から顧客に提供される「製品やサービス」が変わるプロダクト・イノベーション

②企業内部における「やり方」が変わるプロセス・イノベーション

の他に、③顧客の「認識」が変わるメンタルモデル・イノベーションという第三のイノベーションが考えられます(「日本のイノベーションのジレンマ」、玉田俊平太著、(株)翔泳社発行)。

 

顧客の認識とは、顧客にとっての製品やサービスの意味のことです。

そもそも、製品やサービスは技術と意味の両方の変化により生み出されます。顧客が本当に喜ぶ価値を「顧客価値」といい、「顧客価値」には「機能的価値」と「意味的価値」があります。

 

顧客価値というものは、経済状況や時代、その商品の成熟度などによって大きく変わってきます。例えば、高度経済成長期には多くの人が高性能で多機能な商品、すなわち機能的価値が高い商品を好んで選んでいましたが、今では自分の趣味やセンスに合ったものを選ぶ人が増えています。意味的価値の高い商品が好まれる時代になったのです。現在は、日本企業が得意としていた高性能・多機能の商品の顧客価値が必ずしも高いわけではないのです。商品の顧客価値は、機能的価値と意味的価値の合計ですが、現在は様々な領域で意味的価値の重要性が高まっているのです(「価値づくり経営の論理」、延岡健太郎著、日本経済新聞出版部発行)。

 

例えば、トヨタの高級車ブランドのレクサスは、単にトヨタの最高品質の自動車を開発するということではなく、最高のプロダクトを作るための新しいプロセスを作りつつ、それに相応しい新たなディーラー網を立ち上げ、そこで新次元の購入体験を提供して、顧客のメンタルモデルを変化させる必要がありました(「日本のイノベーションのジレンマ」、玉田俊平太著、(株)翔泳社発行)。つまり、プロダクト・イノベーション、プロセス・イノベーション、メンタルモデル・イノベーションの3つを同時並行で起こさなければなりませんでした。

 

古典的TRIZは、そもそも技術の進化の法則に着眼し、発明的問題(技術的革新問題)を解決することを目的として開発されました。

 

今では、Ideation TRIZの戦略的世代進化(DE:Directed Evolusion®)というツールを使うことで、技術だけではなく社会、市場、消費者の進化のトレンドを総合的に判断して、製品やサービスや事業を新しい世代のシステムへ進化させるといった価値づくりの最上流の「企画の立案」作業を効率的に進めることができるようになっています。

 

玉田氏がいうメンタル・インベーションを「意味のイノベーション」と言い換えるとすると、意味のイノベーション⇒プロダクト・イノベーション⇒プロセス・イノベーションのすべての実現に当たって、戦略的世代進化(DE:Directed Evolusion®)のツールが有効に活用できます。

4月 06 2017

非まじめ、不合理、反システム、逆転思考

現在世界中で行われるロボットコンテストの開催を最初に提唱した、日本のロボット工学の権威である東京工業大学名誉教授の森政弘博士は、「まじめは美徳であるが、まじめの基本的な性質は一面的で一方的で視野が狭い。不まじめは困るが、ここにいう『非まじめ』は、まじめに対する非まじめの意味ではない。正・反・合というように、正のまじめと、反の不まじめとを共に包括して、しかもそれを超えた徳性を『非まじめ』という」といい、「非まじめ」の実行を勧めています(「非まじめのすすめ」、森政弘著、講談社発行)。

 

企業の経営者や起業家にコーチングを提供しているポール・レンバーグが著した「不合理のマネジメント」に関する書籍では、「辞書によれば、『合理的』とは理にかなっていること、『不合理』とは理にかなっていないことを言う。しかし現実を見れば、合理的とは世の中の常識に従うことであり、不合理とは自分の心の声に従うことである」「理にかなった行動をするとは、昔から行われていたことや、ずっと昔に誰かがこうすべきだと言ったことをあたかも絶対的に正しいかのように取り上げ、その結果、素晴らしい結果をもたらすかもしれないユニークな考え方を殺してしまうことだ。」として、「不合理」の実行を勧めています(「会社を変える不合理のマネジメント」、ポール・レンバーグ著、山崎康司訳、ダイヤモンド社発行)。

 

ポール・レンバーグは、「理にかなった行動をすることはビジネスを維持するための助けになるかもしれない。しかし、それは同時に、ビジネスを大きな上昇軌道に乗せることへの妨げになる。」「ビジネスを大きく成長させたいと思うならば、未来をつくり出す自分の能力を信じなさい。」ともいっています。

 

