条件で分離するオペレータ

今回は条件で分離するオペレータについて説明します。 条件で分離するオペレータのグループは、システムまたはプロセスが互いに矛盾する要請を満足させる、または相反する条件で動作することが求められている場合に使用します。
条件で分離するオペレータには次の11の種類があり、問題の性質によって適当なものを使い分けます。
(1)互いに矛盾する要請を条件・特性で分離する
(2)分離効果を使う
(3)部分的に軽減する
(4)光学の特性を変える
(5)第2の場を導入する
(6)添加物を導入する
(7)要素の追加の特性を使う
(8)システム内の場を使う
(9)周辺環境の場を使う
(10)放出されるエネルギーを使う
(11)場の提供者を探す
以下に、それぞれのオペレータの内容を説明します。
(1) 矛盾する要請を条件・特性で分離する 変化させることのできる何らかの属性あるいは条件を探し、その属性の値あるいは条件がある状態の時には1つの要請を満足し、別の状態の時に反対の要請を満足するようにしてください。
(2) 分離効果を使う グループ内の1つの対象物にだけ影響を与えたい(分離したり、その特性を変更するなど)場合は、その対象物の特殊性や機能を利用することを検討してください。その特性や機能を示す作用を探して適用してください。
(3)部分的に軽減する 特定の空間、期間において作用や結果を最大にし、更に他の空間、期間において、それらを最小にするには、作用を最大にすると同時に、最小の作用が必要とされる空間や期間に対し保護するための物質を適用してください。
(4) 光学の特性を変える あなたの目的か環境の光学の特性を変えることを考慮してください。色、透明、光輝、色調、飽和、明るさ、コントラストなどを変更することを考慮してください。
(5)第2の場を導入する 他の場や場を持つ物質を追加すれば、システムの機能を拡張できる場合もあります。
(6)添加物を導入する 添加物を導入してください。システムまたはプロセスは、どちらでも既存の制御可能な場(力、影響または作用、あるいは利用するエネルギーの種類)に反応する構成要素または素材を導入することによってより効果的に制御できるか、または追加の制御可能な場を作成します。
(7)要素の追加の特性を使う システム、あるいは環境において既に利用可能な物質の追加の特性を使用することを考慮してください。例えば、場(力、影響または作用、あるいは利用するエネルギーの種類)を感知するか、または変換する物質の能力は、情報を提供するために使用することができます。
(8)システム内の場を使う 場(力、影響または作用、あるいは利用するエネルギーの種類)の導入が必要な場合は、システム、またはプロセスの中で既に利用可能な場を活用してください。特に、システムが現在使用している基本的な場を使用して機能を追加することを検討してください。
(9)周辺環境の場を使う 場(力、影響または作用、あるいは利用するエネルギーの種類)の導入が必要な場合は、環境内に既存の利用可能な場(特に、重力、太陽光・熱、その他の輻射、地球の電磁場などの自然界のエネルギー)の活用を検討してください。
(10)放出されるエネルギーを使う 対象物、システム、またはプロセスから放出される音、熱、電磁場などのエネルギーを活用することを検討してください。
(11)場の提供者を探す 場(力、影響または作用、あるいは利用するエネルギーの種類)の導入が必要な場合は、利用可能な様々な物質の中に存在する場の使用を検討してください。

