「消費財の進化」の「生活の進化」のトレンド

進化のラインには、システムの基本的な要素である「機能」「プロセス」「物質」「エネルギー=場」「構造」がそれぞれ進化してゆく過程で働いているライン(これを「一般的な進化のライン」という)と、特定の分野に限定された進化のライン(これを「特定的な進化のライン」という)とがあります。

 

米国のアイディエーション・インターナショナル社が制作したDirected Evolutionソフトウェアでは、「特定的な進化のライン」には、(1)消費財の進化、(2)システムの歴史における市場の変化、(3)計測システムの進化、(4)情報資源の利用、(5)道具の進化、(6)道具に対する被処理物のマッチング、(7)製造プロセスの簡素化、(8)運搬と処理のリズムのマッチング、が記載されています。

 

実は、Directed Evolutionソフトウェアの「特定的な進化のライン」に記載されている「消費財の進化」には、例外的に進化のラインの上位概念である進化のトレンドが記載されています(進化のトレンドとは、システムが進化してゆく過程で見受けられる短期的・長期的のあらゆる傾向を一般的に指します。また、歴史の中で一度だけ、あるいは、稀に観察される傾向も含まれます)。

 

「消費財の進化」の主要なトレンドには、(1)生活の進化、(2)市場の進化、(3)製品の進化、の3つの分類があります。

 

「生活の進化」の進化のトレンドには、(1)環境の馴化、(2)新次元での資源活用、(3)技術の進化、(4)構造的危機、が考えられます。

 

「環境の馴化」の進化のトレンドは、環境の変化に関するものです。たとえば、住居、建物、道路、通信システムなどの社会的インフラストラクチャー や、消費財や、植物、花、ペットなどの自然の産物では、環境に含まれる様々な危険、好ましくない要素、不快な要素が排除され、減少してゆく。便利なもの、あるいは、好ましいものが人間を取り巻く環境に取り入れられてゆく。

 

「新次元での資源の活用」の進化のトレンドは、あらゆる技術システムは物質、エネルギー(場)、情報、空間、など何らかの資源を使うことによって機能を発揮し、また、進化してゆく、ということです。

 

技術システムの進化は目に見え、手に入れやすく、そのまま使える資源を利用するところから始まります。こうした当たり前の資源がすっかり使われてしまうと、見つけにくく、手に入れにくい資源が使われるようになります。同時に、既存の資源をそのまま使うことから、人間の知識、知恵、工夫によって発見され生み出された派生的な、変化させられた、気の利いた資源を使うことへの移行も進みます。

 

今日では、物質の物理・化学的特性、物理的な場の特性や効果、特殊な幾何学的形状、新しい視点などがしばしば問題解決に必要な資源の役割を果たしています。

 

「技術の進化」の進化のトレンドは、ものづくりの技術に関連する進化の要点は、以下の3点である、ということです。
(1) 設計の考え方の進歩
① 技術者間の競争
② 情報技術の進化
(人間の直感に依存した高度な技能の誰でも利用できる知識への転換)
③ コンピュータの活用(CAD、CAM、Pro engineerなど)
④ 開発・設計技法の進化(DFMA、コンカレント・エンジニアリング、FMEAなど)
⑤ 極めて効果的な問題解決技術(TRIZ)
⑥ 戦略的な技術革新技術(DE)
(2) 生産管理分野での進歩
① メーカー間の競争の激化
② コンピュータを利用した生産管理システム
③ 業務管理技術の改良(TQM、VE、など)
(3) 生産技術の進歩
① 柔軟性
② コストの低い正確さ
③ 局所的(臨時的)対応の可能性
④ 必要な特性を持った素材の合成と使用
⑤ 効果的な安全対策、環境対策の可能性

 

「構造的危機」の進化のトレンドは、社会が発展する過程では様々なトレンドが出現し、それらが相互に影響を与え、それが人間の考え方や心理を変化させ、その変化は始めごく些細なものとして登場するため、通常の市場調査などで発見することはできません。しかし、この些細な変化が正のフィードバック(連鎖反応)のきっかけとなり、短期間の内にある産業の製品の設計、組成、生産、販売、マーケティング、サービスなどを大きく変化(これを「構造的危機」という。)することがある、ということです。

 

こうした「構造的危機」を予測し、予めそれに備えることができれば、大いに有利なことは言うまでもありません。逆に、この危機に注目せず何の準備もないままに事態に直面することになれば、一切を失うおそれがあります。現在、大量生産を特徴とする多くの産業分野が「構造的危機」の始まる瀬戸際に立たされているといえます。

 

その原因となっているのは、(1)消費者のニーズと期待の変化、(2)技術の変化、(3)巨大な投資資金の存在、(4)様々な新興市場とビジネスチャンス、新興競合相手の出現、などです。

 

「構造的危機」の兆候は市場の不安定化にあらわれます。近年は、新規市場参入への障害が減少し、様々な産業において企業の業容や生産量が簡単に大きく変化するという新しいビジネス環境となっています。言葉を変えれば、様々な産業分野において、コンピュータや他のハイテク産業と同じように、あっというまに予期しない新顔が登場し、株価が急変し、新たな提携関係が生まれるというような状況が生じる可能性があります。

 

「構造的危機」が発生する典型的な兆候は以下のとおりです。
(1)ある分野の主な企業の収益の(例外のない)悪化
(2)競合の激化と販売・宣伝経費の増加
(3)業界再編の増加(企業・事業の吸収/合併、シェアの急変など)
(4)規模の小さい企業による技術・設備更新に関する積極的な働きかけ
(5)顧客の不満の兆候
(6)コスト削減、簡素化、信頼性向上、新機能の追加などを可能にする最先端の電気、電気、情報、コンピュータ技術など、新設計、新技術に関するニュース