TRIZの創始者であるアルトシューラは、「優れた設計者が質的に異なっている点は、課題として与えられたシステム(製品や技術)だけではなく、上位システムや下位システムを視野に収めているところです(「クレーン」についての課題では建設計画全体(上位システム)を変化させたり、クレーンの材質(下位システム)を変化させたりすることによって解決することも可能です)。」「もう一段高い優秀さの特徴は、それぞれのシステムレベルについて、現在の状況だけでなく、過去と未来をも視野に入れているという点です。」といい、発明者の特徴的な能力や性質について説明しています(「体系的思考を育てることがARIZを教える最終目的だ」、アルトシューラ著、TRIZ塾 http://www.trizstudy.com/)。

 

「さらにもう一段高い水準はシステムとともに反システム―クレーンに対しては反クレーン、木に対しては木の反対のもの、など―もまた視野に入れることのできる才能です。これが特に重要になるのは対象としているシステムが発展の可能性を使い尽くしていて、何か原理的に新しい物に置き換える必要がある場合です。」とし、課題として与えられたシステムが「砕氷船」の場合であれば、氷を砕かない「反砕氷船」という反システムについて検討することであるといいます。

 

こうすることで、課題に対する大胆な解決策に一気に近づくことができるとし、「反システム」を考えることを勧めています。

 

Ideation TRIZのFA(Failure Analysis)という不具合の分析と不具合の再発防止を行う手法と、FP(Failure Prediction)という不具合の予測と不具合の未然防止を行う手法では、理由のわからない「不具合」の隠れた発生メカニズムの解明と、未知の潜在的な不具合の予見のために使う従来にない有効性をもった「逆転思考」による分析方法を勧めています。

 

「逆転思考」による分析の要点は、不具合の原因を「どのようにしてそれが起きているのだろうか。」と推測するのではなく、問題を逆転させ、それを積極的な表現に置き換えることです。

 

それにより、不具合分析(FA:Failure Analysis)では、推測するのではなく何かを成し遂げようとすることで、考える人が純粋な情熱、創造力、能力や専門知識を総動員するようになります。「達成しようとすれば、道は見つかる」のです。

 

また、不具合予測(FP:Failure Prediction)においては、自分の計画や作業について「何が問題になるだろうか」と考えると、気持ちが守りに入ってしまい、否定的反応によって「私の」システムや計画について問題が発生する可能性を否定したり、最小限に見積もったりするようになってしまいます。ところが問いを逆転させて、「どのようにすれば問題を引き起こすことができるだろうか」と考えると、攻めの姿勢に転じることができます。潜在している不具合を発見することが満足感を与えてくれるので、その目的に向って自分の創造的能力を発揮するようになるのです。

 

自然の中には「良い」現象も「悪い」現象もありません。すべての現象は無色中立です。本来は中立的な自然現象も、否定的な観点から見ると見えなくなってしまうことがあるのです。つまり、実際に起きているできごとの背景にある現象のメカニズムはすべて必ず自然の法則に従っているのですから再現が可能なのです。つまり、問題を逆転することによって否定的な作用を現象として利用する視点が生まれるのです。

3月 01 2017

プロジェクト成果の評価と評価ツール

弊社ではファシリテーション型のコンサル(プロセスコンサルティング)のサービスを実施していますが、通常は本格プロジェクトの前にパイロット・プロジェクトを行うケースが多いといえます。

 

パイロット・プロジェクトは、顧客がその結果を確かめた上で本格プロジェクトに取り組むか否かを決定するためのお試し版という位置づけになります。

 

パイロット・プロジェクトと本格プロジェクトとは、プロジェクト全体の工数が違うと考えていただければ結構です。パイロット・プロジェクトでは本格プロジェクトの工程の一部を省略したり、各工程にかける時間を少なくすることで対応しています。パイロット・プロジェクト用のテーマを決めることは稀であり、本格プロジェクトと同じテーマを採用するケースが多いといえます。

 

パイロット・プロジェクトでは、時間の関係で各工程での取り組みが浅くなるため、プロジェクトの成果が物足りない結果に終わるのは否めませんが、Ideation TRIZの効果を確認するには十分な内容であると考えます。

 

プロジェクトで目的とする成果を出すためには、(1)確実に機能する思考プロセスに沿って、(2)目的に合った思考スキル(思考ツール)を選択して、(3)成果が出るまで粘り強く考える、ことが必要です。

 

プロジェクト成果の評価項目とその判定基準が事前にわかっているのであれば、その評価項目ごとに高い評価が得られるように、プロジェクトを進めることが可能です。

 

Ideation TRIZでは、漸進的イノベーションを起こすための発明的問題解決(IPS:Inventive Problem Solving)のプロジェクトや急進的イノベーションを起こすための戦略的世代進化(DE:Directed Evolution®)のプロジェクトが代表的なものです。

 