構造で分離するオペレータ

今回は構造で分離するオペレータについて説明します。 構造で分離するオペレータのグループは、システムの構造を変更することを含んでいます。 構造で分離するオペレータには次の23の種類があり、問題の性質によって適当なものを使い分けます。
(1)全体と部分の間で分離する
(2)複合・多重システムを構築する
(3)同種のシステムを複合する
(4)同種システムの複合による補正
(5)特性の転換による複合システム
(6)競合するシステムで構成された複合システム
(7)新旧システムによる相互補完を行う
(8)システムを複合して欠点を補正する
(9)複合による欠点を克服する
(10)システム複合による資源導入
(11)逆機能のシステムを複合する
(12)二元化の原理を適用する
(13)同種のシステムの多重化
(14)特性の転換による多重システム
(15)複合システムの多重化
(16)ダイナミックな多重システム
(17)結合の強化する
(18)要素間の差を拡大する
(19)模型(コピー)を適用する
(20)対称性を放棄する
(21)媒体を利用する
(22)マーカーを付加する
(23)仲介者を利用する
以下に、それぞれのオペレータの内容を説明します。
(1)全体と部分の間で分離する システムが矛盾する機能を実行すること、または矛盾する条件下で動作することを要請される場合は、システムを分割し、矛盾する機能、または条件の一方を下位システム(または、複数の下位システム)に割当ててみてください。残りの機能や条件は、システム全体が保持します。
(2)複合・多重システムを構築する 技術システムは、進化の過程において、上位レベルのスーパシステムに統合されることで改良されていく傾向があります。統合には、複合システム(二つの同じシステム、または異なるシステムが結合したもの)への統合と、多重システム(三つ以上のシステムが結合したもの)があります。
(3)同種のシステムを複合する 2つの同種のシステム(対象物、またはプロス)を統合して、1つの新しいシステムを構築することを検討してください。そのような統合から、新しい特性が得られる場合もあります。
(4)同種システムの複合による補正 同種の2つのシステム、対象物、またはプロセスを統合し、新しいシステムを構築することを検討してください。その結果、元のシステムに固有の欠点を排除できる場合があります。
(5)特性の転換による複合システム 望まれる特性が異なる(逆の場合もある)2つのシステムを複合して1つのシステムにした方がよい場合もあります。このような方法で望まれる特性を組み合わせると、新しい特性をもつシステム構築できる場合もあります。
(6)競合するシステムで構成された複合システム 同じ目的で設計されていながら、作用原理が異なるような2つシステムを統合することを考えてください。その統合により2つのシステムの望ましい特性が組み合わされたり、両者の欠点が補われたりする場合があります。
(7)新旧システムによる相互補完を行う 有効性の薄れた旧システムと、有効性が期待される新システムがあり、新システムの性能が旧システムに及ばない場合は、それらを統合し、1つのシステムに統合することを検討してください。新システムによって旧システムの寿命が延びる場合もあります。また、初めは、新システムを旧システムの補助システムとして使用し、評価、変更、調整などで試験することもできます。そうすれば、時間や資源の節約になり、支持も得られます。
(8)システムを複合して欠点を補正する システムに深刻な欠点と望ましい特性が共存する場合は、反対の欠点を持つ競合システムを探し、2つのシステムを統合してください。その統合により、両システムの元の欠点が補正される場合もあります。また、望ましい特性が組み合わされる場合もよくあります。
(9)複合による欠点を克服する 同じ目的で設計された2つのシステムの内、一方のシステムは高価(複雑)だが性能が高く、他方のシステムは安価(製造および操作が簡単)だが性能が低い場合は、それらの統合を検討してください。元のシステムの望ましい特性が組み合わされる場合もあります。つまり、単純で高性能なシステムが構築できる場合もあります。
(10)システム複合による資源導入 システムに必要な資源(情報、エネルギ、物質、空間など)を備えた第二のシステムを探し、2つのシステムを統合してください。その結果、自分のシステムの主要機能と補助機能の全体が向上する場合もあります。
(11)逆機能のシステムを複合する 逆の機能をもつ2つのシステム(すなわち、目的が反対)を複合することを検討してください。複合された新しいシステムの方が、機能を正確に制御できる場合もあります。
(12)二元化の原理を適用する 材料が有益な特性を損失する傾向にあったり、障害を引き起こす可能性がある場合は、保管や輸送が別に行えるようにより耐久性がある、または有害性の低い要素に材料を分割し、必要に応じて結合することを検討してください。
(13)同種のシステムの多重化 複数の同種の対象物やプロセスを新システムに統合することを検討してください。その結果得られた多重システムでは、元の対象物やプロセスの特性が拡張、または強化される場合もあります。また、新たな特性(おそらく、元の特性と反対のもの)が生まれる場合もあります。
(14)特性の転換による多重システム 特性が類似している複数のシステムを統合することを検討してください。構築された多重システムでは、その下位システムが他の機能を補足または拡張する場合もあります。
(15)複合システムの多重化 各複合システムが同種のシステム、特性の類似したシステム、競合システム、代替システムなどから構成されている場合は、それらの複合システムを2つ以上組合せて、多重システムを構築することを検討してください。
(16)

