TRIZの中の創造性

以前にも話題にしましたが、「TRIZのどこが創造的なのか?」という問題について再考します。
TRIZは、アルトシュラーが世界中の20万件以上の特許を調査し、その中から発明の名に値する4万件の特許を選んで精査して築いた理論的基礎により、体系的で段階的な手順からなる問題解決ツールが構築されました。
TRIZの問題解決ツールは、(1)最良の解決策の存在する領域を指し示すガイド、(2)技術分野に限定されることのない一般的な発明のパターン、(3)多数のイノベーションの実例、等の先人の知恵を参照して、それらからの類比発想によって発明的問題の解決をしようとするものです。
そのため、問題解決者個人の創造性を開発するといった点に重きをおいているとは言いにくい面があります。
一般的な回答をするならば、TRIZでは、(1)心理的惰性を排除すべく他の技術分野の観点からの検討を積極的にすすめることと、(2)問題解決ツールを使った活動を重ねることで、創造性が徐々に高められていくということでしょうか。
ここでは、別の考えを披露します。
そのヒントは、TRIZの教科書としての位置づけであるARIZの中にあります。
ARIZ85Cの第8部「解決策の活用」では、問題解決によって得られた解決策がもつ資源を最大限に活用することを行います。第8部は以下の3つのステップから構成されています。
ステップ 8.1. 解決策でシステムが改良されることによって、システムを内蔵する上位システムはどのように変化しなければならないのかを明らかにします。
ステップ 8.2. 改良されたシステム(あるいは上位システム)を何らかの新しい用途で使用することができないか確認します。
ステップ 8.3. 解決策を他の問題解決に活用します。
これにより、当初の問題解決で発見された新たな発明パターンを手がかりとした新しい「理論」の構築につながる可能性を探ることをします。
ARIZ85Cの第9部「問題解決プロセスの分析」では、問題解決の結果から、その問題解決の流れを徹底的に分析することで、データベースに新たな情報(標準解、解法、物理的効果集など)を追加することを検討します。第9部は以下の2つのステップから構成されています。
ステップ 9.1. 実際の問題解決の流れと理論との比較
ステップ 9.2. 問題解決の結果とTRIZの情報ファンドの資料との比較
以上のように、ARIZ85Cの第8部、第9部の作業を行うことで、問題解決者は問題解決によって得られた解決策を一般化するための抽象的思考に取り組むことになります。
抽象的思考をすることで、頭の中のぼんやりとしたイメージや傾向といった抽象的なパターンを抽出し、それを次の問題解決に応用することで新たな連想を生み、似たものにリンクを張る可能性を高めることにつながります。
つまり、ARIZ85Cの第8部「解決策の活用」、第9部「問題解決プロセスの分析」を実施することで、「気づきやすい、思いつきやすい頭」になれるということです。これが、TRIZの最も創造性開発に寄与できるところです(ARIZの中にそのようなシステムを備えていることがTRIZの創造的なところです)。
ちなみに、創造技法の一つであるNM法では「創造とは発想と、それを有効化することを含めたもの」と説明されています。
抽象的思考は創造の要素である「発想」に対応するものです。発想によって得られた抽象的なパターンを具体的なものへ変換するための論理的思考は「有効化」に対応します。
「有効化」に対応する論理的思考は、研究者、技術者は自分が関係する分野については得意とするところですから、格別問題ではないでしょう(もちろん、有効化の段階でも小さな「発想」は必要になりますが)。