「システムが対象とする市場の進化」の進化のライン

「システムが対象とする市場の進化」の進化のラインには、(1)市場の進化のライン、(2)システムと市場ニーズの進化の相互関係のライン、(3)需要の進化のライン、(4)市場の成長の過程における顧客指向の進化のライン、(5)市場への適応の進展とあらゆる市場ニッチ占有のライン、(6)独立した製品の市場参入のライン、(7)補助的製品の市場参入のライン、(8)市場における新しいイシュー出現のライン、(9)システムの用途の拡大(消費財からの展開)、(10)システムの用途の拡大(軍需からの展開)、などが考えらえます。

 

「(1)市場の進化のライン」の進化のラインでは、①多くの場合たまたまそうなった当初の市場。→②関連する周辺の市場に参入しようとする試み。→③当該システム固有の市場の発見と形成。→④積極的な市場拡大(a.他のシステムの市場への侵入、b.当該システム固有の市場の分割と独立した市場区分の形成、c.市場の金額的規模の拡大)。→⑤市場の安定。当該市場の成長速度が社会そのものの成長速度と等しくなる。→⑥市場のハイブリッド化。ハイブリッド化した市場の内部に新しい市場区分の形成、のように進みます。

 

「(2)システムと市場ニーズの進化の相互関係のライン」の進化のラインでは、①市場ニーズに先行するシステムの進化(需要の不在)。→②システムと市場との並行的進化(需要形成の開始)。→③システムの進化の市場ニーズへの遅れ(需要の竜巻現象)。→④システムと市場との並行的進化(需要の成熟化)。→⑤市場ニーズの調整(需要の操作)(a.顧客への働きかけ、b.システムの変更、c.システム供給(流通)方法の変更)、のように進みます。

 

「(3)需要の進化のライン」の進化のラインでは、①需要の欠如(システムに対する情報の不在)。→②一部人々(未来志向者)からの熱狂的需要。→③需要と供給の一致、年数パーセントの安定した市場成長。→④市場の飛躍的成長。新しい顧客層を惹きつける魅力を持った製品バリエーションの出現がきっかけとなる。→⑤安定した市場成長の間の小さな変動。→⑥主要な需要の減少。→⑦一部の人々(過去志向者)からの継続的需要。→⑧システムの市場からの退出、のように進みます。

 

「(4)市場の成長の過程における顧客指向の進化のライン」の進化のラインでは、①先進的な「新しいもの好き」な顧客への指向。→②システムが最大の価値を提供できる必然的な顧客への指向。→③当該システムに固有の様々な特殊顧客層への指向(たとえば、a.専門家、b.富裕層、c.身体の不自由な人達、d.国籍、文化、民族、性別などのマイノリティー)。→④一般大衆、あるいは、最大需要層への指向。→⑤すべての顧客を各種の特定セグメンテーションに区分し、それぞれに対応した特別仕様の製品を生産供給する。→⑥保守的な「変化嫌い」な顧客、および、システムを置き換える新しいシステムの活用が進まない分野への指向、のように進みます。

 

「(5)市場への適応の進展とあらゆる市場ニッチ占有のライン」の進化のラインでは、①当初の汎用的システム。→②個別の市場セクターに対応して特化した一連のシステム群(当初のシステムの各種バリエーション)。→③主要な市場セクターをすべてカバーする特化したシステム群(システムのバリエーションの網羅的増大)。→④バリエーションの減少とシステムの二次的汎用化。→⑤当該システムと別の市場セクターで使われていた他のシステムとのハイブリッド化、のように進みます。

 

「(6)独立した製品の市場参入のライン」の進化のラインでは、①特殊な製品による「副次的」市場への参入。→②主要な市場セクターへの参入。→③製品「固有の」市場の形成、のように進みます。

 

「(7)補助的製品の市場参入のライン」の進化のラインでは、①「主導的システム」の市場への出現。→②「主導的システム」に重要な補助的機能(複数の場合あり)を提供するシステムの創出。→③補助的システムの「主導的システム」への合体と両者の一体的進化。→④何らかの市場セクターにおける、補助的システムの主要システムへの転換、のように進みます。

 

ある技術システムを発展させるために必要な資源の1つは、そのシステムに対するニーズです。ある種のニーズは何らかの新しいシステムが登場したときに生まれます。

 

つまり、そうした新しいシステムが呼び覚ますまでは、そのニーズは社会に存在しません。また、一旦生まれたニーズは飽和点で安定して存在し続けますが、ニーズを呼び覚ましたシステムが他のシステムによって置き換えられるときに、ニーズも消えてしまいます。

 

こうした事情を明らかにするには、市場におけるニーズの推移についてのデータを分析する必要があります。

 

顧客の側は、誰かがそのようなニーズが潜在していることに気づかせてくれるまで、システムが改良されることを求めません。たとえば、レクサスが登場するまでは乗用車の騒音はアメリカの自動車産業では大きな争点とはなっていませんでした。

 

「(8)市場における新しいイシュー出現のライン」の進化のラインでは、①従来充足させられていなかったニーズを満たす新しいシステムの創出。→②新しいニーズを既存技術の範囲で充足するシステムの創出。→③既存のニーズを新しい手段で充足するシステムの創出。→④既存のニーズを既存の手段で充足する方法の改良、のように進みます。

 

「(9)システムの用途の拡大(消費財からの展開)」の進化のラインでは、①消費財としての製品。→②機械産業での利用(a.機械や装置の小さな部品、b.機械や装置の大きな部品)。→③建設業、農業での利用、のように進みます。

 

「(10)システムの用途の拡大(軍需からの展開)」の進化のラインでは、①軍需産業、宇宙開発での使用。→②機械産業での利用(a.機械や装置の小さな部品、b.機械や装置の大きな部品)。→③建設業、農業での利用。→④消費財での利用、のように進みます。