次世代の事業の柱になり得る研究開発テーマの創出

技術開発のコンサルをしていると、クライアントが抱えているいろいろな問題について相談を受ける機会がありますが、その中で最も大きな課題は「知財戦略や研究開発戦略」と「研究開発のテーマ」の策定方法についてです。

 

実は、これらは互いに密接に関係している内容であって、管理職や経営者の方々からは「筋のいい研究開発の企画やテーマが出てこない」という話を聞きますし、現場の企画や技術開発の担当者からは「提案する企画やテーマがことごとく却下される」という話を聞きます。

 

そもそも、日本の多くの会社では、「知財戦略や研究開発戦略」を考える以前に、自社のビジョン(理念)が全社的に理解されていないことが問題だと思います。

 

ビジョンが将来の見通しである以上、会社は今まで誰も実現できていない内容に取り組むことを掲げているはずです。そのようなビジョンを実現するには、独自性のある研究開発テーマやそれに関連するアイデアを尊重して発展させる企業文化がなければなりません。そして、独自性の強い研究開発テーマを高く評価する仕組みがなければいけません。

 

もし、そのような仕組みがなければ、それを作らなければなりません。それには、研究開発テーマを絞り込んでいく「ステージゲート法」とは正反対の思考が必要になるでしょう。

 

従来の日本の製造業が行なっていた品質、コスト、納期への弛まぬ努力は、顧客ニーズに対応した既存製品の改良改善を繰り返すことで市場を獲得することを目指したもの(漸進的イノベーション)です。

 

それは、成長期にあった日本にとっては大切なことでしたが、成熟期を迎えた現在の日本が再び成長・発展をしていくには、経済を活性化するために必要となる企業の中長期的に達成・持続可能な経済成長率を高めることが必要になります。

 

そのためには、技術的価値と、ライフスタイルを変えるような意味的価値の両方を進化させるような急進的イノベーションが求められます。

 

従来のように、競合と同じ商品の企画を続ければ、回避すべき競合の特許が存在していることになるため開発が難しくなり、公知技術が多くあるため特許は取りづらくなります。特許が取れたとしても権利範囲の狭い特許しか取れないことになります。

 

市場で優位な立場を築きたいのであれば、市場に出たときに競争にならないことが必要であり、そのためには、競合がやっていないことに取り組む必要があります。

 

大した特許が取れない理由は、そもそも技術力が低いからです。技術力は、研究開発テーマ(目的)と問題解決力(手段)で決まります。技術力を高めるには、研究開発テーマか問題解決力のいずれかに独自性があることが条件になります。

 

マーケティングの神様であるフィリップ・コトラーによれば、企業の成長戦略として、独自の顧客価値が提供できること(差別化戦略)、同じものを安く作れる独自技術があること(コスト・リーダーシップ戦略)、が必要であるといいます。これらの独自性の基準をクリアするには、取り組んでいる研究開発テーマが誰もやっていないことを、特許情報を対象とした先行技術調査を実施して証明することが必要です。

 

イノベーションにつながる研究開発テーマとしては、現在の主要プレーヤーが市場から退場しなければならないほどの業界構造に変化を起すものが必要です。それは、自社の技術だけでは太刀打ちできないテーマです。自ら思い描く理想的な姿(ビジョン)を実現するためには、他社の技術を取り込みつつ、原材料調達・生産管理・物流・販売までのサプライチェーンにいる他社を巻き込むことが必要になります。

 

次世代の事業の柱を考えるのであれば、目線を1つ上げて、産業の目線で事業を考えないと事業を考えることにはならないことを認識すべきである。この技術は一体どういう産業を生み出すだろうか、どういう産業にインパクトを与えるだろうかという話を自分たちで考えるべきである(「なぜ技術経営はうまくいかないか」、時吉康範著、日本経済新聞社発行)、といわれています。

 

研究開発部門に独自性の高い技術を作る仕組みを構築するのには、アイディエーション・インターナショナル社が開発した次世代商品・サービスの企画手法であるDE(Directed Evolution®)が最適です。社会トレンド、市場トレンド、技術トレンドなどのマクロトレンドや人工システムの進化パターン・ラインといった具体的な法則性がデーターベース化されており、その先人の知恵を参考にして、次世代の事業の柱になり得る研究開発テーマを探索し、次世代商品・サービスのコンセプトを完成させることができます。

 

5月末までDE(Directed Evolution®)のWebアプリケーションが無料で使用できますので、是非この機会にお試しください。

 

古典的TRIZと比較したIdeation TRIZのシステムアプローチの意義

Ideation TRIZの「システムアプローチ」は、問題が起こっているシステムをいろいろな観点で観察するための手法であって、日本語では「多観点分析」や「多次元分析」といいます。

 

問題を解決しようとするときには、私たちはほとんどの場合、問題が起こっているシステムそのものに焦点を合わせて考えようとします。しかし、経験を積んだ技術者は対象を複数の視点から同時に見つめることで、革新的な成果をもたらします。

 

問題状況の予備的分析の段階で「システムアプローチ」を使うことで、私たちも経験を積んだ技術者のように視野を広げることができます。

 

「システムアプローチ」では、(1)システムの構造と環境を観察する「システム階層軸」、(2)システムの使用状況や歴史、理想を観察する「時間軸」、(3)起きている問題の原因や結果を観察する「問題軸」、(4)システムの必要条件、機能、成果を観察する「機能軸」、といった4つの観点で問題の状況を体系的に分析することになります。

