イノベーションを実現するためのDE(Directed Evolution®)と社会のトレンド

従来からIdeation TRIZの基本ソフトという位置づけで説明されているIWBは技術的問題の解決に使用するツールですので、Invention WorkBench(発明のための作業台)かと思いきやInnovation WorkBench(イノベーションのための作業台)が正式名称です。

 

ただし、IWB(Innovation WorkBench®)が対象としているイノベーションは技術的なものであり、新商品開発というモノに関係する「プロダクト・イノベーション」と製造方法などのコトに関係する「プロセス・イノベーション」になります。

 

技術に直接的な関係を持たない、イノベーションを起こす人や組織に関係する「組織イノベーション」、販売方法という役務に関係する「サービス・イノベーション」、新規事業開発というビジネスに関係する「ビジネスモデル・イノベーション」などは、Ideation TRIZの最新の統合ソフトであるDE(Directed Evolution®)というツールを使用します。

 

IWBはDEの中に組み込まれていますので、DEを使うことで、「プロダクト・イノベーション」、「プロセス・イノベーション」、「組織イノベーション」、「サービス・イノベーション」、「ビジネスモデル・イノベーション」といったすべてのイノベーションを対象とした取り組みが可能となります。

 

IWBでは、「技術システム」が発展する過程で、強い、歴史的に何度も繰り返えされている傾向をまとめた「技術システムの進化のパターン/ライン」を問題解決のヒントとして使用します。

 

これに対してDEでは、技術システムより広い概念である「人工システム」やその複合体である「社会」が発展する過程で、強い、歴史的に何度も繰り返えされている傾向をまとめた「システムの進化のトレンド/パターン/ライン」を問題解決のヒントとして使用します。

 

DEでは、社会の進化のメカニズムの変化は、社会の進化に関与する(1)進化を促進する力の変化、(2)進化を阻害する力および制約の変化、(3)進化を調整する力の変化、といった3つの要因そのものの変化に見て取ることができる、といいます。

 

こうした変化は自然淘汰によって、最も効率的に進化を実現するメカニズムが選ばれることによって生じますが、同時に、そのメカニズムを活用した人々が勝者となる結果をもたらします。この過程によって、文明の進化のテンポは幾何級数的に加速されることになります。

 

文明とは私達を過去から未来へ向けて運んでいく輸送機械と考えることができます。過去から未来へ運ばれていきながら、私達はその輸送機械を常に作り直し、改良しているのです。

 

たとえば、エンジン出力の向上を図り(進化を促進する力の進化)、予期せぬ減速の原因の排除、摩擦、空気抵抗の増大(進化を阻害する力および制約の変化)が生じますが、私たちはブレーキシステムを改良して信頼性を高め(進化を調整する力の変化)、高速に起因する事故を回避しようとしています。

 

さらに、システム、製品、生産プロセスについて既存のものを改良し(エンジン、ブレーキ、制御装置その他を一層効率的にします)、新規のものを生み出すことによって(進化を調整する力の変化)、乗客の移動をより安全で快適なものにします。

 

その結果として、私たちが乗る輸送機械は未来へ向けて常に速度を増しながら進んでいくことができます。

 

DEでは、既に進行していると認められた、あるいは、今後予測されるとされた「社会全般のトレンド」の変化の様相として、(1)生活全般の変化、(2)社会構造と組織文化の変化、(3)市場の進化、(4)消費財の進化、(5)技術の進化、を掲げています。

 

私たちは、これらの変化が現在取り組んでいるシステムの進化にどのように影響するかを考察し、その影響の下でシステムのこれからの世代がどのようになっていくか、その姿を予測することになります。

 

このような社会変化のトレンドのそれぞれが与える影響には強弱があり、影響を及ぼす範囲は全面的であることもあれば、限定的な場合もあります。様々なトレンドが同時に進み、ある場合には補い合い、時には相互に打ち消し合うことがあります。

 

様々なトレンド同士の間の矛盾が社会や技術の進化を妨げ、時に深刻な社会的騒擾につながることすらあります。逆に、矛盾を早期に発見して解決することによってシステム(製品、技術ほか)を大きく発展させることもあり得ます。

 

そのため、強いトレンド同士の間の矛盾がないか、どうすればその矛盾を解決できるかと考えることが大切になります。