矛盾は解消してはいけない

いかにして論理的に正しい結論に到達するかが、論理思考の目指すところですので、論理思考の結果は誰がやっても同じ結論になるということです。
論理思考は、学校で出されるような正解が決まっている問題や常識的な問題には役立つ思考法です。しかし、仕事や組織に関する答えが1つとは限らない問題や発明的問題のような複雑な問題には、これだけでは解決策が得られません。
仕事や組織の問題や発明的問題のような複雑な問題が、なぜ論理思考だけで解けないかというと、論理思考が論理的整合性を重視するため、対立する意見が同時に存在するような「矛盾」を排除する思考であるからです。
世の中のモノ、コトは、常に変化し、発展し、進化していくわけですが、実はそのモノ、コトの発展の原動力は、その内部に含まれている「矛盾」であるといえます。 「矛盾」を排除するという発想だと常に同じ結論しかでませんから、変化は起きませんし、モノ、コトの発展は起きません。
また、対立する意見のうちいずれか一方の意見だけを採用するような、「矛盾」を機械的に「解消」するようなことでは、矛盾を解決したことになりません。 矛盾する問題を解決するには、矛盾を「止揚」することです。矛盾を止揚するとモノ、コトが発展し、進化することになります。
TRIZでは、矛盾を解決したときにモノ、コトは進化するといいます。 矛盾を止揚するとは、もともと弁証法の考え方です。弁証法では「止揚」とは、互いに矛盾し、対立するかに見える2つのものに対して、いずれか一方を否定するのではなく、両者を肯定し、包含し、統合し、超越することによって、より高次元のものへと昇華していくこと、といいます。
たとえば、企業は、発展し続けるために「利益を追求する」ことと、顧客のために役立つという「社会に貢献する」ことの両方が要求されます。そこで、このいずれか一方を肯定し他を無視して割り切るのではなく、この両者を肯定し、包含し、統合した企業を目指すことが求められるわけです。
矛盾は機械的に解消するのではなく、矛盾を止揚してより高次元のものへと発展させることが必要であるということはわかりました。では、どうすればいいのでしょうか。
そのためには、互いに対立・矛盾する2つのものの間で、あたかも振り子を振るように、うまく全体のバランスを取ることです。 具体的な方法としては、TRIZ(発明的問題解決理論)を使用して矛盾を解決することや、TOC(制約条件理論)を使用して対立をなくすことが有効です。
TRIZの解決法では、「時間、空間、構造、条件等」でその矛盾の状態を分離することで解決することになります。TOCでは「仮定、前提条件、思い込み等」を突き止めてそれらを無効にすることで解決することになります。