オペレータを使って社内にI-TRIZを普及させる方法を考える(5)

「どうしたらTRIZを社内の研究者、技術者に普及できるだろうか」という問題をI-TRIZで簡単に解いてみる試みの5回目です。
I-TRIZの基本ソフトウェアであるIWBの最初の「問題の情報把握」の工程には、「状況の要約」という欄から見ることのできる「標準問題」の項目をクリックすると、以下のような17項目のリストが表示されます。
「(1)生産性を改善する、(2)利便性を改善する、(3)信頼性の向上、(4)機械的強度を改善する、(5)製造精度を改善する、(6)コストを低減する、(7)単純化、(8)重量を軽減する、(9)エネルギー消費を低減させる、(10)浪費時間を減少させる、(11)
機能効率を向上させる、(12)変形、ずれ、衝撃、振動、破壊を抑制する、(13)騒音を低減させる、(14)摩耗を低減させる、(15)汚染を軽減する、(16)過熱を回避する、(17)環境との相互作用を減少させる」
今回は2番目の「利便性を改善する」をクリックします。すると、「システムをより使い易くする方法を見つけるには、以下のオペレータに沿って考えてください。」という推奨文に続けて、「(1)有取り外し可能(モジュール化)、(2)セルフサービス、(3)模型・コピー、(4)使い捨て、(5)視覚特性を変える、(6)透過性を変える、(7)媒介物質、(8) 膨張する構造、(9)特性の最適化、(10)道具を人に合わせる」という項目の記載と、その下に「輸送を容易にする方法」のオペレータとして「(1)重い部分と軽い部分に分割、(2)重量物の移動、(3)特性の最適化、(4)膨張する構造、(5)重量の補整1、(6)重量の補整2、(7)他の力による補整、(8)ある物を活かす」が記載されています。さらに、その下に「関連項目」として「(1)物質の一時的使用」という項目の記載が表示されています。
5番目に記載されている「視覚特性を変える」をクリックすると、「対象物、または環境の視覚特性を多様化させてください。」という解説と、「視覚特性を変える」に関連した「(1)電子ビームの照準合わせ、(2)交通信号のフィルタ、(3)火災時の脱出用として塗料を使用、(4)機械加工に泡状の冷却剤を使用」という過去の具体的事例を参照することができます。
日本ではTRIZは1997年に日経BP社発行の「日経メカニカル」という雑誌に「超発明術TRIZ シリーズ 1~4」という題名で紹介されたのが最初であるといわれています(実は、これより前の1972年にアグネ社より「発明発想入門」という題名の書籍が発行されており、そこでは「TRIZ」という名称ではなく「ARIZ」という名称で紹介されていました)。この記事を読んだ人の中には超発明術という意味を早合点し、TRIZを使えば誰でも自動的に発明ができるようになると思い込んだ会社がTRIZに飛びつきました。しかしながら、多くの会社が思うような成果を出せなかったことで、結果としてTRIZは使えないという誤解を産んだ一面があります。
また、当時日本に紹介されたTRIZは、創案者であるゲンリッヒ・アルトシューラが第一線で活躍していた1985年までの古典的TRIZであって、その膨大な体系を習得して実践するまでに200~250時間かかるともいわれるものでした。そのため、TRIZは日本の企業では導入の検討対象にもならず、現在も一般に普及している方法論とはいえません。
そこで、「視覚特性を変える」というオペレータを参考にすると、「従来の古典的TRIZの欠点を改良すべく、あらゆる問題を一貫した手順で解決することのできる新しい体系的な思考プロセスとして再構築したI-TRIZを採用すれば、初めての人でも抵抗なく取り組むことができ、具体的な成果を上げることができる。」といった提案ができます。
また、6番目に記載されている「透過性を変える」をクリックすると、「対象物、または環境の透過性を多様化させてください。透過性は、該当する条件に応じて多様化させてください。」という解説と、「透過性を変える」に関連した「(1)ガラスの特性の変更、(2)温室の温度の制御、(3)電極-光電池」という過去の具体的事例を参照することができます。
前述のアイデアにこのオペレータを適用すると、I-TRIZについての解説が必要な場合には、「自社の実際の技術テーマについて実施した成功事例を添えて、I-TRIZが初心者にも取り組みやすく、確実に成果が上がるものである。」ことを説明すればよい、と提案できます。