 

しかしながら、問題が複雑な場合には、これらのすべてを一遍に考慮に入れるのは面倒であり、かなりの時間がかかりますので、研究者、技術者からは敬遠されがちです。

 

古典的TRIZには、下位システム、システム、上位システムという「空間軸」と過去、現在、未来という「時間軸」を組み合わせた9つの画面を使って問題の状況を分析する「システム・オペレータ」(9画面法)という手法があります。

 

「システム・オペレータ」では、空間軸と時間軸とで出来上がる(1)過去×下位システム、(2)過去×システム、(3)過去×上位システム、(4)現在×下位システム、(5)現在×システム、(6)現在×上位システム、(7)未来×下位システム、(8)未来×システム、(9)未来×上位システム、の9つの画面を設定してその中を観察することになります。

 

「システム・オペレータ」の基本形は9画面ですので、人間の頭脳にやさしいボリュームです。これなら、研究者、技術者にも使ってみようかと思ってもらえます。

 

「システム・オペレータ」の「空間軸」と「時間軸」とは「システムアプローチ」の「システム階層軸」と「時間軸」に相当しますので、現実の世界での物事の状態を知るために、実践で9画面をよく使います。

 

「システムアプローチ」の「機能軸」と「問題軸」は、現実の世界で起きている物事の意味を理解するのに都合のよい観点であって、目的手段関係と原因結果関係を明らかにするためのものです。Ideation TRIZでは、「因果関係ダイアグラム」を作成する工程がこの作業に相当します。

 

「機能軸」では、システムに対する様々な入力、システムからの出力、それらの問題との関係を観察した結果を「入力(手段)」⇒「機能」⇒「出力(目的)」といった連鎖で表現します。

 

「問題軸」では、問題の原因、問題の結果として生じる不都合、および、これらに関連するシステムの機能を観察した結果を「原因」⇒「問題」⇒「結果」といった連鎖で表現します。

 

「機能軸」という観点でシステムを観察することで、システムを作るときに採用した手段(入力)が、今までにない有益な機能を生じ、その有益な機能の結果としてシステムの当初の目的(出力)が実現できていることがわかります。

 

「問題軸」という観点でシステムを観察することで、システムを作るときに採用した手段(原因)が、問題(有害な機能)を生じ、その問題の結果として思わぬ不都合を生じていることがわかります。

 

つまり、「システムアプローチ」の「機能軸」と「問題軸」の観点で問題を起こしているシステムを観察すると、システムの本来の目的と問題が発生するメカニズムが明らかになります。

 

問題が発生するメカニズムがわかると、システムで起きている問題の本質(一つの特性を改良しようとすると何らかの他の特性が悪化してしまう状況(TRIZではこれを技術的矛盾という)、または、一つの特性についての反対方向の二つの要求が求められる状況(TRIZではこれを物理的矛盾という))が明らかになります。

 

問題の本質(矛盾)を正しく把握することは困難な問題を解決する上での要点ですので、問題が起きているシステムについて「空間軸」と「時間軸」で分析した「9画面」と、「機能軸」と「問題軸」で分析した「因果関係ダイアグラム」が作成できれば、自ずと問題解決の道が見えることになります(少なくとも、取り組むべき課題が明らかになります)。

解決の方向づけとして「究極の理想解(IFR)」の概念を使う

発明問題解決アルゴリズム(ARIZ-85C)では、究極の理想解(IFR:Ideal Final Result)を公式の形で表現すると以下の通りになります(「技術難問題解決アルゴリズムARIZ-85C」、G.S.アルトシューラ著、黒澤慎輔訳)。

・X要素は、

・システムを複雑にすることや、有害な現象を引き起こすことは一切なしに、

・操作時間に

・操作空間領域において、

・ツールが確実に〈ここにツールの有益な作用を記入します〉を実行するようにしながら、

・〈問題で排除したい有害な作用を、ここに記入します〉を排除します。

・ただし、{問題状況に既存の}物質・場資源を活用することとし、システムに新たな物質やエネルギーを持ち込むことは一切してはならない。

 

究極の理想解(IFR)とは、それまで何らかのモノ(あるシステムの要素、その上位システム、あるいはその環境)が担当していた一群の機能を他のモノにそれだけで実現することを求めることです。これを実現するやり方には元のシステムからの理想化(何らかの省略)の程度が異なる以下の3つのバリエーションがあり得るといいます(「思考ツールとしての『理想性』の使い方」、A.B.クドゥリャフツェフ著、黒澤慎輔訳)。

(1)求められる質を損なわずに、あるものがそのものとして(言い換えると、通常そのために使われているシステムあるいは機構を使わないで)自ら自分自身を加工する。

(2)システムのツールが対象物の加工を続けながら(すなわち、ツールそのものの機能を果たしながら)システムの補助的な要素の機能(ツールに対するエネルギーの供給、ツールの位置取り、……)を自ら自分でやってしまう。

(3)あるシステムがそれに固有の機能を実現しながら自ら追加の機能も果たす。

 

これらをまとめると、究極の理想解(IFR)の一般的な構造は、(1)あるモノが、(2)自ら、(3)追加の機能を果たす、(4)その際、自分の機能を継続して実現する、という表現になります。

 

