「どうしたらTRIZを社内の研究者、技術者に普及できるだろうか」という問題をI-TRIZで簡単に解いてみる試みの7回目(最終回)です。
ここまでI-TRIZを使って簡単に問題解決をする方法として、「標準問題」のオペレータだけを使う方法を事例に沿って紹介してきましたが、前回までで多くのアイデアが提案されています。
まだまだ、たくさんの提案ができるものと考えますが、この辺でとりあえずの区切りをつける意味で、(1)~(6)回までの分をまとめてみました。
「標準問題」のオペレータには「(1)生産性を改善する、(2)利便性を改善する、(3)信頼性の向上、(4)機械的強度を改善する、(5)製造精度を改善する、(6)コストを低減する、(7)単純化、(8)重量を軽減する、(9)エネルギー消費を低減させる、(10)浪費時間を減少させる、(11)
機能効率を向上させる、(12)変形、ずれ、衝撃、振動、破壊を抑制する、(13)騒音を低減させる、(14)摩耗を低減させる、(15)汚染を軽減する、(16)過熱を回避する、(17)環境との相互作用を減少させる」といった17項目のオペレータがあります。 前6回までのシリーズでは、「社内にI-TRIZを普及させる方法」をテーマとして、「標準問題」のオペレータの中の最初の「(1)生産性を改善する、(2)利便性を改善する」という2項目だけを使用して検討した結果を紹介しました。
この2つのオペレータを検討しただけで、「社内にI-TRIZを普及させる方法」について以下の8つの具体的な方策案が提案されました。
(1)本を読んだり、論文を読んだり、セミナーに参加したりして、自分たちでI-TRIZ
を人に教えられるまでに学習を積むも大切ですが、それと並行して、I-TRIZの専門家の助けを借りて、研究者、技術者自身が抱えている難問を自分たちの力で解いてしまうといった体験をすることが有効です。
(2)I-TRIZの全思考プロセスを習得する前に、I-TRIZの標準的なモジュールである、①システムアプローチ(多観点分析)、②プロブレム・フォーミュレーション(因果関係ダイヤグラムの作成)、③利用可能な資源の把握、④問題発生のメカニズム分析(不具合分析)、⑤オペレータ・システム、⑥アイディエーション・ブレーンストーミング、⑦二次的問題の解決(実装性の向上)、⑧実行時の不具合予測と予防、⑨進化のパターン/ラインの適用、のうちから取り組む問題に応じて有効と思われるもののみを選択的に使用することも有効です。
(3)I-TRIZが自分たちの仕事に役立つか否かを評価する段階では、実際のテーマで1~2週間に1回程度の頻度でI-TRIZの思考プロセスに沿った基本作業を行いながら、その合間に基本作業で得たアイデアの評価(実現可能性、新規性の確認などの補助作業)を自分たちで行い、基本作業にフイードバックしていくことでプロジェクトの成功つなげることが大切です。
(4)I-TRIZが自分たちの仕事に役立つか否かを評価する場合に、「同じテーマのプロジェクトを同時に複数のチームで行うことで、属人的な要素の影響度合いを確認する。」ことや、「同じコンサルプログラムで複数の異なる技術分野のテーマのプロジェクトを同時に行うことで、適用分野によってどのような成果の違いが出るかを確認する。」ことを試みるとよい。
(5)I-TRIZの基本ソフトウェアであるIWB(Innovation WorkBench)を使用する前に、まずは、簡易版のシステムアプローチと簡易版のオペレータを組み込んだIBS(Ideation Brainstorming)というソフトウェアと、因果関係ダイヤグラムを作成することで取り組むべき課題を発見するためのプロブレム・フォーミュレータ(Problem Formulator)というソフトウェアを使用して、技術者個人の通常の技術開発業務を効率的に処理することを経験するとよい。
(6)従来の古典的TRIZの欠点を改良すべく、あらゆる問題を一貫した手順で解決することのできる新しい体系的な思考プロセスとして再構築したI-TRIZを採用すれば、初めての人でも抵抗なく取り組むことができ、具体的な成果を上げることができる。
(7)I-TRIZについての解説が必要な場合には、「自社の実際の技術テーマについて実施した成功事例を添えて、I-TRIZが初心者にも取り組みやすく、確実に成果が上がるものである。」ことを説明するとよい。
(8)I-TRIZの思考プロセスをそのまま使うことではなく、目的は問題を解決することにあるわけですから、問題の種類に応じておよび/または使う人の都合に合わせて使用するモジュールを選択的に使用することを考えるとよい。
今回は「標準問題」のオペレータの有用性を知っていただく意味で「社内にI-TRIZを普及させる方法」を題材にしましたが、今後機会を見てこのテーマについては改めて説明をしたいと思っております。