発明的問題解決(IPS)のプロジェクトであれば、(1)Ideationプロセス質問票のチェックリストによりプロジェクトを行う必要性と目的、成果の評価基準を確認する、(2)システムアプローチにより問題状況の多観点分析を行う、(3)プロブレム・フォーミュレーションにより問題状況の因果関係ダイアグラム作成し、課題を抽出する、(4)オペレータ・システムを使用したIdeation ブレーンストーミングを行い、課題を実現するアイデアを創出する、(5)アイデアの組み合わせ、単純化を行い、解決コンセプトをまとめる、(6)不具合予測手法を使用して解決コンセプトの二次的問題と発見し未然防止策を考える、(7)解決コンセプトの結果を評価する、(8)解決コンセプトを実行するための計画を策定する、といったプロセスを実施します。

 

戦略的世代進化(DE)のプロジェクトであれば、(1)Ideationプロセス質問票のチェックリストによりプロジェクトを行う必要性と目的、成果の評価基準を確認する、(2)システムに関する過去の歴史を調べ、環境、社会、経済、市場などの一般進化トレンドを参考にして、システムアプローチにより関連する進化トレンドを分析する、(2)システムのSカーブ分析を行い、関連する進化パターン、ラインを特定して進化ライン上にシステムをマッピングする、(3)システムの進化ラインからシステムの進化ポテンシャルと進化の限界を確認する、(4)システムの進化の資源と制約を確認し、克服すべき問題についての因果関係ダイヤグラムを作成する、(5)進化を阻害している原因を解明し、理想性のオペレータ、進化ラインのDBを使って企画コンセプトを作成する、(6)不具合予測手法を使って企画コンセプトの二次的問題の発見し、その未然防止策を考えて、プロジェクト成果を評価する、(7)システムの進化シナリオと企画コンセプトを実現するための技術ロードマップを作成する、といったプロセスを実施します。

 

Ideation TRIZにはプロジェクト成果を評価するために使用する「発明・技術評価」ツールがあります。これは、米国のアイディエーション・インターナショナル社によって300万を超える既存特許の分析により収集された知識に基づいて開発されたものです。

 

この評価ツールの対象ユーザーは、発明者、技術管理者、IP 担当者、特許ライセンスの販売と購入の責任者などです。この評価ツールを使用すれば、次の重要な側面を含む、評価対象技術の価値を複数基準によって構造的および段階的に分析できます。

 

Ideation TRIZの手法の1つである「発明・技術評価」ツールでは、

(1)技術に関するファクター

技術創造のために適用された創造的な労力の量、新規性の程度、および技術および/または社会の全体的レベルに及ぼす影響を評価します。

(2)進化に関するファクター

今後さらに開発される技術の進化の可能性を反映します。

(3)市場に関するファクター

技術の可能な用途、可能性のある市場規模、市場成長率などを反映します。

の3項目により、プロジェクトの成果について評価します。

 

このツールは、次の情報を提供し、技術の可能性の評価と格付けを支援します。

・本技術の可能性の格付けおよび本技術の改良に関するアドバイス

・特許の取得および/または特許の有益な実施を脅かす可能性のある本技術の重要な欠点

 

この評価ツールを使用すると、評価結果を踏まえた次の行動指針が記載された評価レポートが得られます。評価レポートには、次の活動を支援する情報が含まれます。

・本技術の完全な可能性を開示する(場合によって開示されないこともある側面を含む)

・技術の価値を高め、新しい可能な用途を見つけることを目的とする技術の強化についての方針を特定する

・将来の商業化の機会を高める

・特許ポートフォリオに関する意思決定を向上し、特許リソースを適切に管理する

また、このレポートによって、暫定換算、全国規模の出願、特許維持量の継続に関する意思決定を適切に行うことでコストを削減したり、技術者の商業化の「ヒット率」および投資収益率(ROI)を向上したりできます。

2月 20 2017

TRIZが普及していないわけ(歴史的背景)

アイディエーション・ジャパンでは、Ideation TRIZの入門セミナーをはじめ、体験セミナー、認定セミナー、ワークショップなどの各種セミナーと、ファシリテーション型コンサルを実施することで、Ideation TRIZ の普及活動とIdeation TRIZを使用した問題解決に挑戦する方々の支援を行っています。

 

これらのセミナーやコンサルの中で一番多い質問は、「TRIZはすばらしい手法だと思いますが、なぜ普及していないのですか?」というものです。

 

TRIZは1997年日本で「超発明術」として紹介されました(「超発明術TRIZ シリーズ 1~4」、日経 BP 社発行)。そのため、当初はTRIZを使えば誰でも自動的に発明ができるようになると思い込んだのか、日本の大手企業の多くがTRIZに飛びつきましたが、多くの企業が思うような成果を出せなかったことで、結果として「TRIZは使えない」という誤解を産んだという歴史があります。

