技術開発の死の谷を越える

新技術を開発しても、それを受け入れる市場ができていない場合には、いわゆる「死の谷」に
落ち込んでしまい、日の目を見ずに終わることがあります。
古く、複雑で、生産量が比較的少なく、開発している企業の数が少ないなどで競争も激しくないシステムでは、システムの基本的パラダイムが、可能な改良のアイデアが出尽くしていないうちに、時期尚早に固定化してしまっている。
その結果、本来は成長期にあるべきシステムの性能は長期間ほとんど変化していない、どの会社も同じような製品を売っている状況(成熟期に似た状況)に陥っていることがあります。
成熟期では、それまでにシステムに関する標準は確立され、固定化されているため、原理的に高度な発明は行われず、改良といっても仕様の最適化、妥協的な設計、小さな発明が行われるだけです。
他方、売り上げは順調に伸びているため、新しいシステムへ移行することなどには思いも寄らない。その結果、いつも間にか安価な代替システムに市場を奪われてしまうことになります破壊的イノベーション)。
いずれのケースも、システムやその周辺に存在する資源を見逃しているか、またはそれらの資源の活用が不十分であることに起因しています。
いずれのケースも問題解決の鍵は資源の有効活用である。となれば、既存の技術の新しい用途を見つけ出す用途開発の手法が使えるはずです。
つまり、システムの資源を有効活用すべく新しい市場を作り出せばよい。そのためには、人の新しい生活習慣や振る舞いを提案する新文化の開発が必要です。
まずは、「高齢者の理想の暮らし」とは何か、といった新しい価値観、文化のデザインに挑戦し、その後で、その暮らしを実現するための技術開発に挑戦してみましょう。
以上のような考えに基づいて、今年から日本TRIZ協会の知財創造研究分科会では「高齢者の新しいライフスタイルを提案する」ことをテーマに複数年をかけて検討していくことになりました。
今後開催されるTRIZシンポジウム(直近は今年の9月)でその報告をする予定にしていますので、楽しみにしていてください。