イノベーションにおける戦略的世代進化(DE)と発明的問題解決(IPS)との違い

1950年代には、様々なシステムの将来特性を今までの進化の延長線上で確率の高い姿にモデリングする技術予測法がありました。しかし、実際には、進化は非線形である(今までの進化の延長線上から外れる)ため、特に長期の予測は外れました。

1970年代には、古典的TRIZ(発明的問題解決の理論)の中の「技術システム進化の法則」を使った次期製品・プロセスの創出方法が使用されました。

1980年代には、古典的TRIZを改良したI-TRIZ(Ideation TRIZ)が進化の結果としてまたは進化のプロセスの中で将来発生する可能性のある有害事象を予測して予防する「不具合予測(FP:Failure Prediction)」という方法論が使用されました。

アイディエーション・インターナショナル社は、1990年の初頭に古典的TRIZの「技術システム進化の法則」や不具合予測(FP)をさらに進化させて、戦略的世代進化(DE:Directed Evolution、以下DEと略記する。)を開発しました。

戦略的世代進化(DE)は、技術システム、非技術システムを問わず、既存の各種システムを積極的に進化させるために可能性のあるシナリオの網羅的なセットを手に入れるためのものです。

企業の立場で考えれば、新規事業開発や新商品・サービスの企画を支援するための方法論といえます。

当初(1990年代)の戦略的世代進化(DE)は、技術、市場および社会の動向の歴史的発達を分析した結果得た技術進化のパターン、市場進化のパターンや社会のトレンドなどを体系化したハンドブックを使用したマニュアルベースの方法論でした。

アイディエーション・インターナショナル社は、2009年に戦略的世代進化(DE)をコンピュータのソフトウェアとして完成させました。

2015年には、アイディエーション・ジャパン株式会社が戦略的世代進化(DE)のソフトウェアの日本語版を完成させる予定です。

従来製品の性能向上、信頼性向上、利便性向上といったいわゆる最適化技術に長けた日本企業は今、韓国、台湾、中国、インドなどの国からの追い上げによる低価格化競争に飲み込まれています。

この低価格化競争から抜け出すには、従来品の最適化を行いつつ、今までにない商品・サービスを日本企業が他国の企業より先に市場へ投入していかなければなりません。

従来の漸進的イノベーションだけでは足りず、急進的イノベーションを起こさなければなりません。

従来歩んできた漸進的イノベーションの進化の旧系統から離れ、新しい進化の系統に飛び移る急進的イノベーションを起こす方法を身に着けなければなりません。

「よりよいものにするために継続的に改善する」といった、相反する特性を高い値で両立させる最適化行為が漸進的イノベーションであるとすれば、「より新しいものにするために根本から変えてしまう」といった、それまでの枠組みを変える革新的行為が急進的イノベーションです。

漸進的イノベーションの実行には発明的問題解決(IPS)で対応できますが、急進的イノベーションの実行には戦略的世代進化(DE)の考え方が必要になります。

急進的イノベーションは、システムの進化を妨げている本質的な矛盾(未だ誰も気づいていない概念的枠組みについての矛盾)を発見して、その矛盾を解決することで未来を先取りすることによって起こします。

本質的な矛盾の正体は、思い込み、先入観、固定概念などといわれるものです。

思い込み、先入観、固定概念を壊すことが急進的イノベーションの重要な要素になります。