I-TRIZとNM法

問題解決には、新しい知識が必要になることが多いといえます。 知らないことを理解するには、自分が知っていることになぞらえて理解するしかありません。 I-TRIZでは、問題解決をする際に利用できる知識を、その都度オペレータによって推奨されるヒントから吸収して、その知識のエッセンスを問題に適用するわけです。
I-TRIZを学んでいる方々から一番多い質問は、「どうしたらオペレータから推奨されるヒントを自分の問題解決に利用できるようになるのでしょうか。」というものです。 この質問に対する答えは、「類比思考に慣れることです。」といえます。
オペレータから推奨されるヒントは、そのほとんどが問題とは異なる分野の知識ですので、その知識を直接使うわけにはいきません。 異なる分野の知識の本質的な内容が、問題の分野ではどういう意味を持つのかを類推しなければなりません。
類比思考(類推思考)の訓練には中山正和氏が創案されたNM法が最適です。NM法を使うことで類比思考に慣れることをおすすめします。 NM法では、具体的には問題の種類によって、またはその取り組みの段階の違いによって、NM法A型、NM法S型、NM法T型、NM法H型といった複数の手法を使い分けるようになっています。
物の発明を考える場合には、構造といった問題を取り扱うため、ヒントやアイデアを空間的に組み合わせていく、収束思考のためのNM法A(Area)型を使用します。 方法の発明を考える場合には、手順や工程といった問題を取り扱うため、ヒントやアイデアを時間的に組み合わせていく、収束思考のためのNM法S(Serial)型を使用します。
NM法A型、NM法S型を使う上で、素材であるヒントやアイデアをたくさん集めることが難しいことがあります。そのような場合には、固定観念にとらわれない柔軟な思考ができるように、発散思考の十分な訓練を行っておくことが有効です。
発散思考の訓練のために高橋浩氏が提案された発散思考(展開思考)を主とするNM法T(Takahashi)型があります。 物の発明の場合には問題がはっきりしているので、論理的に考えれば問題の本質が何かがつかみやすいといえます。そのため、問題の本質をキーワードとして問題解決のためのヒントをたくさん集めることができます。
使えそうなヒントが手に入れたら一気に解決策まで仕上げてしまう方が効率的です。そこで、NM法A型に発散思考(展開思考)のNM法T型を組み合わせたNM法H(Hardware)型が生み出されました。 次回は、類比思考の訓練のためのNM法T型の具体的な手順を説明します。

生まれ変わった「I-TRIZ体験セミナー」

昨年まで実施していました「I-TRIZ無料体験セミナー」が「I-TRIZ体験セミナー」に生まれ変わりました。
「なんだ、無料が有料になったのか」とお思いでしょうが、単なる有料化ではありません。 そもそも、無料体験セミナーは弊社が出展した「設計製造ソリューション展」に来られたお客様を対象に始めた企画でしたが、好評につき延長して実施していたものです。
実質1年以上実施した無料セミナーでしたが、主催者側である私たちもその役目は終わったと感じていた次第です。 その役目とは、I-TRIZに興味を持って頂いた導入予定者(企業、大学、個人など)にI-TRIZのソフトウェアでどんなことができるのかを体験してもらう機会を提供することでした。
セミナー終了後には、参加者が作成した資料をソフトウェアのレポート機能を使ってワードファイルにしたものを、翌日に参加者各自にメールでお送りしていました。 無料体験セミナーでは、僅かながらでもTRIZを知っている人を対象としたものでしたので、ソフトウェアを実際に操作してI-TRIZを体験してもらうことに主眼をおいていました。
今回、展示会関連の導入希望者がほぼ一巡した感がありますので、TRIZを知らない方にもわかりやすい内容に改めました。 具体的には、TRIZとI-TRIZの違いを中心にした解説をした後、具体的な演習問題に参加者全員でアイディエーション・ブレーンストーミングをしながら解決策を考えるといった内容のものに変更しました。
以上が新しくなった「I-TRIZ体験セミナー」についての説明ですが、主催者側の一方的な文章では理解しにくいと思いますので、本日、「日経Bizアカデミー」に掲載された体験談の下記の記事をご覧ください。
私が言うのも何ですが、これで3,000円(消費税別)と疑いたくなるような充実した内容になっていることがおわかりいただけると思います。 是非一度体験して頂き、友人にもご紹介頂ければと思います。 イノベーションは難しいだろうと思っている方、イノベーターになりたいと思っている方の入門セミナーとしておすすめです。 毎月2回実施していますので、都合のよい日をお選び頂いて弊社HPからお申し込み下さい。
I-TRIZ体験セミナーはこちら