時間で分離するオペレータ

今回は時間で分離するオペレータについて説明します。 時間で分離するオペレータのグループは、システムの時間依存の特徴の修正により状況を改善することを含んでいます。 空間で分離するオペレータには次の23の種類があり、問題の性質によって適当なものを使い分けます。
(1)相反する要請を時間で分離する
(2)事前に処理(作用)する
(3)事前に部分的処理(作用)する
(4)事前に配置する (5)処理を中断する
(6)時間をずらす
(7)柔軟化する
(8)プロセスの後の処理を使う
(9)エネルギーまたは物質を集中する
(10)事前破壊
(11)強度を低下する
(12)事前に内部応力を与える
(13)道を作る
(14)特性の類似したシステムの多重化
(15)安定性を低下する
(16)対象物を可動に変更する
(17)可動部分に分割する
(18)物理的効果を活用する
(19)可動物体を導入する
(20)交換可能な要素を使用する
(21)自動的に交換される要素を使用する
(22)柔軟性を持った要素を導入する
(23)調整可能な要素と連結を適用する
以下に、それぞれのオペレータの内容を説明します。
(1)相反する要請を時間で分離する システム、またはプロセスが相反する要求を満たさなければならない、または相反する機能を実行しなければならない、あるいは相反する条件下で動作しなければならない場合は、相反する要求、機能、または条件の発生時期が別々になるように、動作を(実際に、あるいは理論的に)予定してください。
(2)事前に処理(作用)する 要求される処理(作用)の全体、または一部を事前に実行することを検討してください。
(3)事前に部分的処理(作用)する 穴あけ、分割などの機械的な加工・処理においてはエネルギー消費量、処理に要する時間、精度などについて求められる要件を満たさなくてはなりません。これらの特性値をあげて、主要な処理の効率を向上させるためには事前の処理を行っておくことが有効です。
(4)事前に配置する 操作の実行時に使いやすいように、物体を事前に配置することを検討してください。
(5)処理を中断する 処理(作用)を中断して、他の処理、特に両立しない処理のために機会を作ることができるかどうかを検討してください。例えば機械加工を中断して、計測を行うこともできます。一つのプロセスを複数に分割して、各種の操作を順番に実行することを検討してください。
(6)時間をずらす 並列プロセスに問題がある場合は、工具やワークに対する逐次処理を検討してください。
(7)柔軟化する システムやプロセスをより柔軟で適応可能性の高いようにする。
(8)プロセスの後の処理を使う 終了ごろ時間を使用することを考慮する、あるいはの後に、終了するか修正するプロセスを行なうオペレーション。
(9)エネルギーまたは物質を集中する 少量の物質(エネルギーを含む)が効果がない場合は、特定の位置にそれを集結させようとしてください。 多数の同時の出所を使用することを考慮してください。
(10)事前破壊 対象物を破壊して分離するには、次の二つの手順を試してください。まず、切込、刻目、ミシン目などをつけて準備的な破壊の状態をつくります。次に、対象物に打撃を与えて完全に破壊します。この二段階の方法により、エネルギの消費を軽減し、精度を向上させ、全所要時間を短縮することができます。
(11)強度を低下する 望ましい効果を生むために対象物、またはシステムの強度の軽減(または破壊)を検討してください。
(12)事前に内部応力を与える 段階的な分割を試みてください。まず、少量のエネルギを使い、分割位置に内部応力を発生させます。次に適度のエネルギを使い、分割します。
(13)道を作る 道具に合った正しい方法、すなわち操作しやすい方法を探してください。
(14)特性の類似したシステムの多重化 特性が類似している複数のシステムを統合することを検討してください。構築された多重システムでは、その下位システムが他の機能を補足または拡張する場合もあります。
(15)安定性を低下する システムの動力を増大させるには、以下の操作によってシステムの安定性を低下させてください。a.複数の安定状態を導入する(双安定膜のような装置を使用)、b.自転車で提供されるような動的な安定性の適用、c.安定性の維持に一定の制御を必要とする根本的に不安定なシステム(飛行機など)の使用
(16)対象物を可動に変更する システムの動力を増大させるには、システムの静止部分を可動に変更してください。
(17)可動部分に分割する システムの自由度は、相互に可動する部分にシステムを分割することによって増すことができます。その過程で、システムに適用する場(力、作用)の効果は、システムと以下との間の結合と同じように保持することができます。たとえば、ちょうつがいと他の磁気装置、柔軟で弾性のあるプラスチック要素など。
(18)物理的効果を活用する システムの内部動力は物理効果、例えば広範な特性が簡単に変化する物質の移相(いわゆる「理想的な物質」)によって増強することができます。
(19)可動物体を導入する 可動対象をシステムに導入すれば、システムの内部動力を強化することができます。
(20)交換可能な要素を使用する システムやプロセスの動作時に相互に交換可能な複数の要素を供給することによって、システムやプロセスの汎用性を向上させることを検討してください。
(21)自動的に交換される要素を使用する システムやプロセスに必要な要素を準備してください。その後、それらの要素を使う順序をプログラムしてください。
(22)柔軟性を持った要素を導入する 要素の形状や特性の変更をプログラムできるような機能をシステムやプロセスに供給してください。
(23)調

