技術システムと社会的システムの理想性の向上

技術システムは 理想性の向上する方向に進化します。ここでいう理想性は、システムの有益な諸特性の合計を有害な(望ましくない)諸要因の合計で割った値と定義されます。

 

したがって、理想性の向上は、システムの有益な特性の増化・改善、有害な要因の減少・軽減、あるいは、これら両方によって生じます。

 

理想性を徐々に向上させる一般的なアプローチは、以下のとおりです。

 

1.有益な機能や特性の数を増やす

たとえば、(1)対象としているシステムの周辺の他のシステムやシステムの 環境が持っている有益な機能をシステムに取り入れる、(2)新たな有益機能を発明してシステムに付け加える。

2.有益機能の質(あるいは、他の性能)を改良する

3.システムの有害な要因の数を減らす。

たとえば、(1)有害な要因を排除・回避する、(2)有害な作用をそこならば有害な影響が軽減される他のシステムや システムの他の部分に振り向ける、(3)有害な要因を有益に活用する方法を発見する。

4.有害さの程度を軽減する

5.確実に理想性を向上させるために以上を複数組み合わせて実現する

 

理想性の向上は、「技術システム」だけでなく「社会的システム」でも生じますが、それぞれに固有の特徴があります。

 

技術システムの有益機能の改良の着眼点としては、a.機能の効果、b.信頼性、c.動作のスピード、d.機械的強度、e.組成の安定、f.利便性、g.生産性・生産力、h.加工精度、i.配合精度、j.形状、k.汎用性、l.制御性、m.順応性、といったものが考えられます。

 

技術システムの望ましくない要因の排除・軽減・防止の着眼点としては、a.重量、b.全体寸法、c.エネルギー消費、d.複雑さ、e.エネルギーの無駄、f.時間の無駄、g.コスト、h.変形、衝撃、振動、破壊、i.機械的障害、j.磨耗、k.騒音、l.汚染・混入、m.過熱(オーバーヒート)、n.有害な付着、o.発火・爆発、p.環境への悪影響、q.人の危険な行為、r.両立させられない有益作用、といったものが考えられます。

 

社会的システムの有益機能の改良の着眼点としては、a.安全、b.安定、c.自由と人権、d.人間の基本的ニーズの充足、e.情報へのアクセス、f.生活の質、g.人の寿命、といったものが考えられます。

 

社会的システムの望ましくない要因の排除・軽減・防止の着眼点としては、a.社会・経済・政治問題、危機(誘発されたものも、自律的なものも)、b.軍事、犯罪、テロによる危険、c.政治的専制による危険、d.経営、組織内政治、物流、競合、官僚主義にかかわる諸問題、e.誤ったあるいは不正確な情報、および、宣伝や政治その他の手段による大衆操作に関連する諸問題、f.環境および人口学的諸問題、g.人と人との交流に関連する諸問題、h.身体的および精神的健康にかかわる諸問題、といったものが考えられます。