また、どうしても問題を解決するために何らかの要素を追加して導入する場合には、究極の理想解(IFR)の一般的な構造は、(1)あるモノ(X要素)が、(2)自ら、(3)あらかじめ特定された望ましくない作用を取り除く、(4)その際、与えられたシステムを全く複雑化しない、という表現になります。

 

これらの定義には、(1)~(3)に課題(目的)が示され、(4)にはその課題を実現する際の制約が記載されている、と考えることができます。

 

ミルクの入ったポーションパックからミルクを取り出す際の問題の例では、「手やテーブルを汚すことなく、ポーションパック内のミルクを飲み物に入れる」という課題があります。

 

ここでは、課題に関与する要素は、容器本体、蓋、接着手段(接着剤、溶着)、ミルク、飲み物(コーヒーや紅茶)といった資源があります。

 

上記4つの資源について、究極の理想解(IFR)を定義してみると、以下の通りになります。

 

IFR-1:容器本体は自らミルクを飲み物まで移動させる。その際、蓋を開封するまではミルクを外気に触れさせないことを妨げない。

 

IFR-2:蓋は自らミルクを飲み物まで移動させる。その際、蓋を開封するまではミルクを外気に触れさせない。

 

IFR-3:接着手段は自ら蓋を開け易くする。その際、蓋を開封するまではミルクを外気に触れさせない。

 

IFR-4:ミルクは自ら飲み物まで移動する。その際、蓋を開封するまではミルクを外気に触れさせない。

 

IFR-5:飲み物は自らミルクを取り入れる。その際、蓋を開封するまではミルクを外気に触れさせない。

 

究極の理想解(IFR)を実現すること、つまり、何らかの要素に新しい役割を担わせることがその要素本来の有益な機能(基本有益機能)を損なってはなりません。当然に、システム全体の主な有益機能(基本有益機能)を妨げることはあってはなりません。

 

究極の理想解(IFR)が定義できると、結果を実現する手段がわからないうちに結果そのものは見えている状態になります。また、期待される到達点が理解できることにもなり、そこに至る手段の良し悪しの判断が可能になります。

問題解決のツールとして「理想性」の概念を使う

技術に関与するモノはどれも多くの特徴・特性を持っていますが具体的な状況で人間が利用しているのはほとんどの場合そのうちごく一部でしかありません。したがって、技術に関与するモノにはいわば「予備」といえる多くの特徴・特性がありますから、私たちはシステムの種々の要素に新しい何かを期待しそれを利用する新たな可能性を見い出すことができます(「思考ツールとしての『理想性』の使い方」、A.B.クドゥリャフツェフ著、黒澤慎輔訳)。

 

この文章は、TRIZの理想性という概念が問題解決ツールとして使用できる根拠が記載されていると考えられます。

 

TRIZは世界各国の特許データベースと発明・発見の歴史に関する様々な資料を研究した結果、技術システムは理想性が増加する方向に進化するといった最も基本的な傾向を見つけ出しました。

 

この文章を言い直して、システムに含まれる有益機能の総和と有害機能の総和の比率であると定義したものが「理想性」という概念です。

 

理想性の定義で「機能」とはシステムに関連する作用、過程、操作、状態、影響などを指します(理想性という考え方は量的な概念ではなく、質的な概念です)。

 

システムの有益機能には、(1)基本有益機能(システムが生み出されることになった目的を表わす機能)、(2)副次的有益機能(基本有益機能の他にシステムがアウトプットとして提供する有益機能)、(3)補助機能(システムが基本有益機能を実現することを助ける機能)、(4)付属機能(システムを作った人々が基本有益機能に追加して目指した修正機能、制御機能、収納機能、搬送機能など)。

 

システムの有害機能には、設計のコスト、占めるスペース、発生する騒音、消費するエネルギー、維持するために必要な資源などの、システムに関連するすべての有害な要素が含まれます。

 

有害機能に着目して理想性が増加する方向を考えると、システムはより小さく、コストはより少なく、エネルギー効率はより良く、公害はより少なくなる、などの方向が予測されます。

 

理想性の程度をシステムの有益機能と有害機能との比だとする定義に基づいて考えれば、理想的なシステムとは有害機能を一切含まないシステムだと想定することができます。つまり、作るためにも、維持するために一切コストを必要としないで、エネルギーを使わず、空間を占めず、有害な廃棄物や副産物は出さない、などなどの特徴があることになります。つまり、「理想的なシステムとは、システムとして存在せず、機能だけを実現するシステムである。」といえます。

 

マーケティングの世界で古くから使われている格言に「ドリルを買いに来た人が欲しいのはドリルではなく穴である」(「マーケティング発想法」、セオドア・レビット著、土岐坤訳、ダイアモンド社発行)というものがありますが、私たちに必要なのはシステムではなく、システムの機能なのです(たとえば、自動車のハンドルが必要なのではなくて、自動車を制御する方法が必要な訳です)。これに加えて、すべての有害な作用は機能に付随するのではなく、システムに付随するのです。

 

理想的なシステムを考えるときには、(1)システムは実際には存在しなくてもいい、システムなしでやっていけるという状況をイメージする。(2)どのような機能があるからそのシステムが必要なのか、その機能(基本有益機能)を明らかにする。

 

理想性とは完全性に近い概念であり、正しい理想性は世界に一つしか存在しないということになりそうです。しかし、理想性の内容は主観的な観点、あるいは、システムや問題状況が置かれた局地的な条件に密接に関係することは明らかです。言い換えれば、私たちは局地的理想性という概念を持つことが可能です。