空間で分離するオペレータ

前回は矛盾を解決するオペレータ(指針)として、
(1)空間を分離するオペレータ
(2)時間で分離するオペレータ
(3)構造の観点から分離するオペレータ
(4)条件・特性で分離するオペレータ
の4種類があるといいました。 今回はそのうちの空間で分離するオペレータについて説明します。 空間で分離するオペレータのグループは、システムの一部を異なる位置へ再配置するか、空間の1次元以上に関する部分の物理的な方向づけの変更を含んでいます。
空間で分離するオペレータには次の7つの種類があり、問題の性質によって適当なものを使い分けます。
(1)相反する要請を空間で分離する
(2)問題の部分を対象物から引き離す
(3)必要な部分を対象物から引き離す
(4)別の次元を考える
(5)反対側を考える
(6)入れ子にする
(7)通り抜けを考える
以下に、それぞれのオペレータの内容を説明します。
(1)相反する要請を空間で分離する システムに2つ以上の矛盾する作用、力、部分などが存在する場合は、物理的な空間によって互いから矛盾する要素を分けることを考慮してください。システムが矛盾している機能を行なうかあるいは矛盾している条件の下で作動するように要求される場合は、異なるサブシステムに個々の矛盾している機能あるいは条件を割り当てて、システムを分割してください。
(2)問題の部分を対象物から引き離す もしシステムのある部分が別の要素、力、または作用の進歩を妨げるならば、衝突を防止するためにより多くの空間を提供することを考えてください。 もしシステムまたはプロセスが、望ましくまたは不適当な特性、機能、特徴を持っているならば、 不適当な特性を備えた部分をそのシステムまたはプロセスから分けようとしてください。
(3)必要な部分を対象物から引き離す もしシステムまたはプロセスが、望ましい特性、不適当な機能、特徴を持っているのであれば、望ましい特性を持っているシステムまたはプロセスの部分を分離しなさい。いつも、そのオプションが考慮されるべきであるけれども、部分をシステムまたはプロセスから削除することが可能であるわけではありません。
(4)別の次元を考える 線形の配置が使用される場合は、螺旋のようなより複雑な配置、多数のライン(単純な形あるいは複雑になった形を備えた)、あるいは多数の三次元の表面を使用することを考えてください。システムがほとんど平面の方法で作動する場合は、上方へまたは下方に三次元に拡張することを考慮してください。システムの一部が水平な場合は、それを様々な程度に波形か複雑にすることを考えてください。
(5)反対側を考える 利用可能な領域を増加させるためには、物体の裏面を使用してください。消費可能資源については、何かを裏返しにひっくり返す、またはその資源の寿命を伸ばすために複数の回を通して循環しても、考えてください。両方の部品、または物の側面を利用することを考えてください。
(6)入れ子にする 物体の内部の空間を使用してください。特に、あるものの中に置かれる別のものの内部に1つの物体を置くことを考えてください。企業管理機構、軍事の命令系統、分類学および組織図のような階層的関係の中の要素を整えることを考えてください。
(7)通り抜けを考える 別のものを物体、力あるいは作用に通り抜けさせるか、または分離あるいは分割している障壁を通過させることを考えてください。

