戦略的世代進化(DE)プロジェクトの狙い

米国のアイディエーション・インターナショナル社が開発した戦略的世代進化(DE:Directed Evolution®)は、ユーザーが特定の事業分野で長期間に渡って競争優位の状態を維持し、継続的に成長することをサポートする方法論です。

 

DEは社会、経済、市場、技術といった外部環境の変化に適応する際に生じる組織(企業、団体、学校、家族など)の具体的な問題状況に応じて、その組織の内部環境を踏まえた上で、Ideation TRIZの発明的問題解決(IPS:Inventive Problem Solving)、不具合分析と再発防止(FA:Failure Analysis)、不具合予測と未然防止(FP:Failure Prediction)、知的財産制御(CIP:Control of Intellectual Property)といった各種手法を的確な場面で適用するための体系的な方法論です。

 

DEを使用したプロジェクトは、ユーザーがはっきりと目標を持っている場合でも、漠然とした希望を実現したいと考えている段階でも実施可能です。また、ユーザーの具体的なニーズ、市場における地位、利用可能な経営資源に応じて、DEプロジェクトを展開する深さや規模は様々に設定できます。

 

DEプロジェクトが通常目標とするアウトプットは次の各項目です。

(1)対象システムの分析と診断を行い、必要な対応策を創出します。

・対象システムが直面している現在の問題の解決と潜在的問題の解明;システムの今後の発展を妨げている深刻な矛盾(ジレンマ)の解明と打開策の発見。

・システムを進化させるために利用可能な資源と、システムに関連する最も期待される方向の解明。これによって、システムの潜在的可能性を特定し、また、システムを期待される理想的な姿に近づけることが可能になります。具体的には、

・・現在の製品の改良、新しい有用な特徴や機能を付け加えることによる新製品や新技術の開発、システムの新用途の発見、製品・技術の総合的価値の向上。

・・既存の市場でのシェアの増加、新市場・新市場セクターの発見。

・現有の知的財産(IP)の客観的評価と知財としての品質と権利保護の水準を向上させることを通じた価値の増加。

 

(2)将来像の網羅的な提示 (可能性のある選択肢の提示) によって、ユーザーが対象システムの望ましい発展の方向を選択し、それに基づいて最適な投資計画や、事業戦略に立脚して具体的な開発を進めることが可能になります。

 

DEの原則に従って将来像(システムが今後たどってゆく可能性がある複数のシナリオ)を明らかにすることによって、対象としているシステムの可能性の中から、ユーザーの立場から見て望ましい方向を選択し、その方向を実現させるために最適の投資を行い、投資を活かすために効果的な戦略を立てることが可能になります。戦略には以下が含まれます。

・現在の製品・サービスを改良し、現有の技術を活用して既存の市場を拡大し、シェアを増加させることを目標とする短期計画

・現在の製品を大幅に改良、新製品・サービスを開発;現有の技術の飛躍的な改良、将来を切り開く新技術の導入し、市場の大幅な拡大;事業と市場の成長を狙った方策の開発;などを目標とする中期計画

・製品・サービスの新しい世代への進化、全く新しい製品・サービスや極めて効果的な新技術、新市場あるいは新市場セクター、更に新しいマーケティング・アプローチの創出などの技術的なあるいは市場ブレークスルー、および、新たな商品開発戦略、事業・市場成長戦略の開発を目標とする長期計画

 

(3)予想される不都合の解明を行なって、当該分野で将来予測されるリスクを(必要に応じて、短期、中期、長期に)予測し、未然防止策を創出します。

・システムおよびシステムに関連する分野で今後(短期、中期、長期的に)発生する可能性がある潜在的な問題、不都合な状況を明らかにし、これに対する対策を準備します。

具体的には、

・不都合な事象あるいは状況の回避

・不都合な事象あるいは状況が生じたことの早期診断

・不都合な事象あるいは状況発生時に対処し損失を食い止める方策の策定

・不都合な事象あるいは状況をチャンスへと替える(例えば、経済危機を自分の事業にとって有利な政府規制導入の機会とする、など)方策の発見

 

(4)知的財産の保護に関する指針によって、IPポートフォリオの形成をサポートします。知的財産(IP)を効果的に保護し、IPポートフォリオを戦略的に形成します。

これには以下が含まれます。

・既存のアイデア、期限の切れた・もうすぐ切れる特許など、利用できるアイデアの分析と改良;これらのアイデアの価値と、改良可能性を判定し、最善の活用法を発見します。

・新しいアイデアを付け加えることによって既存のIPポートフォリオを強化します。

・既存のIPポートフォリオ、中でも最も価値のある部分に対する権利保護を強化します。

 

上にあげた形でIPポートフォリオを強化することによって、以下の効果が期待されます。

・競合他社が類似の製品・サービスによって市場に参入したり、他社がライセンスなしに自社のアイデアを利用して製品を改良することを妨げる。

・自社が製品・サービスを何らかの方向に発展させることを、競合他社によって(特許侵害として)妨げられることを防止する。

・IPを販売あるいはライセンスすることによって、企業のドル箱に替える可能性の出現。

 

(5)企業の総合的創造性強化を図ります。

企業の総合的創造性の強化に含まれる内容は以下の通りです。

・事業および組織を継続的に成長させる原動力となる社員・スタッフにDEの基礎となっている効果的な問題解決手法を身に付けてもらうことによって、日常的に活用する技能を育成する。

・社員・スタッフの間で創造性に対する関心を高め、継続的な自己研鑽意欲と、新しいアイデアを探求する習慣を育成する。