 

問題解決についていえば、局地的理想性は周囲から入手可能な資源の限界の中で問題を解決する私たちの能力に関係するものだと考えることができます。

 

問題解決における私たちの目標とは、既存のシステムをより理想的な状態に向かって進化させることだとわかった訳ですから、これをどのようにして行うかです。

 

理想に近い問題解決を行う一般的アプローチとは資源を活用する方法を考えることです。

Ideation TRIZと相性の良いジョブ理論

「どうすればイノベーションを成功させられるか」に応える「ジョブ理論」というものがあります。

 

ジョブ理論を構築したクレイトン・M・クリステンセンの著作物である「ジョブ理論」(訳者:依田光江、発行所:株式会社ハーパーコリンズ・ジャパン)によると、「顧客はある特定の商品を購入するのではなく、進歩するために、それらを生活に引き入れるというものだ。この『進歩』のことを、顧客が片づけるべき『ジョブ』と呼び、ジョブを解決するために顧客は商品を『雇用』するという比喩的な言い方をしている。ジョブは『ある特定の状況で人が成し遂げようとする進歩』と定義する。」と説明されています。

 

「顧客がなぜある特定の商品を買うのかという因果関係を明らかにできなければ、顧客が求める商品は開発できません。」「顧客の行動における因果関係メカニズムを理解するうえでジョブ理論が強力なツールになり、イノベーションを成功させる原動力となる。」とも説明されています。

 

これと同じことをIdeation TRIZでは因果関係ダイアグラムを作成することによって、問題状況に関する知識を整理して原因と結果の関係で結ばれた「機能-リンク-機能」の図式モデルに変えることで、視覚的(直感的)に問題状況を把握できるようにしています。

 

好ましくない状況というものは、ほとんどの場合、多数の問題が複雑に絡み合った結果として生じています。面白いことに、それぞれの問題について、解決するアプローチ、または、問題解決への可能な道筋は1つではなく複数あります。Ideation TRIZでは、これら1つ1つのアプローチ、または可能性を指し示す「指針」と呼ばれる手がかりを因果関係ダイアグラムから自動的に入手します。

 

1つの問題に対して複数の指針が得られれば、問題解決に利用可能な思考上の領域を大きく広げることができます。また、これによって良い解決策を発見できる見込みが格段に大きくなります。

 

クレイトン・M・クリステンセンによれば、「世界中の有能なイノベーターはほとんど、普通の人とは違うレンズで問題を見ている。」といいます。

 

これと同じことをIdeation TRIZのシステムアプローチでは、「問題を解決しようとする時には、(普通の人は)ほとんどの場合、問題が起こっているシステムそのものに焦点を合わせて考えます。しかし、経験を積んだ技術者は以下を視野に入れて問題を多角的にとらえようとします。」と説明しています。

 

そして、システムアプローチでは、(1)空間軸(システムの階層軸):システム、システムの構成要素である下位システム、およびシステムに関連する上位システム、(2)時間軸:システム、下位システム、および上位システムそれぞれの過去の、ならびに、予想される未来、(3)問題軸:問題の原因、問題の結果として生じる不都合、および、これらに関連するシステムの機能、(4)機能軸:システムに対する様々なインプット、システムからのアウトプット、それらの問題との関係、といった4つの観点で問題状況を体系的に分析します。

 

クレイトン・M・クリステンセンは、「ジョブを明らかにして把握できた後は、そこで得た知見を、優れたプロダクト/サービスの開発に落とし込む青写真に翻訳しなければならない。この過程に含まれるのが、ジョブを解決する上での、プロダクト/サービスに付随した体験の正しい構築法である。さらに、ジョブを一貫して捕捉できるように、最終的には社内の能力とプロセスを統合する必要がある。」といいます。

 

これは、単に革新的な商品・サービスのアイデアを出すだけではなく、考え出したアイデアを実現する商品・サービスを普及してはじめてイノベーションと呼ぶことができる、ということでしょう。

 

また、イノベーションを成功させるという観点では、社内の組織やイノベーションを推進するプロセスをもジョブを中心とした体制が必要であると、ということです。

TRIZを技術開発に活用する進化の過程

Ideation TRIZの基本的なソフトウェアはIWB(Innovation WorkBench®)ですが、Ideation TRIZの集大成ともいえるソフトウェアはDE(Directed Evolution®)というものになります。

 

DEでは、次世代の商品やサービスを開発するような場合に有効な「進化パターン、ライン」といったツールを使用します。DEには、(1)進化の諸段階、(2)理想性の向上、(3)要素の不均衡進化(矛盾)、(4)柔軟性と制御性の増加、(5)複雑化後簡素化、(6)要素間の対応と非対応、(7)ミクロ化と階層化、(8)人の関与の減少、という8種類の進化パターンについて説明がされています。

 

「進化パターン」のほとんどについて、そのパターンに沿ってシステムが変化していく中で順次経過していく典型的な段階を示す「進化ライン」を認めることができ、DEのソフトウェアでは、約250種類の進化ラインについての解説があります。

 

「人の関与の減少」という進化パターンの中には、「人工システムへの関与が減少する過程における知的要素の排除」というタイトルの進化ラインがあります。

 

この進化ラインを使って、TRIZを技術開発に活用する場合の進め方を考えてみましょう。

 

