世の中には問題解決に関するたくさんの手法が公開されています。しかし、唯一の手法でどんな種類の問題にも対応できるものはありません。 親和図法は具体的なたくさんのデータに基づいて、それらのデータから一般的な概念を発見する手法として有効ですが、それらのデータから新しい発明をしようとしても無理です。
特定の課題を実現するための新しい発明を創出する発明技法としは、中山正和氏のNM法が知られています。 革新的な発明とはいわないまでも、技術の分野では、生産現場の改善活動に使用されるQC(品質管理)、コストダウンを目的とした改善活動に使用されるVE(価値工学)、顧客の要求を製品の仕様に落とし込むために使用されるQFD(品質機能展開)といった手法が使用されています。
QC,VE,QFDはそれぞれの分野で実際に有効に使用されている手法ですが、残念ながらそれらの問題を解決するためのアイデアを創出する方法論を持っていません。 それらはアイデア創出法として、ブレーンストーミングを使用することを推奨しているだけであり、アイデア発想段階での力不足が問題であるといえます。
そのため、最近になって、QC,VE,QFDではアイデア発想段階でTRIZ(発明的問題解決理論)を使用することが行われています。 このように、問題の種類によって複数の手法を使い分けること自体はよいことです。
しかし、TRIZ自体は膨大な体系からなる理論と方法論を持ったものであり、その一部だけを取り出して使用した場合、その機能が十分に発揮されないで終わってしまうことが考えられます。 ある手法(モデル)の部分的な使用に当たっては、その手法の有効性を損なうような中途半端な使い方にならないように注意すべきです。
たとえば、NM法では、具体的には問題の種類によって、またはその取り組みの段階の違いによって、NM法T型、NM法A型、NM法S型、NM法H型といった複数の手法を使い分けるようになっています。
問題解決に役立つ解決策を出す前にたくさんのヒントを得る際には、高橋浩氏が提案された展開思考を主とするNM法T(Takahashi)型を使用します。 物の発明を考える場合には、構造といった問題を取り扱うため、ヒントやアイデアを空間的に組み合わせていく、収束思考のためのNM法A(Area)型を使用します。
方法の発明を考える場合には、手順や工程といった問題を取り扱うため、ヒントやアイデアを時間的に組み合わせていく、収束思考のためのNM法S(Serial)型を使用します。 また、物の発明の場合には、使えそうなヒントを手に入れたら一気に解決策まで仕上げてしまう方が効率的な場合が多いことから、NM法T型+NM法A型を組み合わせたNM法H(Hardware)型を使用します。
そこで、QC,VE,QFDのアイデア発想段階にNM法の一部を使用するとすれば、問題解決の初期のヒント出しにNM法T型を使用することが考えられるでしょう。 (補足)TRIZの部分的な使用については、次回に説明します。