Sカーブ上の段階ごとの問題点

新技術を開発しても、それを受け入れる市場ができていない場合には、いわゆる「死の谷」に落ち込んでしまい、日の目を見ずに終わることがあります。これを、「クロコダイル・バック現象」といいます。
I-TRIZではSカーブ分析に関する研究成果が豊富であり、「クロコダイル・バック現象」はその一つです。
「クロコダイル・バック現象」はSカーブの幼児期の段階にある事業が遭遇する主要な問題の一つです。
システムの現実の進化のプロセスでは、Sカーブの段階1(幼児期)から段階2(成長期)への移行がスムースに進む例は多くありません。むしろ、様々な試みが失敗に終わった後で、漸くしてから成功にたどり着くことになります。
多くの試みが失敗に終わる理由は、「(1)登場したばかりのシステムはまだ商品として売られ、使われる準備が整っていない。(2)市場に新しいシステムを受け入れる態勢ができていない。」などがあります。
古く、複雑で、生産量が比較的少なく、開発している企業の数が少ないなどで競争も激しくないシステムでは、システムの基本的パラダイムが、可能な改良のアイデアが出尽くしていないうちに、時期尚早に固定化してしまうことがあります。これはSカーブの成長期に起きる現象であり、「時期尚早の老化」と呼んでいます。
「時期尚早の老化」の結果、本来は成長期にあるべきシステムの性能は長期間ほとんど変化していない、どの会社も同じような製品を売っている状況(成熟期に似た状況)に陥っていることがあります。
Sカーブの成熟期では、それまでにシステムに関する標準は確立され、固定化されているため、原理的に高度な発明は行われず、改良といっても仕様の最適化、妥協的な設計、小さな発明が行われるだけです。他方、売り上げは順調に伸びているため、新しいシステムへ移行することなどには思いも寄りません。
その結果、いつも間にか安価な代替システムに市場を奪われてしまうこと(破壊的イノベーションの発生)になります。
いずれのケースも、システムやその周辺に存在する資源を見逃しているか、またはそれらの資源の活用が不十分であることに起因しています。
いずれのケースの問題解決の鍵は資源の有効活用です。となれば、既存の技術の新しい用途を見つけ出す用途開発の手法が使えるはずです。
つまり、システムの資源を有効活用すべく新しい市場を作り出せばよい。そのためには、人の新しい生活習慣や振る舞いを提案する新文化の開発が必要です。
I-TRIZには、新しい市場を作り出すための新文化の開発に有効な方法論として戦略的世代進化(DE:Directed Evolution)が用意されています。