Ideationプロセスの「結果の評価」

IdeationTRIZ(I-TRIZ)は、アルトシューラの開発した古典的TRIZと違って、より実践的であって、解決コンセプトの実現可能性、信頼性、優位性を高める工夫がなされています。

 

解決コンセプトの実現可能性を高めるためにIdeationプロセスでは、中核問題についてのアイデアを出した後で、問題の様々な側面にそれぞれ対処する複数のアイデアを組み合わせることによって、状況を大きく改善する解決コンセプトとしてまとめあげる作業を行います。

 

アイデアを組み合わせる理由は、個々のアイデアには長所もあれば短所もあり、一方、優れた解決コンセプトは長所はあるが短所はないというものでなくてはならないからです。

 

アイデアを組み合わせるには、(1)同一の機能をねらったアイデアを組み合わせる、(2) 既存のシステムを組み合わせることで解決コンセプトのアイデアを得る、(3)解決コンセプトができたらそれを単純化することを試みる、といった方法を採用します。

 

問題解決作業の目標は、実行可能な解決コンセプトを1つ、場合によっては複数まとめあげることです。

 

解決コンセプトを評価するときには、アイデアに欠点や潜在的な問題が予測されるからといってその案を捨ててしまえば、残る案は1つもなくなってしまいます。案を捨てるのではなく、案に付随する顕在的・潜在的な欠点そのものを二次的な問題ととらえるようにします。その後、二次的な問題を解決する方法を考え出します。これにより、実現可能性を高めることができます。

 

解決コンセプトに関連して二次的な問題があることに気づいてもその案を放棄しません。二次的な問題はもう1つの問題があるというだけのことです。しかも、二次的な問題の解決は、多くの場合、当初の問題を解決するよりも容易です。

 

二次的な問題に取り組む時には、まずIdeationTRIZが定めた「標準問題」のなかに該当するものがないか検討してください。

 

対象としている問題を「標準問題」の1つとみなすことができれば、IdeationTRIZの知識ベースを直接適用することが可能です。

 

下記の「標準問題」リストから課題のありかたに類似性のある項目を選択し、適合性のあるリンクをたどっていくと、対応する解決ヒント集(オペレータ)に到達します。

 

(1)生産性を改善する、(2)利便性を改善する、(3)信頼性の向上、(4)機械的強度を改善する、(5)製造精度を改善する、(6)コストを低減する、(7)単純化、(8)重量を軽減する、(9)エネルギー消費を低減させる、(10)浪費時間を減少させる、(11)機能効率を向上させる、(12)変形、ずれ、衝撃、振動、破壊を抑制する、(13)騒音を低減させる、(14)摩耗を低減させる、(15)汚染を軽減する、(16)過熱を回避する、(17)環境との相互作用を減少させる

 

また、二次的な問題は、(1)どのようにして特性、機能、適応性を改善するかといった「有益機能を改善する」問題、(2)どのようにして有害な特性を排除、低減、防止するかといった「有害機能の排除、低減、防止」に関する問題、(3)ある有益機能は有益な結果を供給しなくてはならない、同時に有害機能を引起してはならない。どのようにシステムを変化させることで、望む有益な結果を実現し、有害な結果はなくなるか軽減されるようにするかといった「矛盾解決」問題、のいずれに該当するかを判定し、それぞれの問題のパターンに対応する解決ヒント集(オペレータ)を参照して、問題解決を図ります。

 

もうひとつの方法は、二次的な問題についてプロブレム・フォーミュレータを使って因果関係モデルを作成することです。

 

当初に作った問題状況の因果関係モデルに検討中の解決コンセプトを実行した場合の状況と、それに付随する二次的な問題を書き加えてください。

 

因果関係モデルで、新たに描き加えたボックス(有益機能または有害機能)を選択して、追加したブロック(新たに描き加えたボックスの集まり)に関連する新しい解決指針を得て、その課題を実現する解決ヒント集(オペレータ)を参照して、二次的な問題の解決を図ります。

 

当初の問題を完全に解決する完璧な解決コンセプトでも、実行に移すと予期せぬ不具合がおこることがあります。既存のシステムを改善する新しい方策を導入した際に起こるかもしれない潜在的不具合を事前に予測するために、Ideationプロセスでは、逆転の発想をします。

 

つまり、「気がつかないようなどんな不具合がおこるだろうか」と考える代わりに、問題を逆転させて不具合を故意に引き起こす、あるいは、可能な不具合を「発明する」ことを試みます。その後、逆転の発想により発見した不具合を予防する方法を考えます。これにより、解決コンセプトの信頼性を高めることができます。

 

さらに、対象システムが進化のライン上でどの段階にあるか特定することで、今後どのように変化していくか予測することができます。そして、解決コンセプトが進化のパターンに合致していれば、それが従来の方法より理想性の高いものであることが確認でき、その優位性が保証されたことになります。