「オペレータ」というと、一般には機械やコンピューターの操作者を意味します。
I-TRIZで「オペレータ」とは、問題解決に役立つ解決ヒントのことをいい、別名「発明パターン」ともいいます。
TRIZの知見によれば、過去になされた高い水準の発明を分析したところ、全く同一の基本的問題(矛盾)が様々な技術分野で何度も繰り返し取り上げられ、そして解決されてきたことが明らかになりました。
また、同じ発想に基づく基本的な解決策が何度も何度も、時には長い年月を隔てて、繰り返して使用されていることもわかりました。
このように繰り返して使われる解決策の原理となっている考え方を、I-TRIZでは「オペレータ」と呼んでいます(古典的TRIZの発明原理、分離の原則、標準解、進化の法則、効果集などが一つに集約され新たに体系化されたもの)。200万件以上の特許の分析から500を超える「オペレータ」が抽出されました。
たとえば、「場の強化」というオペレータは、「物体を密閉した容器に入れ、容器の内部の圧力を徐々に高くしてゆき、その後一挙に減圧する。急激な減圧によって物体の内部と外部の圧力に格差が生じ、これによって物体が爆発的に割れる。」というものです。
「場の強化」というオペレータを使うと、たとえば、(1)ピーマンの缶詰を作る際のピーマンのヘタと種の部分を取り去る作業が自動的に行える、(2)掃除機のフィルタに詰まった小さなゴミを簡単に取り除くことができる、(3)人工ダイヤモンドで工具を作る際に素材に入っている亀裂部分で結晶を分割することで亀裂のない結晶を手に入れる、といったように異なる技術分野の課題を実現することが可能になります。
TRIZの最大の特徴は、I-TRIZの「オペレータ」のように、先人の知恵が体系立てて整理されていることです。
日本の創造技法である等価変換理論やNM法も等価な参考例やアナロジーを使って問題解決を図りますが、参考例やアナロジーはその都度自分で過去の記憶を思い出すか、技術情報(特許情報を含む)を検索して手に入れなければなりません。
そのため、等価変換理論やNM法も、残念ながら技術開発の現場で使用されている例はほとんどなく、教育訓練レベルでの使用に留まっているのが実情です。
I-TRIZの基本ソフトであるIWB(Innovation WorkBench)では、問題の情報把握の段階で、「類似の問題を持つ他のシステム」という項目を設けています。
ここでは、取り組んでいる問題と類似の問題を抱えた他のシステムの見つけることを問題解決者に要求しています。
類似の問題を抱えた他のシステムが見つかったら、引き続き(1)その問題は解決されましたか?そうだとすれば、どのようにですか?、(2)その解決策をあなたの問題に適用できますか?それが不可能だとしたら、なぜですか?、(3)あなたの問題にその解決策を適用するためには、付随する二次的な問題を解決しなければならないとすれば、その問題はどんな問題ですか?、という問いに答えることで、取り組んでいる問題の解決策を得ようとします。
実は、この思考過程が「オペレータ」を使用する際の頭の使い方を述べているものといえます。
つまり、「オペレータ」という先人の知恵の膨大な知識ベースが使いこなせるかどうかは、上記の問いに答えるような考え方(これを類比思考という。)ができるか否かにかかっています。
I-TRIZで最も時間をかけて訓練する必要があるのは、この1点です。その意味でI-TRIZの曲者といえます。
【参考】
類比思考の訓練には、等価変換理論やNM法が最適です。いずれも、アイディエーション・ジャパンでお教えすることができます。必要があれば、いつでもご相談ください。
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