連想をうまく利用するポイント

私たちの頭の中にある記憶は、「思い出そうとすれば思い出せる記憶」と、「思い出そうとしても思い出せない記憶」の二つがあることはご存じの通りです。

 

このうち思い出そうとしても思い出せない記憶は、絶対に思い出せないわけではなく、イ.刺激(手がかり)が与えられると思い出す記憶、ロ.催眠術など特殊な方法によらなければ思い出せない記憶、の二つががあるといいます(「情報創造」、樺島忠夫著、(株)三省堂発行)。

 

このいずれも、いわば他力本願の感がありますが、私たちは意識するとしないとに関わらずに、その問題を他人に話をして、その人の意見を聞いたり、問題とは直接関係ないが何かのヒントになりそうな分野の知識を吸収したりすることを試みることがあります。

 

創造というのは、このような考えあぐねていろいろなことを試みる(試行錯誤)中から手がかりとなる刺激や情報を自ら探ることしかないのではないかと思います。今までと同じ思考努力の範囲で解けるようなものは、自分自身で問題とは意識しないでしょう。

 

また、刺激を受けたとしても、もっといえば、手がかりとなるヒントが得られていたとしても本人がそれに気づかなければ、問題解決には結びつきません。

 

ということは、自分自身の中にある過去の経験から得た記憶にアクセスして、その中からヒントやアイデアを得るしかないといえるでしょう。たまたま、他人から役立つヒントやアイデアをもらうことで、問題が解決したとしても、いつもそのようなことが期待できるはずもないのですから、「自ら思い出そうとしてもすぐには思い出せない記憶をどうして思い出すのか」ということが、創造技法の当面の目的とするところであると思います。

 

頼れるのは、最後は自分の頭の中にある膨大な量の記憶であるということです。つまり、人脳データベースをいかに使いこなすかにかかっています。

 

古典的な提案としては、プラトンやアリストテレスが人間心理の基本的な原理であると強調したといわれているものに、「観念連合」という概念があります。これは、心像(イメージ)を記憶に対応させ、ある考えからの他の考えをもたらす心理的現象のことで、「接近」、「類似」、「反対」等の連合(想)を積極的に利用することをいいます(「新版 独創力をのばせ」、A.F.オズボーン著、上野一郎訳、ダイヤモンド社発行)。

 

発想の効率を上げるためには、せっかく出したヒントを生かすことです。一つのアイデアが出たら、それを刺激として次から次へと関連したイメージを広げるようにして、それにまつわるイメージを徹底的に追求することです。そして、イメージが途切れたとき、別のイメージを探るようにするとよい。この場合、テーマを意識しながら思考の方向を定めることが、イメージを探るテクニックといえるでしょう。

 

思考の方向を定めるものは、市川亀久彌氏の等価変換理論でいえばvi→(観点)であり、中山正和氏のNM法ではKW(キーワード)です。これら二つこそが、連想をうまく利用するポイントです。

 

TRIZは、様々な技術分野でまったく同じ基本的問題(矛盾)が何度も繰り返し取り上げられ、解決されてきたことを明らかにしました。Ideation TRIZでは、このように繰り返し使われる解決策の原理を約500種類抽出して、オペレータ(問題解決のヒント集)というものを作り上げました。このオペレータは、連想をうまく利用するための実践的ツールの一つといえるでしょう。

 

なお、等価変換理論とNM法については、別の回で説明することとします。