矛盾を解決するオペレータ(指針)

TRIZでは問題を矛盾として捉えます。そして、この矛盾を解決するために、有益機能を2つの状態に分離することにより、一方では有益機能を提供し、他方では有害機能を打ち消すことを考えます。
矛盾を解決するオペレータ(指針)として、I-TRIZでは
(1)空間で分離するオペレータ
(2)時間で分離するオペレータ
(3)構造の観点から分離するオペレータ
(4)条件・特性で分離するオペレータ
の4種類があります。
空間で分離するオペレータでは、システムが互いに矛盾する機能を実行する、または相反する条件下で動作することが求められている場合は、システムを部分に分離することを考えます。そして、互いに矛盾する機能または条件を各々異なる部分に割り当てることを考えます。
空間で分離するオペレータには、
(1)相反する要請を空間で分離する
(2)問題のある部分を対象物から引き離す
(3)必要な部分を対象物から引き離す
(4)別の次元を考える
(5)反対側を考える
(6)入れ子にする
(7)通り抜けを考える
などがあります。
時間で分離するオペレータでは、システムまたはプロセスが互いに矛盾する要請を満足させる、または相反する条件下で動作することが求められている場合は、システムが機能を発揮するプロセスのスケジュールを調整して、矛盾する要請、機能、または作業が異なる時間に行われるようにします。
時間で分離するオペレータには、
(1)相反する要請を時間で分離する
(2)事前の処理(作用)
(3)事前の部分的処理(作用)
(4)事前の配置
(5)処理の中断
(6)時間をずらす
(7)柔軟化
(8)プロセスの後の時間を使う
などがあります。
構造の観点から分離するオペレータでは、システムが互いに矛盾する機能を実行する、または相反する条件下で動作することが求められている場合は、システムを部分(下位システム)に分け、矛盾する機能または条件の一方を特定の下位システム(または、複数の下位システム)に割り当てるようにします。それ以外の機能と条件への対応はシステムが全体として担当することにします。
構造の観点から分離するオペレータには、
(1)相反する要請を対象全体とその部分とで分離する
(2)複合・多重システムを構築する
(3)模型・コピーを利用する
(4)対称性を放棄する
(5)媒体を利用する
(6)仲介者を利用する
などがあります。
条件・特性で分離するオペレータでは、システムまたはプロセスが互いに矛盾する要請を満足させる、または相反する条件で動作することが求められている場合は、変化させることのできる何らかの属性あるいは条件を探し、その属性の値あるいは条件がある状態の時には一つの要請を満足し、別の状態の時に反対の要請を満足するようにします。
条件・特性で分離するオペレータには、
(1)互いに矛盾する要請を条件・特性で分離する
(2)区別効果を利用する
(3)部分的に軽減する
(4)光学的特性の差を利用する
(5)第2の場を導入する
などがあります。
以上の(1)空間で分離するオペレータ、(2)時間で分離するオペレータ、(3)構造の観点から分離するオペレータ、(4)条件・特性で分離するオペレータについて、より詳しい内容については、次回以降で説明します。

