I-TRIZの基本的な取り組み方

I-TRIZの基本的な取り組み方
I-TRIZ(Ideation-TRIZ)の基本ツールには、(1)複雑な問題を複数の観点から問題状況を体系的に分析するためのシステムアプローチ(多観点分析)、(2)システムあるいはその周囲に存在する何らかの特性で、システムを改良するために利用できるもの(これを資源という。)を確認するための資源把握、(3)システムに関連して有益な機能、または、有害な機能を生じさせているメカニズムを、一般化した伝達しやすい文章の形に変換することで、複雑な問題をいくつかの単純な問題に切り分けて取り組めるようにするためのプロブレムフォーミュレータ(問題状況の図式モデル化)、(4)問題の種類に応じた的確な発想のヒントを提供するオペレータシステム(発明のパターン集)、の4つがある。
これら4つのツールに共通する考え方は、世の中のモノやコトを捉える際に、独立した個々の事象に目を奪われずに、各要素間の相互依存性、相互関連性に着目し、全体像とその動きをとらえようとするシステム思考にある。一言でいえば、問題の対象をシステムとして捉えるということであるが、これに関連して使用される用語の意味を理解することが大切である。
一般にモノやコトを理解する場合には、「属性」、「性質」、「分類」、「機能」という観点で観察することが行われているが、以下、それらの意味を確認する。
「それが何からできているのか」という疑問に答えたものが、「属性」といわれるものである。わかるためには分けるということで、「構成要素」に分解することになる。それら構成要素の集合が対象となるモノ、コトということになる。
たとえば、「本」は、属性である「カバー」および「表紙」および「扉」および「ページ」および「奥付」から成り立っているという表現ができる。
「それはどんな様子なのか」という疑問に答えたものが「性質」といわれる。「性質」は一つの要素ということはなく、いくつかの「性質」によってモノ、コトが成り立っている。
たとえば、「本」は、性質である「縦の長さ」および「横の長さ」および「厚さ」および「表 紙の色」および・・・から成り立っているという表現ができる。
「それと似たようなものがあるか」という疑問に答えたものが「分類」である。ある概念の適用される範囲を「外延」というが、「分類」とはその「外延」を決めることと同じことになる。
たとえば、「本」とは、分類である「単行本」または「雑誌」または「政府刊行物」または 「百科事典」または「文庫本」または・・・にわけることができるという表現ができる。
「それでどんなことができるのか」という疑問に答えたものが「機能」である。ある概念に含まれるすべての基準や条件を「内包」というが、「機能」とは概念の意味要素であるすべての「内包」を決めることである。
たとえば、「本」とは、「文字や図画などを書き」かつ「印刷され」かつ「一冊に綴じ」かつ「知識を記録した」ものという表現ができる。
I-TRIZでは、以上のようなシステム思考(そこで使用される用語の理解を含む)を基本として、古典的TRIZの基本的な思想である(1)構成要素やその相互関係を捉える人の認識の特性を加味した考え方(たとえば、「小さな賢人」、「理想解」など)、および(2)認識内容に意味づけを与える個人や社会の価値の基準の変化のあり方を加味した考え方(たとえば、「理想性」、「技術システムの進化の法則」など)を活用して、複雑な問題を効率的に解決しようとしている。