次にTRIZを進化させるのは日本

知識(コトバ記憶)はコンピュータで処理できますが、知恵(イメージ記憶)は人間にしか使えません。 世間では知恵を出せといいますが、知恵は(自動的に)出るものであって、出すものでは ありません。
知恵が出る環境を整えるための手段の一つが知識ですが、それがすべてではありません。 知恵(イメージ記憶)は体と密接に関係するため、その人の経験、体験によって得られる
内容が異なります。
知らないものは知っているものの類比でしか理解できません。 気づきは、いのちの知恵(X)によって、ある時突然に生まれます。 ただし、その元はその人のイメージ記憶(過去の経験、体験)の中にあるものです。
人にいわれれば「あっそうか!」ということで、気づくことがあります。それは、本人のイメージ記憶の中にあったが、自らは気づくことができなかったという状態です。
創造技法とは、「人にいわれなければ気づかない記憶(潜在記憶)を、どのようにすれば
自ら気づくことができるか」ということを実現するための手段です。
この分野は、コンピュータにはできないと思います。
日本で生まれたKJ法、等価変換理論、NM法などの発想技法ないし創造技法は、すべてこの路線(いのちの知恵を活かす)上にあります。
TRIZは知識のデータベース(たとえば、アイディエーション・インターナショナル社のオペレータ・システム)を持っている点が強みですが、それは知識ですので、公開されれば真似することが可能であって、その差も多いか少ないかだけです。
ただし、TRIZは特定の問題に対する解決策(特定解)を提示するものではないので、TRIZが推奨する一般解を知っただけでは自分の問題解決に役立てることはできませんから、誰でも真似できるというわけではありません。
一般にはいわれていませんが、TRIZの場合には、TRIZが推奨する一般解を自分の問題の解決策に変換するための類比思考のスキルが必要になります。
そのため、類比思考のスキルのない方々から「TRIZは使えない」という評価が生まれてきます。
等価変換理論やNM法では、自分の問題と本質を同じくする異分野の事象をヒントとして問題解決を行いますので、等価変換理論やNM法を使ったことがある方なら抵抗ないところかと思いますが・・・。
知識として提供されたものは、いつかはコモディティ化します。これに対して、見えない(コトバでは表せない)ものは真似しにくいため、コモディティ化しにくいといえます。
コモディティ化しないものに価値、意味、文脈というものがあります。
知識のデータベースを持っているTRIZについていえば、価値、意味、文脈を読み取るための手法を現在の創造プロセスにどのように組み込んでいくかが今後の課題ではないでしょうか。
この点に関して思い当たることは、次の時代は、禅や悟りの文化を持つ日本がTRIZを進化させることになるのではないかということです。
そのような日本版TRIZを開発すること。また、完成した日本版TRIZを日本の研究者、技術者はもちろん、より多くの方々(技術に関係のない仕事をされている方々)に使っていただける環境を整えることがわれわれコンサルタントの使命かと思っております。