発明を仕事とする研究者、技術者には問題発見能力と問題解決能力とが必要であるといわれます。そして、今の研究者、技術者は、与えられた問題を解く問題解決能力はあるが、問題発見能力が足りないため、他に先んじた研究開発ができないともいわれます。
しかし、この意見は、創造理論からするとおかしな話に聞こえます。 もともと、問題発見能力と問題解決能力とは一体的なものであって、発明者は自ら問題を発見しその問題(課題)を解決するというのが自然です。
また、課題を具体化したものがアイデアであり、アイデアを抽象化したものが課題であることを考えれば、両者は見る方向が違うだけのことであって、元々一体として考えるべきものといえます。
発明活動(問題解決活動)は一般に、 問題発見→問題定義(課題設定)→解決策案出→解決策評価→解決策実行 のような手順をたどるといわれていますが、この手順にはホンネの部分が抜けています。
問題を発見するエネルギーは発明者の問題意識にかかっています。 問題意識とは、その発明者が普段から強く疑問に思っていることであって、発明者が日常起こる事態・事象の中から何らかの刺激を受けることで、その刺激がヒントとなって自動的にその疑問の解明に取り組むといった行動を起こすことにつながる考え方をいいます。
つまり、問題意識は意識レベルの話ですが、実は感性といった無意識レベルの要因が大きな影響を及ぼしているのです。 創造は「好き」か「ピンチ」のいずれかが原動力となって生まれるものです。好きな仕事でピンチになれば発明は日常の仕事の中で自然に完成します。期限を切って自分の好きな仕事に取り組むことが創造性を発揮するための王道なのです。
ところで、研究者、技術者の中には、止めどなくアイデア(解決策)を出す人がいますが、そのままでは単なるアイデアの段階で終わってしまい、創造したとはいえません。 創造とは、アイデアを出すことと、出したアイデアを実現することの二つがそろった場合のことをいいます。
アイデアは実現されなければ、何ら社会に貢献するものではありません。頭の体操に留めることなく、その先の創造にトライしてみてください。