システム構造の「進化のライン」

システム構造の進化のラインは、(1)資源の利用、(2)既存コンセプト内でのシステム進化、(3)マルチレベルへの移行、(4)自由度の増加、(5)機能の増加、(6)安定性の変化、(7)制御性の増加、(8)マッチングとミスマッチングの順序、(9)システム内のマッチングの種類の変化、(10)システム内のミスマッチングの種類の変化、(11)リズムのマッチング、(12)リズムのミスマッチング、(13)バイ・システム(複合システム)の開発、(14)ポリ・システム(多重システム)の開発、(15)簡素化の順序、(16)網目状構造への移行、が考えられます。

 

「資源の利用」の進化のラインでは、①すぐに入手できる資源を利用する→②派生された潜在的な資源を利用する→③新しい資源を利用する、といったラインに従います。

 

資源の種類には、物質資源、エネルギー資源、空間資源、時間資源、情報資源、機能資源があります。資源の出所には、構成要素、廃棄物、環境、近隣システム、関連システムがあります。資源の利用の目的には、主要機能の改良、二次的・補助的機能の改良、機能の数量を増やす、販売アピールを上げる、新機能を生む、望ましくない機能・効果を排除する、といったものがあります。

 

「既存コンセプト内でのシステム進化」の進化のラインでは、①新機能の発明と、その機能を実行するための一般的原理(通常、複数通り)の発明→②単独システムの進化→③複数システムの進化、といったラインに従います。

 

「②単独システムの進化」の進化のラインでは、a.現在の技術レベルで実現可能な原理の選択→b.新システムの性能を試すための最初のプロトタイプの製作→c.最適な設計や技術プロセスの開発、実用的な部品の選択、実用システムの開発→d.システム・パラメータの定量的な改善→e.進化途上でのボトルネックや矛盾点の解明と解決→f.未解決のボトルネックの蓄積とシステムが立脚する概念的原理をさらに改良する手段の使い尽くし→g.新原理に基づく新システムの導入(発明)、といったラインに従います。

 

「③複数システムの進化」の進化のラインでは、a.新機能を実行するための異なる原理にそれぞれ基づく複数システムの並行開発→b.1つのシステムが勝者となりさらに進化する→c.勝者システムにおける未解決のボトルネックの蓄積と同システムが立脚する概念的原理をさらに改良する手段の使い尽くし→d.勝者以外の1つまたは複数のシステムと複合化することで牽引型バイ・システムを構築し、既存のシステムに取って代わる、といったラインに従います。

 

「マルチレベルへの移行」の進化のラインでは、①マクロレベル(たとえば、ある形状の要素(歯車、レバー、ブッシング、ドリル穴、溝、鋳造物の開口、空洞共振器、など)からなるシステム、など)→②単純な幾何学的形状の要素からなるポリ・システム(たとえば、平板、糸、繊維、玉;ロープ、ケーブル、鋼板を積層した磁心、ハニカム構造体、大きい気泡の泡状体、など)→③小さい要素からなるポリ・システム(たとえば、粉体、エマルジョン、エアロゾル懸濁液、毛細管・多孔質体、薄膜、細かい気泡の泡状体、など)→④ナノレベルの現象の利用に基づくシステム(たとえば、高度に研磨した鋼板同士の接合、など)→⑤物質構造(超分子レベル)に関連した現象の利用に基づくシステム(たとえば、アモルファス体と結晶体、固体と液体、結晶構造の再構築と相転移、物質構造の空隙(たとえば、結晶構造の転移(欠陥)、半導体内の空孔、など)、磁化、など)→⑥分子現象の利用に基づくシステム(たとえば、物質の化学変換;分解と合成、重合、触媒、ゼオライト、など)→⑦原子現象に基づくシステム(たとえば、イオン化と再結合、素粒子(電子など)の利用、など)→⑧物質に代えて場の作用に基づくシステム(たとえば、熱、光、電磁界、など)、といったラインに従います。

 

「自由度の増加」の進化のラインでは、①非動的なシステム→②機械的に可動なシステム(ヒンジ、可動機構、柔軟材料、などの利用)→③ミクロ・レベルで変化できるシステム(溶解、凝固、化学変化、などの利用)→④場が変化できるシステム(機械的、熱的、化学的、電気的、磁気的、電磁気的エネルギー、などの利用)、といったラインに従います。

 

「機能の増加」の進化のラインでは、①1つの手段を持つシステム→②別個の複数手段を持つシステム(a.手段の変換は必要があるときに手動で行う→b.手段の変換はプログラムに基づいて行う)→③変化可能な手段を持つシステム、といったラインに従います。

 

「機能の増加」の進化のラインの例には、①鋸刃、ねじ回し→②a.種々の刃を持つ鋸、種々の先端を持つねじ回し→②b.自動ツール交換;コンピュータ制御のカム操作→③調節可能なトーチを備えたプラズマ切断機、などが挙げられます。

 

「安定化の変化」の進化のラインでは、①安定性に無関心なシステム→②1つの安定状態を持つシステム→③複数の安定状態を持つシステム→④動的な安定性を持つシステム→⑤人工的な安定性(フィードバック、フィードフォワード)→⑥不安定なシステム、といったラインに従います。