TRIZの取り組み(TRIZの小史)

アルトシュラーが1946年にTRIZの研究を始めたとき、彼は「技術的矛盾」を解決することが発明的な解決策を思いつくための鍵であると考えていました。 1956年にTRIZの最初の論文が発表され、「理想性」、「システム・オペレータ」、「技術システムの完全性の法則」の概念が発表されました。
1963年には、発明的な問題解決のためのアルゴリズムとしての「ARIZ」の考え方が発表されました。 1971年には、「40の発明原理」からなる「コントラディクションテーブル(技術的矛盾マトリックス)」を含んだARIZ-71が発表されました。 1975年には、「物質-場分析」と「標準解」が発表されました。
また、「技術進化のパターン」に関するアルトシュラーの最初の論文が発表されました。さらに、ARIZ-75Bでは理想的な技術的解決策を見つけるためには、「コントラディクションテーブル(技術的矛盾マトリックス)」では不十分であるとし、ARIZの本文から除外しました。そして、発明的問題解決のすべての操作は、「物理的矛盾」を定式化し、それを解消することであるとしました。
1982年には、ARIZ-82で「X-要素」、「最小問題」などの概念が導入され、「40の発明原理」と「コントラディクションテーブル(技術的矛盾マトリックス)」はARIZから完全に削除されました。アルトシュラーは、標準的な発明問題は「発明標準解」で解決できるとし、標準的でない(より高度な)発明問題を解決するためにARIZを使用するとしました。
1985年には、公式バージョンとしては最新のARIZ-85Cが発表されました。ARIZ-85Cでは、「技術システムの進化の法則」の構造に応じて5つのクラスに組織化された「76の発明標準解」が含まれています。
以上が、アルトシュラーが第一線で活躍した時代のTRIZの小史です(参考文献:(1)「TRIZの歴史の概要」、Valeri Souchkov著、中川徹訳、TRIZホームページ掲載、(2)「TRIZの発展」、アイディエーション・リサーチ・グループ編、(学)産業能率大学TRIZセンター内部資料)。
以上のように、少なくとも1985年まではTRIZとARIZはほとんど同義語として使われ、ARIZがTRIZのさまざまな技法を一緒に用いるように組織化されていました。 しかしながら、現在では、いくつかのTRIZ技法がしばしば独立して使われることになっています。この点に関しては、別途意見を述べることにします。

複数の手法を組み合わせて使用する

世の中には問題解決に関するたくさんの手法が公開されています。しかし、唯一の手法でどんな種類の問題にも対応できるものはありません。 親和図法は具体的なたくさんのデータに基づいて、それらのデータから一般的な概念を発見する手法として有効ですが、それらのデータから新しい発明をしようとしても無理です。
特定の課題を実現するための新しい発明を創出する発明技法としは、中山正和氏のNM法が知られています。 革新的な発明とはいわないまでも、技術の分野では、生産現場の改善活動に使用されるQC(品質管理)、コストダウンを目的とした改善活動に使用されるVE(価値工学)、顧客の要求を製品の仕様に落とし込むために使用されるQFD(品質機能展開)といった手法が使用されています。
QC,VE,QFDはそれぞれの分野で実際に有効に使用されている手法ですが、残念ながらそれらの問題を解決するためのアイデアを創出する方法論を持っていません。 それらはアイデア創出法として、ブレーンストーミングを使用することを推奨しているだけであり、アイデア発想段階での力不足が問題であるといえます。
そのため、最近になって、QC,VE,QFDではアイデア発想段階でTRIZ(発明的問題解決理論)を使用することが行われています。 このように、問題の種類によって複数の手法を使い分けること自体はよいことです。
しかし、TRIZ自体は膨大な体系からなる理論と方法論を持ったものであり、その一部だけを取り出して使用した場合、その機能が十分に発揮されないで終わってしまうことが考えられます。 ある手法(モデル)の部分的な使用に当たっては、その手法の有効性を損なうような中途半端な使い方にならないように注意すべきです。
たとえば、NM法では、具体的には問題の種類によって、またはその取り組みの段階の違いによって、NM法T型、NM法A型、NM法S型、NM法H型といった複数の手法を使い分けるようになっています。
問題解決に役立つ解決策を出す前にたくさんのヒントを得る際には、高橋浩氏が提案された展開思考を主とするNM法T(Takahashi)型を使用します。 物の発明を考える場合には、構造といった問題を取り扱うため、ヒントやアイデアを空間的に組み合わせていく、収束思考のためのNM法A(Area)型を使用します。
方法の発明を考える場合には、手順や工程といった問題を取り扱うため、ヒントやアイデアを時間的に組み合わせていく、収束思考のためのNM法S(Serial)型を使用します。 また、物の発明の場合には、使えそうなヒントを手に入れたら一気に解決策まで仕上げてしまう方が効率的な場合が多いことから、NM法T型+NM法A型を組み合わせたNM法H(Hardware)型を使用します。
そこで、QC,VE,QFDのアイデア発想段階にNM法の一部を使用するとすれば、問題解決の初期のヒント出しにNM法T型を使用することが考えられるでしょう。 (補足)TRIZの部分的な使用については、次回に説明します。