カーナビの未来予測

以前から気になっている商品があります。それはカーナビです。 日本TRIZ協会のビジネス・経営研究分科会で、カーナビの将来がどうなるか検討しませんかと提案したこともありましたが、そのときは採用されませんでした。
そんな折、先日カーナビの近未来を予測したものを読むことができました。その内容は私が疑問に思っていたことが解けるものでした。 ここで、その予測結果をTRIZの進化の法則と照らし合わせてみようと思います。
まずは、私の古いカーナビの不満な点から。
(1)ハードディスク内蔵タイプで20万円程の高額商品の割に、自動車の道案内だけとはもったいない。
(2)地図情報が自動的に更新されないので、実際の道路状況と異なる場所が結構ある(目標物となるお店が存在しない)。
(3)目的地を指定しても、その50m近辺で案内が終了してしまうので、初めての場所の場合には、目的地近辺で迷ってしまうことがある。
もしかしたら、最新式のカーナビでは、これらすべてが解決されているかもしれませんが・・・。 以上のような問題をすべて解決してくれている近未来のカーナビとは、以下のようなものでした。
(1)車専用のカーナビではなく、車に着脱式の携帯型コミュニケーション・ナビとして生まれ変わる。
(2)インターネットに接続できて、WEBサイトにアクセスでき、最新の地図情報に自動更新される。
こうなると、現在の3GモデルのiPadのような存在ということでしょうか。 着脱式なので、助士席は勿論後部座席に座っている人が自由に使える。 車から持ち出せるので、目的地の近くの駐車場で車を降りてから目的地まで道案内をしてくれる。
目的地である旅館の割引クーポンを車の中から入手できる。 スケッチブックのように、旅先の風景を写生することができる。 観光地の音声ガイドをしてくれる。 他にも、アプリケーション開発次第でいろいろな場面で有効利用ができるものになりそうです。
さて、このような「車に着脱できる携帯型コミュニケーション・ナビ」をTRIZの進化の法則から眺めるとどうなるでしょう。 従来のカーナビは車専用の装置でしたが、これが汎用の装置に変わるということです。
TRIZの進化の法則には、「技術システムは進化するにつれて、より便利で様々な必要を満足させることができるように、汎用的で多目的なものに変わいく。」という「汎用化の法則」があります。
その意味は、「汎用化の傾向が進むにつれて、システムは変化し易いものになります。これは、汎用的であることは柔軟性に富んで制御性に優れることを必要とするからです。」ということです。
さらに、従来のカーナビはハードウェアとソフトウェアが一体でしたが、それらが分離されます。 TRIZの進化の法則の「分割の法則」によれば、「分割によってシステムの要素の相互関係が一新され、その結果システムを改良するための新しい資源が生まれる。」とし、分割する効果的な方法として、物体を取り外し可能にする、分割された部分間の結合の緩和などを挙げています。
従来は、ハードウェアとソフトウェアが一体になったカーナビを最初から車に装備したものを購入するか、後からカー用品店で購入して車に取り付けるしかできませんでしたが、ハードウェアとソフトウェアが分離されれば、ハードウェアは家電量販店で購入し、必要に応じて車に取付て使用したり車から取り外して携帯することが可能になります。
カーナビとしてのアプリケーションは、自分の好みのものをソフト開発会社やその販売店から購入することができることになります。 こうなると、近未来のカーナビに関連して、新たなビジネスがたくさん生まれそうです。
皆さんもいろいろなアイデアを出してみたらどうでしょう。特許取得可能なものが生まれるかもしれません。