 

日本ではロシア語から日本語に翻訳された発明アルゴリズム「ARIZ」についての解説本が1970年代に出版されていましたが、当時は誰も関心を示しませんでした(「発明発想入門」、G.アルトシューラ著、遠藤敬一、高田孝夫共訳、(株)アグネ発行、1972年5月30日)。したがって、日本のTRIZの歴史は「超発明術」の書籍が発行された1997年または英語版のTRIZソフトウェアが輸入された1996年がスタートとされています。

 

日本で最初にTRIZの社内への普及に努力した人達(第一世代の人達)は、今は企業を定年退社しています。そして、NPO法人日本TRIZ協会が毎年開催しているTRIZシンポジウムでの発表を聞く限り、それらの方々が現在も引き続きTRIZを実践しているケースは少ないようです。

 

日本で第一世代の人達が経験したTRIZが普及しなかった理由には、その取り組み方に原因があったように思います。

 

アルトシューラが確立した古典的TRIZは膨大な体系(公準、心理的惰性の打破、理想解、資源、技術的矛盾、物理的矛盾、物質場分析、小さな賢人、進化の法則、効果集など)であるにもかかわらず、日本では企業側の都合に合わせて、当時は2~3日程度の教育課程が組まれていました。その内容は膨大であって、参加者は消化不良に陥るケースが多かったといえます(諸外国では、古典的TRIZの習得には100~150時間を費やします)。

 

そのため、当然のことのように、実践的活用を優先する企業では、比較的簡単なアルゴリズムに従って発想のヒントを手に入れてアイデアを創出できる「技術的矛盾マトリックス」を使った「発明原理」によるブレーンストーミングだけを採用して技術的問題を解決する道が選ばれました。いままでの発想法にはなかった、問題の種類によって異なる解決のヒントが示される「技術的矛盾マトリックス」というツールが珍しかったのでしょう。

 

その結果、革新的な問題解決を可能にするはずのTRIZが、日常的な改善提案を推進する便利な発想ツールになってしまいました。

 

TRIZが使用されるという意味ではよかったのかもしれませんが、「TRIZは使えない」という考えにつながる原因になってしまったともいえます。

 

実は、「技術的矛盾マトリックス」を使うには、取り組む問題について「改善する特性」と「悪化する特性」といった対立する2つの異なる特性の組み合わせ(アルトシューラは「39種の改善する特性×39種の悪化する特性」のマトリックス表を提案している)を定義しなければなりませんが、実際にはこの定義が一意に決められない場面に出会います。

 

それは、問題解決者がその問題をどのように捉えているかによって、対立する2つの異なる特性の組み合わせの内容が変わるからです。解決者が複数いると解決者の数だけ異なった組み合わせができてしまうことがあります。

 

また、1つの組み合わせが採用されたとしても、その1つの組み合わせから得られる解決のヒントは最大で4種類の「発明原理」に限定されます。

 

その発明原理も、例えば「入れ子の原理」「複合材料の原理」といったような抽象的な概念でしかないため、具体的に製品に実装できるアイデアを得ることは問題に関連する専門技術に精通している人以外には難しいのが現実でした。

 

「TRIZが使えない」とされるこれらの問題に対して、日本では、(1)アルトシューラの39×39の「技術的矛盾マトリックス」を簡略化した「簡易版矛盾マトリックス」が提案されたり、(2)「技術的矛盾マトリックス」を使用せずに(問題の状況を吟味せずに)、最初から汎用性の高い「発明原理」だけを使用する方法が試みられました。

 

前者の場合には、1つの組み合わせから得られる解決のヒントが10種類位に増え、複数の組み合わせが考えられる場合にはその数倍のヒントを検討します。後者の場合には、「8個の発明原理」「12個の発明原理」「16個の発明原理」・・・などが使われました。

 

これらの解決策が最終的に行き着いた先は、問題の種類にかかわらず40の「発明原理」のすべてを使うという方法です。

 

現在は、日本ではTRIZの第一世代の人達が活躍されていた時代を知らない第二世代の人達が活躍しているといえます。それなのに、なぜ第二世代になってもTRIZが研究者、技術者の間で普及していないのでしょうか。

 

それは、40の発明原理の全部を使用しても自分の問題が解決しなかったからでしょう。

 

なぜ、40の発明原理の全部を使用しても自分の問題が解決しなかったのか?