コスト・コントロールについて

フォードモーターは車の組み立てをコンベア方式へとシフトさせ、大幅なコスト削減と信頼性の向上をもたらしました。マクドナルドは大量生産で価格を下げ、同時に品質を保証しました。
これらは、コスト・コントロールの典型といえます。 一般的な常識では、品質を上げればコストが上がり、コストを下げれば品質が下がると考えられています。品質とコストとは矛盾の関係にあるというのが一般の常識です。
I-TRIZは矛盾を解決する方法論ですので、品質とコストの問題もスマートに解決することを考えます。 I-TRIZでは、品質を上げて、コストを下げることを考えます。あるいは、コストを下げて品質を上げることを考えます。
このように、品質とコストとの矛盾を解決することをコスト・コントロールといいます。 品質(信頼性)の向上のためには、そのシステムの有害機能を排除、軽減し、有益機能を改良することを考えます。
コストは有害機能の一要素と考え、それを排除、軽減することを考えます。 コスト削減と品質改善を同時に目指すことは、製品・プロセスの改善であるからI-TRIZの中の発明的問題解決(IPS:Inventive Problem Solving)で対応します。
品質の悪化、不具合、望ましくない出来事などの原因の決定、排除、予防は、不具合分析(FA:Failure Analysis)で対応します。 潜在的な品質の改善および/または悪化の予測および品質の低下に関係した潜在的問題の解決は、不具合予測(FP:Failure Prediction)で対応します。
I-TRIZでは、コスト削減と品質改善のために、発明的問題解決、不具合分析、不具合予測を適用するために以下の5つのオペレータを使用します。 製品・プロセスの新世代を開発する必要がある場合は、「新しいシステムの合成」というオペレータを使用します。 ある主要機能を改善する場合は、「機能を遂行するための条件の修正」というオペレータを使用します。
システムを簡素化すべき場合は、「機能的理想性の簡素化」というオペレータを使用します。 システムの部品または単純な組立品を簡素化する場合は、「要素の理想化」というオペレータを使用します。
システムの有効性を改善し、コストを削減する場合は、「利用できる資源の利用」というオペレータを使用します。 それぞれのオペレータを適用する場合のより詳細な内容については、次回以降に説明することにします。

