夢の中でのできごと

前回は、Kさんが仕事をしている最中に、もう一人の自分が「そこはこういう風にするといいよ」と囁くという話をしました。 実は、私も同じような経験があります。

連日夜遅くまで仕事をしていた時期の話ですが、この世の中に存在しない機械を設計しなければならい状態に追い込まれたときの話です。 その機械は、コンベアで運ばれるパイ生地を、その運搬工程中にコンベア上で所定の形状に成形しなければならないものでした。

具体的には、帯状のパイ生地をその幅の1/4の大きさに折りたたむというものです。まず両端を中央に折りたたみ、その後中央で半分に折りたたむことが必要でした。 従来は、人手でその作業を行っていましたが、これを自動化したいといことです。

何日も試行錯誤し、簡単な試作を繰り返しましたが、うまくいきませんでした。 頭で思い描いたようには、パイ生地が動いてくれません。どこかに無理な力が働くと、その部分のパイ生地が伸びてしまい薄くなってしまいます。 あるとき、夢の中で自分がパイ生地になって、まだ存在しない機械の上で動いている様子が出てきました。

最初は、するっと機械から落ちていましたが、機械がそのたびに形を変えていき、遂にはパイ生地がうまく目的の形になることができました。アイデアの完成の瞬間です。 翌日、早速図面を描き、製造部門に試作の依頼をしました。 出来てきた試作品を組み立てて、実験をしてみたところ、一部修正が必要な箇所を発見しましたが、基本構想は夢の中のままで良かったのです。

私の場合には、Kさんと違い、夢の中でもう一人の自分が助けてくれたことになります。 「もう一人の自分の囁き」、これが潜在意識の働きではないかと思います。 「好き」か「ピンチ」が創造性を発揮するに最適な状況であるといわれますが、それを実感した出来事でした。