「消費財の進化」の「市場の進化」のトレンド

消費財市場の進化の主な特徴は以下の通りです。
(1)現代は新商品を市場に導入することを難しくしていた一般的な障害は以前に比べてはるかに小さくなっています。結果として、全く予想しない新しい競争相手がどこかから(外国から、他の産業分野から)登場して、あっという間に市場の一部を獲得してしまう可能性があるといえます。
(2)競争の激しい飽和した市場では、なにか望まれるものがあって、それを実現することが可能な場合、必ず誰か供給者があらわれて市場のその部分を獲得することになります。
(3)ごく小さな市場参入の可能性も、強力な市場攻撃の手がかりとして利用される可能性があります。これを考えると、どんな小さくとも競合他社に利用される可能性は残すべきでないといえます。
(4)もっとも危険な競争相手は、市場に参入するためには利益はごく小さくとも (あるいは、全くなくとも)かまわないと思っている相手です。
(5)ある用途で使われる製品の間に主な性能の差が無い場合、どの製品が購入されるかを決めるのは製品の2次的な特性です。
(6)最も危険な事態は、誰かあるプレーヤーが包括的な知的財産を開発して、何らかの市場セクターで合法的独占体制を作ってしまうことです。

 

「市場の進化」の進化のトレンドには、(1)事業の総合化、(2)市場の拡大、(3)消費財購入形態の変化、(4)競合の激化と内容の変質、(5)株式市場における状況の変化、(6)顧客・ユーザーの個別化、(7)商品選択基準の変化、(8)ファッションの進化、(9)プロフェッショナル・サービスの事業化、が考えられます。

 

「事業の総合化」の進化のトレンドでは、事業の発展状況の分析によって定期的に交替する2つのトレンドが発見されました。1つは、専門化の進展です。専門化によって事業の効率が向上します。もう1つは多角化です。多角化は異なる製品間の調和を改善します。

 

しかし、更に一般的なトレンドは、ビジネスと生活環境とが益々一体になってゆくことです。これによって消費者の生活と製品のあり方とがお互いに切って切り離せないものとなり、日々の生活環境はますます便利になってゆきます(たとえば、コンビニの登場で多様な必需品を全て一箇所で買える)。

 

大衆の生活上の必要を満たすことを対象とする事業は、このような総合化の方向に進んでいるように見えます。たとえば、様々な企業が様々な家庭用設備・機器(上水、下水、芝生の手入れ、冷蔵庫、エアコン、炊事用レンジ、清掃、など)を別々に供給するのではなく、1つの会社が全ての家庭用サービスを取り扱うといった具合です。

 

この観点で考えると、たとえば、靴に関連した企業が次のような関連ビジネスを総合的に一体化する方向で成長してゆくことが考えられます。
(1)衣料品、(2)衣料品の手入れ(洗濯、乾燥、クリーニング、保管、修理、交換など)、(3)医療、(4)娯楽系商品・サービス

 

「市場の拡大」の進化のトレンドは、生活水準と消費水準とが継続して向上するため、ほとんどの消費財で市場の拡大は人口の増加よりも速いテンポで進むという強い傾向が存在する、ということです。

 

「消費財購入形態の変化」の進化のトレンドとしては、インターネット、Eコマース技術の進化によって、商品のマーケティング、購入、配送方法が急激に変化しようとしていることが挙げられます。この変化は、20世紀初頭のアメリカにおいてカタログ販売によって生じた変化と比較することができます。カタログ販売が導入された結果、従来は都市周辺の人々しか購入できなかった商品を、人口の少ない地域に住む人々も同じように購入することができるようになりました。

 

今日では、インターネット経由の購入が配送コストの削減の新しい手段になっています。消費者の要求もこれに伴って変化し、購入・配送が便利な商品を使おうとする指向が強くなってゆきます。従来の購入形態、流通形態に頼る商品は大いに魅力を失い、マーケットシェアにも影響すると考えられます。

 

情報技術が更に進化し新しい技術が導入されることによって、以下のことが生じます。
(1)コンピュータの進化によってEコマースの魅力を格段に増加させる新たな可能性が生まれます。今日でも、商品を3D画像で見ること、商品の特徴を調べること、他のユーザーのコメントを参考にすることなどができます。更に、インターネットを通じて「試着」し、その商品を自分が身に着けるとどう見えるか、持っているアクセサリーや自分のパートナーの服装にマッチするか、などを確認することも可能です。
(2)低コストですばやく配達可能な国際配送システム(フェデックス、UPSなど)の出現。
(3)上記の変化は更に大半の商品が小売店舗など中間のステップを経ずに、生産者から消費者に直接配送されるところまで進むと考えられます。その結果として、更に次の事態が生まれます。
(4)大幅なコスト(商品コスト、配送コスト、共)削減を特徴とする新たな流通システムの展開
(5)製造業者の既存販路への依存度の低下、自社商品のマーケティングに対する影響力の強化
(6)配送時間の短縮、配送の利便性の向上

 

この結果、あらゆる消費財関連産業において、商品のユーザーへの直接配送にともなう構造的変化が生じる可能性があります。この変化は、更に以下の変化につながります。
(1)市場における業者の地位、ビジネス形態、宣伝方法など
(2)新商品、新技術、新たな包装システムの開発