一昔前(日本のTRIZ導入の第一世代)には、日本でもトップダウン方式でTRIZを導入していた会社がいくつもありましたが、今ではその陰もありません。

 

皆さんの会社でも各事業部単位でバラバラにTRIZを導入していることでしょう。毎年NPO法人日本TRIZ協会開催しているTRIZシンポジウムでも、ボトムアップ方式で導入して実務問題にTRIZを適用した事例発表がほとんどです。

 

「人工システムへの関与が減少する過程における知的要素の排除」という進化ラインでは、

(1)ある機能を、創造的で才能のある専門家が担当する、(2)同じ機能を、訓練を受けた専門家が担当する、(3)同じ機能を、訓練を受けていない人が担当する、(4)同じ機能を、人が専用機を操作して実現する、(5)同じ機能を、人が汎用機を操作して実現する、(6)同じ機能を、自動機械が担当する、という順番で進展するといいます。

 

TRIZを社内に導入する場合には、まず、(1)TRIZの機能を、創造的で才能のある専門家が活用する、ということです。これは、外部のTRIZコンサルタントが企業の依頼を受けてTRIZで新規事業の企画や既存技術についての問題を解決する段階です。日本では、このようなニーズはほとんどありません。

 

次に、(2)TRIZの機能を、訓練を受けた専門家が活用する、ということです。これは、外部のTRIZコンサルタントの指導を受けて企業内のTRIZに興味を持つ研究者、技術者がTRIZを実務問題に使用する段階です。日本では、このようなケースが一番多いといえます。

 

次に、(3)TRIZの機能を、訓練を受けていない人が活用する、ということです。これは、企業内のTRIZに興味を持つ研究者、技術者が市販のTRIZのテキストを使ってTRIZを知らない研究者、技術者に教えながら(自分達も勉強しながら)実務問題に使用する段階です。ただし、市販されているTRIZのテキストは膨大な体系を持っているTRIZの一部(技術的矛盾や発明原理など)を紹介したものがほとんどですので、実務問題に取り組むには非力なため、うまくいかないことが多いといえます。

 

次に、(4)TRIZの機能を、人が専用機を操作して実現する、という段階です。これは、TRIZの専用ソフト(IWB(Innovation WorkBench®)やDE(Directed Evolution®)といったソフトウェア)を使用して、企業内のTRIZ専門家が自分で問題解決をしたり、現場の研究者、技術者の問題解決の支援をする段階です。

 

次に、(5)TRIZの機能を、人が汎用機を操作して実現する、という段階です。これは、現場の研究者、技術者が(IWB-LiteやProblem Formulatorといったソフトウェア)を使用して、現場の研究者、技術者が実務問題を自分で解決する段階です。

 

最後は、(6)TRIZの機能を、自動機械が利用する、という段階です。これは、たとえば、コンピュータがディープラーニング(深層学習)の技術を駆使し、TRIZのアルゴリズムやデータベースを使って問題の解決策を自動生成するといったイメージでしょうか。

 

ボトムアップ方式でTRIZを社内に導入しようという場合には、今、進化ラインのどの段階にいるかを確認してから、次の段階へ進むことをお勧めします。手軽だという理由で、(1)、(2)を飛ばして、(3)段階から始める方が多いと思いますが、おそらくうまくいかないと思います。TRIZはそれほど簡単な方法論ではありません。

 

通常の実務問題を解くのであれば、専門知識と経験による従来の方法を採用した方がよいでしょう。TRIZは従来の方法では歯が立たないとか、イノベーションを起こすような企画案を出さなければならないといったときに、TRIZの基本思想を理解した上で、ステップ・バイ・ステップでしっかりとした手順を踏んで使用すべきものです。

 

イノベーションを実現するためのDE(Directed Evolution®)と社会のトレンド

従来からIdeation TRIZの基本ソフトという位置づけで説明されているIWBは技術的問題の解決に使用するツールですので、Invention WorkBench(発明のための作業台)かと思いきやInnovation WorkBench(イノベーションのための作業台)が正式名称です。

 

ただし、IWB(Innovation WorkBench®)が対象としているイノベーションは技術的なものであり、新商品開発というモノに関係する「プロダクト・イノベーション」と製造方法などのコトに関係する「プロセス・イノベーション」になります。

 

技術に直接的な関係を持たない、イノベーションを起こす人や組織に関係する「組織イノベーション」、販売方法という役務に関係する「サービス・イノベーション」、新規事業開発というビジネスに関係する「ビジネスモデル・イノベーション」などは、Ideation TRIZの最新の統合ソフトであるDE(Directed Evolution®)というツールを使用します。

 

IWBはDEの中に組み込まれていますので、DEを使うことで、「プロダクト・イノベーション」、「プロセス・イノベーション」、「組織イノベーション」、「サービス・イノベーション」、「ビジネスモデル・イノベーション」といったすべてのイノベーションを対象とした取り組みが可能となります。

 

IWBでは、「技術システム」が発展する過程で、強い、歴史的に何度も繰り返えされている傾向をまとめた「技術システムの進化のパターン/ライン」を問題解決のヒントとして使用します。

 

これに対してDEでは、技術システムより広い概念である「人工システム」やその複合体である「社会」が発展する過程で、強い、歴史的に何度も繰り返えされている傾向をまとめた「システムの進化のトレンド/パターン/ライン」を問題解決のヒントとして使用します。

 

