まったく新しいものをゼロから考えることは難しいものです。
私たち大人は、年を重ねるにつれて現実の具体的な情報を少しずつ貯め込んできているため、思考の自由度が抑制されています。いわゆる、固定概念に捉われるとか、心理的惰性に流されるとか、いわれる状態に陥っているわけです。
そのため、何か新しいものを考えようとする場合には、既存のもの、知っているものを手がかりにして、そこから連想した方が考えやすいことになります。
日常生活の中で起こる「ほう!」、「あっそうか!」といった「気づき」の瞬間は、日々の暮らしに充実感を感じられるときです。生きている価値とは、このような日々の中で起きる変化によって自分自身が成長しいく状況を感じ取ることであるといえそうです。
私たちはこのような日々の充実感をそのままにしてしまいがちですが、そのときの「気づき」を活かしてみることを考えてはどうでしょう。これをその都度行うことで、類比発想の訓練ができます(そのときに時間がなければ気づいたことをメモしておき、別の機会にじっくり考えることでもよい)。
活かすとは、その物事を別のことに応用することです。気づいた内容を抽象化して、他の物事に当てはめて見る。そうすることで、まったく異なる分野にも似たメカニズムがあることを発見することができます。
発見したメカニズムが他の多くの事例についても同様に適用できることが証明できれば、それは一つの普遍的な法則として、一般的な問題解決に適用できる知識になるでしょう。
「技術システムは進化するにつれて、より便利で様々な必要を満足させることができるように、汎用的で多目的なものに変わっていきます。この傾向が進むにつれて、システムは変化し易いものになります。これは、汎用的であることは柔軟性に富んで制御性に優れることを必要とするからです。」
以上の説明は、I-TRIZの進化のパターンの一つである「要素の汎用化」についてのものです。
実は、この「要素の汎用化」の概念は、具体的なものを観察し、そこから一般化した概念を作り上げるといった抽象化思考を行った後、他の分野の具体的な物事にそこで発見した一般的概念を適用するといった、類比発想のプロセスそのものの説明にもなっています。