やかんと湯沸かし保温ポットが消えた日

やかんに水を入れてガスコンロでお湯を沸かします。沸かしたお湯は、保温ポットに入れて飲みたいときに保温ポットからお湯を取り出して使います。 今は湯沸かし保温ポットがあるので、ポットに入れてから時間がたっても大丈夫です。
ポットの中のお湯が冷めてきたら自動的に再沸騰するので、いつでも熱いお湯が使えます。 ある日、湯沸かし保温ポットにお湯を入れ終わったやかんにお湯が少し残ってしまったので、やかんをテーブルの上の鍋敷きに乗せました。
すると、鍋敷きからお湯が滴り落ちているのに気づきました。使い込んだやかんだったため、いつの間にか、やかんの底に孔が明いてしまっていたのです。 それから少し立って、今度は湯沸かし保温ポットの手押しポンプが壊れたようで、お湯が少しずつしか出てきません。 悪いことは重なるようです。
仕方なく、やかんと湯沸かし保温ポットを買いに行くことにしました。 家電量販店に行ってから気づいたことがあります。一人分のお湯を沸かすのであれば、一度に使用する量は0.5~1リットル程度で十分です。
要は、お湯を沸かすのにかかる時間と沸かしたお湯を使用するまでにかかる時間をどう考えるかです。 実は、一人暮らしの人に聞いたところ、電気ケトルを使っているということでした。 その人は、電気ケトルでお湯を沸かす場合と、やかんをガスコンロにかけてお湯を沸かす場合とを比較したといいます。
それによると、1リットルの水を沸騰させるのにかかる時間は、電気ケトルとガスコンロとでほぼ同じだったといいます。 湯沸かし保温ポットの場合は、その都度お湯を沸かす時間がいらないため便利なのですが、保温時に約40W~50W程度の消費電力が必要になるということです(お湯が冷めたら自動的に再沸騰させる機能もある)。
インターネットで検索した結果によれば、0.5リットルの水を沸騰させるのに、電気ケトルで加熱した場合の光熱費は1.2円、ガスコンロで加熱した場合の光熱費は0.9円(東京近郊の都市ガスの場合)というデータが公開されていました。
ただし、やかんのお湯が沸騰したことを知ってからガスコンロの火を止めるまでの間、やかんのお湯が沸騰状態のままガスコンロの火を放置してしまうため、その間のガスが無駄になります。また、ガスコンロを使用した場合は、換気扇やレンジフードを運転させる必要がありますので、その分の電気代がかかることを考えると、実質的な光熱費はほぼ同じと考えていいのではないでしょうか。
留守の時間帯と夜間は「湯沸かし保温ポット」の電源を切りますが、朝起きたときと外出先から帰宅したときに電源を入れて在宅中は電源を入れたままです。いつでも適温のお湯が飲めるといった便利さでいえば「湯沸かし保温ポット」がいいのですが、常時適温で保温しておくために余分な電気を使うことになります。
電気ケトルの容量は0.5~1リットルのものが多いようです。これは、一人分の湯量として適当であるとともに、片手で持てる重さでもあります。 水を入れて沸騰するまでに1~3分ぐらいかかりますが、待っていられない程の時間ではありません。お湯が沸騰すると自動的に電源が切れますので、無駄な電気を使用することもありません。
電気ケトルは、やかんと違ってそのままテーブルに置いておいても、違和感はありません。昔の電気ケトルは電熱器の上にステンレス製のケトルを直接乗せるようなものでしたが、今は保温機能を備えたおしゃれなデザインのものがいろいろ選べます。 電気ケトルは、湯沸かし保温ポットの半分ほどの値段です。
電気ケトルがあれば、やかんはいりません。一人暮らしでは、湯沸かし保温ポットで常時適温のお湯を保温しておく程の湯量(2~3リットル)も必要ありません。 やかんと湯沸かし保温ポットを買いに行ったのですが、電気ケトルを1つ購入しただけで用が足りてしまいました。
「やかん+ガスコンロ」と「湯沸かし保温ポット」を使っていた生活は、初期投資も少なく、ランニングコストも少ない「電気ケトル」を使う生活に変わりました。 旧型の電気ケトルが見直されて、新型の電気ケトル(進化形)が売れている理由を実感した1日でした。

