TRIZを知らない人でも使えるI-TRIZ

日本でTRIZといえば、創案者であるアルトシュラーが第一線で研究開発していた時代までの「古典的TRIZ」のことと思っていいでしょう。
現在、日本で販売されている日本語のTRIZに関する書籍は、そのほとんどが「古典的TRIZ」の一部分(技術的矛盾と発明原理)についての説明で終わっています。 そのため、TRIZといえば発明原理を使って問題解決を行うものであるという誤解が生まれ、発明原理で歯が立たないような問題に出会った際に、TRIZは使えないという短絡的な評価がなされているようです。
一方、「古典的TRIZ」のすべてを習得しようとすると、その膨大な体系がネックとなり100時間近い学習が必要であるといわれています。そのため、中々実務で使いこなせるようになるまでには至らないのが実情です。
そのため、TRIZは習得するまでに膨大な時間がかかり過ぎるので、実務には使えないという評価を下すことになります。 いずれの場合も、TRIZが使えないという結論を導くことになってしまっていることは、残念なことです。
これに対して、I-TRIZは「古典的TRIZ」の膨大な体系を有効に活用しながら、その使い勝手をよくすることを目的として改良されたものです。 「古典的TRIZ」のことは何も知らなくても大丈夫です。
研究者、技術者が日常的に使っているエンジニアリング・プロセスをそのまま辿ればいいように作られています。 最初に、問題の状況をいろいろな観点で分析し、分析した結果を第三者にもわかるようにプロブレム・フォーミュレータを使って図式化します。すると、その図式の因果関係を辿ることで、どこにその問題の原因があるかがわかるとともに、実現しなければならない課題が明確になります。
どのような問題であっても、その問題を解決するための課題は、有害な機能を削減するか、有益な機能を別の手段で実現するか、ということです。もちろん、有害機能をなくし有益機能をさらによくすることを考えてもいいわけです。
課題を実現する手段を考え出すには、その問題を抱えているシステムの中やその周りにあって、その問題を解決するために使えるもの(これを資源という。)に、何らかの手を加えてシステムの状態を変化させることを考えます。
資源にどのような手を加えるかについては、先人の知恵を大いに使うことを考えればいいのです。この先人の知恵を発明の定石パターンとしてまとめたものが、「古典的TRIZ」で使用される発明原理、分離の原則、発明標準解、工学的効果集、進化の法則といったものです。
I-TRIZでは、オペレータ・システムを使うことで、課題のパターンに応じてこれらすべての発明の定石パターンのうちから最適なものが提示されます。 その結果、課題の実現に役立つ複数のヒントが提示されますので、それらのヒントを使ったブレーン・ストーミングを行うことにより沢山のアイデアが発想できます。
以上のように、I-TRIZを使えば、問題をどのように定義すればいいか(技術的矛盾、物理的矛盾、物質-場分析、技術的作用、進化段階などの特定)といったことで悩む必要がなくなります。また、どの定石パターン(発明原理、分離の原則、発明標準解、工学的効果集、進化の法則など)を使えばいいかといった悩みもなくなります。
さらに、I-TRIZでは、古典的TRIZにはない、(1)現場で生じる不具合の原因を追及してその不具合を改善するための不具合解析(FA:Failure Analysis)と、将来生じるおそれのある不具合を予測してその予防対策を講じるための不具合予測(FP:Failua Prediction)、(2)技術分野の進化だけではなく市場の進化をも考慮に入れた次世代の商品・サービスの企画を行うための「戦略的世代進化(DE:Directed Evolution)」、(3)他社特許回避、発明強化、発明評価といった知的財産活動のための「知的財産制御(CIP:Control of Intellectual Property)」といった新しい分野へ適用範囲を拡大しています。
TRIZを知らない人、TRIZを使いこなせなかった人でも使えるI-TRIZの威力を体験し、実務に活用してみて下さい。