複数の技術分野で共通に使用できる一般概念を、あらゆる技術分野の特定の問題解決に役立てようとする意図から、Ideation TRIZの基本ソフトウェアであるIWB(Innovation WorkBench®)に組み込まれているオペレータのタイトルは抽象的な表現のものになっています。かといって、古典的TRIZで使用されている40の発明原理である、「分割」「抽出」「局所的性質」「非対称」のような単なる名詞形の表記のものではありません。
Ideation TRIZで使用するオペレータのタイトルは、「複数の作用の適用」「エネルギーの集中」「環境の変更」「事前の逆の作用」「分割して相殺させる」といったように、「何をどうする」といった機能的表現が多く採用されています。そのため、使い込んでくると、オペレータのタイトルを見ただけで、具体的にどのよう方法を適用すればいいのかが直感的にわかるようになります。
もちろん、それぞれのオペレータには、オペレータの意味を表わす説明文と、そのオペレータが具体的に使用された事例についての解説がついています。そのため、新たな問題解決のたびに問題解決者が自ら具体的な問題解決の事例を探すことなく、アイディエーション社が構築した500以上のオペレータとオペレータを使用した具体的な事例(2000以上)を利用することで、効率的な類比思考ができることになります。
初めてオペレータを使用する場合には、ヒントとなるオペレータのタイトルを見つけたら、そのタイトルをクリックして、まず、オペレータの解説画面を表示させます。
オペレータの解説画面には、上から順番に(1)オペレータのタイトル、(2)オペレータの解説、(3)オペレータの事例(イラスト)、(4)関連項目(参照)といった項目が並んでいます。最初は、選んだオペレータの意味を理解するために、オぺレータのタイトルの下に強調文字(太文字)で記載されている「説明文」を読みます。
たとえば、「分割して相殺させる」というオペレータには、「他の有害作用を補うことができるシステム(プロセス)を部分に分割することを検討してください。」という文章が記載されています。
使用するオペレータの意味が理解できたら、説明文に記載されている方法を自分が抱えている問題の対象であるシステムやプロセスに適用したイメージを描いてみましょう。そのオペレータを適用した様子を頭の中で想像することで、その方法を適用した場合に起こるであろう変化(形状変化、動作変化など)のイメージを観察します。その結果、問題が解決できた状態が見えたら、その変化を生み出す原因となった具体的な手段のイメージを記録します。この具体的な手段がアイデアです。
アイデアが浮かんだら、IWBソフトウェアの最上段のメインツールバーの中の電球マークのアイコンをクリックして、アイデアの入力・保存ができる上下に2分割された「アイデアボックス」を開いて、その下側の区画にアイデアを文章で入力します。ちなみに、上側の区画には過去に入力した(保存された)アイデアの一覧が表示されます。
要領としては、システム全体またはシステムの一部、あるいはシステムの周辺にあるもの(資源)に対して、選んだオペレータが示す操作方法を強制的に適用することで、アイデアを創り出します。創造の世界では、これを「強制発想」といいます。
IWBソフトウェアは問題解決者に代わって具体的な解決策を出してくれるものではありません。IWBソフトウェアは、いろいろな技術分野の過去の膨大な数の問題解決事例を分析し、そこで使用されていた解決策を問題の種類別に整理して、新たな問題解決に役立つヒントを提供するものです。
ですから、Ideation TRIZのオペレータを使用して問題を解くには、オペレータが推奨している考え方をヒントにして、そのオペレータを適用した場合の変化を頭の中であれこれと考えること(これを思考実験という)になります。
IWBは解決策を検索するためのソフトウェアではありません。オペレータをヒントにして、自分の頭で独自のアイデアを考え出すためのものです。考えるためには頭の中でイメージをあれこれと描くことが必要になります。
普段はコトバを使って「こうすると、こうなる」というように、ある情報に基づいて客観的に考える推測(推定ではない)という論理的思考をします。しかし、それでも問題が解けない場合には、「こうすると、こうなるのではないか」と結果を推定したアイデアを出します。
そのアイデアを採用してうまくいくかどうかはやってみなければわかりません。試してみなくてわかるのであればそれは推測の範疇であって、前提が同じなら同じ結果が生まれる論理的思考で済んでしまいます。
アイデアを出すためには、頭の中であれこれとイメージを描くイメージ思考がものをいいます。創造の世界はイメージを想像する力がないと歯が立ちません。