競合しないから比較する必要がないIWB

パソコンを購入しようとする人は、ウィンドウズパソコンとマッキントッシュのパソコンの性能や値段を比較対照してどちらかを選択するようなことはしません。 マッキントッシュのパソコンを欲しいと考える人は、最初からマッキントッシュが作ったパソコンが欲しいのであって、他のメーカーのパソコンには興味がありません。
マッキントッシュと他のメーカーでは製品の設計思想がまったく異なるため、他のメーカーのパソコンは比較の対象にはなりません。マッキントッシュが製造しているパソコンの中で、どれを選ぶかという選択肢があるだけです。 TRIZのソフトウェアについても同じことがいえます。
TRIZのソフトウェアとして知られているGoldfire、IWB(Innovation WorkBench)、CREAXのうちからどれを選択したらよいか、という質問を受けることがありますが、アイディエーション社の答えは簡単です。
あまり知られていないことですが、実はIWBは他のソフトウェアや他のTRIZ手法(ASIT、USIT、HTA(Hierarchical TRIZ Algorithms)、OTSM等)とは、その基本的な考え方が異なっています。
IWB以外のソフトウェアや他のTRIZ手法は、古典的TRIZの一部分を使用するもの、古典的TRIZの一部分を改良したもの、古典的TRIZを発展させたものであって、基本は古典的TRIZのままです。
古典的TRIZの代表格であるARIZを習得するには、100~240時間を要するといわれていました。IWBはそれを25~80時間にまで短縮しています。 その違いは、単にコンピュータを使っているから短時間で済むということではありません。それは、基本的な設計思想の違いにあります。
IWBは、使い勝手がよくて、しかも革新的な問題にも対処できるようにするにはどうしたらよいかを考えました。結果として、古典的TRIZのすべての要素を見直して、その体系を再構築する方法を選びました(これをIdeationTRIZ(I-TRIZ)といいます)。
これにより、同じ問題にも関わらず人によってその内容が異なるといわれる技術的矛盾の定義文をどうするかで悩む必要がなくなりました。技術的矛盾の背景にあるといわれる物理的矛盾を見つけ出す必要もありません。物質-場分析といった難解なモデルを作成する必要もありません。
あちらこちらと食い散らかすような非効率的なやり方はなくなりました。必要に応じて、フィードバックすることはありますが、その思考プロセスは一直線に進みます。 TRIZの難しい理論を何一つ覚えることなく、IWBの思考プロセスに身を委ねるだけで、TRIZの強力な問題解決力を使うことができるように考えられています。 ただし、IWBにも難点が1つあります。
もともと、コンサルタントが自分たちの仕事の品質を保証し、かつ効率的に行うことを目的として作成したため、他のソフトウェアに比べて見栄えがよくありません。 しかし、付き合ってみると、すごく頼りになります。嘘ではありません。あなたの目と頭で確かめてみてください。
そのためのプログラムとして、無料体験セミナーをご用意しています。 一度お試しください。
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未来制御という考えに沿った知的財産戦略の必要性

市場に変化が起きないとすれば、新しさを必要条件とするアイデアは不要ということになります。したがって、そのような市場が変化しない世界では、新しい技術的アイデアを保護する特許を取ることも無意味ということになります。
しかしながら、世の中が変化しない時代はありませんでしたし、今後も世の中が変化し続けることは間違いないでしょう。 どんなすばらしい発明であっても、その発明を特許出願してから特許が取れるまでに数年を要することはご存じのことと思います。
すると、発明や特許を経営に有効活用する知的財産戦略を考えようとする場合には、これから特許出願する発明が特許になるであろう数年後の市場がどうなっているかが、大きな関心事にならざるを得ません。
数年後の市場では、今出願しようとしている発明が見向きもされない状況になっているかもしれません。その場合には、その発明が特許されたとしても、企業にとってみれば利用価値のない特許を多くの費用をかけて取得したことになります。
そのようなことにならないためには、数年後ないし十数年後の将来(特許権の権利期間中)には皆が使うことになる(今はまったく知られていない)商品やサービスが流通している市場を予測できていなければなりません。
つまり、未来の世の中の状況を予測する→その時代に求められるサービスを予測する→そのサービスを提供できる商品を予測する→その商品を実現するための技術を予測することが、知的財産戦略策定の前提となります。 知的財産戦略にとって、未来の市場で要求される技術を守るための特許を取得することが重要なことがおわかりいただけたでしょうか。
技術開発戦略という観点でいえば、従来のような技術主導型の技術開発ではなく、未来予測型の技術開発が求められるということです。 では、どのようにして未来を予測すればよいか?「2020年の世界」というような本を読めばいいのでしょうか?
そのような本に書かれているのは現状の変化が将来も続くものとした場合の結果であって、すでにわかっていることが書かれているだけです。 仮に、それが正しい予測であったとしたら、結果的に皆が同じ将来を目指して進んで行くことになり、どの企業も同じような技術開発に取り組んでいる状況になるでしょう。
その結果、既存の未来予測に従えば、将来も自社の技術の優位性を獲得することは難しい状況になることでしょう。 未来予測に対するアイディエーション社の考えは違います。 どうしたら、現実の世界で起きている不連続な変化を予測し、優位性のある技術を獲得していくことができるかを考えます。
その1つの方法が、目的とする技術の起源を辿ることです。過去のことであっても、未だ解明されていない未知の事実は未来の世界のことと考えます。 具体的には、当時採用されずに消えて行った代替案を、現代の目で見直し、現代の技術で蘇らせることができないかを考えます。
これは、未来を予測するのではなく、未来を制御するといった考え方に基づいています。それをアイディエーション社ではDE(Directed Evolution:戦略的世代進化)といっています。 DEの考え方を知的財産の分野に適用したものが、CIP(Control of Intellectual Property:知的財産制御)です。
今年からCIPの無料体験セミナーを開催することになりましたので、興味のある方は是非ご参加ください。
CIP無料体験セミナーの詳細はこちら