DEでは、社会の進化のメカニズムの変化は、社会の進化に関与する(1)進化を促進する力の変化、(2)進化を阻害する力および制約の変化、(3)進化を調整する力の変化、といった3つの要因そのものの変化に見て取ることができる、といいます。

 

こうした変化は自然淘汰によって、最も効率的に進化を実現するメカニズムが選ばれることによって生じますが、同時に、そのメカニズムを活用した人々が勝者となる結果をもたらします。この過程によって、文明の進化のテンポは幾何級数的に加速されることになります。

 

文明とは私達を過去から未来へ向けて運んでいく輸送機械と考えることができます。過去から未来へ運ばれていきながら、私達はその輸送機械を常に作り直し、改良しているのです。

 

たとえば、エンジン出力の向上を図り(進化を促進する力の進化)、予期せぬ減速の原因の排除、摩擦、空気抵抗の増大(進化を阻害する力および制約の変化)が生じますが、私たちはブレーキシステムを改良して信頼性を高め(進化を調整する力の変化)、高速に起因する事故を回避しようとしています。

 

さらに、システム、製品、生産プロセスについて既存のものを改良し(エンジン、ブレーキ、制御装置その他を一層効率的にします)、新規のものを生み出すことによって(進化を調整する力の変化)、乗客の移動をより安全で快適なものにします。

 

その結果として、私たちが乗る輸送機械は未来へ向けて常に速度を増しながら進んでいくことができます。

 

DEでは、既に進行していると認められた、あるいは、今後予測されるとされた「社会全般のトレンド」の変化の様相として、(1)生活全般の変化、(2)社会構造と組織文化の変化、(3)市場の進化、(4)消費財の進化、(5)技術の進化、を掲げています。

 

私たちは、これらの変化が現在取り組んでいるシステムの進化にどのように影響するかを考察し、その影響の下でシステムのこれからの世代がどのようになっていくか、その姿を予測することになります。

 

このような社会変化のトレンドのそれぞれが与える影響には強弱があり、影響を及ぼす範囲は全面的であることもあれば、限定的な場合もあります。様々なトレンドが同時に進み、ある場合には補い合い、時には相互に打ち消し合うことがあります。

 

様々なトレンド同士の間の矛盾が社会や技術の進化を妨げ、時に深刻な社会的騒擾につながることすらあります。逆に、矛盾を早期に発見して解決することによってシステム(製品、技術ほか)を大きく発展させることもあり得ます。

 

そのため、強いトレンド同士の間の矛盾がないか、どうすればその矛盾を解決できるかと考えることが大切になります。

新規事業や起業のスタートアップでの過ち

新規事業や起業を開始するときの戦略として、やりたいこと(テーマ)を並べ挙げて、それらのテーマ毎に必要な条件を決定し、それらの条件を満足する手段を考えようとする方法があります。

 

これは、理想の状態と現状との差を埋めるタイプの問題解決法であって、まったく新しいシステムを開発する場合に利用される「理想性アプローチ」という有効な手法の一つです。

 

新規事業や起業を開始するときには、自分のやりたいことが先走ってしまうため、当初立てた企画の評価も不十分なまま、スタートを切ってしまうケースが多々見受けられます。

 

その結果、当初思っていたようにはいかない状況に行き当たります。そのため、ようやくこの段階で自分が立てた企画の見直しをすることになります。

 

この段階での企画の見直しの場面で起きる過ちは、企画を0から考え直すことです。そもそも、最初に立てた企画が「やりたいこと」を中心に、自分が思い込んでいる「こうなるはずだ」という仮説の連続で作り上げられたものである場合には、0から考え直したところで、修正企画案の結果も同じことになりかねません。

 

前だけを向いて進むのは一見かっこいいのですが、後ろを振り返ることを先に行うべきです。

 

曲がりなりにも、スタートを切ってから現在までに経験した結果があるはずですので、その過程を振り返った、現状での不具合を分析してみることです。

 

そのためには、スタートから現在までに起きた事象の因果関係を追って、望ましくない現在の状況が存在している理由を明らかにすることです。

 

具体的は、個々の事象とその原因、個々の事象から起きた結果、のそれぞれについて因果関係の連鎖の形で表した「因果関係ダイアグラム」を作成することです。

 

現状分析の「因果関係ダイアグラム」は、米国のアイディエーション・インターナショナル社が開発したプロブレム・フォーミュレータ(PF:Problem Formulator)を使えば、比較的簡単に作成できますが、普段使用しているワープロや表計算のソフトウェアに付属した描画機能を使用しても作成できます。

 

現状分析の「因果関係ダイアグラム」を作成する目的は、第一義的に、現在起きている不具合(予想と違った結果)について、その不具合の因果関係のメカニズムを明らかにすることにあります。

 

因果関係のメカニズムがわかれば、不具合の原因となっている特定の事象にどのような変更を加えれば、結果としてどのような都合のよい事象が起きるかが予測できますので、問題解決の見通しが立てられます。

 

新規事業や起業のスタートアップで起きた不具合について「因果関係ダイアグラム」を作成することの目的は、むしろ当初の企画立案時には深く考えることがなかった自分の思い込みによる誤りに気づき、その思い込みを排除した客観的な因果関係に基づいた企画案に作り替えることにあります。

 

「やりたいこと」を中心にした当初の企画案を成立させていた「思い込み」「仮定」を見つけ出し、それらを客観的な「前提」に切り替えて、再度考え直してみましょう。

 