私の推測ですが、問題が置かれている状況や問題自体の内容をよく考えなかったからではないかと思います。

 

(1)TRIZなら問題が簡単に解けると思っていた

(2)問題を解決したいという思いが強すぎて、アイデア発想に集中してしまった

 

この改善策としては、

(1)自分が抱えている問題の状況をよく検討すること

⇒例えばアイディエーション社の「問題状況質問票」の質問に答える

⇒システムアプローチ(多観点分析)を行う

(2)問題の本質を突き止め、問題を解決するための課題を明確にする

⇒問題の状況を明らかにした「因果関係ダイアグラム」を作成する

 

これら2つのポイントがしっかりと把握されていれば、「発明原理」のような思考のチェックリストのようなものがなくとも、TRIZの基本思想である「理想性の向上」や「資源の活用」の概念を採用することで、自分の専門分野の問題は解決できてしまうことが起きます。

 

 

*「問題状況質問票」、「システムアプローチ」、「因果関係ダイアグラム」については、それぞれのキーワードが記載されている本ブログの他の項目を参照してください。

1月 17 2017

戦略的世代進化(DE)プロジェクトの狙い

米国のアイディエーション・インターナショナル社が開発した戦略的世代進化(DE:Directed Evolution®)は、ユーザーが特定の事業分野で長期間に渡って競争優位の状態を維持し、継続的に成長することをサポートする方法論です。

 

DEは社会、経済、市場、技術といった外部環境の変化に適応する際に生じる組織(企業、団体、学校、家族など)の具体的な問題状況に応じて、その組織の内部環境を踏まえた上で、Ideation TRIZの発明的問題解決(IPS:Inventive Problem Solving)、不具合分析と再発防止(FA:Failure Analysis)、不具合予測と未然防止(FP:Failure Prediction)、知的財産制御(CIP:Control of Intellectual Property)といった各種手法を的確な場面で適用するための体系的な方法論です。

 

DEを使用したプロジェクトは、ユーザーがはっきりと目標を持っている場合でも、漠然とした希望を実現したいと考えている段階でも実施可能です。また、ユーザーの具体的なニーズ、市場における地位、利用可能な経営資源に応じて、DEプロジェクトを展開する深さや規模は様々に設定できます。

 

DEプロジェクトが通常目標とするアウトプットは次の各項目です。

(1)対象システムの分析と診断を行い、必要な対応策を創出します。

・対象システムが直面している現在の問題の解決と潜在的問題の解明;システムの今後の発展を妨げている深刻な矛盾(ジレンマ)の解明と打開策の発見。

・システムを進化させるために利用可能な資源と、システムに関連する最も期待される方向の解明。これによって、システムの潜在的可能性を特定し、また、システムを期待される理想的な姿に近づけることが可能になります。具体的には、

・・現在の製品の改良、新しい有用な特徴や機能を付け加えることによる新製品や新技術の開発、システムの新用途の発見、製品・技術の総合的価値の向上。

・・既存の市場でのシェアの増加、新市場・新市場セクターの発見。

・現有の知的財産(IP)の客観的評価と知財としての品質と権利保護の水準を向上させることを通じた価値の増加。

 

(2)将来像の網羅的な提示 (可能性のある選択肢の提示) によって、ユーザーが対象システムの望ましい発展の方向を選択し、それに基づいて最適な投資計画や、事業戦略に立脚して具体的な開発を進めることが可能になります。

 

DEの原則に従って将来像(システムが今後たどってゆく可能性がある複数のシナリオ)を明らかにすることによって、対象としているシステムの可能性の中から、ユーザーの立場から見て望ましい方向を選択し、その方向を実現させるために最適の投資を行い、投資を活かすために効果的な戦略を立てることが可能になります。戦略には以下が含まれます。

・現在の製品・サービスを改良し、現有の技術を活用して既存の市場を拡大し、シェアを増加させることを目標とする短期計画

・現在の製品を大幅に改良、新製品・サービスを開発;現有の技術の飛躍的な改良、将来を切り開く新技術の導入し、市場の大幅な拡大;事業と市場の成長を狙った方策の開発;などを目標とする中期計画

・製品・サービスの新しい世代への進化、全く新しい製品・サービスや極めて効果的な新技術、新市場あるいは新市場セクター、更に新しいマーケティング・アプローチの創出などの技術的なあるいは市場ブレークスルー、および、新たな商品開発戦略、事業・市場成長戦略の開発を目標とする長期計画

 

(3)予想される不都合の解明を行なって、当該分野で将来予測されるリスクを(必要に応じて、短期、中期、長期に)予測し、未然防止策を創出します。

・システムおよびシステムに関連する分野で今後(短期、中期、長期的に)発生する可能性がある潜在的な問題、不都合な状況を明らかにし、これに対する対策を準備します。

具体的には、

・不都合な事象あるいは状況の回避

・不都合な事象あるいは状況が生じたことの早期診断

・不都合な事象あるいは状況発生時に対処し損失を食い止める方策の策定

・不都合な事象あるいは状況をチャンスへと替える(例えば、経済危機を自分の事業にとって有利な政府規制導入の機会とする、など)方策の発見

 