I-TRIZ無料体験セミナー

アイディエーション・ジャパン(株)では、昨年の7月から現代版TRIZであるI-TRIZの無料体験セミナーをほぼ月1回の頻度で実施しています。
このセミナーは、古典的TRIZからI-TRIZへ至った歴史と、I-TRIZの概要と思考プロセスについて1時間で説明し、その後、I-TRIZの基本的なソフトウェアであるIWBを使った演習問題の取り組みを2時間で実施するといった内容です。
当初、弊社内では、2時間の操作でソフトウェアの威力を実感してもらうことは、あまりにも無茶な企画だということで開催を躊躇した経緯があります。しかし、「いくら言葉で説明しても言い尽くせない創造の世界のことは、実際に自分が体験してみることでしかわからないものである。」という信念から、敢えて実施することを決めた次第です。
過去、多くの創造技法や発想法といわれるものが紹介されていますが、TRIZはそれらとは格段に違う実力を有しています。そのような実力を有するものではありますが、残念ながら古典的TRIZはその複雑な構造のために、少なくとも日本では現場で活用されるまでには至っていないのが実情です。
「I-TRIZ無料体験セミナー」では、I-TRIZの特徴を「TRIZを知らない人にも、革新的な問題に対処できる力を引き出してくれる」と説明しています。その意味は、参加者にだけわかります。何故なら、僅か2時間のソフトウェアの操作で、一定レベルのアイデアがたくさん創出されることが経験できるからです。
以下に参加者のアンケートの回答の一部を紹介します。
「面白すぎて、3時間、あっという間でした。思考プロセスについても大変勉強になりました。IWBは『次々と問題(筆者注:考えるべき内容)を提示してくれる、思考支援ツール』です。解説も理解し易く、ブレーンストーミングなどは大変やりやすかったです。選択肢の取りこぼしがなく、一般的なアイデアからユニークなものまで広範囲に渡る解決策を提示できました。研究者のテーマ探しに適したソフトであるという印象ですが、出願業務においても強力な武器になると思います。」
「実際に使ってみて、気づいていない切り口に気づかされるI-TRIZの威力を実感できました。感動しました。上層部に今回のセミナー概要を報告及び他のテーマで行き詰まっているテーマがあれば紹介しようと考えております。」

あなたも、是非「I-TRIZ無料体験セミナー」に参加して、I-TRIZの威力を実感してください。今まで難しくて使えないと思っていたTRIZが、その日から使えようになることがわかるはずです。 セミナーの詳細、申し込みはこちらからどうぞ。