システムアプローチの意味

私たちは、問題を解決しようとする時には、ほとんどの場合、問題が起こっているシステムそのものに焦点を合わせて考えます。 しかし、経験を積んだ技術者は、そのシステムだけではなくそれと同時にその上位システムや下位システムについても検討するといいます。
たとえば、東京からハワイまで飛行機で行く時間を短縮する方法を考えるとすると、私たちは「飛行機」というシステムを対象として、その問題を解決する焦点を「飛行機」をより速く動かすことに集中することでしょう。
しかし、「飛行機」というシステムは「移動手段」という上位システムを構成する一要素であると考えれば、飛行機の速度を上げるという目的が、1つの場所からもう1つの場所に短時間で移動することであると考えれば、飛行機の速度だけではなく、移動する時間に関係するすべての要素に関して検討することの方が賢明な場合があるということです。
自宅から空港に行くまでの時間、荷物を預けてチェックインするまでにかかる時間、出発ゲートに行くまでの時間、飛行機が空港に到着した後のゲートにたどり着くまでの時間、荷物を受け取るまでの時間、空港から目的地へ行くまでの時間など、移動する時間に関係する要素はたくさんあります。
すると、問題の焦点は、「飛行機」の速度から、空港での人や荷物の物流の他、自宅から空港、または空港から目的地までの交通手段をどのように改善したらいいか?ということに変更されることになります。
このようなことは、システムの階層構造に関することだけではなく、過去どのような状況にあったか?未来はどのように変わっていくか?といった時間的な要素についても考えることができます。そして、それらを組み合わせることで、より的確に問題の本質を捉えることに役立つことがわかります。
TRIZの創案者であるアルトシュラーは、このようにシステムを他次元(空間、時間)で観察する手法を「マルチスクリーン(9画面法)」という概念で表しました。 I-TRIZでは、さらに、原因・結果の次元と入力・出力の次元を加えた4次元で問題のシステムを観察することを推奨しています。
原因・結果の次元と、入力・出力の次元は、主にI-TRIZのProblem Formulatorというソフトウェアを使用して、問題の状況を因果関係や目的手段の関係で表すようにしています。これにより、複雑な問題を細かな問題に分解し、より取り組みやすい問題に変容させることができます。

本当の創造を体験することに大切さ

発明を仕事とする研究者、技術者には問題発見能力と問題解決能力とが必要であるといわれます。そして、今の研究者、技術者は、与えられた問題を解く問題解決能力はあるが、問題発見能力が足りないため、他に先んじた研究開発ができないともいわれます。
しかし、この意見は、創造理論からするとおかしな話に聞こえます。 もともと、問題発見能力と問題解決能力とは一体的なものであって、発明者は自ら問題を発見しその問題(課題)を解決するというのが自然です。
また、課題を具体化したものがアイデアであり、アイデアを抽象化したものが課題であることを考えれば、両者は見る方向が違うだけのことであって、元々一体として考えるべきものといえます。
発明活動(問題解決活動)は一般に、 問題発見→問題定義(課題設定)→解決策案出→解決策評価→解決策実行 のような手順をたどるといわれていますが、この手順にはホンネの部分が抜けています。
問題を発見するエネルギーは発明者の問題意識にかかっています。 問題意識とは、その発明者が普段から強く疑問に思っていることであって、発明者が日常起こる事態・事象の中から何らかの刺激を受けることで、その刺激がヒントとなって自動的にその疑問の解明に取り組むといった行動を起こすことにつながる考え方をいいます。
つまり、問題意識は意識レベルの話ですが、実は感性といった無意識レベルの要因が大きな影響を及ぼしているのです。 創造は「好き」か「ピンチ」のいずれかが原動力となって生まれるものです。好きな仕事でピンチになれば発明は日常の仕事の中で自然に完成します。期限を切って自分の好きな仕事に取り組むことが創造性を発揮するための王道なのです。
ところで、研究者、技術者の中には、止めどなくアイデア(解決策)を出す人がいますが、そのままでは単なるアイデアの段階で終わってしまい、創造したとはいえません。 創造とは、アイデアを出すことと、出したアイデアを実現することの二つがそろった場合のことをいいます。
アイデアは実現されなければ、何ら社会に貢献するものではありません。頭の体操に留めることなく、その先の創造にトライしてみてください。

