自分の得意な分野の「特定な問題」を解決しようとしたいが、どうにも解けそうもないというとき、どうしますか。 いつ起きるかわからない「ひらめき」を待ちますか。 普通の場合は、自分の知識が足りないのではないかと、インターネットで検索したり、専門家に相談したりして、問題が関係する専門分野の知識を調査することでしょう。
それでも解けない場合は、自分の得意な分野から離れて、なんでもいいから問題解決に役立ちそうなものを参考にしようとするでしょう。 TRIZでは、「特定の問題」を一般的な問題(抽象的な問題)に置き換えることで、広範囲な分野に共通な問題の一つとして捉えることによって、その問題に対応する一般的な解決策を得て、その一般的な解決策を「特定の問題」の解決に利用しようとします。
TRIZを勉強し始めた人が最初にぶつかる障害は、この「特定の問題」から一般的な問題へ変換する「問題の一般化」の作業ではないでしょうか。 私は、これをTRIZの「入口の壁」と呼んでいます。
たとえば、「特定の問題」に関する「熱膨張」、「拡散」などの機能を表す専門用語を、「温める」「膨らます」、「広げる」「散らばす」というような一般的な表現に変えることによって、熱工学という専門分野とは異なる幅広い分野の知識を参考にすることが可能になるわけです。
また、TRIZの「発明原理」をアイデア出しのヒントに使う場合には、問題となる特定の分野の機能に関係する属性を、「矛盾マトリックス」という一覧表に記載されている一般的な属性(古典的TRIZでは39種)に置き換えなければなりません。
ここで、たとえば、熱膨張に関して改善しようとする、または悪化する属性を、「矛盾マトリック」に記載されている「移動物体の体積」、「静止物体の体積」、「応力または圧力」、「温度」、「エネルギーの損失」、「物体が受ける有害要因」、・・・といった属性のどれに当てはめたらいいのか、戸惑うことでしょう。 具体的な選択の方法としては、もともとの問題解決の狙いに照らし合わせて適切と思われるものを選択すること、その際に、TRIZで定めた各属性についての定義を確かめたうえで決めることが大切であるといえます。
それでも、選択に迷うような場合には、複数の属性を選択して、いくつかの組合せ(改良する属性×悪化する属性)について、それらに対応する「発明原理」を参照してみることになります。
なお、物質同士の関係を「物質-場モデル」や「機能モデル」に表すといったことも、「特定の問題」を一般的な問題(抽象的なモデル)に置き換えることの一つといえますが、この点については、別の機会でお話ししたいと思います。
次回は、TRIZの「出口の壁」について説明します。