 

「安定化の変化」の進化のラインの例には、①床上のボール→②テーブル→③照明器具のスイッチ→④自転車→⑤F-15(試作機)は、機敏な操縦性を出すために、意図的に不安定に作られ、自動操縦システムが操縦者の操作を継続的に補償した。→⑥ニトログリセリン、などが挙げられます。

 

「制御性の増加」の進化のラインでは、①無制御のシステム→②力が制御可能なシステム(プログラムに基づいて制御)→③半自動制御→④自己制御システム(制御されていないが、環境に応じて必要方向へ自ら調整する)、といったラインに従います。

 

「制御性の増加」の進化のラインの例には、①電線(電流を制御していない)→②電気スイッチ→③回路遮断器→④永久ヒューズ、などが挙げられます。

 

「マッチングとミスマッチングの順序」の進化のラインでは、①有益結果を生む要素、作用間で最低のマッチングしかしていないシステム(最初のラジオ受信機や自動車は相互整合性に欠ける部品から構成されていた)→②有益結果を生む要素、作用間で満足のいくマッチングをしているシステム(最先端の自動車)→③有益結果を生む要素、作用間でのマッチングをシストしているシステム(駆動車軸のディファレンシャル)→④動的なマッチングとミスマッチングをしたシステム(様々な乗員に対して自動車シートの状態を自動的に調整する)、といったラインに従います。

 

「マッチングとミスマッチングの順序」の進化のラインでは、①有害結果を生む要素、作用間で最低のミスマッチングしかしていないシステム(最初の自動車は屋根がなかった)→②有害結果を生む要素、作用間で満足のいくミスマッチングをしているシステム(最先端の自動車は騒音、天候、事故から人を守る)→③有害結果を生む要素、作用間でのミスマッチングをシストしているシステム(乗員が満足するように、種々のシステム(カーエアコン、電話など)に意図的に疑似ノイズを加える)→④動的なマッチングとミスマッチングをしたシステム(様々な乗員に対して自動車シートの状態を自動的に調整する)、といったラインに従います。

 

「システム内のマッチングの種類の変化」の進化のラインでは、①最小限のマッチングしかしていないシステム→②強引なマッチングを行うシステム→③バッファ(緩和的)マッチングを行うシステム→④自己マッチングを行うシステム、といったラインに従います。

 

「システム内のマッチングの種類の変化」の進化のラインの例には、①部品ごとに製造速度の異なる製造機械を用いる生産方法→②最も速度の遅い工程(ボトルネック工程)に合うように全体の製造速度を落とす→③製造工程の中にバッファ在庫を持つ→④頻度、速度、温度などの自動制御、などが挙げられます。

 

「システム内のミスマッチングの種類の変化」の進化のラインでは、①最小限のミスマッチングしかしていないシステム→②強引なミスマッチングを行うシステム→③バッファ(緩和的)ミスマッチングを行うシステム→④自己ミスマッチングを行うシステム、といったラインに従います。

 

「システム内のミスマッチングの種類の変化」の進化のラインの例には、①部品ごとに製造速度の異なる製造機械を用いる生産方法→②ダム:水の流れを止める→③ダム:水の流れを調整する→④ダム:需要に応じて水の流れを制御する(フィードバック)、などが挙げられます。

 

「リズムのマッチング」の進化のラインでは、①異なるサブシステムのリズムがまちまち→②異なるサブシステムのリズムが同一→③固有振動数の利用、といったラインに従います。

 

「リズムのマッチング」の進化のラインの例には、①炭鉱で石炭層を脆くするために振動させる際、当初は、リズムが不揃いな水圧で石炭層の複数個所を振動させていた→②石炭層の複数個所をリズムの同期した水圧で振動させるようになった→③石炭層の固有振動数で脈動する水圧を用いるようになった、などが挙げられます。

 

「リズムのミスマッチング」の進化のラインでは、①リズムのミスマッチングがいい加減→②固有振動数を避けることによるリズムのミスマッチング、といったラインに従います。

 

「リズムのミスマッチング」の進化のラインの例には、①航空機の翼の設計が適切でないと、翼がその共鳴振動数でバタバタと振動する→②翼端にカウンターウェイトを付けて、翼の振動数が翼の共鳴振動数と一致しないようにする、などが挙げられます。

 

「バイ・システムの開発」の進化のラインでは、①モノ・システム(単システム)→②同種バイ・システム→③シストした特徴バイ・システム、といったラインに従います。

 

「バイ・システムの開発」の進化のラインの例には、①単銃身銃→②二連散弾銃、③口径の異なる上下二連ライフル銃、などが挙げられます。

 

「両立バイ・システムの開発」の進化のラインでは、①システム、①´①システムと両立可能なシステム→②両立バイ・システム→②a.二元バイ・システム、②b.共生バイ・システム、②c.相補バイ・システム、といったラインに従います。

 