(4)知的財産の保護に関する指針によって、IPポートフォリオの形成をサポートします。知的財産(IP)を効果的に保護し、IPポートフォリオを戦略的に形成します。

これには以下が含まれます。

・既存のアイデア、期限の切れた・もうすぐ切れる特許など、利用できるアイデアの分析と改良;これらのアイデアの価値と、改良可能性を判定し、最善の活用法を発見します。

・新しいアイデアを付け加えることによって既存のIPポートフォリオを強化します。

・既存のIPポートフォリオ、中でも最も価値のある部分に対する権利保護を強化します。

 

上にあげた形でIPポートフォリオを強化することによって、以下の効果が期待されます。

・競合他社が類似の製品・サービスによって市場に参入したり、他社がライセンスなしに自社のアイデアを利用して製品を改良することを妨げる。

・自社が製品・サービスを何らかの方向に発展させることを、競合他社によって(特許侵害として)妨げられることを防止する。

・IPを販売あるいはライセンスすることによって、企業のドル箱に替える可能性の出現。

 

(5)企業の総合的創造性強化を図ります。

企業の総合的創造性の強化に含まれる内容は以下の通りです。

・事業および組織を継続的に成長させる原動力となる社員・スタッフにDEの基礎となっている効果的な問題解決手法を身に付けてもらうことによって、日常的に活用する技能を育成する。

・社員・スタッフの間で創造性に対する関心を高め、継続的な自己研鑽意欲と、新しいアイデアを探求する習慣を育成する。

12月 15 2016

信念、理念、ビジョンとプロジェクトの目的・目標

心理学者であるアンジェラ・ダックワーク女史が、いろいろな分野の成功者の共通点としてあげたのは「才能」ではなく、「やり抜く力」です。彼女は「やり抜く力」こそが誰でもどんな分野でも一流になれる最強・最適な方法であると主張しています(「やり抜く力」、アンジェラ・ダックワーク著、神崎朗子訳、ダイヤモンド社発行)。

 

「やり抜く力」は物事を最後まで実行する力のことです。目標に向かって最後まで実行すれば、成功できます。最後まで(成功するまで)やった人が成功するのです。

 

何かの目標に向かって最後までやるには、その目標を達成することの意味を深く理解し、それを固く信じて疑わない心が必要です。これを「信念」といいます。「信念」こそが人の行動を駆り立てるエネルギーの源といえるものではないでしょうか。

 

個人や企業(組織)であれば、それが「理念やビジョン」という形になります。

 

個人や企業(組織)の将来のあるべき姿を描いた「ビジョン」こそが、成功への鍵を握っているのです。特に、企業(組織)にとっては、役員、従業員などの構成員の全員が同じ思想のもとに一致団結するための拠り所といえるものが「ビジョン」です。

 

個人や企業(組織)がやるべきことは、問題を解決することです。問題を解決するためには、その問題を解決する意義を自分/自社の「ビジョン」に照らし合わせて考えることが最初になります。

 

その問題を解くことで、何が実現できるようになるのか。その結果として、「ビジョン」の達成に近づくことができるのか。

 

ジェラルド・ナドラーと日比野省三氏が創案したブレークスルー思考では、仕事をするときに犯しやすい「7つの過誤」を教えてくれています(「ブレークスルー思考」、ジェラルド・ナドラー、日比野省三共著、発行)。

 

(1)やってはいけないことをやる、(2)選択を間違える、(3)間違った問題に対して努力して正解を出す、(4)タイミングを間違える、(5)アプローチをまちがえる、(6)管理過剰を行う、(7)思い込みの失敗をおかす、が犯してはならない7つの過誤であるといいます。

 

ここでは、3番目の「間違った問題に対して努力して正解を出す」ことについて考えてみます。

 

そもそも、仕事として取り組む問題には、自らの思いつきの問題や上司から与えられた問題がありますが、これらは間違った問題の可能性があります。

 

自分の「信念」に従って一生懸命やれば必ず成功するかといえば、そうではありません。「信念」の先にある「ビジョン」が正しくなければ、その努力は報われません。同様に、その問題が間違いであったら、その仕事は失敗に終わります。

 

やらなくてもよいことを、効率よくやることほど、非効率的なことはないのです。問題解決に取り組む前に、よくよくその問題を解決する意義を考える必要があります。

 

Ideation TRIZを使用したプロジェクトを開始する場合には、問題解決プロセス(Ideationプロセス)を始める前に、プロジェクトの目的・目標と状況の持つ意味を確認します。

 

「目的・目標」の欄では、プロジェクトで検討対象としているシステム、プロセス、または他の対象の本来の目的を書きます。

 

「目的・目標」の欄では、以下の質問に答えることになります。

本来の目的は慎重に考えてください。答えは思うほど簡単でないかも知れません。例えば車の修理に関連して問題が発生しているとしても、車の本来の目的は「修理される」ことではなく、「人や貨物を輸送する」ことです。

  1. 今あなたが達成しようとしている目標はだれが決めましたか?
  2. なぜ、他ならぬその目標が選ばれたのですか?
  3. その目標が定められたのはいつのことですか?現在の状況に合わせる必要はないですか?
  4. 目標は現実的ですか?

