創造の世界の用語

発想や創造について考えるに当たって、思いつくままに創造に関連のある用語を並べてみましたが、このうちポイントとなる用語について、その概念の確認から始めましょう。

 

一見似た言葉に、着想と発想という言葉があります。「ヒント」を集めることを「着想」といい、それは意思的にイメージ記憶の中から問題に関連ありそうなデータを引き出すことであり、その集めたヒントを元に「アイデア」を作り出すことを「発想」と呼んでいます。

 

ヒントと「思いつき」は、ともにアイデアを出すことまたは工夫する材料となるものである点で、両者は同じ意味といえます。着想は発想の前段階を意味し、着想の結果得られるものがヒントであり思いつきです。そして、発想の結果得られるものが、アイデアということになります。

 

特許法では、「発明とは、自然法則を利用した技術的思想のうち高度のものをいう。」(特許法第2条第1項)と定義されています。この点で、「発明」は技術に関する創造であるといえます。

 

「発見」は、新しい方法や物を考え出す発明とは異なり、既に存在しているものを新しく見つけ出すことを意味します。日本では、発見それ自体は特許の対象にならず、発明と考案だけが特許の対象となり得ます。

 

しかし、発見が発明のきっかけとなることが経験則に照らして自明であるから、発見は発明の前段階であると考えることができます。

 

ちなみに、発明のレベルを5段階に分類しているTRIZ(発明的問題解決理論)では、「科学的大発見」はまったく新しいシステムにつながる大発明と同じ扱いでレベル5(最高レベル)に該当するとしています。

 

「考案」は「自然法則を利用した技術的思想の創作」という点では、発明と同じですが、考案はその上に「物品の形状、構造又は組合せに係る」ものという限定があり(実用新案法第1条)、発明とは異なり方法がその対象から外されています。

 

そして、発明は特許に、考案は実用新案に、それぞれ対応する概念であり、発明は特許法の、考案は実用新案法の保護の対象となっています。

 

発想とはアイデアを作り出すこと、創造とはそのアイデアを世の中に役立つ形にまで仕上げることを含んだ概念として捉えた方が実際的であるといえます。このことについてNM法の創案者である中山正和氏は、「創造とは、アイデアを出し、そのアイデアを社会に役立つような形にまで仕上げる能力である」といわれています(「NM法のすべて」、中山正和著、産業能率大学出版部発行)。

 

つまり、「創造」=「発想」+「有効化」という表現ができるわけです。

 

アメリカでは、発明は「着想」と「実施化」の二つの過程を経過して完成するものとされており(アメリカ特許法102条(g)項)、上記創造の定義と同じく、そこには「発明」=「着想」+「実施化」といった関係が明らかにされています。

 

頭の中でアイデアが浮かんだからといっても、そのままでは自己満足でしかありません。有効化のための作業がなされて初めてそのアイデアが社会に役に立つものとなります。

 

創造的活動を心がけるのであれば、せめてスケッチやメモ程度のものを作成して、他人の評価を受けられるようにしておきたいものです。また、後日自分がそれを採用するときにも有効に利用できることになります。