TRIZの完全なツールがセットされたIWB

アイディエーション社が販売している発明的問題解決のためのソフトウェアのIWBの中には、アイディエーション社が開発したアイディエーション・プロセスが組み込まれています。
今回はIWBの中に含まれているアイディエーション・プロセスを実行する際のツールを確認してみましょう。
アイディエーション・プロセスの最初の「(1)問題の明確化および文章化」という段階で問題の状況を詳細に分析する際には、①時間、空間、入力・出力、原因・結果といった多観点で問題の状況を分析する「システム・アプローチ(SA)」というツールを使用します。
その他にこの段階では、②問題が解決された理想的な状態の想定、③システムとその環境に関連する資源の明確化、④問題解決に当たっての制約と制限の確認、⑤評価基準の設定、を行います。
問題のメカニズムが明らかでない場合には、問題発生メカニズムを発見するために、その問題を100%発生させる方法を考えることで問題発生メカニズムの仮説を立てます。
その後、簡単なテストを行いその仮説を実証します。仮説が実証された後は、問題となっている不具合を解消します。この一連の作業をアイディエーション社では「不具合解析(FA)」と呼んでいます。
アイディエーション・プロセスの2番目の「(2)問題の定式化」では、問題の状況を原因となる機能と結果となる機能の連鎖で表した「因果関係ダイヤグラム」を作成します。「因果関係ダイヤグラム」を作成するためのツールを「プロブレム・フォーミュレータ(PF)」といいます。
アイディエーション・プロセスの3番目の「(3)イノベーションの方向の識別および分類」では、「(2)問題の定式化」で作成した「因果関係ダイヤグラム」に対応する問題解決への可能な複数の指針を表示させます(ソフトウェアが「因果関係ダイヤグラム」の論理を読み取って自動的に指針を表示します)。
そして、指針のリストの中から、検討する必要があると思う指針を選びます。 選んだ指針それぞれについて、ソフトウェアが指針の論理を読み取って自動的に最適な解決策の原理(発明パターン)を提示します。
個々の問題の指針に最適な解決策の原理(発明パターン)を提示する機能を「オペレータ・システム(OS)」といいます。 問題解決者は、オペレータ・システム(OS)によって提示された発明パターンを参考にして、ブレーンストーミングの要領で類比思考によりアイデア発想をします。
アイディエーション・プロセスの4番目の「(4)解決コンセプトの開発」では、複数のアイデアを組み合わせて有効性と実現可能性の高いコンセプトを完成します。組み合わせに関しては、進化のパターンに沿った「ハイブリッド化(HB)」という考え方を使います。
アイディエーション・プロセスの最後の「(5)アイデアの評価および実施計画」では、解決コンセプトを「(1)問題の明確化および文章化」の段階で決定した評価基準で評価します。評価項目、満足できていない項目あるいは制限を、解決コンセプトを改善するために解決しなくてはならない二次的な問題ととらえて、その二次的問題の解決に取り組みます。
二次的問題が解決された解決コンセプトでも、実行に移すと予期せぬ不具合がおこることがあります。そこで、解決コンセプトを実施した際に起こるかもしれない潜在的不具合を事前に予測し、その不具合を予防する解決策を考えます。
アイディエーション社では、このような上市前に不具合の予測と予防を行う作業を「不具合予測(FP)」と呼んでいます。 場合によっては、競合他社との一層の差別化を図るために、さらなる進化を考えることもあります。
その場合には、進化のパターン/ラインの適用を考えることになります。アイディエーション社では、次世代の製品やプロセスを開発するためのシナリオを作成するツールを「戦略的世代進化(DE)」と呼んでいます。
最後に、二次的問題の解決と潜在的不具合の予防策ができたら、その解決コンセプトを実行に移すための調査検討を行い具体的な実行計画を策定します。 プロジェクトの成果である解決コンセプトは、有効な知的財産として活用するために発明として完成し、強化することになります。
その際、事前に特許調査を行いますが、特許調査の結果発見された障害となる特許が発見された場合には、その特許を回避する方策を検討します。これら、一連の作業をアイディエーション社では「知的財産制御(CIP)」と呼んでいます。
以上のように、IWBの中には、システム・アプローチ(SA)→不具合解析(FA)→プロブレム・フォーミュレータ(PF)→オペレータ・システム(OS)→ハイブリッド化(HB)→不具合予測(FP)→戦略的世代進化(DE)→知的財産制御(CIP)といったTRIZの効用を得るための完全なツールがセットされています。
なお、これらのツールのうち、不具合解析(FA)、不具合予測(FP)、戦略的世代進化(DE)、知的財産制御(CIP)については、それぞれ独立したソフトウェアとして販売されています。