・将来についての予測はどれくらい現実的ですか?

・自分の能力を過大評価していませんでしたか?

・他の人たちの能力を過大評価していませんでしたか?

 

「状況の持つ意味」の欄では、プロジェクトが対処している状況が、ビジネスの観点から、組織の観点から、どのような事情と関連しているのかを確認します。

 

「状況の持つ意味」の欄では、以下の質問に答えることになります。

 

1.あなたが取り組んでいるプロジェクトによって可能性が切り開かれること、あるいは、問題が解決されることによって、だれが有利になりますか?

2.なぜ、特にこの状況が改善対象として選ばれたのですか?

3.この状況が改善されないとどうなりますか? その結果を避ける別の手段はありますか?

4.その状況は本当に改善する必要があるのですか?

5.目標を決めたら、次の3つについて考えてください。

・情報が多すぎて困っていることはありませんか?

・何か重要なものを見逃していませんか?

・この問題にかかわっている他の人達の意見を考慮に入れましたか?

6.現在対象としている状況を改善することは本当に理屈にあったことですか?この改善を行うと、次の観点から見てどのような影響が生じるでしょうか(有益な影響、有害な影響を共に)予測してください。

・家族またはあなたの同僚

・あなたのボス

・あなたの部門

・あなたの会社

・社会全体

7.変化によって他のだれが(有益、または有害な)影響を受けますか?

11月 15 2016

プロジェクトを成功させるために必要なこと

実際の業務上の問題解決にIdeation TRIZを使うプロジェクトには、問題解決の目的に応じて、(1)発明的(革新的)技術問題を解決するための発明的問題解決(IPS:Inventive Problem Solving)、(2)顕在している故障や不具合の原因を分析してその再発防止を図るための不具合分析(FA:Failure Analysis)、(3)潜在している故障や不具合を事前に予測してその未然防止を図るための不具合予測(FP:Failure Prediction)、(4)他社の特許権を回避および/または自社の発明を強化するための知的財産制御(CIP:Control of Intellectual Property)、(5)次世代の商品・サービスを企画するための戦略的世代進化(DE:Directed Evolution®)の5種類があります。

 

Ideation TRIZが実際の業務上の問題解決に有効なものかどうかを判定するために、本格プロジェクトを行う前にパイロット・プロジェクトを実施することがあります。

 

特に、問題を抱えている現場の担当者がIdeation TRIZを採用したいと考えた場合には、会社の了解を得るために最初にパイロット・プロジェクトを実施することになります。

 

パイロット・プロジェクトを実施する際の最大の関心事は、パイロット・プロジェクトが成功するかどうかということでしょう。

 

パイロット・プロジェクトを成功させなければ本格プロジェクトが開始できません。パイロット・プロジェクトを成功させるためには、それなりの準備が必要になります。

 

どのような準備が必要かは、パイロット・プロジェクトが失敗に終わるパターンを見ることでわかります。

 

最も多い失敗例としては、時間と費用の節約を優先するため、パイロット・プロジェクトに参加するメンバーに事前にIdeation TRIZの基礎的な教育を行っていない場合です。

 

この場合には、メンバーがIdeation TRIZの思考プロセスの各工程の意義を理解していないため、各工程での検討内容が単なる事務的作業のレベルに止まってしまい、心理的惰性が排除されないで普段通りのバイアスがかかったアイデアしか出ません。

 

特に、知識レベルの高い方の場合には、具体的な思考プロセスの工程の意味(なぜその工程を使わなければならないか)が理解できていないため、興味も湧かず不信感を持ったままやらされ感が残るだけです。

 

結局、従来のロジカル・シンキングやブレーンストーミングを使ったプロジェクトの場合との違いが実感できないため、パイロット・プロジェクトが終わったときの感想は、「意外性のない無難な問題解決策しか得られなかった」というものになります。

 

または、「自分が従来から考えていたアイデアが正しいことがわかった」というような、Ideation TRIZを自分のアイデアを肯定する材料とみなす意見が述べられることになります。

 

