問題の情報把握(ISQ)の有効性(資源把握編)

I-TRIZには、発明的問題解決(IPS)、不具合分析(FA)、不具合予測(FP)、戦略的世代進化(DE)、知的財産制御(CIP)のすべてに共通する「アイディエーション・プロセス」という汎用的な問題解決プロセスがあります。
アイディエーション・プロセスの最初には、11項目からなる問題の情報把握(ISQ:Innovation Situation Questionnaire)があります。
問題の情報把握(ISQ)は、問題解決プロセスをサポートするために、自分が抱えている問題の状況についての入手可能な知識を収集し、系統立てるのに役立つ一組の質問からなっています。
問題の情報把握(ISQ)に記載されている質問に答えることは、心理的惰性を低減し、その問題に対する研究者、技術者のビジョンを変更し、価値のある知識を再構成して、次のアイデア生成プロセスへ導くことを助けます。
問題の情報把握(ISQ)の最初の項目は「(1)問題の簡単な説明」です。
「一つの、単純なフレーズで、あなたの問題を記述してください。専門の用語を使用することを避けてください。その代わりに、あなたが中学生と話すのに使用するだろう「日常的な」言語を使用してください。専門用語を使わずに表現すると、状況をより一般化することになり、解決策を探すうえで幅広いアプローチを使えるようになります。」
この「(1)問題の簡単な説明」の質問文に答えることで、当初考えていた問題点とは違ったところに問題の本質があることに気がつき、問題に取り組む最初の段階での過ちを避けることができるのは大きな利点です。
問題の情報把握(ISQ)の項目の「(2)システムの階層に関する情報」、「(3)システムの機能に関する情報」、「(4)システムの問題状況(問題発生メカニズム)に関する情報」、「(5)システムの時間に関する情報」では、問題解決に使用できる資源を探索することになります。
(8)利用可能な資源の項目では、①物質資源、②場の資源、③空間資源、④時間資源、⑤情報資源、⑥機能資源といった観点で資源を漏れなく探索することが要求されます。
これにより、問題を抱えたシステムの中やシステムの周辺にある利用可能な資源が網羅的にリストアップされることで、問題を解くために使用できる要素のすべてが明らかになります。
この資源把握を体系的に行うための手法を、アイディエーション・プロセスでは「システムアプローチ」と呼んでいます。
問題の情報把握(ISQ)では、システムアプローチが自然に行えるように、「(2)システムの階層に関する情報」、「(3)システムの機能に関する情報」、「(4)システムの問題状況(問題発生メカニズム)に関する情報」、「(5)システムの時間に関する情報」、「(8)利用可能な資源」、という項目が盛り込まれています。
その結果、思考領域が一挙に広がり、問題解決に際して何に手を付ければよいかといった全体観が得られ、特定の箇所に偏った取り組みに陥るようなことがなくなります。
「問題解決とは資源を変更することである」ということを知っていれば、どの資源にどのような変更を加えればよいかを考えるだけで、問題が簡単に解けてしまう場合もあります。
そのため、この後のアイデア生成プロセスを経ることなく、問題解決のプロジェクトが終了になることも起きます。それだけ威力のあるのが「資源把握」という概念です。