「思い込み」は個々の事象だけではなく、目的についての「思い込み」もあります。当初のまったく新しいシステムを開発するといった企画案の目的を見直して、より本質的な目的に切り替えることが有効です。

 

その昔、ある企業が介護施設で使用する「老人向けの風呂」を開発するというテーマに取り組んでいたとき、当初は「老人の体を洗う」ことがその風呂の目的だと考えていました。そのときに生まれたアイデアは、従来のものを多少改良した当たり前のようなものばかりでした。

 

そこで、当初の「老人の体を洗う」という目的の1つ上の目的は何かと考えてみたところ、「体を清潔に保つ」「体をマッサージする」「体をお湯につける」というものが見つかりました。さらに、その上の目的を考えるということを繰り返した結果、「若さを取り戻す」「生命力を吹き込む」といったより本質的な目的が見つかりました。

 

そこで、この「生命力を吹き込む」という目的に切り替えて、「老人向けの風呂」を開発した結果、新しく開発した風呂に是非入りたいという老人が大勢押し寄せたといいます。

DEソフトウェア特有の指針

プロジェクトの対象や、対象に影響を与える環境の中で働いている原因と結果の関係を分析することは極めて大切です。

 

表面にあらわれている有益な現象・事象、あるいは有害な現象・事象の背景にどのようなメカニズムがあるのかを理解することによって、プロジェクトが対象としているシステムを進化させる手がかりを発見することができます。

 

なぜなら、システムの進化とは、システムに含まれる有益な側面が質的量的に強化・増加し、有害な側面が質的量的に軽減・減少することに他ならないからです。

 

DE(Directed Evolution®)プロジェクトではソフトウェアに含まれる「プロブレム・フォーミュレータ」モジュールを使って、検討対象として取り上げた状況、あるいはシステムを有益機能と有害機能とが原因と結果の関係で結びつけられた図式ダイアグラム(これを因果関係ダイアグラムという)として描きます。

 

DEでは、何らかの影響を与える「状態」、「動作」、「働き」を一括して「機能」と名づけます。主観的に考えて基本的に有益と考えられる機能を「有益機能」、同じく有害と考えられる機能を「有害機能」とします。

 

DEソフトウェアを使って、ダイアグラムに描かれた状況の有益性の度合いを高める考え方の示唆を得ることができます。これを指針といいます。

 

なお、DEソフトウェアでは、因果関係ダイアグラムに表わされた状況を変化させる指針のリストを、少し角度を変えた二つの観点から得ることができます。

 

第一は「現在の状況を改善するアプローチへと導く通常の指針」のリストです。第二は「現在の状況を進化という視点から変化させる、あるいは修正する指針」のリストです。

 

このうち、「現在の状況を改善するアプローチへと導く通常の指針」は技術的問題解決を目的としたIdeation TRIZのIWB(Innovation WorkBench®)ソフトウェアで表示される指針と同じものです。

 

ここでは、DEソフトウェアでのみ使用される「現在の状況を進化という視点から変化させる、あるいは修正する指針」について説明します。

 

TRIZの知見によれば、「システムが持つ様々な機能は理想性が向上する方向へ向けて進化する」といいます。そして、ある機能の理想性はその機能が持つあらゆる有用な特性の合計を、そのシステムに含まれるすべての有害な(あるいは、望ましくない)要因の合計で割った比率と考えることができます。

 

つまり、機能の理想性を向上させるには、(1)機能の有益な特性を増強するか、(2)有害な特性を減少させる、あるいは(3)その両方を一度に行なうことによって機能の理想性を高めることができます。

 

「状況を進化という視点から変化させる、あるいは修正する指針」の一つ目は、たとえば、「システムの理想性を向上させる観点から、『介護者の腰痛防止等肉体的負担の軽減する』の進化の可能性を検討してください。」といったものです。

 

ここで参照する進化のパターンは、(1)理想性の向上、(2)人工システムの理想性の向上、(3)資源の進化、(4)資源活用の高度化、(5)技術システムの階層化、(6)エネルギー場の有効性の向上です。進化のラインは、(1)有益機能の進化、(2)有害機能の進化です。オペレータは、(1)有益機能を得る他の方法です。

 

「状況を進化という視点から変化させる、あるいは修正する指針」の二つ目は、たとえば、「『介護者の腰痛防止等肉体的負担の軽減する』の進化の結果生じ得る有害な影響と、その防止策を検討してください。」といったものです。

 

ここで参照するオペレータは、不具合を予測するための(1)弱いゾーン・危険なゾーン、(2)装置や物などに関連して予測される不具合、(3)システムの導入の各ステップで予想される有害な影響/作用、(4)潜在的に危険な瞬間/期間といったチェックリストと、予測した不具合の発生を防止するための(1)有害機能の排除、軽減、防止、(2)矛盾の解決です。

 

「状況を進化という視点から変化させる、あるいは修正する指針」の三つ目は、たとえば、「有害要素『病院職員の補助を必要とする』を有益目的に活用するか、回避・軽減・排除する方法を検討してください。この有害要素に連結された他のすべての有害な効果・特性・動作についても同様に検討してください。」といったものです。

 