「両立バイ・システムの開発」の進化のラインの例には、→②a.2液性エポキシ樹脂、②b.一方のシステムからの排熱で他方のシステムを加熱する、②c.2本の抵抗線を並列に巻いて抵抗値の温度補償をした巻線抵抗器:温度が変化すると一方の抵抗線は抵抗値が増加し、他方の抵抗線は抵抗値が低下する、などが挙げられます。

 

「競合バイ・システム」の進化のラインでは、①相反する機能(長所と短所など)を持つシステム、①´①のシステムと競合するシステム→②競合し合うシステムからなるバイ・システム→②a.牽引バイ・システム→②b.同種相補バイ・システム、といったラインに従います。

 

「競合バイ・システム」の進化のラインの例には、②a.新しいシステムを旧いシステムが牽引(援助、下支え)する:たとえば、ジェット推進器を搭載したプロペラ機→②b.同じ目的を達成する競合システムを組み合わせてより優れた結果を得る(短所を打ち消すなど):たとえば、反射式と屈折式の望遠鏡を組み合わせた反射屈折式望遠鏡(マクストフ式など)、などが挙げられます。

 

「選択バイ・システム」の進化のラインでは、①システム、①´①の反対システム→②選択バイ・システム、といったラインに従います。

 

「選択バイ・システム」の進化のラインの例には、②エアコン:加熱と冷却の組み合わせ、などが挙げられます。

 

「ポリ・システムの開発」の進化のラインでは、①上位システムに含まれる複数のシステム→②a.2つのシステムが上位システムに統合される(複合システム:たとえば、2つの船体を結合した双胴船)→②b.3つ以上のシステムが上位システムに統合される(多重システム:たとえば、AM/FMラジオ、CD,MD,CVDを結合したコンポ・システム)、といったラインに従います。

 

「ポリ・システムの開発」の進化のラインでは、①同種ポリ・システム→②シフトした特性を持つシステム同士のポリ・システム→③バイ・システムからなるポリ・システム→④動的ポリ・システム(多重化によって柔軟、適応、変化、制御の能力を高めたシステム)、といったラインに従います。

 

「ポリ・システムの開発」の進化のラインの例には、①1台のクレーンで持ち上げられない非常に重いものを、複数台のクレーンを同時に使って持ち上げる→②径と幅と形の異なる複数のフライス工具を組み合わせて、複雑な形状を加工する→③懐中電灯に用いられる3本の電池のセット(各電池は陰極と陽極のバイ・システム)→④自転車のチェーン、などが挙げられます。

 

「簡素化の順序」の進化のラインでは、①機能の簡素化、および/または補助機能の数の減少→②資源利用の強化(a.既存要素を資源で置き換える、b.サブシステムを追加の用途に使う)→③主要素が補助機能も行う→④システムの一体性のレベルを高める→⑤基本的サブシステムを拡張する(部品を統合する)→⑥エネルギーまたは物質の変換の数を減らす→⑦直接的なエネルギーまたは物質の変換を利用(マイクロレベル)→⑧「スマート物質」の利用:今までとは違う現象の利用、といったラインに従います。

 

「簡素化の順序」の進化のラインの例には、①昔の自動車はいくつものグリース・フィッティングからグリースを注入する必要があったが、今日の自動車はその必要性がない→②a.車の排気ガスで空気袋を膨らませて車を持ちあげる→②b.切削加工中に旋盤の切削工具の温度を測るために、その工具を熱電対として利用する→③車のエンジンからの熱を使って車内を暖める→④スイスのアーミーナイフは、いくつものツールを一体化している→⑤トランジスタた他の電子部品を組み合わせて分解不能に一体化された集積回路を作る→⑥航空機:内燃機関(熱エネルギーをピストンへ、クランクシャフトへ、プロペラへ、飛行用の力へ)対ジェットエンジン(熱エネルギーを飛行用の圧力へ)→⑦太陽エネルギーを直接的に電気エネルギーに変換する対太陽エネルギーで水を加熱して水蒸気で発電する→⑧追うsと回路を閉じるタッチセンサなどにおいて、多数の素子からなる複雑なスイッチング・システムに代えて、金属粉で満たした弾性高分子材料を用いる、などが挙げられます。

 

「網目状構造への移行」の進化のラインでは、①サブシステムの数の増加(a.異なる独立システムの統合、b.システムの分割)→②階層レベルの増大(a.サブシステム間の主従関係の成立、b.階層レベルの数の増加)→③階層構造から網構造への変化(a.異なるレベルのサブシステム間のリンク形成、b.異なるレベルの多様なフィードバック形成、c.リンクのダイナミゼーション)、といったラインに従います。

 

「網目状構造への移行」の進化のラインの例には、①a.コンピュータのキーボード、モニタ、マウス→①b.BIOSメモリ、ハードドライブメモリ、RAM→②a.メモリ領域をディレクトリとサブディレクトリ等に分割、②b.コンピュータを用いた制御システムはたくさんのサブシステムからなる→③a.すべての種類のコンピュータ・メモリは相互にデータを授受できる(スワップ・ファイル)、③b.スクリーン・セーバやパワー・セーバは、コンピュータの不使用時に制御権を握る→③c.ソフトウェアは相互関係(リンク)を動的に変更できる、などが挙げられます。