オペレータを使って社内にI-TRIZを普及させる方法を考える(1)

私たちへの質問の多くは、「どうしたらTRIZを社内の研究者、技術者に普及できるだろうか」というものです。今回は、この問題をI-TRIZで簡単に解いてみようと思います。
I-TRIZの基本ソフトウェアであるIWBの最初の「問題の情報把握」の工程には、「状況の要約」という欄があります。
ここでは、「あなたが取り組んでいる状況を簡潔に説明してください。」という質問文が表示されています。
さらに、「次のIWBツールが使えないか考えてみてください。」という提案文が記載されており、その最初に「標準問題」という項目とこの項目にリンクされた標準問題用のオペレータが控えています。
自分が取り組む問題についてその課題が明確である場合には、問題解決者はいきなりI-TRIZの強力なオペレータが使える機会が与えられています。
時間のかかる「システムアプローチ(多観点分析)」に取り組む必要はありません。面倒な「プロブレム・フォーミュレーション(因果関係ダイヤグラムの作成)」に取り組む必要もありません。
課題がはっきりしているような問題は、標準問題用のオペレータを使ってさっさと解決してしまいましょう。そして、本当に難解な問題の場合には、I-TRIZの全プロセスを使いましょう。
「標準問題」の項目をクリックすると、以下のような17項目のリストが表示されます。
「(1)生産性を改善する、(2)利便性を改善する、(3)信頼性の向上、(4)機械的強度を改善する、(5)製造精度を改善する、(6)コストを低減する、(7)単純化、(8)重量を軽減する、(9)エネルギー消費を低減させる、(10)浪費時間を減少させる、(11)
機能効率を向上させる、(12)変形、ずれ、衝撃、振動、破壊を抑制する、(13)騒音を低減させる、(14)摩耗を低減させる、(15)汚染を軽減する、(16)過熱を回避する、(17)環境との相互作用を減少させる」
自分が取り組む問題の課題がこれらのいずれかに関係するものであれば、直接その項目をクリックすることで、課題を実現するためのヒントを見ることができます。
たとえば、「生産性を改善する」をクリックすると、「生産性を改善するには、以下の推奨事項(オペレータ)を検討してください。」という推奨文に続けて、「(1)並列処理、(2) 処理の特殊化」という項目の記載と、その下に「関連項目」として「(1)処理効率の改善、(2)処理速度の向上」という項目の記載が表示されています。
最初に「(1)並列処理、(2) 処理の特殊化」のいずれかまたはその両方の項目をクリックして、それぞれのオペレータを参照することにします。「関連項目」は、このオペレータが使えそうだという感触を得た場合であって、かつより具体的なアイデアを得たい場合に使用します。
「並列処理」のオペレータでは、「同時に並行して実行できる複数の処理に、プロセスを分割することを検討してください。」という解説と、「並列処理」に関連した「牛の効果的な繁殖」という過去の具体的事例を参照することができます。
「処理の特殊化」のオペレータでは、「専門家や特殊装置によって実行する複数の処理に作業を分割することを検討してください。」という解説と、「処理の特殊化」に関連した「革新」という過去の具体的事例を参照することができます。
ちなみに、「処理の特殊化」の「革新」という事例では、「組立ラインに応用された分業という概念は、産業に革命をもたらしました。」という導入文と、「発明による技術問題の解決理論(TRIZ)は、革新をもたらします。TRIZの専門家は、このコンピュータをベースにしたシステムを使い、問題解決の新しいアプローチを発見することができます。TRIZの訓練の受けたIdeation社の専門家は、顧客の直面する問題を深く掘り下げて、革新的な解法を提示します。」という説明文が記載されています。
すなわち、「(1)並列処理、(2)処理の特殊化」のオペレータからは、I-TRIZを社内の研究者、技術者に普及させるには、「本を読んだり、論文を読んだり、セミナーに参加したりして、自分たちでI-TRIZを人に教えられるまでに学習を積むも大切ですが、それと並行して、I-TRIZの専門家の助けを借りて、研究者、技術者自身が抱えている難問を自分たちの力で解いてしまうといった体験をすること。」というアイデアが得られます。
なぜなら、自分たちがI-TRIZを人に教えられるまでになるのを待っていたら、実務に試行するまでに長い時間が過ぎてしまいます。仮に、試行できる段階になったとしても、研究者、技術者から出る質問に導入担当者が即答するのは難しいのではないでしょうか。
そのような状況が何度か続くと、研究者、技術者はTRIZに対して難しいという観念を持つようになると同時に、TRIZも導入担当者も信頼を失うことになります。
また、発明活動といった技術と技能の両方に関係するスキルは、早いうちに成功体験をすることが重要です。
I-TRIZを使うことで、「自分たちが抱えていた難問を自分たちの力で解けた。」という成功体験をしてしまえば、後は導入担当者が何もしなくとも、研究者、技術者は次から次へ新しい問題にI-TRIZを適用してみようとするはずです。
初めて、自転車に乗れたときの感動を覚えていますか?初めて、泳げるようになったときの感動を覚えていますか?発明も同じです。技能を身につけるには訓練が必要なのです。
今回は、「標準問題」の中の「生産性を改善する」というオペレータだけを使いましたが、いかがでしたでしょうか。