私たちは、問題を解決しようとする時には、ほとんどの場合、問題が起こっているシステムそのものに焦点を合わせて考えます。 しかし、経験を積んだ技術者は、そのシステムだけではなくそれと同時にその上位システムや下位システムについても検討するといいます。
たとえば、東京からハワイまで飛行機で行く時間を短縮する方法を考えるとすると、私たちは「飛行機」というシステムを対象として、その問題を解決する焦点を「飛行機」をより速く動かすことに集中することでしょう。
しかし、「飛行機」というシステムは「移動手段」という上位システムを構成する一要素であると考えれば、飛行機の速度を上げるという目的が、1つの場所からもう1つの場所に短時間で移動することであると考えれば、飛行機の速度だけではなく、移動する時間に関係するすべての要素に関して検討することの方が賢明な場合があるということです。
自宅から空港に行くまでの時間、荷物を預けてチェックインするまでにかかる時間、出発ゲートに行くまでの時間、飛行機が空港に到着した後のゲートにたどり着くまでの時間、荷物を受け取るまでの時間、空港から目的地へ行くまでの時間など、移動する時間に関係する要素はたくさんあります。
すると、問題の焦点は、「飛行機」の速度から、空港での人や荷物の物流の他、自宅から空港、または空港から目的地までの交通手段をどのように改善したらいいか?ということに変更されることになります。
このようなことは、システムの階層構造に関することだけではなく、過去どのような状況にあったか?未来はどのように変わっていくか?といった時間的な要素についても考えることができます。そして、それらを組み合わせることで、より的確に問題の本質を捉えることに役立つことがわかります。
TRIZの創案者であるアルトシュラーは、このようにシステムを他次元(空間、時間)で観察する手法を「マルチスクリーン(9画面法)」という概念で表しました。 I-TRIZでは、さらに、原因・結果の次元と入力・出力の次元を加えた4次元で問題のシステムを観察することを推奨しています。
原因・結果の次元と、入力・出力の次元は、主にI-TRIZのProblem Formulatorというソフトウェアを使用して、問題の状況を因果関係や目的手段の関係で表すようにしています。これにより、複雑な問題を細かな問題に分解し、より取り組みやすい問題に変容させることができます。