米国のアイデイエーション・インターナショナル社が開発したDE(Directed Evolution:方向づけられた進化)は、従来の技術予測とは一線を画したものであって、未来の新製品開発や新規事業の企画のための意思決定の方法論といえるものです。
1950年代中頃以降に開発された従来の予測手法では、過去の経済成長分析から、経済成長に関係するパラメータを抽出し、過去の趨勢からそのパラメータの数値を変えることで将来を予測するといった確率論的手法が採用されていました。これは、定量的に捉えられるものにはいいが、定性的なものへの適用が難しいものでした。
1970年代中頃には、技術のさまざまな領域に及ぶ多数のイノベーションを分析することを通して発見されたTRIZの進化のパターンを参考にして、自然に発生する前に次世代の製品やプロセスを発明するといった、TRIZの技術予測アプローチが提案されました。
TRIZの技術予測から進化したDEは、1987年から研究が進められ1990年代中頃に開発されたものであって、「技術的な進歩は、特定の利点とともに、マイナスの結果も引き起こすが、だからといってこの進歩を止めようとするのは意味がないことである。それよりもこれを制御し、方向づける方がいい。」との思想に基づいています。
日本には、学校法人産業能率大学が1997年から始めたTRIZセミナーでDEが初めて紹介されました。 しかしながら、当時はその詳細な内容についてはブラックボックス化している部分が多く、アイデイエーション・インターナショナル社のコンサルティングを受けないと実践できないというものでした。 そのため、学校法人産業能率大学では、アイデイエーション・インターナショナル社のDEを基礎としてその改良版としてのSTM-DEなる手法を開発し、その普及に務めました。
2009年になってDEがコンピュータ・ソフトウェアで提供されるようになり、その全貌が明らかとなっています。 それによると、ソフトウェアが提供されるまでのDEとは比べものにならない位のデータベース(技術進化のほか、社会、市場進化を含む400以上の進化のライン)を備えており、発明的問題解決のコンピュータ・ソフトウェアとして発表されているIWB(Innovation Work Bench)の4倍位のデータ量があるといわれています。
したがって、最新版のDEは、従来の紙ベースのDEとは比較にならない膨大な体系を持っており、従来のDEとは世代が違う「新世代DE」といえるものになっています。