ここで参照する進化のパターンは、(1)不具合な要因の減少です。進化のラインは、(1)有害機能の進化、(2)過剰な有益機能の進化です。オペレータは、(1)有害な要素から益を引き出す、(2)不十分な有益特性の改善、(3)有害な特性値の低減、(4)有害作用から隔離、(5)作用による中和(対抗)、(6)有害作用に影響を与える、(7)有害作用の原因を排除、(8)有害作用の影響の軽減です。

 

「状況を進化という視点から変化させる、あるいは修正する指針」の四つ目は、たとえば、「『病院職員の補助を必要とする』を変化させる手段を探してください。その手段は、『病院側には不法行為による損害賠償責任、業務上過失致死傷罪が負わされる』を是正する。」といったものです。

 

ここで参照する進化のパターンは、(1)柔軟性の増加、(2)制御性の向上、(3)複雑化後簡素化、(4)要素間の対応と非対応、(5)人間の関与の減少です。オペレータは、(1)空間で分離、(2)時間で分離、(3)構造の観点から分離、(4)条件・特性で分離です。

オペレータを使ってアイデアを出す方法

複数の技術分野で共通に使用できる一般概念を、あらゆる技術分野の特定の問題解決に役立てようとする意図から、Ideation TRIZの基本ソフトウェアであるIWB(Innovation WorkBench®)に組み込まれているオペレータのタイトルは抽象的な表現のものになっています。かといって、古典的TRIZで使用されている40の発明原理である、「分割」「抽出」「局所的性質」「非対称」のような単なる名詞形の表記のものではありません。

 

Ideation TRIZで使用するオペレータのタイトルは、「複数の作用の適用」「エネルギーの集中」「環境の変更」「事前の逆の作用」「分割して相殺させる」といったように、「何をどうする」といった機能的表現が多く採用されています。そのため、使い込んでくると、オペレータのタイトルを見ただけで、具体的にどのよう方法を適用すればいいのかが直感的にわかるようになります。

 

もちろん、それぞれのオペレータには、オペレータの意味を表わす説明文と、そのオペレータが具体的に使用された事例についての解説がついています。そのため、新たな問題解決のたびに問題解決者が自ら具体的な問題解決の事例を探すことなく、アイディエーション社が構築した500以上のオペレータとオペレータを使用した具体的な事例(2000以上)を利用することで、効率的な類比思考ができることになります。

 

初めてオペレータを使用する場合には、ヒントとなるオペレータのタイトルを見つけたら、そのタイトルをクリックして、まず、オペレータの解説画面を表示させます。

 

オペレータの解説画面には、上から順番に(1)オペレータのタイトル、(2)オペレータの解説、(3)オペレータの事例(イラスト)、(4)関連項目(参照)といった項目が並んでいます。最初は、選んだオペレータの意味を理解するために、オぺレータのタイトルの下に強調文字(太文字)で記載されている「説明文」を読みます。

 

たとえば、「分割して相殺させる」というオペレータには、「他の有害作用を補うことができるシステム(プロセス)を部分に分割することを検討してください。」という文章が記載されています。

 

使用するオペレータの意味が理解できたら、説明文に記載されている方法を自分が抱えている問題の対象であるシステムやプロセスに適用したイメージを描いてみましょう。そのオペレータを適用した様子を頭の中で想像することで、その方法を適用した場合に起こるであろう変化(形状変化、動作変化など)のイメージを観察します。その結果、問題が解決できた状態が見えたら、その変化を生み出す原因となった具体的な手段のイメージを記録します。この具体的な手段がアイデアです。

 

アイデアが浮かんだら、IWBソフトウェアの最上段のメインツールバーの中の電球マークのアイコンをクリックして、アイデアの入力・保存ができる上下に2分割された「アイデアボックス」を開いて、その下側の区画にアイデアを文章で入力します。ちなみに、上側の区画には過去に入力した(保存された)アイデアの一覧が表示されます。

 

要領としては、システム全体またはシステムの一部、あるいはシステムの周辺にあるもの(資源)に対して、選んだオペレータが示す操作方法を強制的に適用することで、アイデアを創り出します。創造の世界では、これを「強制発想」といいます。

 

IWBソフトウェアは問題解決者に代わって具体的な解決策を出してくれるものではありません。IWBソフトウェアは、いろいろな技術分野の過去の膨大な数の問題解決事例を分析し、そこで使用されていた解決策を問題の種類別に整理して、新たな問題解決に役立つヒントを提供するものです。

 

ですから、Ideation TRIZのオペレータを使用して問題を解くには、オペレータが推奨している考え方をヒントにして、そのオペレータを適用した場合の変化を頭の中であれこれと考えること(これを思考実験という)になります。

 

IWBは解決策を検索するためのソフトウェアではありません。オペレータをヒントにして、自分の頭で独自のアイデアを考え出すためのものです。考えるためには頭の中でイメージをあれこれと描くことが必要になります。

 

普段はコトバを使って「こうすると、こうなる」というように、ある情報に基づいて客観的に考える推測(推定ではない)という論理的思考をします。しかし、それでも問題が解けない場合には、「こうすると、こうなるのではないか」と結果を推定したアイデアを出します。

 

そのアイデアを採用してうまくいくかどうかはやってみなければわかりません。試してみなくてわかるのであればそれは推測の範疇であって、前提が同じなら同じ結果が生まれる論理的思考で済んでしまいます。

 

アイデアを出すためには、頭の中であれこれとイメージを描くイメージ思考がものをいいます。創造の世界はイメージを想像する力がないと歯が立ちません。