TRIZの「出口の壁」

前回は、TRIZを使用する際に具体的に抱えている問題を抽象的な問題へと変換する抽象化作業が、初めての方には戸惑いを与えるといったTRIZの「入り口の壁」について説明しました。

今回は、TRIZを使用して具体的な問題に対するアイデアを出す際に、ヒントとして与えられる一般的な解決策を具体的な解決策に変換する具体化作業が、うまく実行できないといったTRIZの「出口の壁」について説明します。

TRIZでは、問題解決に当たって積極的に異分野の知識を使います。 自分が問題を抱えている分野と異なる分野の知識を参考にするために、TRIZでは特定の分野の知識を他の分野の人にもわかるような一般化した知識に変換したものを使用することにしています。

そこで、自分の問題の解決策を得るには、一般的な知識を具体的な知識の形にして解決策にするといった手順になります。

しかしながら、いざ試してみると、抽象的な世界のモノコトを具体的な世界のモノコトに変換することは容易なことではないことがわかります。これを私はTRIZの「出口の壁」と呼んでいます。

特に、自分の専門と違う分野の問題を解決しようとする場合には、それが顕著になります。 TRIZを使えばどんな問題も解決できるのでないかとの期待を持っている方にとっては、期待はずれを実感する場面であるともいえます。

なぜ、一般的な知識を具体的な知識にするのが難しいかというと、具体的な問題の分野に関して自分が既に持っている知識、経験、イメージが不足しているからに他なりません。 一般的な知識を具体的な知識に変換するには、その具体的な問題の分野の知識、経験、イメージの一つひとつを抽出し、その中から使えそうなものを選択することが必要になります。

そのため、そもそも、その具体的な問題の分野に関して自分が既に持っている知識、経験、イメージが少ない場合には、問題解決に役立つ具体的なモノコトが見つからないことになります。

ここで重要なことは、単にその分野の知識を勉強して獲得すればいいというものではないということです。自分で実際に体験したことを踏まえた上で、行動に移せる程度に理解している実践的な知識を獲得することが重要になるということです。

TRIZを学んだだけでは、実際の具体的な問題解決ができることにはならないということです。これは、他のどんな問題解決の手法を学んだとしても、同じことではないでしょうか。

つまり、問題解決力を身につけるには、自分自身がいろいろな体験を積んで、具体的な解決策をたくさん持っていることが必要ということになります。