Ideation TRIZの思考プロセスの神髄は、心理的惰性を排除して普段の思考のバイアスを崩すことにあります。しかし、思考プロセスの一つひとつの工程に素直に取り組まない場合には、それが実現されないことになります。

 

パイロット・プロジェクトを成功させるには、メンバーの選定が重要です。メンバーが少なくともIdeation TRIZの思考プロセスの基礎的な教育を受けており、Ideation TRIZに興味を持っていること。また、当然ですが、プロジェクトのテーマに関する知識経験があることが必要です。

 

パイロット・プロジェクトは、Ideation TRIZの思考プロセスやテーマに関する知識を学ぶ場ではありません。Ideation TRIZの思考プロセスの手順に従って、実際の業務上の問題を解決するための方策案を得ることに集中する場です。

 

私たちは、本格プロジェクトまたはパイロット・プロジェクトを実施する前に、メンバーの方々にIdeation TRIZの思考プロセスの基礎的な教育を受けていただくことを勧めています。具体的には、以下のセミナーの受講を検討してください(詳細は弊社HPを参照してください)。

(1)発明的(革新的)技術問題を解決したいのであれば、発明的問題解決(IPS:Inventive Problem Solving)の体験セミナー

(2)顕在している故障や不具合の原因を分析してその再発防止をしたい、または潜在している故障や不具合を事前に予測してその未然防止をしたいのであれば、不具合分析(FA:Failure Analysis)の体験セミナー

(3)他社の特許権を回避および/または自社の発明を強化したいのであれば、知的財産制御(CIP:Control of Intellectual Property)の体験セミナー

(4)次世代の商品・サービスを企画したいのであれば戦略的世代進化(DE:Directed Evolution®)の体験セミナー

10月 24 2016

「考えるTRIZ」の教育とプロジェクト支援活動

「考えるTRIZ」とは、われわれの技術提携先であるアイディエーション・インターナショナル社(米国)が推進しているものであって、事前に準備されている質問に答える形で思考を前進させていくことで解決策を求めるようというものです。

 

「考えるTRIZ」であるIdeation TRIZでは、問題分析段階では最初に「問題状況質問票(ISQ:Innovation Situation Questionnaire)」の各項目に答えることで、問題に取り組む意義を確認し、問題が解決されたときの理想的な状態のイメージを明確にし、問題に関係するシステムおよびその周辺にある有望な資源を見つけ出します。

 

資源とは問題解決に使用できる「物質、エネルギー、空間、時間、情報、機能」のことですが、これは問題の状況をいろいろな観点で観察する「システムアプローチ」という手法によって入手します。

 

次に、「システムアプローチ」によって見つけ出した資源をもとに、問題の発生メカニズムを明らかにします。ここでは、問題を生じている事象の個々の機能(作用)を原因と結果の連鎖で表現した「因果関係モデル」を作成します。

 

次に、「因果関係モデル」から読み取れる問題の構造によって決定される課題(これを指針という)を実現するために、見つけ出した資源に先人の知恵のエッセンス(知識ベース)を適用することで問題解決を図ります。

 

Ideation TRIZでは、あらゆる資源の変更の仕方が体系づけられたチェックリストとして整理されているオペレータ(解決パターンのヒント集)を使用した類比思考を行います。

 

オペレータを使った類比思考を行う「オペレータ・システム」では、理想的な状態を実現するために、システムの理想性を向上するための3つの可能性を検討します。

 

「理想性=有益機能の総和/有害機能の総和」で定義されるシステムの「理想性」を向上させる方法には、(1)有益機能を改良する方法、(2)有害機能を排除、軽減、防止する方法、(3)一方で有益機能を供給し、他方で有害機能を排除することを行う方法、の3つが考えられます。そのため、ぞれぞれの方法に対応させて体系づけられた「オペレータ・システム」の指示に従って、それらを使い分けることになります。

 

Ideation TRIZでは、以上のような問題分析から問題解決に至る全工程(システムアプローチ、因果関係モデル、オペレータ・システム)を行うことで、問題を「自分でしっかりと考える」ことができるようになっています。

 

ところで、「考えるTRIZ」の難しいところは、検索エンジンでWeb上の情報を検索する場合と違って、問題解決者がIdeation TRIZの思考プロセスに沿って次々に出てくる質問について自分でしっかりと考えなければ、解決策が得られないということです。

 

そこで、われわれが行っているIdeation TRIZの思考プロセスの教育(セミナー、ワークショップ)では、「自分でしっかりと考える」ための方法論を教えています。

 

また、われわれが行っているIdeation TRIZのプロジェクト支援では、「自分でしっかりと考える」ための問題提起を行いますが、解答を押し付けるコンサルティング型介入はしません。あくまでも自発性を促すファシリテーション型介入です。

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