最小問題と最大問題を解く

TRIZでは、問題を生み出している矛盾を浮き彫りにすることで、その矛盾の解決が容易になるとの考えから、問題解決をする際に、現状を一切変えずに目的を果たそうとする問題の捉え方をします。
これを最小問題といいます。 これに対して、現状にこだわらず、制約条件を一切考えずに目的を果たそうとする問題の捉え方(ゼロベース思考)を最大問題といいます。 TRIZでは、最初に最小問題に取り組み、その後最大問題へと取り組みの幅を広げていくことになります。
TRIZの手順書としてのARIZの最初のステップで、最小問題の状況を明らかにすることを行います。 その要領は、「すべては当初のまま変化しない、あるいは単純化される。しかしその一方で、求められる作用(状態)が得られる、あるいは有害な作用(状態)がなくなっている。」といった状況をイメージすることになります。
つまり、いわゆる「究極の理想解」を最初にイメージすることになります。 最小問題の状況を定義するのは、問題を解きやすくするために問題の一部分に焦点を当てるということではありません。むしろ、「何もしないで目的とする結果だけを得る」といった制約を追加することで、問題に本来的に含まれている対立状況を明確にし、妥協策を採用する逃げ道を与えないことを目的としていると考えるべきです。
現実的な問題の解決に当たっては、矛盾を解決するための現実的な手段を考える方法を採用するということです。 現実的な問題解決の対極には、将来の問題を予測して予めその問題に対処するための手段の流れをまとめたシナリオを作成するといった、未来の問題解決があります。
このような未来の問題については、I-TRIZのDE(Directed Evolution:戦略的世代進化)が有効です。 DEでは、技術の進化の法則だけではなく、市場の進化、社会の進化、人間の心理的な進化までを考慮し、あらゆる進化の可能性を探ることで、どうしたら自分たちが望む方向へ舵を取ることができるかを考えます。
つまり、未来の問題解決では、未来を創造するために最大問題に取り組むことになります。 しかし、自分たちが望む方向へ舵を取る上で、多くの具体的な問題にぶつかることが考えられますので、それらの具体的な問題を解決する際には、やはり最小問題と取り組むことが必要になります。

なぞかけ、等価変換理論とTRIZ

「AとかけてBと解く。その心は、AとBの共通点。」とは、落語家が大喜利の余興として行う、いわゆる「なぞかけ」と呼ばれる遊びです。 江戸時代の庶民の遊びであったという説もあり、当時の庶民の創造性の高さを示すものの一つといえそうです。
「なぞかけ」では、AとBとは異質のものであることが必要であり、その異質のもの同士が共通の本質でつながる(対立が解消される)から納得でき、その意外性に驚かされるわけです。この「なぞかけ」は立派な発想法の一つと考えることができます。 この「なぞかけ」を意識的にある手順に従って新しいアイデアを考え出すための方法としているのが等価変換理論です。
なぞかけの「お題:A」が等価変換理論で参考にする問題と関係のない異分野の「アナロジー」にあたり、なぞかけの「・・・と解く」の「・・・:B」が等価変換理論の「解決策」にあたり、なぞかけの「その心:C」は「アナロジー」と「解決策」の「共通の本質」にあたります。
つまり、具体的な問題に関する解決者の視点で、アナロジーの構造、機構や方法を観察して、アナロジーの本質を見つけることで、そのアナロジーの本質を問題領域に移転し、具体的な問題の解決策を完成します。
この方法は、TRIZの問題解決の考え方とも同じといえます。ご存じのとおり、TRIZではあらゆる分野の技術をヒントとして採用するために具体的な問題を一般的な問題に抽象化し、その一般的な問題に対応する一般的な解決策を具体化し、具体的な問題の解決策を完成させます。
等価変換理論がヒントにするアナロジーは具体的なものであるのに対し、TRIZがヒントにする一般的な解決策は抽象的なものである点で両者は異なっています。しかし、いずれの場合も具体的な解決策を完成させるためには、具体的な問題の分野の既存の知識と新たに調査して入手すべき知識が必要であるということです。
つまり、等価変換理論、TRIZといった高度な創造技法で解決コンセプトを手に入れることができたとしても、それだけでは具体的な解決策を得ることはできないということです。
革新的な解決策を得るには、的確なヒントに気づく(直観が働く)ための問題の分野での体験(経験)が必要であるとともに、実現可能な具体的な解決策を得るには、問題の分野の専門知識が必要であるということです。