ひらめきと論理的思考との関係

研究者、技術者であれば、「アイデアがふと思いつく」といった経験をしたことがあると思います。しかし、なぜ思いついたかは本人にもわからないのではないでしょうか。

ということは、そのアイデアにいたるまでの脳機能が無意識のうちに経過したということです。つまり、脳が自動的に働いたことを意味しています。

この新しいことに気がつく無意識の脳の機能を「ひらめき」といいます。

脳科学者の千葉康則氏は、「自分にわからない自分を無意識といい、自分にわかる自分を意識という。」と表現されています。そして、「本当にわかるとは、言葉ではっきりと表現できること」だといっています。

そうすると、「意識の働きを抑えれば、自然に言葉に結びつかない無意識の脳の機能が働きだす」という性質を利用すれば、「ひらめき」を得るための条件を整えることができそうです。

とはいえ、意識を働かせないために何も考えないのであれば、無意識の脳の機能が特定の問題について働き出すことはありません。

実は「ひらめき」を得るには、その問題についてのあらゆる知識を動員して、意識的にあれこれと熟考する(考える種がなくなるまで考える)といった積極的な行動を起こすことが必要です。そによって、「常にその問題が気になる」状態を作り出すことが重要であるという意味です。

考える種がなくなるまで考えると、その問題を考えていない時に、自動的に無意識の脳機能が働き出して、あるとき突然その解決策がひらめくことになります。この熟考の後のひらめくまでの期間を、創造心理学では「あたため」と呼んでいます。

ところで、「ひらめき」には、自分が抱えている問題の解決に役立つものと、そうでないものとがあります。

「ひらめき」が役立つかどうかを評価するために、また「ひらめき」を問題解決に役立てるためには、そもそもその問題についての深い理解がなければなりません。

つまり、「ひらめき」を有効に利用するためには、前提として問題に関連する知識の情報収集とそれらの情報を使った論理的思考が必要になります。

問題を徹底的に考えたうえで、あたための期間を持つことで「ひらめき」を得ます。そして、この「ひらめき」をさらに論理的思考で具体化していくことで、真に役に立つ解決策が得られることになります。