TRIZを実務で使いこなす方法

TRIZは、1996年に米国経由で日本に入ってきたといわれています。
実は、TRIZに関する本が日本で1972年に「発明発想入門」(G.アリトシュルレル著、遠藤敬一、高田孝夫共訳、アグネ社発行)という名前で出版されています。
この本は、ロシア語から直接日本語に翻訳されたもので、本の中では、TRIZではなく、ARIZという名称で説明されていました。
TRIZの創案者であるアルトシュラーが第一線で研究していたときのARIZの最終バージョンはARIZ-85Cですが、その中身は、第1部 問題の分析、第2部 問題モデルの分析、第3部 IFR(究極の理想解)と物理的矛盾の特定、第4部 物質・場資源の動員と活用、第5部 情報の蓄積の利用、第6部 問題の変更または変換、第7部 物理的矛盾解消方法の分析、第8部 解決策の活用、第9部 問題解決プロセスの分析、といった全部で9つの部からなり、ステップ数が40もある膨大な体系をしたものです。
現在、TRIZと呼ばれているものは、このARIZ-85Cを基礎としたものであって、MATRIZ(国際TRIZ協会)で行われている国際認定試験もARIZ-85Cを基本とした内容になっています。
したがって、本格的にTRIZを研究しようとすれば、ARIZ-85Cに精通することが望まれます。
しかし、研究・開発の実務にTRIZを活用するだけであれば、その必要はありません。
以下、その理由と、具体的な方法論について説明します。
まず、アルトシュラーが第一線で研究していたときまでのTRIZを古典的TRIZといいますが、その内容は、①技術と技術の目的とは全般的に見ると法則性を持って進化している、②技術の進化における法則性を明らかにすることは可能であり、それを発明問題(技術的難問)を解決する新しい方法を発見するために利用することができる、③発明問題を解決する新しい方法を探す作業過程は論理的で順を追った知的思考のプロセスとして記述することができる、といった公準(基本的前提として必要とされる命題)を基礎としています。
理論としてのTRIZを作り上げるもとになったのは、特許情報と技術史であり、それらの分析の結果から、技術の進化に見られる基本的な方向性(技術システムの進化の法則)を明らかにすることができました。
以上のように、公準と理論の源泉から明らかなように、TRIZの理論的核心の中で最も重要なものは、技術システムの進化の法則であるといえます。
また、TRIZの基本的な概念としては、「技術システム」、「理想的な技術システム」、「機能」、「資源」、「矛盾」、「標準解」、「物質・場」があげられます。
技術システムの進化の法則を基礎として作られた思考ツールには、技術システムの進化のライン、技術的矛盾解決法、物理的矛盾解決法、物質・場分析、標準解、最終理想解オペレータ、ARIZ、心理的惰性克服オペレータ、効果集などがあげられます。
TRIZの思考ツールの中で最も初期のものの1つが「技術的矛盾を解消するための発明原理」です。発明原理は初心者にも扱いやすいということから日本で最も広く普及しているものですが、アルトシュラーはその晩年には「発明原理」とそれと密接に結びついた「矛盾表」を既に古びたものと見なしていたとのことです。
古典的TRIZの中で新しい思考ツールは何かといえば、それは標準解です。
TRIZでは、標準的な問題については標準解を適用することが前提になっています。標準解で解けないようなより複雑な問題については、ARIZを採用するということになります。
新しい複雑な問題をARIZで解いたら、そこで得られた知見を新たな標準解として従前の標準解に取り込んでいくことで、ARIZをさらに進化させていくという考えです。
さて、TRIZの思考ツールの中で最も強力なのはARIZであることはわかりましたが、前述したような膨大な体系を前にして、怖気づいてしまうのではないでしょうか。
「TRIZは難しい、使えない(使いこなせない)」という意見は、まともな意見だと思います。
そこで、TRIZを実務で使いこなすための「助け船」をお教えします。
それは、アイディエーション・インターナショナル社が開発した「簡易版ARIZ」ですが、その詳細については、次回に説明します。