I-TRIZでは、問題状況の全体を把握する目的で、様々な観点から対象システムを分析する「システムアプローチ」という手法を使います。
システムアプローチでは、(1)システム、システムの構成要素である下位システム、およびシステムに関連する上位システム(これをシステムの階層軸という)、(2)システム、下位システム、および上位システムそれぞれの過去の、ならびに、予想される未来(これを時間軸という)、(3)問題の原因、問題の結果として生じる不具合、および、これらに関連するシステムの機能(これを問題軸という)、(4)システムに対する様々な入力、システムからの出力、それらの問題との関係(これを機能軸という)、の4つの観点で対象システムを分析します。
時間軸において、時間の間隔を短く取ると、問題のシステムの使用前、使用中、使用後を観察することになります。また、時間の間隔を長く取ると、問題のシステムの進化の歴史を考えることになります。
問題が最初に起こった時点からはじめて、その後システムがどのように進化してきたかを確認します。問題が含まれないシステムが問題の含まれるシステムに変わったのは、どのような判断の結果だったのか、その判断についても明らかにします。
対象システムが生まれる前の原型、あるいは、対象システムの祖先と考えることのできるシステムをすべてリストアップします。現在のシステムと同じ機能、似通った機能を持つ先行システムを捜します。
様々な原型システムのそれぞれが持っている特徴のどれとどれが現在のシステムでは改良されているのか。
原型と比較して、現在のシステムに新たに加わっている特長は何か。原型が持っていた特長の中で、現在のシステムには失われてしまっているのは何か。
対象システムが生まれることを可能にした条件を確認します。
(1)システムが必要とする構成要素が、利用可能な状態になっていたか。具体的にはどのような要素があったか。
(2)システムが生まれるきっかけとなった画期的なアイデアはどのようなものか。
(3)システムが生まれた当時に検討が行われていた、システムの類似品、システムのバリエーションはどのようなものか。
技術が進化する歴史では、必要な技術が出現するずっと以前から必要性だけは存在している場合があります。たとえば、人々は居ながらにして遠くにいる人と通信することのできる空飛ぶ機械や魔法を長い期間夢見てきました。しかし、電話が出現したのは、発明の前提となる様々な発見がなされた後のことです。
一旦そうした発見がなされてしまうと、アレクサンダー・グラハム・ベルを筆頭に多数の人々によって様々な電話が一斉に発明されることになりました。
しかし、他方では、技術は存在したのにその技術に対する必要性が認識されていないあるいは表面化していないというケースもあります。
新しい技術システムが登場するためには、(1)必要性の存在、(2)その必要性を満たす方法(技術)の存在、の2つの条件が揃う必要があります。
ある社会システムが人々のどのような必要性によって生まれてきたのか、に焦点を当てて考えてみると、その次の展開も自ずと見えてきます(「未来に先回りする思考法」、佐藤航陽著、(株)ディスカヴァー・トゥエンティワン発行)。
そして、その必要性をより効率的に満たすことのできる方法(技術)が普及したとき、社会システムに変化が生じます(イノベーションが起きます)。